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HOME北海道・東北>不漁に直面する被災地の漁業・水産業の危機を打開するための申し入れ

2022年6月2日
農林水産大臣 金子 原二郎 殿
日本共産党国会議員団
不漁に直面する被災地の漁業・水産業の危機を打開するための申し入れ
 ここ数年、わが国の漁業・水産業は記録的な不漁が続いています。主要魚種であるスルメイカの漁獲量はピーク時の93%減(全国)、サンマは同92%減、サケは同80%減という深刻さです。とりわけ東日本大震災の被災地では、台風・津波などの被害も加わり、漁業・水産業経営の危機は深刻です。養殖漁業を脅かす貝毒も広がっています。原料の魚が手に入らず操業縮小や魚種転換を余儀なくされている水産加工業者も少なくありません。
 不漁の実態は魚種や地域ごとに多様であり、その原因は完全に解明されてはいませんが、地球温暖化による海洋環境の変化などを多くの専門家は指摘しています。昨年、水産庁が公表した「不漁問題に関する検討会とりまとめ」は、今回の不漁を「過去に経験したことのない変化」と指摘し、政府、都道府県、漁業者、研究者など関係者が力を合わせて対策に当たることを求めています。
 わが国の漁業・水産業は、沿岸、沖合を中心に多様な形態で営まれ、新鮮で豊富な水産物を国民に供給し、豊かな魚食文化を育んできました。漁業・水産業の危機を打開することは、持続可能な日本社会にとっても不可欠の課題です。その取り組みは、自治体や関係団体、漁業者の努力だけではとうてい不可能です。当面の危機打開でも、漁業・水産業の再生という中長期的課題でも、地域の取り組みを尊重しながら国の全面的な支援が欠かせません。
 政府は、不漁問題の打開策を水産業の成長産業化や2020年に施行された新漁業法に基づく資源管理の徹底に求めていますが、これでは、多くの沿岸中小漁業者が締め出され、漁業・水産業、漁村地域がいっそう衰退するのは必至です。
 日本共産党は、政府の漁業・水産政策の方向を転換し、中小家族漁業の振興に思い切って力を入れ、記録的な不漁に見合った水産関係予算や人員を大幅に増やし、従来の制度の枠組を超えた政策の実施を求めるものです。
 よって、以下申し入れます。


(1)経営が悪化する漁業者を支える特別な制度を創設すること
 不漁で収入が激減する漁業者等への支援はまったなしです。漁業共済や積立プラスなど既存の制度は今回のような不漁が続く下では経営の下支えにはなりません。漁業共済等の掛け金への支援、補てん基準の引き上げなどとともに休漁・減船に追い込まれようとしている漁業経営を支えるため、資源が回復するか、魚種転換で新たな収入の見通しが立つまでの間、経営、生活が成り立つよう新たな支援制度をつくるべきです。漁業者等の既存債務の償還猶予、償還期間の延長などを求めます。

(2)魚種転換などへの必要な投資を政府が全面的に支援すること
 不漁の長期化が予想され、漁業者・水産加工業者が魚種転換や漁獲対象の複数化などを選択する場合、沿岸・沖合の漁業者間の調整を行いながら、必要な設備や施設への投資、原材料の確保、販路拡大への支援を抜本的に強めるよう求めます。

(3)科学的知見を結集し、不漁の原因、実態に即した対策を打ち出すこと
 不漁のメカニズムや今後の見通し、必要な対策などを専門家・漁業者・関係者の知恵を総結集して早急に解明すべきです。地域の条件・環境の変化に対応した養殖・放流技術の開発などへの支援を強化し、藻場・干潟の再生など漁場環境の保全とあわせて、つくり育てる漁業を豊かに発展させる政策を求めます。
 そのために国や自治体、水産試験場、水産改良普及員等の人員、調査船、設備などを思い切って拡充し、必要な予算を政府の責任で確保すべきです。

(4)貝毒に苦しむ漁業者の経営を支援すること
 貝毒の発生メカニズムを、科学的知見を集めて解明し、防止対策に全力をあげるとともに、貝毒の被害で減収した漁業者の経営、生活が成り立つよう所得確保を求めます。

(5)災害、コロナ禍、燃油高などに苦しむ漁業者、漁協の経営を支援すること
 災害、コロナ禍、燃油・資材高なども漁業者の経営を苦しめています。想定外の災害に対するセーフティネットを準備すべきです。新型コロナによる魚価の低迷、販路の喪失などに対し、漁業経営維持のための給付金の充実を求めます。燃油高、餌料費、養殖資材の高騰などで困窮する養殖業者への支援策も求めます。
 漁協も経営破綻の危機に追い込まれています。漁業者の経営や暮らしを守り、漁村経済でも大きな役割を果たしている漁協を維持するための支援制度を求めます。

(6)福島第一原発事故のアルプス処理水の海洋放出は中止すること
 来春に予定されている原発事故のアルプス処理水(放射能汚染水)の海洋放出は、震災からの復興に懸命に取り組む関係者の努力を台無しにします。福島県沖だけでなく、不漁で苦境にあえぐ漁業者・水産加工業界に対する追い打ちとなりかねません。海洋放出は中止し、科学者・専門家の知識を総動員して各方面から提案されている代替え案を含め処理方法を確立すべきです。

(7)資源管理は沿岸漁業者等の自主的取り組みを尊重すること
 政府は、新漁業法の下で、漁獲可能量(TAC)を国が一方的に設定し、現場に機械的に押しつけるやり方を拡大しようとしています。これでは中小の沿岸漁業者が締め出され、大中型の資本漁業に集中することになりかねません。
 沿岸漁業者は、長年の体験を踏まえて漁船規模、漁具規制、禁漁期など厳しい規制を決めて自主的な資源管理を行っています。水産資源の管理にあたっては、資源管理の協議に漁業者の参加を保障し、関係者の納得の上で進めるべきです。

(8)漁業をめぐる主権の擁護と漁民の権利を守る外交努力を強めること
 記録的な不漁の要因として公海域における外国船の乱獲も指摘されています。公海を回遊する海洋資源の乱獲を防止し、漁場や操業の安全を守る立場から、関係国との外交交渉の努力を強めることを求めます。

(9)国の水産予算を増やし、人や環境にやさしい分野に振り向けること
 国の水産予算を増やすとともに、漁業者の所得確保や水産物・加工品の販路の確保、地産地消の推進、水産加工の振興など人と地域、環境にやさしい分野に重点的に振り向けることを求めます。若い新規漁業就業者に一定の期間、生活費を補てんする国の制度を拡充し、漁業への若い人の就業と定着が図れるよう求めるものです。

以上
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