<第217回国会 農林水産委員会 2025年6月3日>


◇価格形成法案(食品流通取引法改正案)/いま問題になっている米価高騰をめぐる危機打開のため、ゆとりある需給計画で米の増産に踏み切るべきだと強く迫りました。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私も、冒頭、随意契約した政府備蓄米の放出についてお聞きします。
 五月二十九日の当委員会で、大臣は、過熱した米価を引き下げるというふうに発言しました。政府備蓄米は競争入札の米と合わせると六十一万トン放出されるということで、今後、市中にお米があふれ返って、なかなか買ってもらえなくなるということもあり得ると。
 今後、市中にお米が出ていって、それで業者から先週話を聞いて、この銘柄米など高値を買ったお米を安く売らざるを得ない場合、つまり、価格が下がり過ぎた場合にJAや卸や小売の損害が出た場合にどうするのかということをお聞きしたんですよね。そうしたら、大臣は、経済状況を見て必要な支援は政府全体で考えるのは当然だというふうに言われたんですよ。
 しかし、損害はこれ社会全体の経済状況で発生するということではなくて、安い政府備蓄米を放出したことによって発生するケースが考えられるわけですから、一般論にするのではなくて、やっぱり政府備蓄米放出によってこの損害を受けるというわけですから、それに対応した損害の支援とか場合によっては補償が必要なんじゃないかと思うんですよ。
 米の中間業者ですとかそれから小売業者なんかの、この流通業者も大切な役割を果たしているというふうに思うんですね。私の知っているお米屋さんは、売り先、それから買いに来るお客さんのことを考えると同時に、生産者の事情も把握する努力もしていて、応援をしながら商売をされているんです。施設などとか地域の具体的なニーズにきめ細かく応える役割担っておられるんですね。言わば毛細血管のように隅々まで米を届ける役割を担っているというふうに思うんです。この業界が損失するということは、町の損失にもなるというふうに思うんですね。
 改めて、農水省独自のこの損害の補償や、若しくは支援が必要だというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 今回、備蓄米ということについて申し上げれば、先ほど舟山先生の買戻しということにお答えをしたとおり、もしも今回の二千円、若しくはこれから出ていく千八百円、この備蓄米が出てくることによって、一回目から三回目の入札が、それで買ったお米が高過ぎて売れないじゃないか、これ抱えていてもしようがないというふうに思う方がいらっしゃったら、お申出をいただきたいというふうには思っています。対応させていただきたいと思います。
 むしろ、別にどこにだって使うことはできるんだと言って、中食、外食含めてこれ自由に使えると、そして一定のマージンを一般競争入札だから乗せることができていますから、そういったことでもうけるとか、こういったことは全く私の思いとは違います。実際に、卸の皆さんの決算などを見れば、利益出ているところは相当出ていますよね。ですので、むしろ今のマーケットの状況を考えたら、ある民間企業、まあJR東日本さんとかですけど、銘柄米をですよ、自社のポイント負担で全部持って三千円台の銘柄米を売りましたと、こういった企業も出てきました。
 ですので、やはり民間企業の皆さんの中でもいろいろな方がいらっしゃると思いますが、まずは、もしも抱えていてもしようがないと思ったらお申出をいただきたいと。それ以上のことについては、またいろんな声を聞きながら、現状を見ながらマーケットの状況を注視していきたいと思います。

○紙智子君 ちょっと質問した中身に対して、要するに、そういう損失が出た場合に、真面目に日頃からやっている人に対して、その損失が出た場合に支援は必要なんじゃないかということを言ったわけですよ。
 それで、前回も言ったんですけど、法制局とも相談して、政府備蓄米は貸し付けるという条件でないと出せないと言っていた備蓄米を後になって放出したわけです。大臣も、公平性を保つことが必要なので会計法の規定で競争入札していたけれども、消費者に早く提供するために随意契約にしたというふうに言われましたよね。
 それで、公平性よりもスピード感を重視したということだと思うんですが、この公平性がなくなったら混乱も生まれると、整合性のない対応に振り回されているというふうに言っている業者もいるんですよね。
 それで、今回、二回目になるこの備蓄米の随意契約についても、受渡しの数量に、まあ数量だとか、それから販売先にも条件が付いていると、それで放出を受けることができない、受けることができない米穀店もあるというふうに聞いているんです。
 今、その検討される、されているのか分かりませんけれども、今はっきりこうだと言えないにしても、検討するというぐらいは言っていただけないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) まず、振り回されているという受け止めがあるとしたら、そこは我々、真摯に受け止めなければならないと思っています。それは、事実、今までの方針とはかなり大きく方向性を変えているわけですから、私が、いつも農水省の職員、よくこの十日間ぐらい付いてきてくれているというように、省内だって方向性は相当変わっていますから、世の中の皆さん、特にお米の流通などに関わられる皆さんが、生産者の方も含めて、様々な受け止めが出るのは、そこは真摯にお伺いをすべきだと思います。
 一方で、今、やはり求められていることというのは、これだけ過熱した米の全体の価格を抑えていかなければいけないという中で、スピード感を重視する中では、やはり、北海道から沖縄まで、同時同量、全ての方々に一定量をお届けしなければ動かないということを選択をしたとしたら五月の三十一日に備蓄米が店頭に並ぶことはなかったので、そこは随意契約という政治判断の下で、スピードをまずは重視をさせていただいたということも率直に認めながら御説明をさせていただいて、しかし、このスピードを重視した中で、切り替えるのも私は早く決断したと思います、農水省も。小売と、そして中小のスーパーさんと町のお米屋さん、こちらに今度は切り替えて、できる限り面的な広がりを持ってきめ細かく対応していこうと。
 今まさに集計中でありますから、早ければ今週中にもこの新しい随意契約の方が契約完了になってくるところが出てくると思いますけれども、こういった随意契約の形も改善をしながら進めていることも御理解いただけるように努めていきたいと思います。

○紙智子君 結局聞いたことには答えていただいていなくて、つまり、支援が必要じゃないかと、それを何らかの形で検討してほしいと言ったんですけど、短く、ちょっと。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) どの方々への支援なのかというのは、例えば倉庫業者の皆さんへという御指摘が徳永先生からもありました。今、省内で検討したいと思います。
 で、紙先生がおっしゃるその支援が必要ではないかというのは、先ほどのお話ですと、町のお米屋さんの中の一部ということだとすると、含めてだとすると、今、町のお米屋さんの中でも、今回の新しい随意契約に今お申込みをされている方々がいらっしゃいます。そして、組合がある地域の方で申出をされている方と、個店としてお申込みをされている方、そして申し込んでいない方、こういった方で、様々立場がありますので、その状況をよく見てから考えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 考えていただきたいと思います。それでよく調べていただきたいと思います。
 それからもう一つ、随意契約、二千円で出すということで、米価は二千円程度で当たり前だと、二千円が独り歩きして、その影響で生産者の米価が大きく下がってしまって、再び赤字に転落することも考えられると。
 それで、長年赤字だった生産者にとっては、再び米価が下落することに対して大きな不安を覚えていると。今後増産を図るためにも、生産者米価が下がった場合は政府が責任を持って支えるよというメッセージが必要なんじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) まさにそこは、これからの、皆さんからの御提案も含めた、与野党の垣根のない御提案を基にまた議論をしていくということだと思いますが、今、KPIとして二〇三〇年には今よりも増産をしていくということを視野に入れて政策の方向性をつくっています。そして、昨日は、自民党の方からは五年間の集中的な予算ということで決議を御提案をいただきました。上月先生など来られましたけれども。
 そういったことも踏まえて、いかに米の生産コストを下げていくか。大区画化、そして集約化、共同施設の更なる利用、そしてまたスマート農業、こういったことも含めて展開をしていって、結果としてその中で水田政策の転換をしていきますので、支え方というのは議論をしていきたいと思います。

○紙智子君 支えるというメッセージを出す必要あるんじゃないですかと言ったんですけど、メッセージは出さなくていいですか。支えていきますよというメッセージ、生産者に。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) いや、かなりそのメッセージを出しているとは思うんですが、それは、令和九年度の水田政策の転換に向けて、まずは今年度中に基本方針を策定をしていきたいと、そして、令和八年度の概算要求には、令和九年度から動いていく新たな水田政策を後押しをしていく予算にしたい、この方向性で動いていく中で、しっかりと生産者の皆さんに、ああ、これからは安心して米作りができる、こういうふうなメッセージを忘れずに届けたいと思います。

○紙智子君 セーフティーネットの話もさっきあったんですけれども、セーフティーネットがあっても、二〇二一年の平均年間所得が生産者一万円だったわけです、平均すると。それで、時給にすると十円という事態になぜなったのかなというのもあるんですけれども。二一年産だけでなくて、それよりもずっと以前から、私たちが買える安いお米の値段というのは言わば農家の努力と犠牲によって成り立っていたと思うんですよ。
 収入保険は大事な制度なんだけれども、これは青色申告の人だけが対象であって、なかなか入りづらいとか、あるいはナラシ対策も認定農業者だけしか入れなくて、販売価格が低迷し続けると補填策もぐっと落ちるという難点もあるわけですね。いずれも現状ではセーフティーネットとしてはやっぱり十分じゃないと、不十分だというふうに思うんです。
 最近のちょっとマスコミの報道、さっきも話ありましたけれども、生産者と消費者の対立を招くような描き方をされているということもあるんですよね。誰かをやっぱり悪者にするような議論は良くないと思うんですよ。今議論している法案、法律案もそうだと思うんですね。二千円の価格では生産者は赤字になって続けられなくなることなども理解してもらわなきゃいけないと。生産者も消費者にも安心できる価格になるように政府としてメッセージが必要じゃないかというふうに思うんですけれども、これはどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) まさにそのために今御審議をいただいているのが食料システム法案だと思います。このコスト指標も含めて、これから全体の中で議論をさせていただくことを通じて、生産者、消費者双方の思いが近づくような、そんな消費の形を実現できればと思っています。

○紙智子君 価格が大きく下がったとしても、政府はやっぱり農業をされている経営者を支える必要があるというふうに思います。
 今回の法案ですけれども、元々、この飼料や燃油や資材価格が高騰して農家の経営を圧迫していると、経営を続けられない状況の下でいかにして価格を転嫁できるのか、実質賃金が上がっていない消費者にとって耐えられるような適正な価格というのを設定するために議論されているというふうに思っていました。で、法案が出てきてみて、価格転嫁というのが価格形成というふうになっていて、ちょっと違うイメージを感じたんですよね。
 私、本会議のときに、それで、農家経営の持続性ではなくて食品等の持続的な供給というふうになったその理由についてお聞きをしたんですけれども、大臣の答弁は、農業経営の持続性を目的とするんじゃなくて、食料システム全体として食料の持続的な供給実現のためというふうに答えられました。
 でも、これ考えてみると、食料の持続的な供給ということになると、輸入も含まれるように見えるんですよね。輸入の原材料や食品も含まれるということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
 今回の法案は、国内で流通する食料全般を対象といたします。そういう意味で、御指摘のその輸入食品というのも内外無差別で対象に含まれるところでございます。

○紙智子君 そうなりますと、輸入品であっても持続的に供給されるならよいということになるのかなと思うんですよね。
 交渉する際に、例えば生産者に対して輸入品の価格を持ち出されかねない、そういうときもあるかなと思うんですけれども、そのときはどうするんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
 輸入食品も国産食品も同様に費用を考慮した価格形成を促すというものでありますので、必ずしもその輸入食品だけが条件が有利になるというふうには考えているところではございません。
 むしろ、その国産離れを防止するということを含めて、今回の法案の中では、計画制度の中で、農林水産業者と関係を構築するための国産原材料の使用を促すとか、それから環境負荷の抑制をするとか、流通の合理化をすると、こういうその付加価値を付ける取組も行ってございます。こういったところで消費者の理解を醸成していきたいと考えているところでございます。

○紙智子君 生産者と買手との取引で、買手側から例えば輸入品との競争を持ち出されるということにならないかなというちょっと心配もあるんですよね。そうなると、その法律の目的を達成することになるのかなというふうにも疑問も感じているところです。
 それで、本法案を立案するに当たって、フランス同様の法律であるエガリム法を参考にするために農林水産省の幹部が同国に派遣されたと、で、研究したというふうに聞いています。
 エガリム法では、目的としてはっきり農民の労働報酬の保護というのが規定されているんですけれども、今回の法律にはそれが明記されていないんですね。
 本会議でなぜなのかって聞いたら、食料の生産から販売の各段階で、人件費のみならず、肥料や飼料や資材など様々な費用が掛かっているので、労働報酬を特記するのではなくて、様々な費用を対象として考慮した価格形成を促すことにしたんだという答弁だったわけです。
 しかしながら、この資材費や光熱費が支払えなくなった場合に破産したり倒産したり廃業になるけれども、自分や家族の労働費というのは削れるわけですよね。削れるんですよ。だから、農民の労働報酬というのが確保されるかどうかというのは焦点だというふうに思うんです。
 そこでお聞きするんですけれども、この合理的な費用に農民の労働報酬というのは含まれるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) お答え申し上げます。
 この今回の費用というものは、すべからくの費用でございますので、当然、労働報酬を含めた人件費も含んでございます。また、この法案に限らず、現在その政府を挙げて価格転嫁と賃上げの実現ということで取り組んでございますが、こうした取組は、人件費、まあ政府の言葉では労務費という言い方をよくいたしますが、こういったところをきちんと引き上げるようにそういうことを勘案した価格転嫁を進めていこうということで、人件費に関しては政府を挙げて特に着目をして取り組んでいるというところでございます。

○紙智子君 だとしたら、どうして書かないのかなって、文字として書き込んだ方がいいんじゃないのかなというふうに思いますし、少なくとも労働者でいうところの低賃金、最低賃金は必要なんじゃないのかなというふうに思います。
 それから、三十六条ですけれども、取引の相手方から持続的な供給に関する費用などについての協議の申入れをされた場合に、また取組の提案がされた場合は、必要な検討、協力を行うよう努めなければならないと記載されて、まあそれしか記載されていないんですよね。
 それで、三十七条のところに、この措置について判断基準となる事項は農林水産大臣が定めるとされていて、三十九条のところでは、措置の実施が著しく不十分であるときには勧告をし、従わなかったときには公表できるとされています。
 二一年産のときのように再び採算が取れなくなるような事態に陥ったときに、三十六条による協議の申入れというのは誰が誰に行うことを想定しているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 宮浦浩司君) この法案では、条文上でいいますと、飲食料品等事業者等を対象に努力義務を課してございます。この中身でございますが、飲食料品等の製造、加工、流通、販売の事業を行う方、つまり食品製造業者、食品流通業者、食品小売業者、それから外食業者も含まれます。それから、もう一つは、飲食料品などの生産の事業を行う方、つまり農林漁業者でございます。こういった方々全てに努力義務が掛かってございます。
 具体的に、その費用を示して協議の申出を行った場合のその誠実に協議に応じるという努力義務で、例示的に申し上げると、農林漁業者が直接取引をしている食品小売業者に対して協議を申し出る場合、これが一番検討した典型的な例でございます。
 一方で、食品小売業者が以前から取引のあるその食品卸売業者に対して、従来聞いていたコストに照らして今回聞いたコストというのはちょっと高いねというような場合には、どういった中身なのだということでその協議を申し出るといった場合も想定されるところでございますが、いずれにしても、重要なことは誠実に協議するということであろうというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 分かりました。
 それで、農家が強い価格決定力を持っている流通や小売側と交渉しやすい基準を定めるべきだというふうに思っています。
 それで、あと、最後になりますけれども、コスト指標を作成するに当たって公的データを活用するということなんですけれども、今回の米の需給見通し甘かったというふうに思うんですね。公的データに対する信頼が揺らいだんじゃないかと。
 三十日の本会議のときに、公的統計に関わる職員を増やすように求めたことに対して、大臣は、この間ずっと統計職員を減らし続けてきたことをスリム化と言ったんですね。で、OBを活用すると答弁されました。でも、三十年前の六千二百人から、昨年度末は千五十三人ですから、余りに減らし過ぎたと思うんです。これ、新しい制度に走り始めるときですから、さすがにこれは少ないんじゃないかと思いますけれども、大臣、最後、一言お願いします。

○委員長(舞立昇治君) 大臣、簡潔に答弁願います。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 今後の農政に信頼性を高めるために職員が必要なのは間違いありませんし、そのために必要な人員の確保については政府全体の中でしっかりと働きかけたいと思います。

○紙智子君 終わります。