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「コンパクトな道庁」をかかげ道政の大改造

2006年2月
道の「新たな行政改革の取り組み」がめざすもの
「コンパクトな道庁」をかかげ道政の大改造
〜道民生活と地域経済をこわす新「改革」の再検討を〜
 道は二月七日、改革推進本部(本部長は高橋知事〉で「新たな行財政改革の取組み」を決定しました。
 「改革」の柱は、(1)業務の民間開放、組織の簡素化など〇五年度から十年間の構造改革指針をまとめた「行政改革大綱」、(2)大綱の各項目について前期五年間の数値目標を盛り込んだ改革工程表、(3)事業の効率化や施設管理手法の見直し、人件費八百億円削減、道立高校統廃合の指針策定など財政構造改革にむけた取り組みーの三本柱です。道職員は十年間で三割・六千人削減、職員給与は二年間一割削減します。
 マスコミ報道は、「効果は未知数」(「道新」二月七日)、「問われる知事の指導力」(「毎日」同八日)など、改革の具体化を、スピードアップを、と後押しする論調です。
 発表された新「改革」が、北海道にとって、道民にとって何を意味するのか、地方自治の原点に立った検討が必要です。

一、「コンパクトな道庁」論の提起、地方自治法からも脱法?

 新「改革」の第一の特徴は、財政危機をあげ赤字再建団体の回避をかかげ「コンパクトな道庁」構築の行財政構造改革を提案したことです。
 国、道、市町村の役割分担として、「道の役割」は「事務権限の内容や性質から市町村が担うことが適さないサービスのみを補完」を〔基本的考え方〕として明確にしています。市町村11基礎自治体論から、道県はその補完事務だとの立場です。
 しかし問題なのは、市町村=基礎自治体=総合的行政主体として、大きな市に再編(三万人以下の小さな町村を否定)し、そこに大幅な権限移譲をはかる、小さな町村を自治体として認めず合併強制の対象とする、道は巨大な市に適さないサービスのみを補完する、そうした自治体に再編・縮小されるのです。
 いま小泉内閣の「小さな政府」論が横行しています。新「改革」はこれを、国は外交、安保、司法、通貨など本来の役割に限定と賛美。社会保障や教育など、憲法二五条にもとつく人間らしい生活と発達保障の視点を欠落させ、アメリカいいなりの軍事大国化が露骨にねらわれています。
 都道府県の役割は、地方自治法二条五項(広域事務・連絡調敷事務・補完事務)に明確であるのに、あえて「補完」に限定するのか、脱法行為です。まったく不可解であるだけでなく全国初隅「コンパクト道庁」を提唱。これをさして「ひからびた赤レンガ会社」(の道)とヤユする説も出るほどです。

都道府県の仕事(事務)〜改革は自治法脱法
地方自治法2条5項 行財政改革
(1)広域にわたるもの(広域事務)
(2)市町村に関する連絡調整に関するもの
(3)規模や性質から市町村が処理することが適当ではないもの(補完事務) 市町村が担うことが適さないサービスのみを補完

二、安心・安全・安定の北海道づくりはどこへ
 
 第二に、社会不安が横行する中で、安全・安心・安定の社会づくりにおける道の役割が欠落していることです。
 「北海道の将来像」として、(1)世界に貢献する、(2)自立性の高い活力あふれる、(3)地域の共生力に満ちた「北海道」をあげています。
 いま雇用老後、少子化問題など、「安全と安心の北海道づくり」が一番強く求められるのに、それが欠落しています。
 人と人、人と自然が支えあうといいますが、そのために道庁が果たすべき役割はあまりに大きいのです。耐震構造計算の偽造が明らかになり、マンション居住者と国民を不安におとし入れました。これは設計の強度検査が七年前から民間まかぜになり、公平なチェックを果たさない「小さな政府」の落とし穴が、ポッカリロをひらいたのです。
 若い世代が結婚もできず、結婚しても子どもを産み育てられないという異様な社会が、「持続可能な社会」とはいえまぜん。
 知事は「持続可能な行財政確立」を強調しますが、道民生活も地域社会も「持続不能」になっていることを無視し、道庁が赤レンガ会社として存続してもどんな意味があるのかを、問わなければなりまぜん。自らの保身を優先し、道民を無視する行政に、信頼をよせることはできまぜん。

三、守るべき福祉水準・範囲を縮減、試験研究機関の独法化。市場化テストの導入など「自治体民間化」の徹底をはかろうとしている
 
 第三に、道民生活に関連する施策で、道が守るべき水準と役割を大幅に縮小廃止する「民間化」を徹底する道をつき進んでいることです。
 新「改革」では行政推進の柱として、事務事業の見直し、民間開放の推進、組織機構の見直し等がかかげられました。
 すでに道立文学館など三三施設に指定管理者制度を導入し、道立病院など六八の福祉医療施設のあり方検討(移譲・廃止)、市場化テストの実施、PFIの導入などが多彩に盛り込まれました。あたかも「官市場」の民間開放のデパートのごとく、です。
 自公政権は、自治体民間化の手法として、(1)PFI、(2)構造改革特区、(3)指定管理者制度(4)独立行政法人制度の四つを示していますが、新「改革」はこれをふくめて、全面的な民間化をうち出したものです。
 事務事業見直しや株式会社など企業への委譲、道単独自事業の見直しは、私学や難病助成など道民と道政が築きあげてきた独自施策を、次々と縮小廃止するものです。
 「守るべき福祉の水準が明確でない。道はここは守るという理念もなく、難病患者らに犠牲転嫁するのはおかしい」(難病連)と不信と批判の声があがるのは当然です。
 道立高校では、「適正配置」に名をかりて「新たな指針」づくりに着手、三間ロ以下の小規模校の、大がかりな統廃合に突入する計画です。
 私学助成の場合、道単独分廃止(高校で二十二億円)をふくめ三〇億円もの大幅削減かねらわれています。
 独法化では、札医大を〇七年から法人化するだけでなく、道内二八の道立試験研究機関を独法化さぜると明記しました。これは、農林漁業、工業・食品・林産など、地域産業の技術力向上に大きな役割を果たした試験研究機関を道立から外し、効率化一辺倒をめざすものです。結局道政を底の浅いものに変質さぜる恐れが大きいといわねばなりまぜん。
 自治体民間化の手法として、指定管理者や独立法人化などがすすめられてきましたが、その限界を取り払うものとして市場化テスト(官民競争入札制度)の導入が提起されました。公務の民間開放の究極として、すべての「官市場」を対象とすることが予定されています。〇六年度設計、〇七年度導入が企図されています。道民の間で十分な論議もないまま、一方的に導入すべきではありまぜん。
 他方、民間開放にともなって労働条件はどう変わるのか、それは行政にどんな影響を与えるのか、その専門性はどう確保されるのかを含めて、どんな「副作用」が及ぶのか、事前アセスメントが必要です。外部民営化のリスクをどうみるか、是正のための民主的規制はどうあるべきか、道民の前に示すべきです。
 さらに、ILO四九号条約などにもとづき、公契約条例の制定も当然検討すべきですが、これは検討項目にすらあげられていまぜん。
 
四、財政建て直しをいうが、存。財界奉仕は手つかず聖域は温存。財界奉仕は手付かず

 第四に、「財政建て直し」「持続可能な財政」を強調しますが、大企業のための聖域はしっかり温存していることです。
 〇七年度の赤字は一般財源ベースで一ハ○○億円と見込み、歳入は使用料の引き上げや道税の徴収徹底で一二〇億円の増『歳出削減は公共事業一七〇億円、私学や医療費の助成などでニハ○億円、人件費ハ○○億円などを掲げています。ここには四つの聖域が旧聾仔されています。
 一つは、公共事業落札率が、九五%と高い水準にとどまっていることです。宮城や長野、鳥取など「改革派」の知事のもとで、県の落札率は九〇%です。まともな競争でその水準に下がれば、三〇〇億円台の節減は十分可能です。
 二つ目に、今年度の企業誘致助成金は今回補正八億円を加え、四六・五億円にものぼり、千歳市のエプソンの一工場だけで、一五億円(設備投資の【割)の補助金を出しています。

法人事業税を超過課税すれば
道は40億円増収になるのに…
超過課税 適用期間
北海道
東京都 394 00〜05
神奈川県 92 04〜09
静岡県 58 04〜09
愛知県 95 03〜07
京都府 25 01〜06
大阪府 133 01〜06
兵庫県 43 01〜06
注=04年度決算。単位億円、愛知だけ3%、ほかは5%

 道内中小企業の進出に、若干の助成をするならともかく、道外大企業に血税巨費を投ずる必要があるのか、再検討すべきです。
 三つ目は、道税の空洞化が進む中で、とくに法人事業税の超過課税に着手しようとしないことです。すでに神奈川や兵庫など七都府県では、一億円以上の大企業への超過課税を実施しています。
八大都道府県で未実施は北海道だけです。
 五%増の超過課税で、年間四〇億円の増収が可能です(前ページの表参照)。
 四つ目は平取ダム、サンルダムなど水を使うあてのないダム、マイナス一四メートルの大深水の岸壁「奥地で車の通らない大規模杯道など、大型公共事業の継続です。堀道政は「時のアセス」で八事業を中止しました。しかし高橋道政は、何ひとつ手をつけまぜん。

五、赤字再建団体化は必至でない、れほど道財政は悪くない

 第五は、赤字再建団体の転落回避を掲げていますが、「転落必至」というほど道財政は悪化していないことです。
 道は、赤字再建団体になると起債ができず、「鉛筆一本まで総務省の指揮下に入り大変」だとして財源不足千八百億円を穴埋めするとしています。
 一番の問題は、歳入の柱である道税の空洞化とともに地方交付金(臨時財政対策債を含む)確保です。昨年度八○○億円、今年度一二〇億円の大穴が、道財政プランそのものを根底からくつがえしかねまぜん。
 道は、実質収支比率が五%(六〇〇億円)の赤字になると再建団体に転落する”と危機感をあおりますが、果たしてそうなのでしょうか。
 道の実質収支は、〇三年度一〇六億円、〇四年度二二億円の黒字です。起債制限比率(使途特定されない経常収入のうち公債費に充当された割合)は、道は一〇%にすぎまぜん。道税・交付税等の九割方は自由に使えます。
 起債制限比率の高い県は、岡山一八%、長野一七%、島根、高知などです。四七都道府県でみると道は四四番の低さです。(表参照)
 財政当局は、、道は「満括基金」積立てを三年間留保しているから”といいますが、これを除いても一五%にすぎまぜん。

道の起債制限比率では断然優良
起債制限比率 経営収支比率
1 岡山県 18.2 97.5
2 長野県 17.4 90.7
3 島根県 17.1 91.0
4 高知県 16.1 97.3
5 栃木県 15.2 91.1
6 鹿児島県 15.1 98.5
44北海道 10.0
(15.0)
92.3
(97.3)
注=単位%。平成16年度決算。同の場合、満括基金の積み立てを留保しており、しなかった場合を( )で示す。経営収支比率トップは大坂100%

 今後起債償還が累増しますが、実質収支が大幅な赤字になることは必至ではありまぜん。
 道が赤字再建団体になるなら、岡山や島根などいくつもの県が再建団体になってしまいます。「オオカミがくる」式のおどしは、使うべきではありまぜん。

六、地域経済をこわす新行則政改革は撤回し、道民参加でねり直しを

 以上みてきたように、新「改革」の内容は新自由主義にもとづき、自治体再編をめざす総務省の「行革指針」にそって、道庁の大改造計画を狙う危険なものです。「新しい公共空間」論をかかげ、公共サービス等の民間開放と、「受益と負担の均衡」の名で、ゆがんだ応益負担主義の導入をすすめる考えです。
しかも重大なのは、道職員を約三割も削減して、道みずから青年の雇用の場を失わぜ、給与の一割削減によって消費不況をいっそう困難にするなど、地域社会と経済を根底から破壊することです。
 道民と地域を不幸におとし入れる新「改革」を撤回し、道民参加で根本的にねり直すべきです。
(了)
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