◇アフリカのサブ・サハラ地域の飢餓改善へ
農業家族経営体支援を
○紙智子君 三人の参考人の皆さん、貴重な御意見ありがとうございます。私、日本共産党の紙智子です。最初に、池上甲一参考人にお聞きしたいと思います。二〇三〇年まで、国際目標でSDGsですね、これの一つ目の目標というのが貧困をなくすということを掲げていたと思うんですね。極度の貧困と飢餓の撲滅というふうになっているんですけれども、二〇一五年の世界銀行データで見ると、サブサハラ・アフリカ地域、ここでは貧困率が四一・一%ですか。改善傾向があったんだけれども、ところが、コロナパンデミックによって再び深刻になったと。それで、非常に深刻な状況だということなんですけれども、その一方で、中東・北アフリカ地域が五・〇一%という貧困率で、アフリカ大陸というのは物すごく広くて、それで地域によって全然違うんだと思うんですよね。特にサブサハラ・アフリカ地域は深刻な貧困状態になっていて、教育や衛生状況や気候変動、不安定な政治情勢ということで、いろいろ要因はあると。この飢餓と貧困をなくすための支援が求められているんだと思うんですけれども、そこでお聞きしたいんですけれども、従前の日本のODAの支援の特徴と、それから、日本の支援が海外の研究者からはどのように評価されているのかということについて見解を伺いたいと思います。
○参考人(池上甲一君) まず、後段の海外の研究者の評価ですが、十分その全体について見ているわけではありませんので、ちょっと不十分ではありますけれども、一応、今日の資料の、どこだったかな、ODAの評価のところを少し説明させて、追加させていただいております。何ページだった。デレク・ホールさんとそれから岡田佳奈さんとかの研究を、ちょっと今見当たりませんけれども、要するに、日本のODAが一つは企業の開発、企業の進出の受皿になっているといいますか、ODAが主導して、で、企業進出をする、そういう前提をつくっているという見解ですね。十九ページですね。日本の企業はなかなか、特に農業関係に進出、投資をしたがらない。アフリカは一番したがらないわけですけれど、その理由として、リスク回避とか、もちろんインフラ、JICAの、JICAの行う事業を請け負うということをやるわけですけれど、自分で投資するということはなかなかしない。で、そういう中で、代わりの部分が決定的に欠けているので、そこをODAが先にやって、で、それが整えば企業が出てくるという、そういう見方をしておられます。そのODA主導型のやっぱり海外の農業投資になっているのではないかという見方でございますね。で、それでいいか悪いかということはまあ別ですけれども、現実の問題としてODAが行われていないとなかなか出ていきにくい。それから、ODAがどうしても経済インフラに偏っているということの一つ裏打ちするというか、背景になっているということを考えると、その部分はやっぱり見直す必要があるかなと。やっぱりその社会的な開発とか、それから、最近では増えているマルチセクターですね、への投資とかということを考えていくと、やっぱり経済インフラ重視というのは少し考え直す必要があるだろうというふうに思っております。それから、最初の方のその飢餓の問題というのは、非常に複合的な要因があるので簡単にはお答えできないし、その処方箋がすぐ出るというものでもないということを前提にしていただきたいと思います。やっぱり、一つはやっぱり平和ですね、一番大事なことは。やっぱり紛争かあるいは準紛争のところは非常に多くて、それが民族間対立とか宗教間対立とかいうことを引き起こしている。で、いろんな国内難民、越境難民が増えていて、もう耕したくても耕せないということね、そういう状況になっていて、どうしても緊急援助に頼らなければいけないような状況が生み出されている。それからもう一つが、やはり自分たちのところで干ばつに強いような作物をずっと作ってきたんだけれども、そこのところが食料援助とかで米とか小麦とかに置き換わっていってしまったというところの問題が一つあると思いますね。そこをどういうふうに打開していくかというときには、もう一度やはり食の在り方をきちんと、何というかな、地産地消的な形のものに見直していくことが重要なんですけれど、食生活というのは結構変わっているので、トウモロコシに移ったというのもそうですが、もう一度、キャッサバとか、干ばつに強い穀物、ソルガムとか、そういったものも調理の仕方とかを変えることによってもう一度戻ってくる可能性というのはあると思います。都市で調理しやすくするとか、そういう工夫をすることで国内で生産できる作物も充実するということは一つの方法かなというふうに思っています。
○紙智子君 今のお話にも関わるんですけれども、アフリカの地域でいうと、かつて植民地支配の時代は文化や生活の変容を強いられて、お茶とかカカオとか単一作物を大規模に生産すると、宗主国に輸出するプランテーションを強いられたということもあって、自国のための生産力を、今のお話のように切り捨てられたという経過があると思うんですけれども、やっぱりそれは、それではいけないということで、反省をしながら、今言われたように、地産地消とか国内生産、国内消費を重視するという支援が、こちらの視点も必要なんじゃないかというふうに思うんですよね。その点で、国連で二〇一九年から二八年まで家族農業の十年というのが決められているんですけれども、貧困や飢餓の撲滅に大きな役割を果たしている家族農業に関わって、その施策の推進を求めてもいると思うんですね。EUとか日本でも九五%以上が家族農業という、家族経営体ですよね。気象や土地の条件、技術などが異なるアフリカ地域で、この家族農業としてのなりわいを発展させるためのその支援が必要だというふうに思うんですけれども、この点での参考人、池上参考人の見解を一言お聞きしたいと思います。
○参考人(池上甲一君) まさにおっしゃられるとおりだと思っておりまして、今日もずっと強調してまいりました、開発主体としてやっぱりこの経営を、家族経営をきちんと重視していく。しかも、その中で、実際に農業をやっているのはやっぱり女性が中心なので、その経済的な地位とか社会的な地位をきちんと上げていく、もちろん大綱にもジェンダー重視とかいうことは掲げられておりますけれども、それをいかに現実に手段として、政策として出せていけるか。それから、相手政府や相手の社会とそこのところをきちんと議論して納得してもらえるか、そこのところが非常に大事だというふうに思っています。
○紙智子君 ありがとうございます。続きまして、高橋参考人にお聞きしたいんですけれども、一九九二年の段階でODA大綱が、日本の大綱の中では要請主義というふうに表現していて、相手国が要請するニーズに基づいて行うとなっていたんですよね。これはOECDだとか資材の調達先を日本企業に限定するひも付きだとかなんとかという批判もあったりする中で、それが背景にあってということで変わったんですけれども、ところが、二〇二三年の大綱では、国益とオファー型協力、つまり、日本が実施したい援助を示すというふうになっているんですよね。こうなると相手国のニーズを尊重するという支援にならないんじゃないのかなというふうに率直に思うんですけれども、それについての御見解を伺いたいと思います。
○参考人(高橋基樹君) お答えします。私は、ODAについての考え方は先ほど池上委員がおっしゃったとおりで、国益にも様々な、精神的な、あるいは名誉、そういったものを重んじる国益から非常に物資的な国益まで様々なものがあると思いますけれども、まずODAで達成すべきは、日本国憲法に書いてあるとおり、国際社会における名誉なんだというふうに思います。ですから、中には、日本に全く役に立たないといいますか、持ち出しの援助、実際にそれは技術協力であり無償資金協力として行われているわけで、基本的にそこがひも付きでやられていない部分はたくさんございます。むしろ、これは先生方のお怒りを買うかもしれませんが、協力隊員でさえ、場合によっては優秀なアフリカ人を協力隊員として別の国から例えばマラウイに送る、そういったことも、アフリカ人を別のアフリカの国に送るといったような形での非常に懐の深い援助をつくっていく。これ自体が、先ほど申し上げたとおり、実は巡り巡って日本の利益に返ってくるということが重要で、最強のパスポートというのは、私は、日本の名誉というものがある程度受け入れられている、戦争してこなかった国、アフリカについては害をもたらさなかった国、しかもODAでいいことをしてくれている国というパーセプションは非常にございます。通関をするとき、入管の手続をするときも、JICAの名前を出し日本というふうに言えばそれは通してくれる。単に日本人が犯罪をしないということだけではないと思います。こういったものこそ、まず大事にすべきことであります。ただ、社会の現実として、やはり日本の企業と一緒にやっていかなきゃいけないとか、そういう要請は現実にはあり、私の教え子もたくさん企業さんに就職してODAの仕事に携わったりしますから、現実にはそれはなかなか難しい面があるかと思いますが、まずその本義、人間としての共感のために援助をするということは忘れてはならないというふうに思います。お答えになっていれば幸いです。
○紙智子君 ありがとうございました。ちょっと小笠原参考人に聞きたかったんですけど……
○委員長(石井浩郎君) もう時間が来ておりますので、おまとめください。
○紙智子君 時間になりましたので、済みません。ありがとうございました。