◇諫早湾干拓事業/政府が公開を拒否している諫早湾周辺の漁獲量などのデータを示すよう要求するとともに、広く漁業者や研究者との話し合いに応じるよう求めました。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
今日は、まず有明海の海洋環境と漁業について質問します。
国際自然保護連合が、佐賀県の有明海に生息しているムツゴロウを新たにレッドリストの絶滅危惧種に加えました。これは、宝の海と言われた有明海の生物多様性が危機的な状況にあることの象徴だと思います。
資料をお配りしましたけれども、その一を見てください。これは、農林水産省の統計データを基に有明海漁民・市民ネットワークが作った資料です。
余りお金にならないクラゲとかシバエビを抜いて、貝類や魚類の漁獲量の推移です。減少の一途であり、佐賀の漁業者からは、船を出しても燃料代すら賄えず赤字だと聞きました。それでも、海に出ないと漁業権が守れないので海に出ているという悲惨な状況が何年も続いているそうです。
それから、資料二を見てください。これは、有明海・八代海等操業調査評価委員会提出の資料から市民ネットワークが作成した、近年の有明海奥部、奥部と書いてオウブのノリの生産枚数の推移です。
紫色のところちょっと見てほしいんですけれども、これ、二〇〇〇年のときには大不作があったと。そのレベルで、直近三か年ですね、今厳しい不作が続いているのが分かります。特に、佐賀西部は著しい色落ち被害が何年も続いていることで廃業者が相次いでいて、地域社会にも深刻な打撃を与えていると。
で、有明海の不作が原因で、今全国のノリの価格が高騰する事態も起きているんですよね。ノリ、私大好きなんですけど、買うたびにやっぱり高くなっているなというのを感じているわけです。
大臣、まさにこれ、本当に、命というか、生命の揺り籠というふうに言われていた有明海が死の海になりつつあると言う漁師さんもいるわけで、有明海の再生というのは本当に急務だと思うんですけれども、大臣の見解をお聞きします。
○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 四月の十四日に、各県の漁業団体の方々が大臣室にお越しになりました。そのときにノリを持ってきていただきました。正常なノリと、色落ちしてもう真っ茶色になった、これよりももうちょっと薄いような色のノリだったですよ。これほどの状況になっているということを、実物を見せていただいて、非常に深刻な状況だなということは十分分かっております。
そして、特に最近は地球温暖化の影響も、海洋状況の変化も海水温の上昇等も、これ、有明海の環境に大きな影響を与えているようでありまして、漁業者の方々から非常に、今先生からお話がありましたように、漁に出ても量がないと。貝類についてはタイラギとか、ちょっとは、前に比べたらちょっとはましになっているような話も聞きましたけど、本当にちょっとはましになったぐらいの話であって、決していい状況にはなっていないということであります。
今回、十年間で百億ですか、という加速化交付金を措置させていただきましたけれども、これについて漁業者の方々からは、自分たちの使いたい方向性で使わせてくれと、もうこれについて様々な、これはいいけどこれは駄目ですよというようなことはなるべく言わぬでくれというふうに言われましたので、それに農林水産省としてはできる限り寄り添いたいと思っています。
やっぱり現場のことは、有明海のことも漁業者の方々が一番よく知っていらっしゃると思いますので、海底耕うんも含めて、やり方については、漁業者の方々が、やっぱりここをやった方がいい、こういう方法がいいという議論を聞きながらやっていこうと思っております。
○紙智子君 ちょっと先の方まで答えていただいている感じなんですけれども。
それで、再生策の在り方が大変重要で、再生策の大きな目標としては、やっぱり漁業者が持続的に生計を立てられる漁獲量を確保すると、そのためにそれを可能とする海域の環境にしていくということが大事なんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点、一言いかがでしょうか。
○委員長(舞立昇治君) 誰を御指名ですか。
○紙智子君 大臣です。
○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 失礼しました。
先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり農業も漁業も、やはりなりわいが成り立たないということであれば、それはもう当然消えてしまうということでありますから、もう漁業者の所得を確保するということは極めて大事なことだと思います。
そのためにも、やはりそこに魚がいるかどうか。今はその育てる漁業とかもはやってはきて、はやっているというか、普及はしてきておりますが、有明ではなかなか難しいという状況もありますので、全くないわけじゃありませんよ、ありませんが、なかなか難しいので、ですから、この百億円の交付金をしっかり使ってこの回復の方向に何とか向かわせたいというふうに考えております。
○紙智子君 大事な答弁していただいたと思います。
それで、お聞きします。
農水省の、有明海沿岸四県と国が協調した再生対策という資料があります。目指すべき姿の実現に向けた道筋という項目があります。これ資料三枚目であります。
それで、その中で、左側の方を見てもらうと、現状・課題として、多種多様な水産資源が減少しているという記述があります。どのように減少しているのかということでいうと、一枚目の資料に戻っていただくと、この資料のように、貝類と魚類のこの漁獲量の推移を示している表なわけですけれども、諫早湾に近い方の佐賀県側というのは更に深刻な事態となっている可能性があると。
しかし、これ、全体見ている分には分からないんですよね、地域ごとの細かい状況が分からないと。確保するために、諫早湾や近傍部の漁協ごと、魚種ごとの漁獲量や漁獲金額の推移のデータを是非農水省に出してほしいと要望したんですけど、これ出してもらえないんですよね、拒否されてしまっていると。
なぜなのかということをちょっと政府参考人の方に説明をお願いしたいと思います。
○政府参考人(農林水産省統計部長 深水秀介君) お答えいたします。
海面漁獲量等を把握しております海面の漁業生産統計調査につきましては、我が国の漁獲量の実態を把握して国や都道府県の水産行政に資することを目的としております。したがいまして、全国それから都道府県単位で漁獲量を把握できるように調査結果を集計するということとしております。
本調査におきましては、平成十七年までは個別の漁業経営体が調査対象というふうにしておりました。ただ、そうしておりますと、調査の効率化、あるいは調査対象であります漁業者、漁業経営体の負担が非常に重いということで、この軽減の観点から、平成十八年から調査対象を漁協に変更しているものであります。
現在の調査におきましては、この調査対象としている漁協が報告した漁獲量のデータにつきましては、これはその統計法との関係がありまして、漁協単位のデータということでは提供できないというふうにお答えさせていただいているところでございます。
○紙智子君 漁協単位ではできないということなんですけど、やっぱりその諫早湾近傍の実態がどうなっているのかというのを国会でやっぱりデータでちゃんとチェックするということが、そうなるとできないんですよね。統計法では、公的統計を国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報ということで定義しているわけですよ。この統計手法の合理化という理由でもって国会がちゃんと合理的な意思決定を行うのに必要なデータを提供できないというのは、ちょっとこれ困るんですよね。
いろいろ、守秘義務があるだとかいろんなことあるかもしれないけれども、そういうのに触れないような工夫をするだとか、それから、少なくとも諫早湾の近傍に関して、集め方の工夫だってできるはずだと思うんですよ。
これ、是非出してほしいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 昨日御質問の通告を見させていただいて、まあかつては出したんですか、かつては出したけど今は出ないと。まあ経営体から漁協に調査対象を変更したということで、これについては目的外使用であるので提供してはならないと、法律上駄目だという説明なんですよね。法律で駄目だということならやっぱり駄目なのかなと思いますが、まあ出すとすれば法改正なのかなと思いますが、まだ私の頭の中も十分、正直なところ、整理できておりません。
先生おっしゃるように、国会での議論を充実させるためにあらゆる総計データは使わせてほしいということも理屈には私はかなっているとは思いますが、ただ、法律上の立て付け上駄目だというものを、じゃ、お出ししますと今言うこともこれはまた問題がありますので、ちょっと考える必要があるのかなと。今すぐお答えができる問題ではないということであります。
○紙智子君 ちょっと今すぐ答えられないということなんですけれども、前回は、やっぱりちゃんと、平均で物を言われても見えないんですよ。もう全体一緒くたにして平均では大丈夫ですとなるんだけど、それじゃ分からないから、それぞれのところに具体的にもうちょっと出してほしいって、たくさん、その漁協ごとにって、それこそ出てきたんですよ。そうすると、物すごい格差があったんです。それでやっぱり実態がよく分かるということで、そのとき議論した記憶があるんですけれども、目的外に使うわけじゃ全然ないわけで、そこはちょっと工夫していただいて、是非大臣の判断で検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
それから、更にお聞きするんですけれども、資料一のグラフの下を見てほしいんですけれども、二〇〇五年の開始から再生対策に投入された総額、これピンクのところで書いてあるんだけども、三百四億円、両方足して三百四億円になるんですね。これに加えて、今後更に十億円、年に十億円で、十年間で百億円が上乗せされると。十年後の累計でいうと、五百八十二億円なんですね。
これだけの国費が投入されていくわけですから、これまでの対策によってどんな効果があったのか、それから不漁、不作の原因にかみ合った対策なのかどうかと、これからどういう対策が必要なのかということを科学的に検証する必要があるんだと思うんです。
今度、資料三をもう一回ちょっと見てほしいんですけれども、農水省の目指すべき姿の実現に向けた道筋というのがあって、ここには漁業環境の悪化のスパイラルから改善のスパイラルへの図が示されています。その中の、赤い方ですけれども、赤潮、底質、貧酸素水塊などの環境指標について、これ、今まで目標、それをどういうふうにするのかという目標が設定されていないというか、示されていないんですよね。
それで、大臣、これ政府としても、国会としてもこういう目標を設定する必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 前島明成君) 済みません、お答えいたします。
平成二十九年三月の有明海・八代海等総合調査評価委員会の報告書におきまして、有明海の漁場環境の改善には植物プランクトンを捕食する二枚貝類を増やすことで赤潮や貧酸素水塊を軽減できる可能性があるというふうに報告されております。
このため、有明海再生の加速化対策におきましては、これまでの対策の成果を活用して、二枚貝類を増やすための取組を基本として進めていくこととしております。
一方で、赤潮や貧酸素水塊自体は、降雨や気温などの気象条件がその発生に大きく影響していることなどから、政策の進捗や効果を評価するKPIには設定していないところでございます。
○紙智子君 先ほど大臣もお答えの中で言われていたんですけれども、有明再生の目標としては、漁業者がやっぱりなりわいにできる持続的な生計を営めると、そういう環境にすることが大事だということを言われていたんですけれども、これまで有明海の評価委員会の報告書は、この海洋環境の再生について数値目標って示してこなかったんですよね。
二〇〇四年から長期にわたって有明海の再生事業を実施してきているんです。きているんですが、いまだに漁業者が安定した漁獲を維持しているかというと、できていない状況だと。海洋環境の改善の目標を定めて、その実現に政府が責任を持つべきだと思うんですよね。
それから、現在、有明海の再生策については、多くの研究者の皆さんが有明海の海洋環境についても調査もしていますし、提言もしていると。
今、有明海漁場環境改善連絡協議会などと連携して進めていると思うんですけれども、この有明海の深刻な事態が続いている中で、やっぱり現場の漁業者や研究者を始め関係者の意見をしっかり聞くと、分け隔てなく聞くということが大事だということをちょっと一言最後に申し上げて、次の質問に行きたいと思います。
次は、米の価格高騰と政府の備蓄米の放出についてお聞きします。
農林水産省、流通の円滑化を図るために備蓄米を三十一万トン放出したわけですけれども、ところが、流通段階でとどまったままで円滑に動いていないと。その理由として、ちょっとこの間何回かやり取り聞いたんですけれども、今年の夏に米が不足する懸念があるということで、備蓄米を今持っている人たちが出してしまわないで手元に残すという動きがあるというのも聞きましたし、それから、運送業者の手配が大変だとか新しい袋を作るのに時間が掛かっているとか、いろんな理由が語られています。
しかし、食糧法から見たときにどういう手だてを取ったのかというのが問われると思うんですが、食糧法の第二条は、米穀の供給が不足する事態に備えて備蓄の機動的な運用及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るというふうに書いてあるわけですよね。
今、政府の備蓄米が小売に渡っているのは一%か二%か、本当に微々たるものでしかないんですよ、小売まで行っているのは。食糧法の消費者に対するこの規定の実効性、あるいは小売までの政府の備蓄米が行き渡る手だてというのを示していないんじゃないかというふうに思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農産局長 松尾浩則君) 備蓄米、四月から本格的に販売が始まっておりまして、何回か御説明いたしましたけれども、五月八日時点で十九万九千トンの、例えば全農は契約を卸と終了し、六万三千トンの出荷ということで出荷済みということでございます。
備蓄米は、一度に小売も、その実需者、外食の方々、持ってこられてもなかなか困る。割と、五月はこのぐらい、六月はこのぐらい、そういった御希望に沿って対応しているというのもございます。ただ、私どもとしては、やっぱりなるべく早く小売店にしっかり並べるというのも大事だということで、全農あるいは卸売業者にお願いをしているところでございます。
先ほどから、POSのお話が一部ございました。POSの値段がちょっと下がっていると。実は、POSのデータの中で、ブレンド米の比率というのが実は私ども抽出して出るところでございまして、備蓄米を出す前の販売の中のブレンド米比率というのが三月の十日の週は一九%でございました。それが今、直近の四月二十八日、五月八日、まさに足下では三三%まで上がっております。一九%から三三%まで上がってきているかなりの部分は備蓄米だと思っておりまして、なおかつ、通常のブレンド米も大分備蓄米も入って売られているというようなこともございます。こういったまさに店頭のPOSでも出てくるようなデータで、しっかり備蓄米がこれからも増えていくように我々対応してまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 国民の手元に早くやっぱり渡るようにしなきゃいけないんだと思うんですよ。
それで、今お話もあったんですけど、複数銘柄を混ぜたブレンド米という形で販売されているんですけれども、いや、ブレンド米に必ずする必要があるのかなというふうにも思うんですよね。元々お米は、産地銘柄でもって値幅があったわけですよ。だから、魚沼のコシヒカリのような高いお米を求める人もいれば、そうじゃない人もいると。むしろ、備蓄米でもってできるだけ価格の安い方で欲しいという人もいるわけです。
今、この値幅がだんだん差がなくなっていて、北海道でいうと、ななつぼしって私好きで食べているお米なんだけど、ななつぼしとゆめぴりかも元々は差があったんですね。ななつぼしの方が安かったんだけど、今はもうほとんど値幅がない状態になっているんですよね。
それで、備蓄米として、一定値段が安い備蓄米が欲しいという方もいるという中では、市場で価格が決まるにしても、この備蓄米の流通の円滑化を図るために、運送業の支援であるとかパッケージ類の制作経費だとか、それから精米するための支援だとか、この備蓄米を単体で販売するための支援の具体化も必要なんじゃないのかなと。
もう一つ、手だてとして言えば、公共調達だと思うんですね。特に学校給食用のお米、学校給食会なんかも、備蓄米の活用を求めているわけです。食育として備蓄米を活用してはどうかということも含めて、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 私は週に何回もスーパーに足を運んでおります。ブレンド米かどうか分かりません。値段が安いやつをひっくり返して、私みたいなでっかい男がこうやって見ているのはちょっと不審者のような感じはするかもしれませんが、様々そういうところで見て、裏を見て、いや、これはやっぱり政府備蓄米が入っているなと、全量ではないと思いますけれども、八、二であったり、七、三であったり、それぞれでありますが、これをもう分かるように表示するかどうかは、これはもう業者さんの判断、パッケージをどうするかは国からこうしなさいという命令はできませんので、まあこれ仕方がないのかなというふうに思っております。
それから、その学校給食なんかについての配慮については、流通する米について、地域ごとの供給状況やスーパー等の小売事業者などの調達状況、それから学校給食向けの配慮した供給が行われるように、これはしっかりお願いをいたしております。集荷、販売する小売に対して、それぞれの段階でお願いをしておりますので、十分でないかもしれませんが、対応はしているというところであります。
ですから、これから四回目を迎えるわけでありますけれども、ようやくPOSがほんのちょっとでも下がったことがこのメルクマールになってくれるといいなと思いますが、まだ国民の皆様方から評価されるような水準では到底ないと思っておりますので、引き続き努力をさせていただきたいと思っております。
○委員長(舞立昇治君) 紙さん、まとめてください。
○紙智子君 はい。
時間になりましたので、国民の皆さんの手に早く届く対策を取っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。