<第217回国会 農林水産委員会 2025年6月5日>


◇価格形成法案(食品流通取引法改正案)参考人質疑

参考人 公益社団法人日本農業法人協会副会長理事・アジア農業株式会社代表取締役・株式会社金沢大地代表取締役井村辰二郎君
    北海道大学大学院農学研究院教授坂爪浩史君
    京都大学名誉教授新山陽子さん

    ─────────────

○参考人(井村辰二郎君) 公益社団法人日本農業法人協会の井村と申します。
 本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、石川県金沢市周辺と奥能登の八つの市町で広域に有機農業、環境保全型農業を営んでおります。
 石川県農業法人協会会長も拝命しておりまして、昨年一月の能登地震、九月の豪雨災害、二回の激甚災害から仲間とともに農業復興を目指しております。国や全国の自治体からは、その際、多大な支援をいただき、本当に感謝申し上げます。
 しかしながら、四月に石川県発表の今年度の水稲作付け予想面積は、震災年の昨年より更に百ヘクタール減る千七百ヘクタールの作付けの見込みとなっております。つまり、震災前の二千八百ヘクタールから千百ヘクタール減る見込みとなっております。思ったような農業の復興復旧は進んでおりません。是非、今後も引き続き御支援賜りますよう、この場を借りて皆様にお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。
 さて、公益社団法人日本農業法人協会は、我が国農業経営体の先駆者たる全国約二千百社の農業法人などを会員とする団体であり、一九九九年の設立以来、都道府県農業法人協会組織を始め関係各位と連携し、農業法人の経営確立、発展のための提案、提言、情報提供等の活動を行っております。
 また、私自身も農業者であり、株式会社金沢大地、アジア農業株式会社の代表取締役として、千年産業を目指してという経営理念と、石川県で環境保全型農業を営んでおります。加えて、日本農業法人協会の副会長として、政策提言委員長を拝命しており、適正な価格形成に関する協議会のメンバーとして、食料システム法案の検討に参画してまいりました。
 本日は、農業者側として、農業現場の課題も踏まえながらお話をさせていただこうと思います。
 法人協会の把握する課題と法案の内容です。
 日本農業法人協会では、会員を対象に毎年調査を実施し、農業法人白書として取りまとめております。二〇二四年の農業法人白書では、現在抱えている経営課題は、資材コストが五九・一%と最多となっているほか、経営リスクについても、生産コストの上昇が七五・七%と第一位となっており、これらのコストを価格に転嫁していくことが経営の課題となっております。
 また、二〇二二年には、農業生産現場におけるコスト高騰による農業経営への影響を把握するため、生産者である会員に対し、農業におけるコスト高騰緊急アンケートを行っております。その調査の結果、日頃のコミュニケーションによって価格転嫁できている会員もいる一方で、八八・九%の会員はコスト上昇分を一〇〇%転嫁できていないと回答しています。転嫁できていない会員からは、転嫁できない理由として、交渉を求めましたがその交渉すら受けてもらえなかった、あるいは、交渉したが一方的に断られた、実需サイドのバイイングパワーが強いと感じるなど、様々な意見が寄せられています。
 適正な価格の形成についての会員企業から具体的な声としては、例えば、低価格の取引を要望する量販店を含む小売店が、取引条件に応じなければ取引を中止すると言われるなど、量販店を始め小売店の都合による値下げ要請により値上げ交渉が困難だったという声です。
 また、単に価格の交渉に限らず、不合理な商習慣を押し付けられているという声もございます。例えば、野菜を生産しているある農業法人は、店舗展開、物流センターを構える小売店に野菜を販売しているところ、小売店は物流センターへの一括納入による保管、仕分、配送のコストの抑制を理由に納入者、生産者がセンターフィーを負担することを条件としているといったことがありました。本来、センターフィーは生産者と小売店が折半するべきところ、立場の弱い農業者に、この取引条件をのまざるを得なかったようです。
 食料システム法案では、コストなどの取引条件を示して協議の申出があった場合には誠実に協議をする、不合理な商習慣の改善など持続的な供給に資する取組の提案があった場合には検討、協力することが事業者の努力義務として定められています。その上で、必要な場合には農林水産大臣による指導、助言や、勧告、公表することとされています。売手である農業者は取引の交渉において長らく弱い立場におりました。この法案は、農業者が食料を安定的に国民に供給するためにも必要なものであり、大変画期的なものだと考えております。
 また、アンケート調査においては、交渉するに当たり自分たちが客観的な数字やエビデンスを用意できなかったという反省の声もあります。これについては、我々農業者も、自ら農業生産に要するコストを把握しなければならないと考えております。農業者側も、生産だけではよいという時代ではないことを認識して、販売先と対等な立場で交渉し、計画的な生産、販売をしていかなければなりません。コストの把握は、世界で戦える農業経営のためにも必要なことであると考えております。
 食料システム法案では、認定団体がコスト指標を作成することとなっており、これにより、農業者は自らのコストを把握しつつ、コスト指標を活用しながら農産物の販売に取り組んでいけると考えております。法案の運用に当たっては、コスト指標が農業者にとっても分かりやすく、活用しやすいものとなることを期待しています。
 我々農業者が持続可能な生産を続けるためには再生産できる価格となることが必要です。私たちは、たくさんの従業員を抱えていることから、持続可能な経営を通じて、従業員の賃上げもしながら、適正な価格で消費者の皆様に食料を提供したいと決意しております。
 適正な価格での供給を進めるためには消費者の御理解も重要です。日本農業法人協会では、農業団体、外食団体及び大学などとの連携の下、国民や子供たちに農業の魅力と大切さを発信するための体験型イベント、ファーマーズ&キッズフェスタを主催し、継続的に食農、食育活動に取り組んでおります。
 政府におかれましては、法律の運用と併せて、国内の食料生産の拡大の重要性を広く国民に周知し、理解してもらい、国産農畜産物を自発的かつ積極的に選択、消費してもらえるための取組に努力いただきたいと考えております。
 計画制度です。
 先ほど御紹介しましたとおり、私は石川県で環境保全農業を営んでおります。持続可能性があって生物多様性にも資するような農業がしたく、農業は千年後も持続する産業でなければならないという理念を持って取り組んでおります。
 食料システム法案の正式名称には、食品などの持続可能な供給を実現するためという文字が入っております。持続可能な食料システムを構築するには環境保全の取組などを進めていかなければなりませんが、それは、生産者のみではなく、消費者につながる形で取り組む必要があります。
 この法案は大きく二つの柱となっており、先ほどお話しした取引の適正化のほかに、食品等の持続的な供給や提供を実現するための食品産業の事業活動への支援も盛り込まれております。私自身も食品産業としての面も持っております。具体的には、農業者との連携など安定的な取引確立、経費の削減など流通の合理化、温室効果ガスの削減など環境負荷低減、持続可能な食品などの消費者への情報伝達の四つとなっています。
 消費者への持続的な食料の供給を進めていくには、生産者のみではなく、間に入っていただく加工、製造、流通、小売が持続的な食料を供給するという共通の目的の下、一体となって取り組んでいくことが必要です。このため、食品産業の皆様に向けた支援策は食料システムの一員である農業者としても重要なものであると考えております。生産者サイドも、実需、食品産業と手を取りながら、食料の持続的な供給に取り組んでまいりたいと考えています。
 最後に、農林水産省の資料によると、趨勢ベースでは農業経営体が二〇二〇年の百八万経営体から二〇三〇年には五十四万体まで半減し、経営規模の拡大がない場合では二〇二〇年と比べて約三割の農地が利用されなくなるおそれがあるとの予測が示されております。我が国農業は、担い手の確保や農地の持続において存在の危機にあると私自身認識しております。食料システム法案は、我が国農業を一層発展させ、農業が若者の将来就きたい職業の第一位となるような、そうなるためには必要なものであると考えております。
 以上、簡単ではございますが、私からの意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございます。

○委員長(舞立昇治君) ありがとうございました。
 次に、坂爪参考人、お願いいたします。坂爪参考人。

○参考人(坂爪浩史君) 北海道大学大学院農学研究院の坂爪と申します。本日はよろしくお願いします。
 このような機会を設けていただきまして、大変光栄に存じます。
 私の資料は四ページ物になっておりますけれども、タイトル「説明資料」とありますが、内容的には価格変動と需給調整ということをめぐるお話をさせていただきまして、直接法案についてどうこうということでないものになっておりますので、あらかじめ御了解いただきたいと思います。
 一つ目は、農産物価格、今問題になっております高騰の二つの要因ということを改めて確認させていただきたいと思います。
 一つは、中長期の要因でありまして、先ほど井村様からもありましたように、生産コストの継続的な上昇というのがあって、これによって今の価格が高騰している面があります。令和の米騒動と今言われておりますけれども、この米騒動というのは非常に混乱しているわけですけれども、スーパーの店頭などでの値頃感という、まあ私はこれもガラスの天井の一種だというふうに思っておりますけれども、これを壊すというプラスの効果はあったんではないかというふうに考えております。
 二つ目のもう一つの要因は短期的な要因で、言うまでもなく需要に対する供給の不足というものでございます。保存の利かない野菜の場合には、全国の産地リレーによって安定供給が図られているわけですけれども、これが異常気象でこのリレーのスケジュールが狂いますと、過剰になったり不足になったりということで価格の変動というのが大きくなるということです。
 二点目は、二点目に申し上げたいのは、法案の中にもございますけれども、この持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した、あるいは反映した価格というのが私は難しいんじゃないかということで常々思っているものですから、それを幾つかの点について整理をしてまいりました。
 二ページ目を御覧ください。
 これは、かつて日本経済新聞に載せさせていただいた図を若干アップデートしたものです。品目示しておりませんけれども、この冬から春にかけて高騰が問題になった野菜五品目と、家計購入の方では米の方もデータがありますのでプロットをしております。
 ここで明らかなのは、高騰しても購入量はそれほど落ちていないということであります。このa、家計購入というのの右側のグラフは、縦横の比率をそろえたものです。数量が一〇〇、価格が一〇〇というところが起点になるわけですけれども、いろいろな野菜が価格が倍になった、二・五倍になったということがございましたけれども、それでも購入量はそんなに減っていない、つまり倍になったら半分に減るかというと減っておりません。御案内のように、米はこの右側にそれているのが二つ、大きくそれているのが米ですけれども、価格が上がって消費量、購入量は増えております。
 このような消費の特徴から、次のb、これは卸売市場での野菜の価格を見たものですけれども、これも出荷量と価格の変化を、二〇二五年の二月、これはその前の年の二月と比べておりますけれども、一年前と比べて出荷量は二割しか減っていないのに二倍以上に価格が高騰しているということがここで御覧いただけるかと思います。
 野菜は御案内のとおり今価格が落ち着いておりますのでそれほど今は問題になっていないかもしれませんけれども、このように、購入量から考えると、価格が幾ら上がってもそれほど購入量が変わらないという特徴があります。そうしますと、供給から考えていった場合には、ほんの少しの供給量の変化が大きな価格変動をもたらすという、これが、石破総理も委員会等でも国会等でも度々言っております需要の価格弾力性が低いという、そのことになるわけです。
 つまり、僅かな生産量の増減で価格が大きく上下するということでイメージの絵を描いてみたのが図表の三ということになるわけですけれども、この揺れ動く中心線というのは当然あるわけですけれども、これは言うまでもなく再生産価格ということになります。市場価格が再生産価格を上回れば、利益が取れるということで生産が増えます。生産がどんどん増えますと、供給が過剰になって価格が落ちる。再生産価格を下回れば、これでは経営がやっていけないということで生産が縮小しまして、価格がまた上昇に転じていくという、改めて説明するまでもありませんけれども、このようになっているわけです。
 適正価格の議論というところに関して申し上げたいのは、この適正価格というのが、日々の、あるいは年次の価格変動の中で市場価格がこの適正価格と一致するのは一瞬だということです。
 続いて三ページの方に入りたいと思いますけれども、次に申し上げたいのは、契約栽培のパラドックスというテーマです。
 再生産価格というのを実現するためには契約栽培を推進するという、これはあり得る選択かと思っておりますけれども、私は楽観できないというふうに思っております。
 この図表四のa、bは、生協産直、個配の、昔、共同購入と言っていたものの例を示しておるわけですけれども、大体、生協と産地で価格決めるのは八週前ということで、大体三か月前です。作ってみると豊作だったり不作だったりするわけですが、豊作だった場合には、全体に供給量が増えますので市場の価格が下がる、そうしますと小売の価格も下がる。そうしますと生協のカタログ価格が相対的に高くなりますので、生協への注文は減ります。減った注文がどういう産地に行くかというと、豊作の産地に参ります。産地では注文を非常に待っているわけですけど、全然来ないということになります。
 逆はもっと大変でありまして、実際やってみて不作だったときには、市場の価格が上がり、スーパーの店頭価格が上がる。そうすると、小売、生協のカタログ価格というのが割に安いよねという話になりまして、生協への注文が増加します。その増えた注文は不作の産地に行くということです。
 上の豊作のときの注文量を一としたときに不作のときどのくらい来るかって愛谷町の農協の人に聞いたことがありますけど、六倍ということを言っていました。逆逆に行くということです。
 これは、不公正な取引のように見えますけれども、実はこの引き金を引いているのは消費者だということです。スーパーと産地の間ではスーパーがこういうことをやるということであるかもしれませんけど、産直の場合には生協組合員が引き金引いちゃっているということですけれども、これはもうやむを得ないという、こういうことが常に起こるということを考えておく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
 三点目、安値のときだけ使えるかというのが私の心配であります。
 卸売市場における価格形成への再生産価格の適用は、価格下落局面では生産者に当然メリットはあることだと思いますけれども、現在のように価格上昇局面において、買手の方から再生産価格での取引はできないのかというふうに言われる可能性はないのかということが私はちょっと心配であります。法案の理解不足かもしれませんけど、それはお許しください。
 四ページ目、もう最後のページになりますけれども、そもそも再生産価格というのは収量によって変わるということを改めて私は認識する必要があると思います。
 合理的な費用を考慮した価格というのは、当然、面積当たりの収量で面積当たりの合理的な費用を割ったものということになるわけです。これが単価ということになるわけですけれども、これから行われます指定品目ごと、産地ごとの単収の正確な把握はできるんだろうかということが私はちょっと心配なところであります。
 米は一年一作ですから、まあ何とかなるかなというふうに思います。今までの食糧事務所の経験等もございますでしょうからいいと思うんですけど、野菜はどんどん産地が入れ替わっていきますので、会議をやっている間にその産地の出荷は終わっちゃうという問題はないのかということです。
 以上が、適正価格というか、私は再生産価格という言葉を使っておりますけれども、いろんな観点で実用が難しいんじゃないかなというふうにちょっと思ったということを説明させていただきました。
 最後に、求められる政策の考え方、こういう発言を私に求められているかどうかは微妙ですけれども、私なりに考えてみたことを今から説明をさせていただきます。
 冒頭に申し上げたいのは、やはり、書いてはございませんけれども、やはり需要の価格弾力性の低さということをもう一度考えてみる必要がある。石破総理も、今、高値の説明に、需要の価格弾力性が低いのでぱあんって価格が上がるんだという答弁をされていると思いますけれども、逆も考えておかなきゃいけないということです。適正な流通量を少しでも上回れば、価格は簡単に大幅に下落します。
 ですから、私が大事だと思っているのはこの一点であります。生産基盤が脆弱化していて、生産の復元力が落ちているということです。一旦生産が縮小しますと、価格が上昇しても生産はなかなか戻り切らないと。今、井村さんの話もございましたけれども。昔であれば、インターバル走のように、走って休んで走って休んでというのをずっと続けられたんですけれども、今、全速力で走って休憩してまた全速力で走れるかというと、走れない産地が非常に増えているということであります。
 ですから、私が言いたいのは、供給過剰、価格下落局面でも対策をちゃんとやってほしいということです。このときにはもう国会議員の皆さんも消費者も皆もう忘れちゃっているかもしれませんけど、そのときの対策が私は鍵になるんじゃないかというふうに思っております。豊作貧乏的な状況の緩和、そのための、まあ私も具体的にどういう政策があり得るかということは知りませんけれども、いろんな経済的なフォローというのを生産現場に対してやっていただきたいというふうに思っております。農産物の供給過剰というのを異常と思わずに受け入れて、まあ価格支持というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、こういったところへの予算投入というのを許容していくという必要があるというふうに考えております。
 再生産価格は民間の自助努力で頑張ってくださいというのではなくて、政府の直接的な関与によって実現するべきであるというふうに思います。例えば、収入保険の算定というのは今、過去の収入を基準にして計算されていると思いますけれども、これを合理的な費用に基づいたものに変えていただくという、こういったことだけでも大分変わってくるんじゃないかなというふうに思います。これが一点目です。
 二点目。改めて、米は依然として特別な食料品だったということです。米は不可欠な食料品であるという国民的なコンセンサス、これだけ人口が減って米の消費も減ってきていますよっていっても、やっぱり米は別物であるということが我々消費者も含めて改めて認識した、しているというのが今の米騒動の現状だと思います。
 ですから、国のより積極的な関与が求められていると思います。現に、様々な努力を行われていると思いますけれども、これは市場メカニズムにのっとったものではないという、それをいろいろ政府がやっているときに我々消費者は一定これを受け入れているという、これは忘れてはいけないことだと思います。
 先ほども申し上げましたけれども、供給過剰、価格低落というの、必ずこれから来ます。私はもうこの春に来ると思っていましたけど、まあ来ていないですが、この秋に来ないという保証は全然ございません。価格低落時において再生産価格での政府の買入れとか、あるいは今もうすっからかんになりつつある備蓄の積み増しとか、こういったことをきちんとやっていただきたいと思っております。
 皆様もう平成の米騒動御記憶にある年代の方々だけだと思いますけれども、平成の米騒動のときは、食管法にとどめを刺したというのが平成の米騒動だったとすれば、私は、令和の米騒動というのは食糧法に大転換を迫るものではないかというふうに、あるいは迫るべきものではないかというふうに考えております。それは、言ってみれば適切な国家管理の、あるいは国家の関与の復活という方向性であって、間違っても生産調整の枠組みの撤廃じゃないというふうに私は考えております。
 以上です。ありがとうございました。

○委員長(舞立昇治君) ありがとうございました。
 次に、新山参考人、お願いいたします。新山参考人。

○参考人(新山陽子君) それでは、話しさせていただきます。
 ちょっと資料見ていただくと、かなり枚数が多いので十五分で終えられるかどうか分からないんですけれども、よろしくお願いします。
 お話ししたいことは、基本法が改正されて、それに基づいて今度のその流通の合理化、取引の適正化に関する法律が作られました。作られましたが、この法律の内容が読んでも非常に分かりにくいんですね、何がどうなるのか。
 それで、その法律だけではなくて、私たち、二二年の九月に、農水省の当時総括審議官だった杉中さんと一緒にフランスにエガリム2法のヒアリングに行ってきましたので、それと対比させる形で今日ちょっとお話しさせていただきたいと思います。そして、最後に日本の課題をまとめたいと思います。
 では、よろしくお願いします。
 まず最初に、令和五年の五月に基本法の検証部会で中間取りまとめが出されました。これはまだ分かりやすかったと思うんですね。国民一人一人の食料安全保障を確立するということが書かれて、そのために、全ての国民が健康的な食生活を送るための食品アクセスを改善するということですね。ただし、ここの説明文が、最初の議論はそうじゃなかったんですけれども、でき上がったものを見ると、ここに書いてあるように、買物困難者とか経済的理由による入手困難者のみの記載になっています。それからさらに、Cとして、適正な価格形成に向けた仕組みの構築が書かれています。
 これに基づいて基本法が改正されたんですが、この基本法改正はもっと分かりにくくなっています。次のページお願いしたいんですが、まず、第一章総則、食料安全保障の確保ですが、この第二条五に合理的な価格形成が書かれているんですけれども、これ、当初は適正な価格形成だったのが、ここで合理的な価格形成に表現が変わっています。じゃ、合理的なとは何かということ、これも説明がないので、ここでも分からなくなってしまいます。持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにという説明しかありません。
 それから、第二章の第二節で食料安全保障の確保に関する施策が書かれていますが、それの第十九条が食料の円滑な入手の確保になっています。ここで、国は、地方公共団体、それから食品産業の事業者などと連携して、食料の円滑な入手が可能になるようにするになっているんですけれども、何をするかというところを見ると、食料の輸送手段の確保、食料の寄附が円滑に行われるための環境整備というふうに、非常に狭い取組になってしまっています。
 さらに、二十三条に持続的な供給に要する費用の考慮がありますが、ここで、食料の価格形成に当たり、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要に対する理解の増進、合理的な費用の明確化の促進となっていまして、ここも合理的な費用となっていて、合理的な費用って何なのかということが非常に分かりにくい表現になっています。
 それに基づいて、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律、卸売市場法の改正がされたところですが、これは、その次の八ページ御覧いただくと書いていますように、これもう本当に不透明なところが多い状態です。衆議院では可決されて、今参議院で審議入りをしていますけれども、不透明なところが多いです。
 まず、法律の名称が変更されていますけれども、流通の合理化から持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進になっていますが、ここで食品等事業者が誰を指すかが非常に分かりにくい。後でも改めて言いますが。
 改正の柱が、売手と買手に価格交渉に誠実に臨む努力義務を課す、それから、生産コストの価格の反映のために、農家が価格交渉の参考にするコスト指標の作成を盛り込んでいますが、いずれもが不透明です。
 コスト指標の作成については、これ五月三十一日付けの日本農業新聞の報道ですが、米、野菜、飲用牛乳、豆腐・納豆と書かれています。できるのかですね。
 続いて、第二章、これ、第五条から第三十二条ですが、持続的な供給を実現するための事業活動促進のための措置になっていますが、ここで、その流通の合理化から持続的な供給の実現のための措置、そして流通合理化計画から安定取引関係確立事業活動計画に修正されているのはいいんですけれども、計画は共同で作成するとなって、農林漁業者も含まれる。内容の改訂については、かなりの条文が新設されていますけど、何をもって安定取引か、流通合理化か、消費者の選択支援かが法文では全く不明です。
 続いて、第三章ですけれども、ここで、取引の適正化のための措置が新設されています、三十三条から五十三条までですが。ここの基本方針、第一節第二項ですが、これも具体的に分かりにくく、第三項で飲食料品等事業者が書かれていまして、ここに農林漁業者が入っています。
 それから、第二節で取引の実態調査になっていますが、ここで取引の状況とか協議の状況などの調査を行うとなっていて、中央卸売市場、地方卸売市場の開設者もそれに協力するとなっていますけれども、これもどうその調査をするのかということがこの法律の段階では明確でありません。
 そして、続いて第三節、適正化に関する措置ですけれども、これ、飲食料品等事業者が講ずべき措置になっていますけれども、後でフランスの説明しますけれども、農業者がどういう措置を講ずるかについて明確な規定がありません。書かれているのは、相手方から供給に要する費用などについて協議の申入れがされた場合、また取組の提案がされた場合に、必要な検討、協力を行うように努めなければならないとしか書かれていません。
 そして、続いて第二款ですが、ここで指定飲食品等に関わる措置が設けられていますけれども、これは、品質が低下しやすいもの、生活必需品のもの、これについては十分な協議が行われずに取引条件が決定されやすく、持続的な供給のための費用が認識しにくいものだと、それについては政令で指定することができると書かれていますが、具体的なことがこれだけでは分かりません。
 また、同じくこの条項において認定指標作成団体を設けることとなっていますけれども、これについても一体それはどういう団体なのかということがこれ以上明確に書かれていないということがあります。
 さらに、五十三条で、国民の理解を深め、実施に協力を求めるよう努めるとされましたけれども、これもこれ以上詳しくは書かれていないので、何をするかが分からない状態です。
 そして、その次、卸売市場法の一部改正ですが、ここも全く同じで、開設者は農林水産省令で定めるところにより、次の事項を公表することとなっていて、これについても具体的に何をどうするかが分からない書き方になっています。
 法律については、以上、分からないことだらけということです。
 じゃ、これ、実はフランスの調査に行っているので、それを参考にしてこういうふうに一歩踏み出されたんですが、じゃ、フランスはどうしているのかというと、フランスの場合はもっと具体的で分かりやすいんですね。それを、ちょっと簡潔ですが、次、説明します。
 十六ページを見ていただきたいんですが、まずフランスでは、二〇一七年に食料全体会議がされて、それに基づいて二〇一八年十月にエガリム法が制定されました。ところが、ここでは、競争法への抵触するということで書面契約が義務とされなかったので、これ効果が出なかったんですね。
 それで、これ多分、フランスからEUに働きかけたんだと思いますけれども、欧州農産物市場共通組織規則、CMO規則が改正されて、改正されることになったので、ここに指標は生産コストに基づいてもよいと書き入れられましたから、それで二一年十月にエガリム2法が制定されて、ここに書面契約の義務化、生産費指標の考慮の義務化が書き込まれたということがあります。
 その内容を少し見てみたいと思います。
 次の十七ページに全体の仕組みを図示しています。これ、後で御覧ください。
 まず一番最初に、農業者とその次の小売業者や加工業者との取引がされますが、そこで書面契約が義務化されました。何を書き込むかなんですが、それが十八ページに書かれていますが、まず、生産コスト指標を含む価格の自動改定条項を契約書に記載するということが書き入れられ、契約期間を三年以上とするというふうにされています。
 ここでフォーミュラという言葉が出てきているんですが、これ、法律の文章だけではフォーミュラというのが何で、どういうことを書き入れたら自動改定ができるのかが分からなかったんですね。
 それで、フォーミュラというのがどういうものかということをフランスに調査に行って聞きました。その結果、どこでも同じ答えが返ってきましたが、生産コスト指標掛ける係数、公表市場価格指標掛ける係数のような、これ足した値決めの式です。それに公的ラベルなどの特別な品目の場合は、これに更に割増しを加えることができるというようなものですね。例えばというのでそこオレンジ色で網掛けしていますが、価格=平均生産費×〇・七+市場価格×〇・三+ラベル製品加算のような、こういう式になります。
 ただ、生産コスト指標の使用については、競争法への抵触を避けるために非常に慎重な対処がなされていて、あくまで考慮することを義務化するというふうにしか書かれていません。じゃ、どの程度考慮するかということは、これ当事者同士の交渉で決まるので、当事者以外は知ることができない。なので、係数は実際には〇・七になる場合もあれば、〇・三、〇・二にしかならない場合もあるというふうに説明されました。
 さらに、交渉の際に、農業者は認定生産者組織ですね、ここに委託して契約枠になる枠組み協定を結ぶことができるとされています。なぜこういうことがされたのかというと、欧州では、農業協同組合には、販売、農業者から販売されることが多くて、委託販売の組織として認定生産者組織を設けることが必要になって、そこがまず枠組み協定を結ぶということがされるようになりました。よろしいでしょうか。
 それで、次のページですけれども、その生産コスト指標の作成と公表なんですが、これをフランスの場合には、専門職業間組織、オーガニゼーションズインタープロフェッショナルズという組織が行うんですが、それでも慎重を期して、インターベブ、インターフェルでは、競争法を考慮して、より慎重を期して傘下の技術研究機関が公表、作成し公表するようになっています。
 それから、次のページに行っていただいてよろしいでしょうか。
 専門職業間組織ですが、これ説明省略しますけれども、専門職業間組織という、専門職業組織がこの生産段階、加工段階、それぞれつくられているんですが、それを横につないだ組織になります。それが品目ごとに一つが認定されるというものです。詳しくは後でここお読みください。
 それから、続いて食品加工業者とその購入者との取引になりますが、ここでは加工業者が交渉の出発点となる一般販売条件書、CGVというものを提示して、それを交わすことになっています。さらに、それに基づいて契約書に自動改定条項を含むことを担っています。この一般販売条件書の中に、食品に占める農産物原料の比率とか、農産物を五〇%以上使用した原材料の比率を示すことになっていて、その部分は交渉できないということになっています。
 じゃ、効果はどうだったかということですが、生乳や牛肉については政令による迅速実施がかなり早くにされました。ただ、政令で適用除外された品目も多く、生鮮果実、野菜、それから穀物などでは、価格変動が激しいとかシカゴ相場など国際相場を利用するということがされるので、これ適用除外になっています。ただ、またさらに卸売市場も、フランスの場合はその場での相対取引になるので適用除外になっています。
 以上がフランスの例になります。

○委員長(舞立昇治君) 新山参考人、済みません。目安の時間が参ってきましたので、そろそろまとめに入っていただければと思います。

○参考人(新山陽子君) はい。
 そうですね、済みません。そうしたら、日本についてですが、これはもうちょっと省略させていただくということでよろしいでしょうか。
 最後に、一番最初の二十三ページを御覧いただきたいんですが、日本では、農業者が組織をつくって、販売の荷口を大きくして、組織として交渉するというのは独占禁止法の適用除外にされています。農協の共同販売がこれに当たります。フランスの認定生産者組織による枠組み協定はこれに近いんですが、日本では個別契約は結ばず共同計算するので、フランスの制度とは異なります。
 それから、日本でも生乳ではかつてフォーミュラが提示されましたが、これ機能しなかった。ただし、指標の一つである再生産コストは変化率が算定されて、現在、指定生乳団体の交渉に使われています。
 それから、日本とフランスの違いなんですけれども、日本は、農地とか農業の特徴、価格形成への考慮で、御承知のとおり、日本は非常に列島全体が山がちで、平地、山間地など立地条件がかなり異なります。これも生産コストに非常に差が出やすい。同じ産地でも農業の経営規模にかなり差があります。この点、なだらかな土地が多いヨーロッパ大陸、フランスもそのヨーロッパ大陸の一部ですが、非常に異なります。なので、価格形成に当たって、この地形や経営規模の違いをどう考慮するかが日本の大きな課題になるものと思われます。
 以上で報告を終わります。
 どうも御清聴ありがとうございました。

    ─────────────

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の皆さん、本当に今日は、どの方も遠いところから来てくださいまして、ありがとうございます。そして、すごく深められる議論されていただいて、ありがとうございます。
 最初に、井村参考人からお聞きしたいんですけれども、能登半島でいうと、二度も災害に見舞われて、農業も甚大な被害を受けられたということでは、そういう中から本当に大変な思いをしながら今頑張っておられるんだろうなと思います。
 それで、お聞きするんですけれども、この前もっていただいている中にもあるんですけれども、やっぱり、被害でもって農機具なんかも相当ダメージを受けたということなんかもあって、これ、掛かるコストというのは、復旧にとってもすごい大変なことなんですけど、この価格転嫁ということを考える上でも、これってポイントになるんじゃないのかなと。
 今の最近の農機具というのは余りにも高いという声があって、それで、この法案が課題とする生産コストの高騰という問題とも関連していますし、災害が必ずしもあるかないかに関わらず、これ離農が広がることにもつながっているというか、よく聞くのは、この機械がもう使えなくなったときはもう終わるというようなことなんかも含めて、出されるんですよね。
 それで、井村参考人の現場での具体的な実感と御意見ありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(井村辰二郎君) ありがとうございます。
 今回の震災においては、私たちの仲間、私も含めてですけれども、被災した農業機械については、それと同等のものを購入するに当たり九割の助成をいただけるようになっていまして、私たちの仲間もそれを活用して、本当に有り難く思っているところです。ただ、それが同じ規模のものができても、それを生産する農地が減っておりまして、それをやっぱり償却していったりとかするというのにすごく苦労をしていまして、機械は入ってもそれをフルに活用してやれないような状態で、やはり経営継続というところで、収入保険も災害にはなかなかマッチしないような仕組みになっておりますので、経営継続という意味で、その農業機械も含めて、すごく苦労しています。
 加えて、今の農業機械について、私が就農した頃から、例えば稲作のコンバインでいうと、大体倍から三倍ぐらいの価格になっています。一方、米価はずっと下がっていまして、農業機械については、いろんな仲間から、全国の仲間からやはり高過ぎると。仮に助成金が入ったとしても、なかなか再生産できるような、コスト計上できるような価格ではないということで、農業機械については、法人協会としても大変問題意識を持っております。
 以前、競争力強化プログラムという中でそのこともうたわれているんですけれども、是非、やはり適正な価格で私たちも作るために、そのコストですよね、機械、あと肥料、農薬、こんなものが下がるような仕組み、これも並行して取り組んでいただければうれしいと思います。

○紙智子君 ありがとうございます。
 では、次、新山先生に伺います。
 それで、価格形成において、家族労働報酬と、それから、今、井村参考人もお話しになったんですけど、農機具などのこの減価償却がきちんと評価されるというのはやっぱり鍵だと思うんですね。これについて、本法案の評価、この法案の中でそこのところがちゃんと含まれるかどうかということも含めて、考えておられることをちょっとお話しいただけたらなと思います。

○参考人(新山陽子君) そうですね、法案の文章を見たところ、そこまで書き込まれていないので、労働費をどう把握してどう評価するのかも書かれていませんし、それから減価償却、これは、機械買った価格でコストになるのか、それとも、使っている期間の間、減価償却をしていって、それをコストと考えるのかも書かれていませんし、なので、そこのところの判断のしようがない状態ですね。
 なので、そこをしっかり詰めて、コストをどう把握して反映できるようにするのかということを詰めてほしいなと思います。

○紙智子君 ありがとうございます。
 続いて、ちょっと今、お米の問題が課題になっていますからちょっとお聞きしたいんですけれども。
 事前に配られていた資料を見ていましたら、米は農協共販によって二つの契約方式で取引されていると。一つは事前契約、二つは相対取引ということで、農協から農家に対しては共同計算によってこの概算金が支払われて、後でこれ精算されると。
 その上で、この事前契約、相対契約に生産コスト指標を導入できるかどうかというのは、ちょっと重要なことだと思うんですけれども、どういう課題があるのかということで、お考えがありましたらお願いします。

○参考人(新山陽子君) そうですね、これ以上はちょっと立ち入って具体的に言うことができないので、こういう提案をするしかないなと思っています。済みません。

○紙智子君 分かりました。
 それと、もう一つちょっとお聞きしたいんですけれども、実は先日、私質問したときに、コスト指標の作成団体の実効性を確保するためには、変動する生産コストを自動的に販売価格に反映させる仕組みが必要ではないかというふうに聞いたんです。そうしたら、価格決定は当事者間で行うべきで、価格が自動的に改定されるような強制的な価格決定方式では需要が考慮されなくなるなどの意見が示されているという答弁だったんですね。
 それで、その元々のエガリムからいろいろ学んできているということで、フォーミュラの話もさっきありましたけれども、向こうの方では、自動改定条項というようなこと、日本訳でいえばそうなんだけど、何か自動的にというんじゃなくて、それを決める際に、そもそも、何回も話し合って、話し合った上で自分たち自身が選べる仕組みになっているというふうに聞いたんですけど、その辺ちょっともう少しお話ししていただければと思います。

○参考人(新山陽子君) そうですね、ただ、そこのところは外に公表されないやり方で相談されているようですので、それ以上分からないんですね。
 コスト指標はインタープロフェッショナルオーガニゼーションが作りますので、それは分かるんですけれど、それをどの程度どう使うかとかというのは多分当事者同士が議論しているんだと思いますし、どう議論されているかは分からない。
 それから、何と言ったかな、団体が代わりに交渉するというやり方もありますけれど、その場合はその場合でまた、枠組みはつくっているけれども、その枠組みに基づいて実際どれぐらいの価格にするのかというのは個別にやっているんじゃないかと。名前も枠組み協定と名付けられていますので、なので、ちょっとそれ以上のことが分からない状態です。よろしいでしょうか。

○紙智子君 ありがとうございました。
 そうしたら、次は坂爪先生にお聞きします。
 ちょっと素朴な疑問として、関係者の協議、協力による再生産可能な価格の形成ということと、卸売市場において、この需給のみによって値決めする競りの機能と矛盾するようにも思えてしまうところがあるんですよね。競りが値決めの機能を低下させているということを言う人もいますし、逆に、相対が増えても指標としての機能は重要だという指摘もあります。
 この卸売市場改定後の、改正後の市場が実際どうなっているのかなというのもあるんですけれども、この本法案との関係について、何か御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(坂爪浩史君) ちょっと頭の中が整理よくできていないんですけど、今九割以上が相対取引になっていまして、この価格転嫁が問題になっていた一年前ぐらいのときは、やはりその小売側のバーゲニングパワーというか、代替が低く抑えられていたんじゃないかということは一定言われていましたし、そういう事実というか、もあったとは思うんですけど。相対にしても競りにしても、卸売業者の競り人の頭の中には再生産費用は入っていると思います。それを基準に価格を決めているので、もちろん余っていれば安くなるし、足りなきゃ高くなるんですけど、このくらいじゃなきゃ駄目だよねという感覚は今でもまだ卸売業者の中にはノウハウとして蓄積されていると私は判断しています。
 米と違っているのは、産地によって値段の付け方って、実は市場によっても全然違うんですよ。よく言われているのは、どんなときも出荷してくれる産地の野菜と、何かいいときだけ、安いときだけ出してくる産地と、いろんな産地があって、どんなときもちゃんと安定して出してくれる産地については、相場が全体としてすごい緩くなって、価格が下落している局面でも何とかこの産地だけはいい値段を付けようといって頑張るんですよ。競りのときには三秒ルールというのがありまして、価格三秒変わらなかったら競り落とすんですけど、そこを三秒でやめないでずっと連呼して、もうちょっとおまえら高く買えというふうに粘ることが競りはありました。
 相対でも、相対は相対で電話、電話というか、でやるわけですけれども、やはり大事な産地は守らなきゃいけないという、都合のいいときだけ出してくる産地については、まあ、ごめんなさい、余っているんで安くなりましたという、そういうことを経験的にやっていますし、その中で産地ごとの再生産コストというのは、もちろん積み上げてやっているわけじゃないですけど、経験的にこの地域のこの産地の今の時期のメロンはこの価格付けてあげないと回らないという、これは多分それぞれの担当者の頭の中に実はあると思っています。
 以上です。

○紙智子君 ちょっと、あと残り短くなっちゃったんですけど、一言ずつお聞きしたいんですけど、急増する生産コストをある程度価格に転嫁することは必要だと思うんですけれども、これ、一方で低所得者に大きな影響を与えるというふうに思うんですね。
 それで、現在、実質賃金の低下ということと、低所得者層が増加していて、十分に食事できない子供たちもいると。低所得者層ほど食料支出の割合があって、エンゲル係数が今高いと。そういう所得が低い人ほど打撃が大きいという中で、これに対しての対応というか、感想なり御意見なり、一言ずつ、申し訳ない、短くなりますけれどもお願いします。

○参考人(井村辰二郎君) 私たちは、農業者は国民に安定的に良質な農産物を供給するということを共通の使命として持っております。全ての仲間がそのように考えております。その上で、国民とは、じゃ、誰を指すのかということですけれども、これはもうもちろん富裕層も、あとは貧困層も含めて、皆さん口と胃袋を持っていらっしゃるわけで、当然そこにもしっかり供給したいという思いであります。
 ただ、それを国の仕組みとしてどのようにしっかりと届けるのかというのは、これは、これについては残念ながら私たちに力も知恵もなく、とにかく私たちは一生懸命持続可能な農業を続けていくということをミッションとして頑張っていきたいと思います。

○参考人(坂爪浩史君) 私は、低所得者に対するこの農産物価格の問題というのは、何らかの形で直接給付という形をするしかないと思います。
 先日、二千円の米がちゃんと並ぶようになったというのは、とても大変なことだったと思いますけれども、並べなかった低所得者層っているよなというふうに実は思っていて、年金受給者は並べたかもしれないけれども、パートを何件も掛け持ちしているシングルマザーが並べたかというと多分並べていないので。
 だから、米を安くする、安い米供給するというのも大事だったとは思いますけれども、どちらかといえば、三か月後になるかもしれないけど、これくらいの金額を低所得者層には払いますという、何かそういうのがあってもよかったんじゃないかなというふうに思っています。農産物価格の問題とは切り離して、給付というのが私の意見です。
 以上です。

○参考人(新山陽子君) 大事なことだと思うんですけれど、そのためには、先ほど報告でも言ったように賃金を引き上げる、最低賃金を引き上げるということが必要だと思います。
 それともう一つは、雇用形態を考えることも必要かなと思います。今、時間雇用が非常に多いですけれども、もっと、時間雇用じゃなく、きちんとした勤務ができるような雇用形態を増やした方がいいと思っています。

○紙智子君 ありがとうございました。