農林水産大臣 吉川 貴盛 殿
沿岸漁業の困難を打開するための申し入れ
2019年6月17日
日本共産党国会議員団
クロマグロ、イカ、カツオ、サケなどの資源が減少し、小規模・沿岸漁業者が経営の危機に陥っている。クロマグロへの依存度の高い沿岸漁業者が廃業を余儀なくされ、イカ釣り漁業者も記録的不漁で業種転換を迫られている。
資源の悪化は、開発などによる海洋環境の悪化をはじめ、地球温暖化による水温・海流の変化なども要因と考えられるが、まき網などの大規模漁業が、沿岸域の資源に圧力をかけていることも大きく影響している。
ところが安倍政権は、小規模・沿岸漁業者の経営と生活を守るどころか、窮地に追い込んでいる。政府は昨年、クロマグロに突如として罰則付きの漁獲規制を強行し、全国で数十隻に過ぎない大中型まき網漁船を優遇して、2万隻余に及ぶ小規模・沿岸漁業者に対してはわずかな漁獲枠しか配分しなかった。
さらに昨年、地域の家族経営とその共同である漁協を支えてきた漁業法を大幅に改悪し、地元優先のしくみを廃止して企業参入と漁船の規模拡大を自由化した。また漁業者の声を水産政策に反映させる海区漁業調整委員の公選制を廃止した。
小規模・沿岸漁業は、全国各地で多様な漁業を営み、豊かな魚食文化を築いてきた。沿岸の基幹産業として地域経済を担い、藻場干潟や森林などの環境保全、海岸線の監視、災害・海難救助活動など、多様な役割を果たしてきた。安倍政権は、こうした多面的機能を持つ小規模・沿岸漁業を守るどころか、全国の海から排除しようとしている。
日本共産党は、小規模・沿岸の漁業者が安心して操業でき、生計が立てられる政策に転換すべきと考える。
よって、以下、申し入れる。
- クロマグロの資源管理に当たっては、小規模・沿岸漁業に配慮した施策を行うこと。沿岸のクロマグロ漁業者が生活できるよう、大型魚・小型魚とも小規模・沿岸漁業者の漁獲枠を大幅に確保すること。漁獲実績に基づいた漁獲枠配分方式を改め、釣り・はえ縄漁業に対する大型魚・小型魚の区別の不適用も含めた柔軟な管理方式を検討すること。共済加入者以外も含め、抜本的な所得補償対策を行うこと。クロマグロ以外の漁業における混獲水揚げ回避のためのコストも補償すること。
- 漁獲規制を行う場合は、資源に対するダメージの大きな大規模漁業から規制すること。特にクロマグロは大量漁獲により価格の暴落を招き、沿岸の漁業経営を圧迫していることから、これを規制する方向で漁業調整を行うこと。日本海での大臣許可まき網漁業による産卵期クロマグロの漁獲規制を行うこと。
- スルメイカの資源減少が顕著になっているもとで、大臣許可まき網・沖合底引き漁業が強い漁獲圧力となっている。政府はTACにより規制を行っていると主張するが、実際の漁獲量は規制の漁獲枠にも満たない状況であり、規制として機能していない。少なくなった資源を獲り尽くすような操業はただちに規制すること。
- 沿岸カツオ釣り・ひき縄漁業の存続のため、熱帯域での大規模まき網を規制すること。WCPFCで熱帯域での漁獲規制を求めること。日本のダシ・つゆメーカーに対し、極小カツオの輸入を自粛するよう強く指導すること。
- 沿岸漁業者の操業を脅かす違法操業を厳しく取り締まること。
- 小規模・沿岸漁業の振興を漁業政策の中心的な柱に据え、経営安定をはかるため所得安定対策を講じること。特に、現状の漁業共済・漁業収入安定対策でカバーされない漁業者・継続減収分についても配慮した上乗せの支援措置を行うこと。水産政策審議会に小規模・沿岸漁業の代表を参加させること。漁獲枠・漁獲割り当てを設ける際、漁業者自身が配分を決定する仕組みを検討すること。
- 漁業法改悪の発端となった国家戦略特区ワーキンググループでの規制緩和提案をめぐり重大な疑惑が発覚し、しかも審査の過程が隠ぺいされていることは看過できない。すべての経過を公開するとともに、改定漁業法は、その施行を凍結し、漁業者や漁協の意見、要望を聞き、抜本的に見直すこと。
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