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酪農・畜産問題に関する申し入れ

2022年12月13日

農林水産大臣 野村 哲郎 殿

日本共産党国会議員団

酪農・畜産問題に関する申し入れ

 現在、畜産の現場は、ロシアのウクライナ侵略や円安等を原因とする飼料・生産資材の異常な高騰により、存亡の危機に直面している。
 最も厳しい状況に置かれている酪農をはじめ、肉牛繁殖・肥育・養豚・養鶏ともに離農や倒産が相次ぎ、現状の生産量の確保すら危ぶまれている。
 既に畜産業は、TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定の発効による牛肉、豚肉、乳製品などの市場開放によって経営不安にさらされ、コロナ禍による消費の減退と価格低迷によって大きなダメージを受けてきた。このまま手をこまねいていては、日本から畜産の灯が消えかねない。
 国産の畜産物・牛乳乳製品の安定供給を維持するためには、政府の経営支援策では不十分であり、特に飼料の高騰分を公費により全額補填する緊急対応が必要である。
 また、地球温暖化、水不足と干ばつの頻発、人口増、土壌の劣化などにより、世界の食料危機が間近に迫っている。お金を出せばいくらでも食料や生産資材が買える時代は過ぎ去った。
 際限のない市場開放と輸入依存から決別し、食料主権を回復するとともに、大規模化偏重の農政から、家族経営をはじめとする多様な担い手が安心して生産に取り組める酪農・畜産政策に転換するべきである。
 そのためには、生産費の価格転嫁と政府による備蓄を組み合わせた効果的な価格政策と、それでも価格が生産費を下回った場合は不足分を保障する所得補償政策が必要である。
 また、豚熱や鳥インフルエンザの感染により被害を受けた農家に対しては、従来の枠組みにとらわれない支援が強く求められている。
 よって、2023年度の畜産物価格及び関連対策の決定にあたり、以下を申し入れる。

1.配合飼料価格安定制度は、直近1年間の輸入価格の平均との差額を、農家と国・メーカーが積み立てた基金から補填する仕組みであり、現在のように継続して高騰する場合には補填が十分なものとならない。配合飼料の高騰前の価格と現在の価格との差額を全額公費で補填する緊急支援を行うこと。同制度の対象とならない自家配合の農家にも支援を行うこと。燃油をはじめ、乾燥牧草や藁、敷料、代用乳など、あらゆる生産資材も高騰している。経営の実情を正確につかみ、緊急の直接支援を行うこと。

2.大幅な経費の増大を踏まえ、加工原料乳生産者補給金および交付対象数量は、中小規模の経営も含め再生産が可能な水準とすること。

3.畜産クラスター事業を利用し、資金の償還が迫っている農家に対して、償還期間を延長するなど柔軟な対応を強く金融機関に求めること。

4.乳製品の過剰在庫により、生乳廃棄の懸念が高まっている。生産者は、国の政策に従って規模拡大・増頭増産を進めてきたにもかかわらず、廃用などの生産抑制を迫られている。国は、カレントアクセスによる乳製品の義務的全量輸入を停止すること。国民に対して、酪農・畜産の窮状を広く伝え、牛乳、乳製品の消費拡大への協力を訴えること。生産者が需給の緩和と逼迫の繰り返しに翻弄されることのないよう、乳製品の政府備蓄など、国が生乳の需給調整に責任を持つ仕組みの導入を検討すること。

5.国は、生産者団体と乳業メーカーとの対等な価格交渉に責任を持つとともに、危機に対応し、期中でも機動的に交渉を開始できるよう主導すること。

6.国産の飼料・生産資材の増産と持続的な確保が図られるよう、生産・流通に対する支援を強力に行うこと。輸入飼料に依存しない自給飼料型の酪農経営を支援するため、水田、畑、採草地への直接支払交付金を維持、拡充すること。

7.集送乳調整金は、燃油価格をはじめ全国の集送乳コストの高騰やドライバー不足等の状況を踏まえるとともに、指定生乳生産者団体が果たしている機能に見合った単価水準とすること。

8.肉用子牛生産者補給金の保証基準価格については、生産者が再生産可能な水準とすること。

9.牛マルキン・豚マルキン制度は、一部を生産者が負担するうえ、基準となる経費が過去数年間の平均を取るため、コスト増が継続する場合には飼料価格安定制度と同様の問題が生じる。国の全額負担により実質的な生産費の不足分を全て補填する制度に改善すること。

10.豚熱(CSF)・高病原性鳥インフルエンザ対策については、農家の衛生管理への支援を拡充すること。殺処分後に確実に営農再開ができるよう、殺処分手当金・特別手当金においては逸失利益まで含めて補償を行うこと。高ストレスの防疫作業にあたる自治体職員、自衛隊員、農協職員について、適切な作業環境の設定や、メンタルヘルスなどの体調管理が確実に行われるよう県への支援を行うこと。作業に見合う適切な金銭的手当の支給ができるよう国が措置すること。

11.畜産クラスター事業をはじめ各種支援措置は、小規模・家族経営を含めた多様な担い手が意欲と希望をもって生産に取り組めるよう、規模拡大要件を撤廃するなど実情を踏まえた改善を図ること。

以上

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