<第217回国会 農林水産委員会 2025年5月29日>


◇コメ不足、価格高騰の背景に農家切り捨て自民農政が/農業予算拡充こそが必要/紙智子参院議員が小泉進次郎農林水産相に迫る

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私からも、今焦点となっている深刻な米価の高騰について小泉大臣に質問いたします。
 昨年の六月、私、都内の米屋さんから、米が不足して手に入らないと、しかも高くなっているという訴えがあって、それで備蓄米の放出をこの委員会で求めたんですね。そのときの大臣は坂本大臣で、逼迫という状況ではないと、その後も、米はあるんだ、在庫はあるんだという話が続きました。で、いよいよ八月になってお米がなくなってきたと。そのときにも、私たち、改めて備蓄米の放出を申入れをしたんですけれども、坂本大臣は、まあ今、秋になって新米が出れば落ち着くよということで特に何もしなかったわけですね。で、法令上、備蓄米を出せないというふうに言い続けていたんです。結局、米は高騰を続けたと。
 その後、江藤大臣に替わって、江藤大臣は、その後、一月ですね、一月の段階で備蓄米を放出することを決断をしたわけですよね。一月末ですね。一方、投機的な農家や業者が抱え込んでいるんじゃないかという言い方もしていたんだけれども、調べてみたらそんな業者はいなかったということで撤回したんですよ、その発言は。それで、備蓄米の放出に関しても、江藤大臣は、法律上どうしても一般競争入札が必要なんだというふうに言っていたと。
 今回、小泉大臣に替わりまして、随意契約するというふうに言われて、今やっているわけであります。
 今、物価高騰のさなかの米の高騰というのは国民の暮らしを圧迫していると。そして、特に貧困の家庭を直撃しています。学校が休みになると給食がないので、御飯が食べられないという子供たちが子供食堂に多数やってくると。それから、日本冷凍食品協会が二月に行ったアンケートの調査で、独り暮らしの学生の四人に一人が月の食費を一万円未満に抑えているという報告があるわけです。そういう学生がお米の配布会に長い列をつくって並んでいるんだけれども、結局配り切れない事態になっていると。なかなか寄附が集まってこないということもあって、そういう事態もあると。
 しかし、政府は、米の安定にも備蓄米の安い価格の放出にもなかなか向き合わずに、後手後手に対応が、そういう対応に終始してしまったと。これではやっぱり政府の言うことが信用されなくなると思うんですけれども、大臣はこの状況についてまずどう受け止められているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 今の観点からすると、遅かったということに対してどう今捉えているかということだと思うんです。
 なので、先ほどほかの委員の方からは、むしろ紙先生とは逆で、今までのやり方を続けた方が良かったんじゃないかという、(発言する者あり)えっ、そうじゃないですか。一般競争入札を四回目もやっていたら来月には下がっていたんじゃないかという趣旨を、紙先生じゃなくてほかの委員の方からはそういった御指摘があったんですが、今の紙先生の御指摘だと、今回、やり方を変えたことに対する評価はいただいているというふうに受け止めさせていただきます。(発言する者あり)あっ、変わってきたことですね。変わったのは事実だと思いますので、この大きく変わったことに対して丁寧な説明をさせていただくことで、しっかりと農林水産行政に対して信頼が揺らがないように努めていきたいと思います。

○紙智子君 対応がその都度その都度で遅れたというのもあるけれども、変わってきたということは、いろいろ変わってきたということは、やっぱり国民から見ると、何か信頼できなくなる、揺るいでしまうということなんですよ。今、信頼を回復しなきゃいけないという話だったと思うんだけれども、それ、是非そうしていただきたいとは思うんです。
 そこでお聞きするんですけれども、やっぱり、こういうふうに政府の対応がくるくる変わってきたその出発点というのは、そもそも、やっぱり米の供給量が足りていないということをこれまで政府は認めようとしてこなかったんですよね。供給量がどれだけ足りていないのかということも把握していないし、今回の放出で十分に供給されるのかというのもよく分からないままだと思うんですよ。
 小泉大臣、何度も、不足感があると、不足しているとは言っていないんですよね。さっきのやり取りにもあったんだけれども、不足していることを認めていないと。だけど、現実には、需要に対してこの生産と在庫量が圧倒的に足りていなかったということが、去年の夏に米が消えたこと、そして業者間で集荷競争が始まったわけですよ。そして現在のこの米価高騰につながってきたんじゃないのかと。だから備蓄米放出せざるを得なくなったんじゃないのかというふうに思うんですけど、これどうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 私は、生産量は増えていて、全体としては供給量はあるんだろうとは思いますが、ただ一方で、先ほど御説明したとおりの、流通の形が変わったことでスポット価格が上がって、結果、マーケットが高止まりをして、世の中の不足感が長く続いている、そういったことが基本の認識なんですが、今、紙先生が御指摘あった、需要がかなり予想を上回る形で今世の中にあると。その中の要因の一つは、例えばインバウンドとかではないかという御指摘に対しては、数字を見ると四万トン、五万トンぐらいですから、そこまででもないんだろうと。なので、じゃ、どこがどうなっているからこの不足感なんだというのはやはり解明をする必要があると思っています。
 ただ、それを待って手をこまねいていても状況は変わりませんので、今回、スピード感を持って、随意契約という形を取らせていただきました。この過程の中でマーケットが動いて、そして一定落ち着いた暁にしっかりと分析をしたいと考えております。

○紙智子君 スポット価格のこととかいろいろ言われたんだけれども、やっぱり、そういうところに原因を求めているというところが、私、この間の農水省の認識がちょっと違うんじゃないのかなというふうに思っているわけですよ。
 需要に対して米の供給が不足していたのかということを何回も聞くんだけれども、作況指数は去年はそれほどでもなかったので、一〇一超えていたといって、前年比で増加しているから供給は足りているというふうに言うんだけれども、だったらどうして米騒動になるのかなということなんですよ。
 実際には、既に二〇二二年の六月頃から民間に流通する在庫量が一貫して前年割れを続けているんですよ。在庫は前年と比べると全部マイナスなんですよ。全部マイナスになってきているんですよ。ついに適正と言われる百八十万トンから二百万トン、この量をはるかに下回る、去年でいうと百五十三万トンしかなくなったわけですよ。
 対する需要はというと、今お話あったように、予想を大きく外れて、二〇二三年の六月末から二〇二四年の六月末まで需要量は七百五万トンまで伸びたと、需要は伸びたわけですよね。他方、二〇二三年の米の生産量は六百六十一万トンしかなかったわけですから、明らかにこれ供給量が足りていないということだと思うんですね。
 大臣、これまでの備蓄米の放出と合わせると、市中に出回っている数量というのは、前回三十一万トンでしたっけね、今回また三十ということで、六十一万トンに達することになるわけですよ、この後。
 しかし、町のお米屋さんやあるいはスーパー、ここには最初に放出した備蓄米すら今届いていないところもあると。これらの小売店だとかお米屋さんに届くことになるのかというのが、ちょっとさっきも議論あって、最初に出した分がまだ届いていないと。じゃ、その後から出して急げ急げということなんだけど、やっぱり国民の側は両方がちゃんと届くようにスムーズに流れてほしいと思っているわけですよ。それがちゃんと行くようになるのかというところをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 今御指摘ありました、ちゃんと届くのか、小売店まで届くのかということですが、三月に実施した二回の入札で二十一万トンを集荷業者に売渡しをしているということです。そして、四月の二十七日までにほぼ全量が集荷業者に引き取られ、五万五千トンが卸売業者に販売されたところです。しかし、スーパーなどの小売業者や外食業者などには二万二千トンでの販売にとどまっています。
 また、五月二十六日に大手小売を対象とした政府備蓄米の随意契約の申請受付を開始したところ、もう五月二十七日の夜時点で令和四年産米は約二十万トンに到達する申込数量であります。
 で、今回また切り替えて、中小のスーパーや町の小売店の皆さんにもお米屋さんにも届けられるように、早ければあしたの三十日金曜日から随意契約の申込みの受付を行うこととして、この結果、紙先生が御指摘をされたような町のお米屋さんなどにもできる限り早く届いていくということになるのではないかと思います。

○紙智子君 早く届けなきゃいけないというのは、まずそれはみんなの願いでもありますから、それは必要なことだと思うんです。
 全国の米穀店はもう去年の春の段階から実は米の不足を訴えていて、それで備蓄米の放出を要望してきたわけなんですよね。ところが、ここに来て、最初に出している分も含めて後回しになっているところもあると。最初の三十一万トンも含めて、やっぱり政府が責任を持って末端まで届ける手だてを取るべきだと思うんです。町の米屋さんがやっぱり安心してこそ消費者の安心につながるんだと思うんですね。
 そこで、大臣は店頭価格を二千円程度にするというふうに表明したわけです。総理も先日、異様な高騰に対応せざるを得ないんだというふうに発言をしました。
 そこでお聞きするんですけれども、この備蓄米の放出によって、ほかの銘柄のお米の価格は下がる可能性があるのかということをお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 今回の放出で銘柄米の価格にどういう影響が与えるかというのはなかなか予測するのは難しいと思いますが、現時点で様々な関係者の話を私なりに理解をすると、少なくとも、この備蓄米を無制限に出すという表明以降大分、今までの三回までに購入された備蓄米の価格も一定影響があるのではないかというふうにも言われています。
 そして、間違いなく消費者のマインドとこの小売さんやまた卸の皆さんの受け止めも変わってきていますので、結果として、この一年間で二倍、二・五倍主食が上がっているという状況が抑制されて、落ち着いたマーケット環境になることを私は期待をしています。よく状況は注視したいと思います。

○紙智子君 私もやっぱり下がってほしいというふうに思っているわけですけれども、それで、価格をだけど下げるのはそう簡単ではないんだというふうに思うんですね。
 ただ、備蓄米合計で六十一万トン放出すると、今年六月末の在庫は適正在庫量を超える可能性もあるわけです。当面は価格が、二種類の備蓄米の価格、最初に出したやつと、今、後からやっているやつと二種類の価格と、それから銘柄米の価格ということで、まあ三極化するという話もあるわけですよね。
 しかし、市中にお米があふれ返ってもうなかなか買ってもらえないような状況になったら、やっぱり仕入れよりも安い値で売らざるを得ないという状況になりますよね。それで、そうなった場合に、各業者さんたちは既に高値で仕入れているので、これ窮地に陥ることになる可能性があるんですね。既に概算金を提示したJAも、これ高値で播種米契約でやった業者さんたちも同様に、高い値で買っていたのに安く出さなきゃならないというのは、これ大変きついわけですよ。特に小さいお米屋さんなんかは潰れてくるところも出かねないということもあると思うんですね。
 政府のやっぱり、いろいろ変えてきた、右往左往という、この振り回されて甚大な被害を受けていくということになった場合に、これ支援が必要じゃないかと思うんですけど、何か考えておられますか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) まず、その支援、もちろん経済状況を見て必要な支援は政府全体で考えていくというのは当然のことだと思います。これは、様々、今までも経済対策の中で、地方創生臨時交付金だとか重点支援交付金とか、きめ細かく対応できるというメニューを活用するということもあり得ると思います。
 ただ、今正確に御理解をいただく必要があると考えているのは、備蓄米など、出しているものが違います。今回、価格が今三極化とお話をされましたが、まず銘柄米が五千円前後のものがあるとして、一回目から三回目の備蓄米のもの、これは三千円代が多いと思いますが、これは令和五年、六年産です。そして、今回二千円のものは令和四年、そしてこれから出てくるものは令和三年産、つまり物が違いますので、この価格の差というのはおのずと出てくるのは当然です。こういったことも含めて、消費者の方、そして販売する方、そしてまたメディアの皆さん、こういった形で正確な理解がしっかりと浸透するように丁寧な説明をしていきたいと思います。

○紙智子君 今の答弁の最初のところに、いろいろな支援を考えていかなきゃいけないと、全体で考えなきゃいけないという話があったので、是非それは考えて出していただきたいというふうに思うんです。実際潰れるところ出てくる可能性ありますので、心配していますので。
 それで、私、こういう事態に陥ったのは、生産者に需給調整を迫ってきた政府の政策にあるんだと思うんですよ。どういうことかというと、一つは、事実上の減反の押し付けと低米価政策をやってきた。米の消費は毎年減ることを前提にして、生産計画についてはぎりぎりに抑えてきたと思うんですね。余ったら価格下がるから、できるだけ別の物を作れとか、主食用は作らないようにということで抑えてきたんですよ。
 それと同時に、日本再興戦略、二〇一三年にやっていますけれども、その中で生産コストは四割カットだということを宣言して、これ今も続いていると思うんだけれども、こうやってやっぱりコスト削減を言ってきたと。それが実際にはやっぱり米価の下落にもつながってきたわけなんですよね。それができる農家を応援するというようなことでやってきた政策でもあると思うんです。
 その結果、生産者価格はもうとても採算が取れない水準まで下がってしまっていると。
 それで、もう一つ、十アール当たり一万五千円の、これ民主党政権のときですけれども、米に対する所得補償をやったんだけど、これ全廃しましたよね、ゼロになったと。これも生産者にとってはとても大きなおもしになってきたというか、全部トータルで考えたら年間で千五百億円ぐらい近い所得を全国の米農家から奪ったという言い方もできるわけですよ。で、米農家への支援を切り捨てて米生産を衰退させてきたというのが一つです。
 それから、この二つの政策で、二〇二一年と二二年の米農家の一時間当たりの労働報酬が平均すると僅か十円に落ち込むという事態になりました。これ、コロナもあったんですけれどもね。その結果、二〇〇〇年以降で見ると、米農家は百七十五万戸あったのが五十八万戸まで減っていると、三分の一に激減しているわけですよね。
 で、三月末に全国で行われた令和の百姓一揆、東京のど真ん中でトラクターが走りましたけれども、そのときに農家の方が言っていたのは、洪水のように離農が起きて、この国から農家、農民が消えようとしていると、所得の補償を求めるそういう訴えがありました。
 こういう事態ですね、大臣はこの農村のリアルな実態と農家の切実な要求をどのように受け止めるのか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) そういった厳しい農村の現状というのは、私にも伝わってきております。
 一方で、今後を考えたときに、やはり農業の競争力を強化するための大区画化や集約化、そして新たな技術の投入などが必要なこともまた事実であります。ただ、きめ細かく、多面的な機能も含めた中山間のことも見ていかなければいけないわけでありますが、今は余りにこの米が高止まりをし続けていると消費者の米離れがより進みかねないと、こういった懸念を私は持っています。
 ですので、生産者の皆さんに対しては、そういう危機感があるからこそ、今回、非常時の対応でありますが、随意契約という二千円という備蓄米、こういったものを判断をさせていただいたと、そんな思いも丁寧にお伝えしたいと思います。

○紙智子君 この間の政府の方針の中では、やっぱり非効率な、さっき、やる気のあるところはとか、やる気のないとかという話ありましたけれども、小規模農家を退場させていって、大規模農家に農地を集約する政策で、大規模農家の経営も実は大変になっているんですよね。大規模化、効率化一辺倒の政策に付いていけない中山間地域は、急激に担い手がいなくなっているわけです。
 こういうことを招かないようにするには、ぎりぎりじゃなくて、やっぱり十分に生産をしてもらう必要があるんだと思うんです。しかし、増産して余るような事態になると、今度逆に価格が下がってしまうと。そうすれば、また農家は赤字になってしまうんですね。農家が安心して増産できるようにするためには、やっぱり自己責任を迫っていくような今までのこの農業政策を転換しなくちゃいけないと思うんです。大規模、小規模にかかわらず、農家の所得がきちんと補償できる政策に転換するべきだと思うんですね。
 で、やっぱり安心と希望というのがないと、若い人が入ってこないと思います。これは農地を維持できるかどうかの瀬戸際にある農村の切実な願いでもあると思うんですね。
 具体的には、どの、どこの国でやっている所得補償政策が、どこの国でもやっている所得補償の制度がまず必要だと思うんですけれども、これ、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) その農家の皆さんのセーフティーネットづくりをどうするかというのが、これからの大きなテーマだと思っています。
 そこについては、先ほど舟山先生などからも御指摘をいただいたとおり、与野党の垣根を越えてテーブルにのせて、どんなセーフティーネットが次世代の農家の皆さんにも安心をしていただけて、かつ今やっている皆さんも国の政策に信頼感を持っていただけるか、ここにつながることだと思います。
 私は、農林部会長のときに、上月先生や多くの自民党の議員たちとも一緒に取り組んで、あの部会長のときに取り組んだ一つが収入保険であって、この収入保険も、説明をすると、現場にも評価をいただける面もあります。
 ただ、時代に合わせて様々支え方というのはおのずと変わるでしょうし、求められていることも変化を続けると思いますので、この今までやってきた収入保険やナラシとか、そして今野党の皆さんからも御提案をいただいているようなことも含めて、幅広く耳を傾けた上での政策の議論が必要だと思っております。

○紙智子君 日本の耕地の四割、この四割は中山間地域なんですよね。それで、自給的農家や兼業農家も食料を生産して、この食料自給率を支えていると思うんです。多様な農家も担い手に位置付けるということと、所得を補償するというのはどうしても必要なことだというふうに思っています。
 農政の在り方に対してもう一点質問したいんですけれども、政府はこの間、三十年間にわたって米の価格や流通に対する国の関与をどんどん手放してきたというか、撤退してきたと思うんですね、前はもっと手を出していたんだけれども。全面的に市場任せにしてきていると。歴代の大臣は何度も、国は価格と流通に介入しませんと、価格は市場で決まるのが基本ですというふうに言ってきたと思うんですね。
 しかし、今回、石破総理を始め、大臣もそうですけれども、この備蓄米の放出によって価格を下げると何度も発言されているわけです。これは市場に介入することなんですよね。今まで市場に介入しないと言ったんだけれども、介入すると。これは方針転換なのかなと。なぜ方針を転換することにしたのかということについてお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 一般競争入札から随意契約というのは方針転換かもしれません。ただ、政府全体の方針として、またあるべき姿として、常時価格に政府が介入するということは良くないことだと思っておりますので、あくまでも今回は、この事態は平時な環境ではない、これはやはり異常事態のような状態だからこそ、ここは備蓄活用して、そして随意契約という形でスピード感を持って届けなければいけないと、そういった状況だと御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 まあ今回一回限りということなのかなというふうに聞きました。
 それで、江藤前大臣は、食糧法の三条二項によって、生産量が大幅に減った場合しか出せないんだということを説明してきました。しかし、内閣法制局とも相談をして、貸し付けるという方向でなければそもそも出せないということで話をされていて、そしてまた、売渡しの方法についても、政府としては、会計法上、国民の財産だから競争入札でないとできないんだということも説明されてきたんですよね。
 法律上できないと言っていたことがなぜ可能になったのかということについてはいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) これは、昨日の衆議院、そして今日の午前中も御指摘をいただいたところでありますが、これまで備蓄米の売渡しは、公平性を保つことも考慮しつつ、会計法の規定に基づいて、原則である競争入札によるもので実施をしました。
 一方で、三月十七日から四月の二十七日までの間で集荷業者に引き渡した二十一万トンのうち、小売、中食、外食事業者まで流通したのは約一割にとどまっていまして、備蓄米が広く行き渡らない状況があるのも事実です。米の流通に目詰まりを起こしていることなどが感じられる中で、消費者の皆様に早く安定した価格で米を提供できるように、従来の競争入札による備蓄米の売渡しを改める必要がありました。
 その際、小売業者の方からは、競争入札による売渡しについて、参加経験がないこと、そして、業者数が多く価格が引き上げられるおそれがあること、こんな御意見もお聞きしたことから、競争入札ではなく、契約の目的が競争を許さないものとして、随意契約により直接小売業者に売り渡すという判断をさせていただきました。

○紙智子君 今までで言うと、法律上できないと言ってきた。江藤大臣だって早く出さなきゃいけないと思っていたと思うんですけれども、この大臣が替わったらできるようになるというのは、ううん、どうなのかなというふうに思うわけですね。
 なし崩しの対応というのは、やっぱり多くの関係者の経営に影響を与えるし、混乱を招くと思うんですね。緊急対応ということであれば緊急対応の根拠が必要だし、緊急対応が発動する基準だとか緊急対応の具体的な内容がやっぱりあらかじめ定められていることが必要なんじゃないかと思うんですよ。そこのなぜこの解釈を変えたのかというところはどうでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) ここは、会計法所管の財務省とも相談をしながら確認をして、今回、目的を変えるという形の中で、農水省の判断と責任にもって、ここは法律とも整合すると、こういった理解を得られ、最終的に農水大臣として判断したものであります。

○紙智子君 まあさっき徳永さんも何かもやもやって話、していましたけれども、やっぱり何よりも、今回のことを教訓にして、価格と流通を市場任せにするんじゃなくて、備蓄米を大幅に増やして需給のコントロールを行う、できる仕組みを整える必要があるんじゃないかというふうに思います。
 それでは、今回の対応の説明がなかなか付かないということもあると思うんですけれども、少なくとも、何かあった場合の備蓄に大きな穴を空けてまで放出したわけです。
 これ、一九九三年のときに日本を大変な冷害が襲って、米の作況指数が七四という本当に極端に低いことが、不作に見舞われたときがありました。その原因がフィリピンで発生したピナツボ火山の大噴火だったと。この温暖化のさなかにあっても、同様の大凶作がいつ起きてもおかしくないと思うんです。
 更に心配なのが南海トラフですよね。これ、火山学や地球変動学の第一人者である鎌田浩毅さん、京都大学の名誉教授が、二〇三五年プラスマイナス五年に必ず起きると。いや、必ず起きるというふうに言われると本当にどっきりするわけですけど、関東から九州までの超広範囲で、日本人口の約半数、六千八百万人が被災するというふうに警告をしているわけです。
 そういう異常気象を、この地震がいつあるか分からないというときに、政府の備蓄米は残り三十万トンと、僅か二週間分に減らしているというわけですから、これはどういうふうにこの後の責任って考えておられますか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) そこはもちろん、今備蓄を使っているわけですから、万が一のときにも対応できる対応を検討しておく必要があるのはそのとおりです。
 そして、災害のときにという話もありますが、もちろん、東日本大震災の四万トンや熊本の地震の九十トン、これは過去の例でありますので、災害というのは、いつ、どれぐらいの規模かは前例だけでは測れないものがありますので、あるべき備蓄の在り方、こういったことについては、まさにこれから、備蓄の政策全般についてもしっかりと検証するべきだという決議も本委員会でも触れられておりますので、その中でしっかり議論をさせていただきたいと思います。

○紙智子君 公的備蓄が、今、一・五か月分の百万トンでこの間来ていたわけですよ。それで足りるのかという議論も当然必要だというふうに思うんです。
 大臣、生産量も足りない、在庫量も足りない、備蓄も足りない、農家も激減すると、農地を増やす目標も立てられないとなったら、もう総崩れだというふうに思うんですよね。
 今の需給見通しで増産になっているように見えるのは、飼料用米などの用途限定米を使っていた農家さんたちが主食用に転換したからだと思うんですよ。それで困るのは、これまで政府の方針に協力して飼料用米を頑張って利用してきた養鶏農家だったり、養豚ですね、養豚の皆さんだと思うんですね。
 財務省は、この飼料用米への補助金を削って水田活用政策の見直しに使えと言っているんだけれども、これではむしろ食料自給率が落ちてしまうんじゃないかと思うんですね。
 必要なのは予算の増額だと。八〇年代には三兆六千億円あったわけですよ。これ、防衛費よりも多かったんですよね。今は二兆三千億円、もうちょっとあるかな、ぐらいまで削減されて、逆に防衛費が八兆七千億円ですから、すごく膨れ上がっているわけです。
 命を支える食料や農業にこそその予算の充実が必要だというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 方向性、全く同感であります。
 今、これだけ米を通じて国民の皆さんの食に対する関心が高まっていることを、農林水産行政の信頼や、そしてまた支援に変えていくことで、今後、予算も含めて増やしていく、ここに国民の皆さんに御理解を得られるように、政府の中でも汗をかいてまいりたいと思っております。

○紙智子君 予算を増やすことは、私たちは大いに応援します。
 最後、トランプ関税についてお聞きします。
 米通商代表部、USTRは、日本に農産物の更なる市場開放を迫っています。日本の農業を犠牲にしてはならないと思うんですね。
 江藤前農水大臣は、日米貿易協定の交渉が乾いた雑巾を絞るようなものだったとおっしゃっていて、これ以上の輸入自由化はできないんだと述べられていました。
 小泉大臣も同じ認識でしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 小泉進次郎君) 農業を犠牲にした交渉は許されないという認識は同じであります。
 今回、トランプ大統領は七〇〇%ということも言っておりますので、七〇〇%を下げろというのは実現できると思いますが、これからどうするんだということについては、もちろん日本として守らなければいけないことがある、その主張をしっかりとすることが大事だと思っております。

○紙智子君 時間になりました。
 過去の歴史をたどると、農業を守る守ると言いながら、蓋を開けると、牛肉、オレンジの自由化のように、農業が犠牲になってきたという事実があります。今回は決してそれはやらないということを是非明言していただきたいと思います。