<第217回国会 農林水産委員会 2025年5月20日>


◇森林経営管理法は制度開始から5年が経過しましたが、林野庁が目指した林業経営体への森林の集積・集約化が進んでいません。改正案は、「地域経営管理集約化構想」や「経営管理支援法人制度」をつくり、集積・集約化の迅速化を図るもので、伐採を求める木材メーカー等(林業経営体)に有利な仕組みにするものだと指摘し反対しました/国有林内の保安林で風力発電所の建設が進んでいるとして、規制強化を求めました。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、大臣の発言について質問いたします。
 米は買ったことがない、支援者がくれるから家には売るだけあると、売るほどあると、この発言は私びっくりしました。大臣、何でこういう発言をされるんですか。私本当に怒りでいっぱいですよ。食べたくても手に入らない、買えない、そういう人たちがいるし、そして実際に、子供たち、育ち盛りの子供に、お代わりごめんね、お代わりしないでねと、こう言わなきゃいけない親の気持ち、分かっているのかと。
 日頃から大臣は、生産者に寄り添います、農業者に寄り添いますって言うけれども、全くこれ寄り添わない発言ですよ。
 主食の米を扱う農林水産大臣としては、これ資格が問われる発言ですよね。資格に関わる発言をしたんだということを自覚していますか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 深く自覚をいたしております。
 何でこんな発言をしたのかと言われ、もうまさに後悔先に立たずというのが私の正直な気持ちです。とにかく玄米で手に取っていただきたいということをお伝えするために、我が家に届いている玄米を自分たちで精米して食しているということを伝えるその前段として、このような発言をいたしました。
 ただ、現実には、うちの食品庫は二畳ぐらいしかありませんし、売るほどあるはずもなく、夫婦二人といえども食べ切ってしまうことも当然あるわけで、妻いわく度々買っているということでありますから、先ほどからうそをつくなというふうに怒られております。
 事実と違うことを言ったということでありますが、まさにそれはそのとおりでありますので、まさに反省を昨晩も含めてずっとしております。今朝、明るくなるまでずっと、国民の皆様方がどのような御意見をお持ちなのか、ティックトックやSNS、ユーチューブも含めて様々なメディアで国民の意見を聞いてまいりました。大変申し訳なく、反省をいたしております。

○紙智子君 失った信頼って大きいと思いますよ。
 そして、やっぱり、どういうふうに責任を取っていくのかということは考えてほしいと思うんですが、私は、もう目の前に迫っているやっぱり今の深刻な状況を早く解決しなきゃいけないと思うんですよ。ちゃんと米が安く、価格が下がるということと、それからちゃんと食卓に届くと、早く届くということのために力を尽くしていただきたいということだけを申し上げておきたいと思います。
 その上で、法案について質問します。
 森林経営管理制度が始まってから五年がたちました。この制度は、森林所有者には経営規模を拡大するなどの意欲が低いと、適時に伐採、造林及び保育するように責務を負わせた上で、その責務が果たせない場合には、市町村がこの経営管理の委託を受けて、森林経営者に再委託することによって、川下の木材産業に木材を供給するシステムだと思います。これで、今までは海外から木材を輸入してきた大手の木材産業が、世界各地で今、環境保護や自国の産業を育成するために丸太の禁輸をする国が広がっている中で、建材やバイオマス用の木材を国産材に求めていました。その要望に沿った法案になったんだと思うんですけれども、木材価格の低迷に苦しむ森林所有者は置き去りにされたままでした。
 改正案では、この森林経営者への集積、集約化の迅速化を図るといいます。しかし、振り返ってみると、この制度の出発というのは二〇一五年の森林資源の循環利用に関する意識・意向調査だったわけです。この調査では、森林所有者の七一%が実は現状維持を望んでいたんですね。この森林所有者の意向を尊重しなかったというのが、この制度がなかなか進まない、行き詰まった原因ではないのかと思うんですけれども、これ大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) この意向調査についてでありますが、アンケートの結果を用いたものでありますけれども、八割の方が、森林所有者が、森林の経営意欲そのものが低いと、そして現状維持、ですから、何もしたくないと、若しくは規模の縮小を望んでいるという者が約八割だったというふうに思っております。そして、そのうちのさらに七一%の方が、もう木を切ることはないと、もう伐期に来ているけど主伐も望んでいないということであったということだというふうに報告を受けております。
 平成三十年に作ったこの管理法につきましては、まず、材価が非常に安かった、それからもう村にいない、どこに、例えば海外に行ってしまっているかもしれない、不在村化が進む中で、そういうところを放置しておくと、もう周りの木々にも悪さをしてしまうんではないかということでありますから、そういう資源循環のことを考えた上で、危機管理の下にこういう法律を作ったということであって、その当時の判断としては、回答者の四割が二十ヘクタールですけれども、経営管理を市町村に委ねたいと回答し、自ら管理し切れない森林所有者が多いということでありましたから、これ自体は間違っていなかったと思います。
 しかし、今回この法律をやることによって、今先生おっしゃったように、集積、集約化を進めることになります。やはり肝腎なことは、山でしっかりと所得を確保できるかということは大変大事な問題で、やはり作業効率を上げて、そして利益率を上げていかないと山元にもお金が戻せませんので、ですから、今回の手続の簡略化であったり、それから要件の、今までよりも厳しいものを少し緩くしたりする、二分の一にするとか、そういったことはこういったことにつながるものだというふうに思っております。
 このようなことを通じて、新たな仕組みでありますから、集積、集約化、これによって、ばらばらのところをなるべく一か所に集めることによって、作業効率も上げ、山元それから林業経営体の方々への期待に応えてまいりたいと考えております。

○紙智子君 ちょっと五年前に振り返ってみると、今のその評価自身が全然違いますよ。意欲がない人がほとんどだったというのは違いますよね。現状を維持したいということで、自分の山をどうつくっていくのかということを自分なりに構想して、切る時期が来たら切ると、そういうように考えている人たちもたくさんいたわけで、それを何か、意欲がないからということを決め付けてやるということ自体が大きな問題だったと思うし、五年前のときの議論も、そこが物すごい議論になったと思うんですよね。出した資料そのものがどうだったんだということになったわけですよ。
 災害が多発している中で、地域の林業を振興して森林の持つ多面的な機能を発揮するためには、森林所有者、それから住民を遠ざけることなく、その意向を尊重して考えることが大事だというふうに思います。
 改正案は、集積、集約化が進んでいないから、新たに市町村や県や林業経営体などの関係者で森林の将来像、集約化構想を定めるということになっているわけです。一見いいように思うんですけれども、よく見ると、受け手となる林業経営体から提案できるというふうになっているわけです。森林をとにかく伐採したいと、そういう大手の木材産業にスムーズに木材を供給する、あるいはバイオマス企業などの意向に配慮した構想になる懸念があるんですけれども、これについて政府参考人の見解を伺います。

○政府参考人(林野庁長官 青山豊久君) 集約化構想の策定に当たりましては、市町村の下で地域の関係者で話合いを行っていただくことになりますけれども、その話合いには森林所有者にも参加していただくこととしておりまして、その意向をしっかり反映できるようになっていると考えております。
 また、集約化構想の策定手続でも、森林所有者を含めた利害関係人による意見提出の機会を設けており、その中でも森林所有者の意向を反映することができると考えております。
 さらに、林業経営体への権利設定等を行う権利集積配分一括計画については、森林所有者の同意が必要でありますので、森林所有者の意向が無視されるようなことは想定されないと考えております。

○紙智子君 この集約化構想の効果として挙げられているのは、受け手となる林業経営体への権利者に関わる情報提供が可能になるというふうに説明されています。林業経営体が主体的に森林所有者に働きかけも可能になると、営業活動を行うことが可能になるんじゃないんだろうかと思うんですね。林業経営体に有利な伐採計画も立てることができるんじゃないかと思いますけれども、参考人、いかがでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 青山豊久君) お答えいたします。
 今回の新たな仕組みでは、林業経営体への個人情報の提供について、集約化構想において受け手と位置付けられた者に対して集約化構想の実現のために必要な限度で提供することができるようにしているほか、情報提供する場合には必要な条件を付すこととするなど、林業経営体が適切に情報を取り扱うよう措置することとしております。
 その上で、林業経営体への権利設定等を行う権利集積配分一括計画については、市町村が作成するものであるとともに、作成に当たっては森林所有者の同意が必要でありますので、森林所有者の意向が無視されて、林業経営体に不当に有利、林業経営体に不当に有利な計画になるようなことはないというふうに考えております。

○紙智子君 不当に有利になることはないということなんですけれども、この木を切りたい方の林業経営体に有利な構想になる懸念、危険性はあるんじゃないのかなと思うんですよ。
 集約化構想の策定に当たって、川中、川下を含む地域の関係者で協議の場をつくることになっています。適地であっても災害が多発しているということや、森林の持つ多面的機能の発揮を考えれば、森林組合や、あるいはこの議会の関与や、地域住民の理解が必要じゃないのかというふうに思うんですけれども、これはどうでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 青山豊久君) お答えいたします。
 集約化構想の前提となります協議の場は、いつどこで行うかを公表して開催するように運用することとしており、地域住民も含めた地域の関係者が参加することは可能でございます。
 さらに、市町村が集約化構想を策定するに当たっては、御指摘の議会手続のようなものはないんですけれども、利害関係人による直接の意見提出の機会を確保するため公告縦覧手続を設け、公平性、透明性を確保しているところでございます。
 このような取組を通じまして、集約化構想の策定に当たって、地域の関係者の意見が適切に反映される運用となるよう指導していきたいと考えております。

○紙智子君 そういうことなんですけれども、地域の将来像をつくる構想ということですから、是非、森林組合や議会の関与というのは法文上書いていないんですけども、明文化していただきたいと思います。
 それから、経営管理支援法人制度についてです。
 この法人には林業経営体もなれると。市町村長から指定を受ければ、法人になって林業所有者の情報を入手することが可能になるわけです。集積化の構想などの提案もできると。そうなると、林業経営体の伐採、そして集約化、これを支援する制度になるんでないのかというふうに思うんですけど、これはどうでしょう。

○政府参考人(林野庁長官 青山豊久君) お答えいたします。
 経営管理支援法人がサポートする市町村事務としましては、森林所有者の探索や意向調査に係る事務の支援、森林の現地調査や資源解析、森林境界の明確化に係る支援、森林所有者からの所有森林の管理に係る相談への対応などを想定しています。
 支援法人には、これらの事務に対する専門的知見、ノウハウを有する法人を想定しており、林業経営体でもこの条件に合えば経営管理支援法人として指定されることは可能です。一方で、市町村が委託する業務の範囲については市町村が決めることであり、支援法人の恣意的な判断が働くことはないと考えております。
 なお、森林への権利設定及びこれに基づいて行う経営管理の内容については、森林所有者の同意が必要であること、伐採が行われる場合には市町村森林整備計画に適合することが必要であるとともに、森林経営管理制度に基づく主伐を行った際は再造林が義務付けられることなどを踏まえますと、御心配のような無秩序な伐採が促進されるようなこともないというふうに考えております。

○紙智子君 市町村の人員が不足しているから法人にと言われるんだけれども、森林所有者の財産や個人情報などで、外部化ではなくてやっぱり公権力が対応すべきことではないかと思います。法人が木材産業の利益を後押しすることにならないのかという、そういう危険性もあるというふうに思います。
 次ですけれども、林野庁は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に貢献すべく、切って、使って、植えて、育てる林業政策を進めています。今、造林が追い付かずに伐採して使うことばかりに視点が置かれているというふうに思うんですね。
 そこで、CO2を吸収するために伐採を促進する国というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(林野庁次長 小坂善太郎君) 我が国の森林のCO2の吸収量は、人工林の高齢級化に伴い成長量が頭打ちとなり、今減少傾向になっています。
 このような中、議員御指摘のとおり、二〇五〇年ネットゼロの実現に向けては、木材を木造建築等として循環利用する、そのことによって森林が吸収した炭素を長期間貯蔵する、そして、成長量の大きい若い森林を増やすということで森林吸収源対策を進めております。
 御指摘の先進国の中では、例えばオーストリア、フィンランド、こういった国では、地球温暖化対策として、我が国と同様、その木材を利用すること、建築物に使うこと、こういうことを位置付けている国がございます。

○紙智子君 今ちょっと紹介、国の紹介しましたけれども、そうであればデータ出していただきたいなと思います。
 CO2は樹木だけでなく土壌にも蓄積され固定されますから、切って植えさえすればいいというものではないと思うんですね。気候変動枠組条約、この条約では、森林は、決してCO2の吸収源としての機能だけでなく、森林そのものが炭素の貯蔵庫として認められているということなので、是非、各国の知見の収集も図っていただきたいと思います。
 それから次に、林地開発許可についてです。
 今、国有林野に三百七十七基の風力発電があります。一基当たりの面積が〇・六ヘクタールです。風力発電を設置するに当たってヤードと作業道が必要になりますけれども、保安林の指定を解除しなくても設置できる車道の道幅、面積、それから切土の高さというのはどのぐらいあるんでしょうか。

○政府参考人(林野庁次長 小坂善太郎君) 保安林におきまして風力発電事業のためのヤードなどの一時的な形質変更行為を行う場合は、区域面積が〇・二ヘクタール未満であれば作業許可で対応できます。ただし、この場合、切土又は盛土の高さがおおむね一・五メーター未満のものであるというような要件がございます。さらに、道路につきましては、森林の施業及び管理に必要な施設として設置する場合は、車道幅員が四メーター以下の林道などであれば作業許可で設置できることとなっております。

○紙智子君 四メーターといったら結構幅あるなと思うんですけど、それで、解除せずに設置したヤード、作業道が、雨が降って、土砂が流出して、災害の要因になる可能性もあります。この洪水防止対策並びに土砂流出の防止対策というのはどうなっているでしょうか。

○政府参考人(林野庁次長 小坂善太郎君) お答えいたします。
 保安林内の作業許可におきまして、申請者は、林道技術基準などの森林土木に係る基準等に基づきまして、周辺地域に土砂の流出等の被害を及ぼすおそれがないか、または、さらには、立木の生育及び土壌の生成を阻害し保安林の機能の低下をもたらさないかなどの要件を満たすように設計いたしまして、それを許可権者が確認し、許可することとしております。
 また、なお許可に当たっては、適切な工事が行われるよう、工事中の土砂流出の防止措置や工事後の維持管理等の条件が付せられることとなっております。

○紙智子君 洪水防止や土砂流出の防止対策が妥当かどうかということについて、国は審査するんでしょうか。

○政府参考人(林野庁次長 小坂善太郎君) 保安林の作業許可等の許可権者は都道府県知事というふうになっております。知事の方がきっちりとこういった考えの下で許可を行っていますし、林野庁の方も技術的助言等のことを進めているところでございます。

○紙智子君 国有林ということですからね、何で県任せになるのかなというのはあるんですけれども、国有林は国の財産ということですよね。風力発電の建設が保安林の機能を損なわずにこの災害を発生することを防止すると、そういう仕組みを検討するように求めて、質問を終わります。