<第193回国会 2017年3月9日 農林水産委員会>


◇豪雪被害対策を要求/新規就農者増、生産農業所得増のゴマカシ指摘/諫早湾開門で農水省、問答集配布を否定せず

○農林水産に関する調査(平成二十九年度の農林水産行政の基本施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、本年一月の大雪被害についてお聞きをいたします。
 鳥取、兵庫、京都、長野県などで、果樹や農業用ハウス、倒木など大きな被害が発生しました。樹木の被害は約五百八十ヘクタール、そして一・六億円の被害、五千百三十七棟以上の農業用ハウスで被害が発生をし、約三十二億円の被害額になるということです。新規に就農した方は、ハウスが倒壊し、展望を失っている、このままだったら春の作付けができないという話も聞いております。再建できなければ離農しかねないという状況も生まれていると聞いています。
 既に被害を受けてから二か月たちました。被害の実態把握も進んでいると思いますので、是非、早期に支援策を出して、安心して営農が続けられるように支援すべきではないかと思います。農水大臣の答弁をお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 平成二十九年一月中下旬から大雪がございました。二月も再び大雪でございます。
 こうした大雪による農林水産業の関係被害というのは、三月八日現在で二十九府県から寄せられているものを合計いたしますと、農作物等で四百四十一ヘクタール、果樹の樹体で五百七十九ヘクタール、農業用ハウス、畜舎等で五千四百七十一件、森林被害で三十四ヘクタール、漁船で四十二隻などでございます。合計いたしますと、五十一億四千万円の被害が発生しております。現在調査中ではございますが、全容ではまだございませんので、鋭意しっかりと調べていきたいというように思っております。
 農林水産省といたしましては、関係自治体と連携して、被害状況の全容が把握できましたならば、被害への迅速かつ的確な対応を図ってまいりたいというように思っているところでございます。

○紙智子君 三年前に関東地方を襲った大雪被害、このときに、被災農業者向け経営体育成支援事業というのを発動して支援をしたということでした。同時に、園芸施設の共済の補償制度も拡充したわけですけれども、共済への加入者が増えていないということも聞いています。ここ近年に、気象変動で、夏に局地的なゲリラ豪雨が発生するとかあるいは冬場は経験したこともないような大雪がいきなり来るとか、こういうことが続いております。営農の継続を支援するためにも今ある制度を柔軟に運用するように強く求めておきたいと思います。
 次に、農政について質問します。
 安倍総理が施政方針演説でこうおっしゃいました。農業では高齢化という壁が立ちはだかってきた、平均年齢は六十六歳を超えている、しかし攻めの農政の下、四十代以下の新規就農者は二年連続で増加し、統計開始以来二万三千人を超えた、生産農業所得も直近で年間三兆三千億円、過去十一年間で最も高い水準まで伸びた、更なる弾みを付けるため、八本の農政改革関連法を国会に提出し、改革を一気に加速します、農業版競争力強化法を制定しますと、こう言われました。
 それで、新規就農者は統計開始以来というふうにおっしゃったわけですけれども、この統計はいつから始まったのか、まず統計部にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 委員御指摘の新規就農者調査につきましては、平成十八年から実施しております。この中で、四十九歳以下という年齢区分で調査を実施したのは平成十九年からということになっております。

○紙智子君 それで、数字の結果だけが述べられたわけなんですけれども、農水省の統計を基にして資料を作りました。
 そこでまず、統計部にお聞きするんですけれども、二枚資料ありますが、一枚目の資料を見てください。まず、四十九歳以下の新規就農者ですけれども、二〇一〇年が一万七千九百七十人、二〇一二年には一万九千二百八十人に増えているわけですね。それで、これ増えた要因はどういうことでしょうか。


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○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 二〇一〇年から二〇一一年にかけての増加要因といたしましては、農業法人数が増加してきたことでありますとか、あるいは一般法人の農業参入が盛んになってきたことなどによりまして雇用就農者が増加してきたといったことなどが考えられるところでございます。

○紙智子君 青年就農給付金というのは支給されるようになったんじゃなかったでしたっけ。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) 新規就農者に対する支援対策といたしましては、二〇一一年度の補正予算から農の雇用の充実が図られましたほか、今委員から御紹介がございました青年就農者に対する給付金が二〇一二年度から予算措置されて実行されてきているところでございます。

○紙智子君 今お話があったように、二〇一二年ということは前政権のときから始まっているということだと思うんですね。それで、総理の施政方針では、生産農業所得、これが過去十一年で最も高くなったと言われたわけですけれども、その理由については説明がされませんでしたので、過去に遡ってどうだったんだろうと、農業総産出額と生産農業所得のグラフをちょっと作ってみました。二枚目の資料を見てください。
 それで、十一年前というと二〇〇五年なんですけれども、当時は約三兆二千億円、これは二〇一五年とほぼ同じなんですけれども、その前の二〇〇〇年というところまで遡ってみますと、農業総産出額も生産農業所得ももっと高かったということが分かるわけですけれども、それがどんどん下がってきたということが分かります。
 それで、その表の中の、四角で枠を作ってあるんですけれども、@の枠を見てほしいと思います。青い線のところが農業総産出額ですけれども、二〇〇七年から二〇〇八年で約八兆二千億円から八兆五千億円に、青いところですね、増えたわけですけれども、赤い線の生産農業所得、これが約三兆円から二兆七千億に下がっているんです。ここはなぜ下がっているのかということなんですけれども。


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○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) 今御指摘がございました二〇〇七年から二〇〇八年にかけての動きでございますけれども、まず農業総産出額につきましては、米と生乳につきまして需給事情等を反映して価格が上昇したことなどから産出額が増加したわけでございます。一方で、生産農業所得につきましては、そういう産出額の動向に加えまして経費がどういうふうな動きをしたかといったことなどが作用をいたします。この年間における動きといたしましては、燃油高騰の影響などから光熱動力費でありますとか肥料価格、飼料価格などが上昇したといったことなどによりましたこと、さらに加えまして、農機具、建物の償却費につきまして税制改正に伴いまして増加したといったことなどが要因となりまして生産農業所得が減少したというふうに見ているところでございます。

○紙智子君 それでは次、Aの枠のところを見てほしいんですけれども、二〇〇九年から二〇一〇年、農業総産出額が下がっているわけですけれども、生産農業所得は約二兆六千億円から約二兆八千億円に増えているんですね。この赤と青が交差しているんですけれども、これはなぜでしょうか。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 二〇〇九年から二〇一〇年にかけての動きでございますけれども、まず、農業総産出額につきましては、かなりのウエートを占めております米につきまして需給事情等から価格が低下したことによりまして減少をしているものでございます。一方で、生産農業所得につきましては、産出額の動きから経費を引くということと加えまして、経常補助金が加えられた額となっておりまして、この年につきましては、経常補助金が増加したことが要因となりまして増加したというふうに見ております。

○紙智子君 じゃ、続いてBの枠なんですけれども、二〇一二年から二〇一四年、あっ、その前に、二〇一〇年からというのは戸別所得補償のモデル事業が始まっているというのもありますよね。それ確認します。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) 平成二十二年から戸別所得補償のモデル事業が始まっております。

○紙智子君 Bの枠ですけれども、二〇一二年から二〇一四年、農業総産出額は約八兆五千億円から八兆三千億円に下がっているんですけれども、生産農業所得も二兆九千五百億円から二兆八千億に下がっているんですけれども、両方下がっているんですけれども、これはどうしてですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 二〇一二年から二〇一四年にかけましては、農業総産出額につきましては、この間もやはり主要な品目であります米につきまして需給事情等から価格が低下したことなどによりまして金額が減少しております。また、生産農業所得につきましては、今申し上げました農業総産出額の動きに加えまして、飼料でありますとか光熱動力などの資材費が価格の上昇により増加したといったことなどがダブルで利きまして減少しているという状況でございます。

○紙智子君 国際相場も、今いろいろな理由を言われたので、相場も影響しているというふうに思うんです。
 それで、こうしてずっと見てきますと、農業総産出額と生産農業所得の関係というのは決して比例しているわけではないと。その理由は様々あるということが今の御答弁の中からも言われたわけですよね。やっぱり国際相場の影響も非常に受けやすいと。
 それから、二〇一五年にかけてはどちらもこれ上がっているんですけれども、やっぱり一番の要因というのは直近の肉牛、子牛の価格が高騰したということが影響したんじゃないかというふうに聞いているわけですね。安倍総理は、攻めの農政の下伸びたんだというふうに言われたんですが、具体的に、これは農水大臣にお聞きするんですけれども、攻めの農政のどういう政策で生産農業所得が上がったんでしょうか。お聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 安倍内閣で農業の成長産業化を推し進めております。所得向上を実現するために様々な施策を打っておるわけでございますが、まず一つは、農地中間管理機構による担い手への農地集積、集約、この促進を図っております。二番目に、米政策の見直しがございます。三番目に、六次産業化や輸出促進がございます。四番目に、青年就農給付金の拡充をやっております。五番目に、日本型直接支払制度の創設などを推進してきているところでございます。
 総理の施政方針演説において言及されました、一つは、四十代以下の新規就農者が二年連続で増加し、統計開始以来最多の二万三千人を超えたということ、第二に、生産農業所得が直近で年間三兆三千億円になり、過去十一年で最も高い水準まで伸びたと、こういった実績を挙げられました。これまでの農政改革における諸施策が総合的にこれが講じられることによりまして、その効果がやや見られることが原因だというように思っております。
 引き続き、こうした農政の下に農業の競争力が更に強化され、農業所得が向上し、かつ若者が夢を持って取り組める農業、そして新規農業者が増えるというようなことに努めてまいりたいというように思っております。

○紙智子君 今いろいろおっしゃったんだけれども、因果関係というか、この政策でどうして、どういうふうに作用して上がってきたのかというところはちょっとよく見えなかったんですけれども、総合的な様々な施策のやった結果としてややそういうのが表れているんじゃないかというお話をされたと思うんですけれども。
 私は、やっぱり新規就農者が増えてきたというのは、新規就農給付金を出して以降、意欲を持てるような政策を行ったことというのがあるんだと思うんですよ。それは必ずしも安倍政権の下でというよりは、二〇一二年の民主党政権の下で出された新規就農給付金制度の導入や戸別所得補償政策による効果の表れということがあるんじゃないのかと、それがずっと効果というか続いてきたんじゃないのかと。それから、生産農業所得も十一年で最も高くなったというんですけれども、これは私は、一番は、直近の子牛の価格高騰というのは大きく影響しているんじゃないかというように思うわけです。
 ですから、攻めの農政の下でというふうに言われると、これはちょっと誇大広告ではないのかなというふうに思うわけですね。それから、米の直接支払をやめる攻めの農政で農業所得が増えるのかということも定かではないというふうに思います。そういうふうにやっぱり見なきゃいけないだろうと。黙って総理の所信表明だけ聞いていると、そうかなというふうに思っている方多いと思うんですけれども、決してそうじゃなくて、やっぱり背景があるということを私たち正確に見ておかなきゃいけないというように思います。
 次に、農業競争力強化プログラムについてお聞きします。
 昨年十一月に規制改革会議は突如として農協改革、生乳改革を柱とする方針を取りまとめて、安倍総理は私が責任を持って実行するというふうに言われました。農業競争力強化プログラムを公表したわけですけれども、当時から批判や不安が出されて、年が明けても農業者の自主性や農協の自主自立の理念を根底から揺るがしかねないというような声が上がっていて、農業者、関係者の不安は収まっていないと思うんですけれども、なぜだと思われますか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 農業者の所得向上は我々の政策目的でございます。そのためには、生産コストの削減、農産物の付加価値の向上、こういったことが重要になってくるわけでございますが、それを農業競争力強化プログラムにおいて幾つか対策を書いていただいておりまして、まずは、生産コストの削減に寄与するものといたしましては、農業生産資材の価格引下げや農産物の流通加工構造の改革を推進すること、次に、農地バンクが借りた農地での土地改良事業の農家負担をなくす土地改良制度の見直しという施策を打つこと、次には、農産物の付加価値向上に寄与するものといたしまして、日本産品のブランディングプロモーションなどを行う新たな輸出サポート機関を創設する戦略的輸出体制の整備を行う、そして、農業経営者が新たな品目などにチャレンジしやすくなるように収入保険制度を導入するというような施策を講じていくことにしております。
 農林水産省としましては、これらの施策を実行に移すことで、夢と希望の持てる農業、未来に挑戦する方々を全力で応援できる体制を取っていきたいというように思っておりまして、農業競争力プログラムについて農業者から大変御不満をいただいておるわけでございますが、不安、不満に対してこうしたメニューを推進することによって払拭できればというように思っております。

○紙智子君 今の答弁は全然聞いたことに答えておられなくて、いろいろ不満だとか不安があるわけだけれども、なぜそういうふうに続いていると。いろいろお話しされてきたんだろうけれども、とどまっていないわけです、ずっと続いているわけですよ。これ、農村を歩けば今でも批判の声が出てくるわけですけど、なぜだと思いますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) このプログラムでございますが、担当局長自らがその内容を分かりやすく説明する動画、これを農林水産省のホームページにアップロードしておったり、あるいは農業者の理解を得られるように現場に行って御説明させていただいたり、あるいは地方農政局の地方参事官などを通じて個別、直接の対応を行っておるわけでございまして、できれば、もう少し御理解いただくべき時間を頂戴して、しっかりとした説明ができた後、この不安、不満、これが解消できるというようなことにしていきたいというように思っております。

○紙智子君 やっぱりちゃんと説明できていないし、分かるようにしていないということが問題だと思うんですよ。分かれば、じゃ、理解して進むのかというと、そうじゃなくて、そもそも無理があるんですよ。
 競争力強化プログラムの二のところには、生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通、加工の業界構造の確立ということが書いてあるんですけれども、その最後のところに、全農は年次計画やそれに含まれる数値目標を公表し、与党及び政府はその進捗状況について定期的にフォローアップを行うというようにあるわけですね。
 なぜ与党がフォローアップするのか、なぜ政府がフォローアップするんでしょうか、自主的なところに対して。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 山口英彰君) 農業競争力強化プログラムの中におきましては、国として実施すべき施策についていろいろな記載をさせていただいているところでございます。国としては、そういったものに責任を持って施策を実施していくということで記載しているところでございますが、一方で、全農を始めとする農業団体の方に対しましても、自主的な取組として、農業者の所得向上のために、また競争力強化のために実施していただきたいことにつきまして書いてございますが、その内容につきましては、これは農業団体とも合意の上、書かせていただいているところでございます。
 また、その施策を進めていく上では、フォローアップ、PDCAによるサイクルで検証していくということが重要でございますので、そういったことにつきましては政府及び、これは与党もこのプログラムの策定に当たってかなり関与していただいたということもございますので、そういった趣旨を記載したというものでございます。

○紙智子君 私は農水大臣に聞いたのに、どうして勝手に立ち上がるんですか。指名していませんよ。
 フォローアップというのは効果を確認するためにその後の進展などを継続的に調査するというふうに言われていますけれども、自主的な組織である全農が決めたことを与党と政府が調整するということになると、まるでこれ管理の下に置こうとするようなものですよ。全くこれ協同組合の自主性に介入するものにほかならないというふうに言わざるを得ません。
 それから、競争力強化法についてお聞きするんですが、新聞報道によりますと、農業競争力支援法の農水省の当初案で、農業者個人の判断まで踏み込んだものじゃないか、あるいは農業者の一人としてばかにされたようだ、あるいは農業者に対して上から目線だと、こういった批判が出されているようなんですけど、これ事実ですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 先ほど野村委員から御指摘がありましたように、そうしたことに対して現場から大変お怒りの声を聞かせていただいておりまして、私どももできるだけこうした誤解のないように進めていきたいというように思っております。
 特に、生産資材における改革につきましては、これは一つは契約ということでございまして、契約内容についての言わば改革、改善のときでございます。契約というのは当事者同士の合意というのが基本でございますので、一方当事者だけが何かして何かなるものではございませんので、合意を中心として考えれば、生産資材を買い取っていただける農家の方々にもまた御努力をいただけないかなと、こういう意味で記載したものだというように理解しておるところでございます。

○紙智子君 いろいろなことが出ているというのはお認めになったと思うんですけれども、更に言えば、農水省は法制局から農業者の努力義務を記載するように指示を受けたと、努力義務は訓示規定だと、罰則は設けないというふうに回答したというんですけど、これ事実なんですか。

○委員長(渡辺猛之君) 山口総括審議官。

○紙智子君 あっ、ちょっと大臣に聞いてもらいたいんですが。

○委員長(渡辺猛之君) いや、指名しました。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 山口英彰君) 本法案におきましては、農業者による農業の競争力の強化の取組を支援することを目的としておりますけれども、農業生産関連事業者に対しましては、良質かつ低廉な農業資材の供給や農産物流通等の合理化を実現するための措置について規定をしているところでございます。
 この関係から、その恩恵を受ける立場でございます農業者自身につきましても、農業の競争力の強化に資する取組を行う必要があると考えまして、これは内閣法制局の審査を受けてその時点の条文を作成したものでございますが、この新聞の報道による条文につきましては、これを国会、検討段階のものでございまして、国会に提出されている法律案とは内容が異なることに御留意いただきたいと思います。

○紙智子君 訓示というのは、上の者が下の者に教えを示すということですよね、意味は。いろいろ議論の末に、農業者の努力という規定についてもこれ法案に残ったわけですよ。営農の自由とかといいながら、農家の自主性ではなくて、これ、上から枠をはめる方向に向かうんじゃないかという疑念を持たざるを得ません。
 農業競争力強化プログラムは日本の農業の在り方を大きく変えてしまいかねない内容だと思います。苦労している農民の声にまともに耳を傾けないで官邸主導で進めるやり方では、到底これはうまくいかないというふうに思います。今、日本の農業に、農政に求められていることは、やはり大規模化とか競争力強化一辺倒をやめて、多様な農業、家族経営が続けられて、農村地域が維持できる農政に転換することだと。そのためにも、価格保障、所得補償で農業の担い手を支えることや、総合農協の解体につながることはやめるべきだと。何より自給率を向上させていく方向にきちっとそれを国政の柱に据えることが大事だというふうに改めて申し上げておきたいと思います。
 最後に、昨日、朝日新聞が諫早湾干拓事業をめぐって、和解協議で開門派説得、農水省が指南と報道しました。和解協議で堤防を開門しない案で決着を目指し、開門を求める漁業者を説得するための想定問答を作っていたというふうに報道されています。
 報道は事実なんでしょうか。農水省は想定問答を作成したのでしょうか。作成したのだったら提出していただきたいと思いますが、この三つ、お答えください、農水大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) まず、そのような報道があったことは承知しております。諫早湾干拓開門問題につきましては複数の訴訟が提起されておりまして、現在、長崎地裁の訴訟指揮の下で和解に向けた関係者の協議が行われているところでございます。このような和解協議の下での漁業団体との交渉に係る内容を申し上げますことは、漁業団体との交渉に支障を及ぼしかねない、あるいは交渉当事者としての相手方の地位を不当に害するおそれもございます。そういった意味で、このことについての問合せについてはお答えし難いところでございます。

○紙智子君 係争中でいろいろ協議に影響を与えかねないんだと、だから答えられないという話なんですけれども、係争中だからといいながら、係争の当事者でない人たちに、漁協などにですね、農水省は想定問答を組合員への説明に使ってほしいというふうに渡しているのに、なぜこれ国会に出せないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 御指摘のとおりでございますけれども、この漁業団体というのは、おっしゃるとおり、訴訟当事者ではございません。けれども、長崎地裁の和解協議の下で国が提案した基金と申しますものは、漁業団体がその管理運営を担うというようにされておりまして、同地裁、裁判所からは、漁業団体に対しても基金の受入れの可否について求意見がなされておるという関係がございます。
 その意味では和解協議に係る重要な関連する者でございますので、コメントを差し控えさせていただければというように思います。

○紙智子君 何か第三者的な物言いをされるんですけれども、これ、直接いろいろやって関係あるところということを問題にしているのではなくて、農水省自身がそのための想定問答を作っていたということが私は非常に問題だし、それに答えられないということ自身が納得できないわけですよ。
 それで、これ二〇一〇年、福岡の高裁判決は開門ということで確定したわけですよ。だから、国はその履行義務を負っているわけですよね。それなのに、国は履行義務を負っているのにもかかわらず開門しない案で想定問答を作成をして、係争当事者でない団体に渡して、新聞報道によると、他言しないでほしいと言ったと報道されているわけですよ。
 これ、農水省自身が元々この問題の混乱の原因をつくり出した当事者なわけです。そういう当事者としての自覚も責任もない発言には私は本当に納得できないし、驚きです。この農水省の行為自体が極めて重大だし、公平性を損なうものだと、そういう行為だと思いませんか。いかがですか。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ておりますので簡潔にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) すぐれてこれは長崎地裁の訴訟指揮の下にありますので、お答えを控えさせていただきます。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ております。

○紙智子君 全く納得できません。納得できませんけれども、是非、資料については、私はその想定問答については資料として提出するように委員長に求めたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 終わります。