<第217回国会 本会議 2025年6月11日>


◇「政治動かすのは国民」与野党超え万雷の拍手/勇退する紙議員、最後の討論/軍拡のあおりを受け、国民の暮らしを守る予算は圧縮されました。その結果である23年度決算は是認できない。

○議長(関口昌一君) これより会議を開きます。
 日程第一 令和五年度一般会計歳入歳出決算、令和五年度特別会計歳入歳出決算、令和五年度国税収納金整理資金受払計算書、令和五年度政府関係機関決算書
 日程第二 令和五年度国有財産増減及び現在額総計算書
 日程第三 令和五年度国有財産無償貸付状況総計算書
 以上三件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。決算委員長片山さつき君。

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○紙智子君 日本共産党を代表して、二〇二三年度決算、二〇二三年度国有財産増減及び現在額総計算書の是認に反対、二〇二三年度国有財産無償貸付状況総計算書の是認に賛成、内閣に対する警告決議に賛成の立場から討論を行います。
 二〇二三年度予算は、安保三文書に基づいて敵基地攻撃能力を保有し、五年間で四十三兆円にも上る大軍拡計画をスタートをさせた予算です。戦争国家づくり元年予算というべきものです。
 この軍拡のあおりも受けて、国民の暮らしを守る予算は圧縮されました。急激に進行した物価高騰に無為無策であるばかりか、消費税減税に背を向けた上に、インボイス導入まで強行しました。農林水産分野でいえば、予算は削減され、深刻な危機に直面した酪農に対し、まともな救済策は講じられませんでした。
 一方で、期待した効果は上がらなかったと認めながら、研究開発減税など大企業優遇税制を続け、一億円の壁の是正など、目玉政策は看板倒れとなりました。GXの名で原発回帰、特定の半導体企業支援などを含め、大企業、富裕層優先の政治が温存されたのです。
 以上の点から、この予算執行の結果である二〇二三年度決算を是認することは到底できません。
 決算審議は、過去の経験、教訓を今後の政治に生かすために行われるものと思います。その点で、私の二十四年間の議員生活において経験した痛切な思いを語ることも無駄ではないと考えます。
 私が初めて参議院に議席を得たのは、二〇〇一年の七月でした。この年、我が国で初めて牛海綿状脳症、BSEにかかった牛が発見されました。農林水産委員会に所属した私は、まず、太田豊秋農林水産委員長に連絡を取り、閉会中審査を求めました。委員長は、新人議員の私の声を受け止めて、実現に動いてくれました。国会というところは、新人の議員の言うことであっても、国民にとって切実なことはこういう形で受け止めて動いていくのかと、改めてその役割の重みを実感いたしました。
 私にとって最後となる今国会でも、大事な経験をしました。二〇二五年度予算に盛り込まれていた高額療養費の負担額の引上げをやめる予算修正を参議院が議決したのです。衆議院から送られてきた予算を参議院が修正し、衆議院も同意して成立すること自体、憲政史上初めてのことですが、それを可能にしたのは、患者さんなど関係者の切実な声を参議院が真摯に受け止めた結果だと思います。国民の声で政治を動かす、国会がそうした役割を果たすことを心から願うものです。
 もう一つ強く記憶に残っているのは、二〇一一年三月十一日の東日本大震災、東京電力福島第一原発の事故です。
 新しくなったばかりの議員会館がぎしぎしと音を立てて揺れ、テレビで大きな津波が太平洋岸に押し寄せ、のみ込んでいく状況に目を奪われました。
 翌朝早く、車で福島県のいわき市に向かいました。小名浜海岸の商店街はシャッターがめくれ上がり、惨たんたる状況でした。そこから内陸部に移動する途中、ラジオで福島第一原発が水素爆発を起こしたというニュースを耳にして、恐怖を感じました。
 この深刻な被害と事故を目の当たりにして、多くの方の考え方が大きく変わった瞬間だったのではないかと思います。
 とりわけ、原発事故は安全神話が崩れ去った瞬間でした。これからは、自分の目で見て、自分の頭で考えて判断し、行動しようと、官邸前に原発再稼働反対の運動が始まり、何万人という規模に広がりました。
 私は、政治は何をすべきなのか、日々考えながら行動しました。政治を動かすのは国民だということも実感いたしました。この流れが底流となって、安保法制反対、戦争する国づくりは許さない行動に発展したのではないでしょうか。
 冒頭、二〇二三年度予算は戦争国家づくり元年予算と指摘しました。
 安倍内閣は、歴代政権が憲法上許されないと言ってきた集団的自衛権の行使を容認し、安保法制が強行されました。まさに、アメリカの戦争に自衛隊が自動的に参戦する仕組みです。
 このとき思い出したのは、父から聞いた戦争体験です。父は二十歳のときに召集令状を受け取り、五年間戦地に赴きました。航空隊の整備士として任務に就いて、いよいよ戦況が激しくなってきたとき、日本から特攻隊の若い兵士が次々とやってきたと言います。みんな二十歳前後、そして前の日の夜に水杯を交わし、翌朝にはどの青年もにっこり笑って敬礼をして飛び立っていく姿を見送った。けれど、誰一人帰ることはなかった。父は、痛ましいことをした、あの若者たちが死なずにいたら、その後の日本にどれだけ役に立っていたかしれない、もう二度とあんな戦争をやってはいけないと思うと繰り返し話していました。
 父は亡くなりましたが、こうした思いが、憲法九条を守れ、安保法制反対の運動につながったんです。四十三兆円もの戦争準備の計画はやめ、平和を準備する外交こそが必要です。憲法九条を生かした平和の外交を強く求めるものです。
 私は、国会に来てから、希望して農林水産委員会に所属してきました。この二十四年間、規制緩和と自由化から日本の食と農を守る闘いの連続でした。
 今、米不足、米価高騰が国民生活を揺るがしている令和の米騒動は、その背景に規制緩和があります。
 二〇〇四年の改正食糧法によって、米の流通が自由化されました。新たに商社や大手小売業が流通業者に参入し、生産者から米を買いたたく状況が生まれました。そのため、店頭から米が消えても、政府は有効な対策が打てませんでした。しかも、改正食糧法は、「米穀の再生産を確保する」との規定を削除し、生産者の経営を安定させる対策もなくしたのです。市場任せから国が責任を持って安定供給を進める農政への大転換が必要です。
 自由化も農政の大きな焦点でした。
 一九八四年、日米諮問委員会は、アメリカから農産物を買うように圧力を掛け、日本の食料安全保障政策は、構造調整を妨げ、真の食料安全保障をも阻害していると報告書を出しました。政府は国際化を掲げ、牛肉・オレンジの自由化を受け入れ、WTO協定を批准し、自由化に突き進みました。
 二〇一〇年代半ばに入ると、安倍政権はTPPやメガFTA協定を締結し、歯止めのない自由化路線を進めました。今も政府の財政審議会は自給率の向上には疑問だと言い、国際分業、国際貿易のメリットを無視していると農政への圧力を掛けています。
 この規制緩和と自由化で、日本の農業はどうなったでしょうか。基幹的農業従事者は二〇〇〇年の二百四十万人から今や約百十一万人に半減し、耕地面積は五十六万ヘクタールも減少し、生産基盤の弱体化が進んでいます。農業で生活できない、後継者がいない、コミュニティーが維持できない、これは各地で共通した思いです。農業、農村を軽んじる国に未来はありません。
 私は、生産者に自己責任を迫る新自由主義的農政から脱却をして、人と環境に優しい農政に転換すべきだと思います。
 私は今期で参議院議員を引退します。
 志高清遠という言葉があります。志を高く、清い心で遠大な理想を持って生きよという意味です。これは、北海道のえりも町で漁業を営む漁師から教わりました。希望を語り、地域の営みが輝く未来をつくるために、皆さんとともにこれからも歩み続けていきたいと思います。
 決意を述べて、最後の討論といたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(関口昌一君) これにて討論は終局いたしました。

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○議長(関口昌一君) 日程第一の令和五年度決算の委員長報告は、本件決算を是認すること及び内閣に対し警告することから成っております。
 これより採決をいたします。
 まず、本件決算を委員長報告のとおり是認することについて採決をいたします。
 本件決算を委員長報告のとおり是認することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(関口昌一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(関口昌一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十四  
  賛成            百四十一  
  反対             九十三  
 よって、本件決算は委員長報告のとおり是認することに決しました。(拍手)
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   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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○議長(関口昌一君) 次に、委員長報告のとおり内閣に対し警告することについて採決をいたします。
 委員長報告のとおり内閣に対し警告することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(関口昌一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(関口昌一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成           二百二十八  
  反対               四  
 よって、委員長報告のとおり内閣に対し警告することに決しました。