◇価格形成法案(食品流通取引法改正案)/農産物の販売によって回収すべき費用は家族労働報酬や減価償却費が含まれ、それが実現しないと農業生産は続かないと主張/農業の収入保険は差し押さえ禁止財産に
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
初めに、米価高騰、米の流通についてお聞きします。
小泉大臣は、米の卸売の大手の営業利益は何と前年比で五〇〇%ぐらいです、そして、ほかの大手卸も営業利益は二五〇%を超えていますというふうに述べられました。
そこで、ちょっと政府参考人にお聞きするんですが、これなぜ五〇〇%とか二五〇%とかということが可能になっているんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農産局長 松尾浩則君) お答えいたします。
先週の衆議院の農林水産委員会で大臣から御発言のあった営業利益が対前年同期比五〇〇%程度の卸売業者、この業者の方の決算の公表資料によりますと、販売単価が前年を大きく上回る水準で推移し、価格転嫁も順調に進んだ結果、売上高、営業利益が増加したと、このように記載されているところでございます。
○紙智子君 なぜそれが可能になったのかと聞いたんですよ。
○政府参考人(農林水産省農産局長 松尾浩則君) 済みません、個別の企業の方々の営業の結果というものになかなか私ども答えづらいんですけれども、ただ、いずれにしても、その販売単価が前年を大きく上回る水準で推移しということでございます。価格が多分上昇したということは事実なんだろうというふうに考えております。
○紙智子君 ちゃんと聞いていることに答えてくださいよね。ちゃんと通告していたんですよ。
要するに、そういうふうに利益が上がったと言うんだけれども、それを上げることができた背景に何があるかと、どういうふうに分析しているのかと聞いたわけですよ。これは既に前の段階で、レクでやり取りしたとき言っていましたよ、二〇〇四年に食糧法の改正によって消費者ニーズを把握するために自由化したと。そういうことでもってこうやって売上げを上げることが可能になったんだということを言われていますけれども、そうですよね。そこをちゃんと答えてください。
○政府参考人(農林水産省農産局長 松尾浩則君) 今の食糧法の下では、卸売業者の方々、小売業者の方々、基本的には自由な経営をなさっているので、その中でこういった結果になっているんだというのは委員御指摘のとおりだと思います。
○紙智子君 ちゃんと最初からそう答えていただきたいんですけれども、言いたいことは、つまり、二〇〇三年に食糧法の改正があったわけですよね。そのときに、米の流通を自由化していいのかどうかということが議論になったと。その規制緩和によって米の卸や生産現場にどういう影響を与えてきたのかというところを、まあ価格が乱高下して、それに伴って関連業者の利益も大きく振幅するような、そういう制度そのものがどうなのかということについて検証していただきたいなということなんですよ。すごい利益がすごく上がったかのように印象が付くんだけど、そうじゃなくて、制度を変えたから利益を上げられるようになったと、自由市場というか、そういう中でなったということなのであって、そこは制度そのものの検証を求めておきたいというように思います。
次に、法案についてなんですけれども、参考人質疑で専門家の新山陽子参考人からも、分かりにくい法案だというように言われていました。今回の法案というのは、価格への政府の関与には手を付けずに農産物の生産コストを食品産業にいかに転嫁するのか、そこが分かりにくい法案なんだろうと思うんです。
そこで、まず提案なんですが、新山参考人の資料にもありましたが、フランスでは、フードチェーンの状況や価格、コストの損益の分析をする専門の機関、食品の価格とマージンに関する観測所というのが設けられていて、専門職業間組織のコストの指標作成のバックデータを提供すると同時に、国会にも品目ごとの流通の全体像が詳細に報告するというふうにされているわけです。
例えばお米の流通について自由化したために、政府がこの間実態を正確につかめなかったというふうに思うんですけれども、フランスのようなこの専門職業間組織をつくることや国会への報告を考えているのかどうか、この点で政府の見通しをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
今委員が言及されました専門職業間組織に相当するものとして、今回はコスト指標の作成団体というものを想定をいたしてございます。この組織の重要性は、きちっと費用などのデータが提供されるということだろうというふうに考えてございます。
なおかつ、このコスト指標というのは、生産段階だけではありませんで、販売までの全てのその段階のデータを取り扱いますので、そういう意味で様々な段階の方々が参画するような団体にしていこうというのがまず一点でございます。それから、二点目といたしまして、その役職員に関しましては守秘義務というものを課して、秘密の漏えいというようなことがないような形に措置をしているというところでございます。
今回は、こういった指標作成団体を大臣の認定に係らしめるということできちっとした運営を図っていこうというふうにしているところでございます。
○紙智子君 これ、Gメンなんかも含めて活動するということになっているんですよね。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
Gメンに関しましては、農林水産省の職員として、様々な方々からこの今回の費用の考慮に関して疑義がある場合の相談窓口の対応ですとか、それから、コスト構造調査の、コスト調査の対応をするということで考えているところでございます。
○紙智子君 お米の生産一つ取っても地域によってコストが千差万別と、そして流通も複雑になっているという状況の中で、やっぱりこのGメンと言われる人たち、取引Gメンが二十人程度というふうに聞いているんだけれども、やっぱりそれで足りるというふうにはなかなか思えないですよね。それで、フランスなんかはもっとたくさん人をそろえてやっているということもありますので、是非その辺の充実を提案しておきたいと思います。
それから、新山参考人が、専門職業間の組織について、我が国の品目ごと、地域ごとに異なる多様なコストの把握のために広範で専門的な組織が必要だということを指摘して、そのための人員と予算が必要だということも説明されていました。
それで、本法案におけるコスト指標作成団体について、どのような組織を想定し、政府として人員や予算を含めてどう支援しようと考えているのか、この想定も含めて教えていただきたいと思います。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
まず、コスト指標作成団体でございますが、生産、製造、加工、流通、販売の各段階の少なくとも複数の段階の事業者、あるいはその事業者団体が参画をする民間の法人を想定をいたしてございます。その役職員に対して秘密保持義務を課すということで想定をしているところでございます。
また、このコスト指標作成団体の業務、これはこれまでにない新しい業務でございますので、まず、農林水産省がこれまで行ってまいりましたコスト実態調査の結果をこのコスト指標作成団体がコスト指標を作成する際に活用可能とするというふうにすることと同時に、このコスト指標作成団体が当初のコスト指標を作成したり、それをどう活用するのかといったような様々な検討や実証を行うための予算、こういうものを今回は措置をいたしてございます。こういう実証を通じて、コスト指標作成団体の人材育成を図っていこうというふうに考えているところでございます。
このコスト指標は、当初策定しただけでは多分なかなか、随時改善を図っていかなければいけないだろうというふうに考えてございます。常時、認定後もフォローアップをしながら、その業務の内容をブラッシュアップしていくことを促進していきたいと考えているところでございます。
○紙智子君 随時フォローアップという話もありますけれども、客観性を担保するために高度で広範な調査が可能な組織が、やっぱり場合によっては地域ごとに必要になるんじゃないかなというふうに思うんです。是非、十分な支援が必要だと思いますので、やっていただきたいと思います。
さらに、新山参考人が提起した問題を続けてお聞きするんですが、先日の質疑で、労働報酬は合理的な費用に含まれるのかというふうに質問したときに、明確に含まれるという答弁がされました。さらに、新山参考人は、労働報酬をどう把握し、どう評価するのかが課題だというふうに指摘しています。この点について、どのように考えているのだろうかと。
それで、家族労働も含めて実態をきちんと把握するのか、コストとしての評価は何を基準とするのでしょうか。大臣にお聞きします。
○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 考慮を求めるべき費用としては、資材費、光熱費、輸送費のほか、今御指摘の労務費も当然含めて考えております。
コスト指標の策定については、現在、関係者の御意見も伺いながら、現場の実態を反映したものとなるように検討を進めている段階でありますが、例えば、家族労働費や雇用労働費のいずれも対象として、雇用労働費は生産費統計等により把握するとともに、家族労働費は厚生労働省の毎月勤労統計等も活用して把握するなど、地域の一般的な農業労働に対する報酬が反映されるように、引き続き協議を進めてまいります。
○紙智子君 やっぱり農業においても、少なくとも最低賃金レベルは保障されるようにすべきだというふうに思います。
それから、また、新山参考人ですが、農機具のコストをどうやって価格に反映させるかを詰めてほしいということを言われていたんですよね。それで、井村参考人からは、農機具がこの二十年余りで二倍から三倍になっていると、その引下げの要望も出されました。一方、農機具メーカーは内部留保を増やしているんですね。これ、米農家が自給十円であえいでいるときに、社名は言いませんけれども、国内大手の農機メーカーは、農機具のメーカーは内部留保をこの五年間で五千九百三十五億二千四百万円積み上げているんです。総額で一兆八千三百二十三億四千八百万円にも達していると。
そこで、お聞きするんですけれども、本法案によって農機具メーカーに対して、この内部留保をため込むんじゃなくて、価格を下げるように求めることはできるんでしょうか、大臣。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) 済みません、法案に関わる御説明ですので、私の方から御説明差し上げます。
この法案につきましては、これまでも御説明しておりますとおり、食料の持続的な供給ということをテーマにいたしてございまして、食料の取引に関してコスト割れを抑止するようにするというものでございます。したがいまして、今御指摘のありましたような、その農機具メーカーに農機具の価格を引き下げるように努力義務を課すというところまでは想定していないところでございます。
○紙智子君 法案上は想定していない、対象になっていないという意味だと思うんだけれども、大臣、やっぱり、実際現場の声としてはすごい切実に上がっていて、(発言する者あり)いうこともありますから、大臣から下げるように、是非ちょっと前向きな答弁お願いしたいと思います。
○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) これは、私が自民党の農林部会長のときに、上月先生とかよく覚えていると思いますけど、私も相当問題意識持ちました。こんなポルシェみたいな価格で、どうやってこれで利益が出るんだと。
実際は、メーカーさんの立場からすると、まず物すごく小ロットだということ。これ、例えばあるメーカーが造っているトラクター、これ六十馬力クラスがあるんですけど、二年半ぐらいで販売最終実績が二千二百十四台というのがあって、そうすると、二年半で二千台ですから、年間で七百台ぐらいですか、こういった小ロットということなど、いろんな要因があるんだとは思います。
ただ、明らかに高過ぎると私も思うんですよね。なので、これは、新規のメーカーの参入とか、より競争が働くような形とか、そしてあとは、私はこれはJAグループにも思うのは、まさにこの農家の皆さんが高いと思っているところに対して、スケールメリットを生かした価格交渉ですよね、こういったことも含めて頑張っていただいて、農家の皆さんが必要としている資材、機材を売るのが仕事じゃなくて、いかに農家の皆さんの手取りが上がる形の価格で販売をするか、そして農家の皆さんが作ったものをいかに付加価値を付けて売るか、こういったことにやっぱり役割を発揮していただきたいと思っております。
○紙智子君 ということは、機械高過ぎるから下げさせるということで、大臣としても促していくということで答えていただいたと思っていいんですか。
○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) これは、下げて、農家の皆さんが必要とする機能はなくなりましたじゃしようがないんで、私は物すごくこれ大事だと思うのは、農家の皆さんにも、何が実際に求める機能で、最小限、で、何が過大な機能なのか、こういったことも含めてやっぱり現場の声をもっと上げていただく必要はあるんだろうと思います。
よく聞くのは、やっぱり買っちゃうケースもあるんですよね、高くても。(発言する者あり)はい。なので、いずれにしても、よく現場の声を届けるための努力はしたいと思います。
○紙智子君 高過ぎるというのは共有していると思うので、是非下げさせるように働きかけていただきたいと思います。委員の皆さんも、もうどこに行ってもそういう声聞いてきていると思うんですよ。もうこの機械駄目になったらもううちは農家やめるという話になっているわけで、やっぱりそこをしっかりと受け止めてやっていくことが必要だと思います。
新山参考人が強調されたのは、農産物の販売によって回収すべき費用というのは家族労働報酬や減価償却費が含まれて、それが実現しなければ農業生産は続かないということです。法の施行に向けて是非具体化するように求めておきたいと思います。
それから、大臣は本会議の答弁で、生産から販売に至る食料システム全体について持続的な供給を図ると説明されました。そこで、農家のコストの転嫁と併せて、川下の取引について質問します。
農家と集荷業者がコスト指標を考慮した価格が形成されたとして、川下での取引において農産物の原材料を割り込むような交渉が行われないようにする必要がありますし、農産物の価格が上昇した場合に、弱い中間業者が上昇分を吸収させられるような実態を避ける必要があると思うんです。新山先生の資料の中に、フランスでは高額の罰金まで法定化されているという説明もありました。
本法案において、農産物の生産コストへの考慮を川下に伝達する措置というのはどのようにとられるのか、参考人、お願いします。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
今回のこの法案は、生産段階と製造段階ですとか、生産段階と卸売の段階、さらには卸売から販売の段階といった各段階ごとに同じルールが適用されるということでございます。したがいまして、費用を考慮した取引が行われるように誠実な協議をするという努力義務が各段階に掛かるということで、根っこからの、生産段階からのコストが販売段階まですべからく通じて行われるというものでございます。
その規制的措置といたしましては、一番重いものとしては勧告、さらに、勧告を受け入れない場合には公表ということが措置として講じられているところでございます。
○紙智子君 中間業者が不当な取引を強いられることがないように、やっぱり調査の体制を充実していただきたいと思います。
話題変えますけれども、お配りした資料を御覧いただきたいと思います。
これ、飲食費の最終消費額がどの産業にどれだけ帰属したかということを示している農水省の農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表です。上から三段目の数字が国内の農林漁業者に帰属した金額の合計で、五段目がこれ国産の農産物を使った加工業などの食品製造業、そして八段目の食品関連流通業ですね、これが小売も含めた川下の産業ということになるわけですけど、これ見ますと、昭和五十五年、一九八〇年に農林漁業者の取り分の金額が十二兆二千七百八十億円だったんですね。それが令和二年、二〇二〇年になると、九兆五千五百七十億円まで目減りしているんですよね。これに対して、食品関連流通業者は、十三兆三千五百九十億円だったのが二十八兆六千百六十億円ということで大幅にこれ帰属額を増大させているんです。
農家の取り分がなぜこんなふうに減少しているのか、これ、どのように分析しているのかをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(農林水産省統計部長 深水秀介君) お答えいたします。
産業連関表に基づきまして作成しております委員御指摘の令和二年農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表におきまして、飲食費の最終消費額を見ますと、同統計の作成を始めました昭和五十五年から令和二年にかけまして、全体は四十九・二兆から七十六・一兆円に増加する中、国内の農林漁業に帰属する額につきましては、委員御指摘のとおり、十二・三兆円から九・六兆円へと減少しているところでございます。
この要因といたしましては、食の多様化によりまして、国産農林水産物の割合が高い食料品からパンや麺類など国産農林水産物の割合が比較的低い食料品へと消費者の嗜好が変化したことなどによりまして、このような結果となっているものと考えております。
○紙智子君 そうすると、やっぱり麦だとか、パンだとか麺だとかとなると小麦を使って、輸入の原材料を使っているのに置き換わってきているのかなというふうにも見えるんですけど、じゃ、今度の法案がこうした状況を改善をさせて農家の取り分を増やす法律になるのかどうか、その点についてはどうでしょうか。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) この法案につきましては、生産段階と製造段階、生産段階と卸売段階という、そういう対立概念ではなくて、生産から販売までをきちっと国民に食料を供給する一つのシステムとして捉えて全体の物事を考えてきているところでございます。
そういう構図の中で、今回の法案につきましては、従来、その費用が、資材価格などが高止まりして、一部の生産段階とか集荷段階ではコスト割れが生じていたというようなこともこの調査の中では確認が取れましたので、このコスト割れを抑止するということで農業者の所得向上に資するような取組を進めていこうということでこの法案を提案しているところでございます。
農業者におかれては、そういった所得向上と併せて生産性向上や付加価値の向上にも積極的に取り組んでいただけるよう、また別途後押しをしていこうと考えているところでございます。
○紙智子君 この表ではっきり見えるのは、長期にわたって農家の取り分が減ってきているという事実ですよね。ずっと経済、六次産業化だとかいろんなことを言われてきたんだけど、結局、生産者のところが常に増えないで減っているという状況が続いてきたわけで、そこを是非今度の法律でもって変えていくというふうにしていただきたいと思うんです。
それで、今後、農家の取り分を増やしていく助けとなるのが、先日、新山参考人が紹介してくださったフランスのエガリム法ですね、エガリム2ですか、で採用されている自動改定条項だと思うんです。この点については、大臣が関係者からの意見として、これ強制的な価格決定方式になるという答弁をされたんですよね。でも、これ新山参考人によると、フランスのこの自動改定方式というのはその都度その都度の交渉なしに生産コストとその変動を価格に反映できるように当事者が自由に採用するものだというふうに思うんです。しかも、このやり方によって改定される価格というのは、考慮されるというふうにはなっているんだけれども、実際の取引価格とはちょっと異なると。
となると、これ強制では全然なくて、むしろ推奨される契約方式なんじゃないかと思うんですけれども、これいかがでしょうか。
○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
今言及のございましたフランスのエガリム法につきましては、御指摘のとおり、その書面契約の義務化というものがございますが、この中に二つ、二通りの考え方が示されてございます。
一つは、価格フォーミュラというもので、生産コストの指標が変わったら、そのうちの何%は反映します、で、ほかの部分は市場価格の指標が別途あって、ここの部分を反映しますといったような形。
さらに、その価格や価格改定のタイミングというものを規定した自動改定方式というものがございます。これは、その価格が、指数が変動いたしましたら即座にその改定をするというようなものでございます。
いずれも全部なのか一定割合なのかという形で改定をされるというようなものと理解をしてございます。
今回のこの法案の方の考え方は、関係者に集まっていただきました協議会の皆様方の中から、やはり価格決定はあくまでも取引当事者間できちっと決めるべきだという御意見が非常に強かったということと、価格が自動的に改定されるようですとその需給は考慮されなくなるおそれがあるという、そこの指摘が非常に強かったというふうに承知をいたしてございます。そのために、この誠実に協議するという努力義務できちっとこれがこの価格であれば売れるのかどうかということも含めて考慮した上でいろいろと調整をして取引条件を決めていきましょうというふうにしたところでございます。強制的な価格決定方式ということは、この協議会の中で出た意見でございました。
○紙智子君 今のお答えでは、協議会の中で出たけれども、強制的ではないよというふうに私は思うんで、是非そういうことを、理解を進めていただきたいと思います。
それと、あと、農産物の価格形成を図るとともに、価格が下落したときのセーフティーネットとして収入保険の役割というのは大きいと思うんです。それで、営農を継続するためのセーフティーネットなんですけれども、どういう場合に補填されるのかということについて説明をお願いします。
○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) お答えいたします。
収入保険は、栽培する品目を問わず、収量減少、価格下落から病気、けがまで、幅広いリスクを対象として経営全体の収入減少を補填する制度でございます。
具体的には、保険期間の収入が基準収入、これ過去五か年の平均収入の九割を下回った場合に、下回った額の最大九割を補填するということになっております。
○紙智子君 そういうことではあるんだけれども、ただ、これ、青色申告の農業者だけなんですよね。だから、いろいろ、これも白色の方たちもいて、対象にならないというのはあるんですよね。それで、収入保険の制度には差押規定というのもあるんでしょうか。あるかないかだけ。
○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) お答えいたします。
農業保険法において、収入保険の加入者に支払われる保険金について差押えを禁じる規定は設けられておりません。
○紙智子君 差押えの規定はないということですよね。
実は、今、社保倒産という言葉があって、社会保険料を滞納した場合に資産が差し押さえられて倒産に至るケースを示す言葉です。
実は、生産者から、この社保倒産になりかねないという相談が寄せられているんですね。生産者は、収入保険があれば、苗代とか農業資材を購入して生産を続ける予定を立てていたと。ところが、その収入保険が差し押さえられたことで資材を購入することができなくなったというんですね。
国税庁に確認したところ、差押財産は、事業に影響が少なく、第三者に影響がないことを踏まえて対応するというふうに言われていると。この社会保険料を納付する意思があるにもかかわらず、十分な相談もなく差押えされたら、これ社保倒産しかねないということなんです。是非大臣から、これ差押えは控えるようにということで働きかけていただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 災害等によって収入減少に苦しんでいる農業者に寄り添う先生のお気持ちは大変理解できるものであります。
社会保険料の徴収については国税徴収の例によることとされており、その国税徴収法では、衣服や食料など生活に最低限必要な財産や、農業関係では農機具や肥料、種子などの事業継続に不可欠な資材の現物については差押えが禁止されているものの、収入保険の保険金については差押えが禁止されていないということであります。
もっとも、運用面においては、やむを得ず差押えを行う場合でも、差し押さえる財産の選択に当たって滞納者の生活の維持又は事業の継続に与える影響等に十分留意して行うなど、個々の事情に照らした対応がなされるものと聞いています。
農林水産省としても、農業者の事業継続等の観点から、社会保険料の徴収に当たっては、農業者個々の事情を踏まえた丁寧な対応を期待したいと思います。
○紙智子君 今の答弁、大事な答弁だったと思うんですね。
やっぱり生産者の営農を補償するためにもこの収入保険の差押えは控えるということ、収入保険を差押禁止財産にするように財務省に働きかけていただくということを改めてお願いをいたしまして、私の質問といたします。
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○委員長(舞立昇治君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(舞立昇治君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、田名部さんから発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代さん。
○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民・無所属、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員寺田静さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
生産資材・原材料価格の高止まりなどの中で、食品等の持続的な供給を実現するためには、持続的な供給に要する費用を考慮した価格形成を促進するとともに、農林漁業者と食品産業との連携強化を始めとする食品産業の持続的な発展に向けた事業活動を促進することが重要である。
よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 肥料・飼料費、人件費、輸送費等の生産・流通コストが上昇する中、我が国の食料システム全体の持続性の確保が図られる食品等の価格形成を実現するため、持続的な供給に要する費用の明確化と取引におけるこれらの費用の考慮について、生産・加工・流通・小売・消費等の食料システムの幅広い関係者の合意形成と理解醸成が図られるよう、必要な取組を推進すること。
二 持続的な供給に要する費用が考慮される価格形成の実現に向けては、消費者も納得する生産性向上や付加価値向上の取組が生産・加工・流通・販売の各段階において不断に重ねられていくことが重要であることを踏まえ、こうした取組の促進のために必要な施策を十分に講じること。
三 指定飲食料品等については、認定指標作成等団体が公表するコスト指標を活用した取引の適正化の必要性等を踏まえ、食料・農業・農村政策審議会等での議論を経て、順次対象品目を定めること。特に、現在食料システムの関係者が一堂に会して協議が進められている米、野菜、飲用牛乳、豆腐・納豆については検討を速やかに進め、対象品目として定めること。
四 持続的な食料供給の実現を図るためには、持続的な供給に要する費用の考慮や納品期限の緩和を始めとする持続的な供給に資する商習慣の見直しを進めることが重要であることから、こうした取組が食料システムの幅広い関係者において実施されるよう、食品等取引実態調査をきめ細かく行い、実態を把握した上で、農林漁業者や食品等事業者に対する指導・助言等を適切に実施すること。
五 国際的な原材料調達競争の激化に対応する国内農林漁業者と食品産業との間の安定的な取引関係の確立、環境負荷の軽減等の食品等事業者による持続的な食料供給の実現に向けた取組が促進されるよう、本法に基づく計画認定制度について、関係者への制度の周知などを積極的に進め、十分に活用されるよう努めること。
六 持続的な供給に要する費用の考慮や商習慣の見直しには、消費者の理解が必要不可欠となることから、本法で措置されている食品等事業者による消費者選択支援事業活動や、国による普及啓発活動等の実施などを通じ、官民一体で消費者の理解醸成に努めること。
七 食品等取引実態調査や、事業者からの相談窓口での対応等を確実に進めるために必要となる地方農政局を含む国の組織・人員体制の整備、強化を図るとともに、公正取引委員会、中小企業庁等との連携を密にし、関係省庁一体となって本法に基づく措置等の適正な執行を図ること。
八 食品等の価格上昇の影響をより大きく受ける生活困窮者や子ども食堂等に対する支援については、必要な食料が円滑に入手できるよう、関係省庁が密接に連携して取り組むこと。
九 カーボンプライシングの本格導入に当たり、農業、漁業及び食品産業への影響を注視するとともに、関係省庁が密接に連携して適切な措置を講じること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(舞立昇治君) ただいま田名部さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(舞立昇治君) 全会一致と認めます。よって、田名部さん提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。