<第217回国会 東日本大震災復興特別委員会 2025年4月11日>


◇農林水産省の責任で福島県の農家の健康管理を/山林の除染/災害援護資金の要件緩和を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東日本大震災、そして東京電力福島第一原発の事故から十四年ということであります。福島の農家は、放射能被曝から逃れられない状況の下で、農業、なりわいに、そして地域の再生を願って頑張っておられます。
 今日は、福島県の生産者の健康不安にどう応えるか、そして農地や山林の放射能の管理対策などについて質問します。
 今日、資料を配付いたしましたので見ていただきたいと思いますが、これ、福島農民連の皆さんが二千六百か所でずっと調べているわけです。この土壌のセシウム137と134の放射線の測定をしていて、その合計値の一部をちょっと今日お示ししています。
 これ、見たとおり、福島の桃農家の園地の空間線量が一時間当たり〇・一七マイクロシーベルトですけれども、農地については一平方メートル当たり三十八万七千三百ベクレル。桑折町の桃園について見ると二十万八千八百ベクレル、野菜畑は十五万九千四百ベクレルです。水田でいうと、福島市で三十一万九百、伊達市で十七万八千六百、二本松市で十六万四千四百ベクレルです。
 誤解がないようにしてほしいんですけれども、農作物にはこれ問題がないと。しかしながら、生産者はこの濃度が高い農地で農作業に携わっているので粉じんを吸っているかもしれないと。生産者はやっぱり常に不安を、健康不安を感じるというのはこれ当然だと思うんですけれども、まず復興大臣、これどう思われますか。

○国務大臣(復興大臣 伊藤忠彦君) 福島の農家の皆様は、東日本大震災による地震、津波、そして原発事故の複合的に災害に見舞われ、震災後十四年が経過をした現在も大変御苦労をお掛けしていると認識をしております。
 そのような状況の中にあって、農業を基幹産業とする福島において、営農再開や風評払拭に向けた皆様の努力が行われていることに対し、改めて敬意を申し上げたいというふうに思います。
 そんな中で、復興庁では、関係省庁や福島県と連携をさせていただきまして各種支援を実施しているところであり、引き続き、被災者に寄り添い、必要な支援を実施してまいりたいと考えております。
 以上です。

○紙智子君 それで、厚生労働省は、電離放射線障害防止規則、いわゆる電離則で、セシウム濃度がキログラム当たり一万ベクレルを超える場合は放射線業務を行う規制の対象にしているんですよね。除染作業などに従事する労働者の放射線防止をするために、除染電離則というのをガイドラインを定めています。
 先ほど紹介したように、福島の農家は一万ベクレルを優に超える農地で農作業しているんですよね。しかし、生産者には健康を守る規則もなければガイドラインもないと。福島の農家が国に対策を求めても、規則やガイドラインを参照にするようにというだけで、まともな対策、施策がないままもう十四年も放置されているわけです。
 私は、二〇一四年に、生産者のための施策、対策を求めたときに、当時は竹下亘復興大臣だったんですけれども、大臣はそのとき、生産者の不安をどう克服していくか、我々も汗をかきたいというふうに言われたんですよね。
 復興庁として、この生産者のための対策を打ち出しているんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 伊藤忠彦君) これまでも政府におきましては、農家の被曝に関する不安を克服していくために、農地の除染ですね、土を剥ぎ取って反転に耕すということなどをさせていただいたり、農業水利施設の放射性物質対策、あるいは福島県が行う県民健康調査、被曝検査などへの支援などを取り組ませていただいております。
 復興庁としても、関係省庁や福島県と連携をし、引き続き現場ニーズを的確に把握をし、農家の皆さんが不安なく作業がしていただけるよう不安解消に取り組んでまいる所存です。

○紙智子君 何か余り動いていないなというふうに思うんですよね。
 それで、復興庁が動かないということであれば、私は農林水産省がリードしてほしいなというふうに思っております。
 労働者は厚生労働省が対応して、放射線の発する原発や医療施設で働く労働者にはこの原子力規制庁が放射線障害を防止するための規則を定めているわけです。その中では、被曝の線量を抑えること、それから汚染防止のための措置と汚染検査をすること、そして特殊健康診断を実施することなどを義務付けているんですよね。義務付けている。
 農林水産省はこの間、農業技術の基本指針というのがあって、その中で言っているのは、農作業における安全の確保のために、厚生労働省が労働者の放射線障害を防ぐために定めたガイドラインにのっとって農作業に従事するというふうにはなっているんだけれども、これ義務付けしているものではないんです。
 生産者は被曝から逃れることができないんですね。生産者の健康を守るためにやっぱり踏み出していただきたいんですけれども、そうすべきではないでしょうか。農水大臣に聞きます。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 現在、帰還困難区域を除く農地におきましては、先ほど復興大臣お話ありました、表土を剥いだり客土をしたりしまして、ヒマワリを植えたりして植物に吸収させようとしましたが、なかなか農林水産省としてのその事業なかなかうまくいかなくて、結局表土を剥ぎ取るということを選択をいたしました。ですから、帰還困難区域を除く農地においては除染が一応完了しているということは御了解いただける話だろうというふうに思っております。
 その上で、それでもやはり農業者の中には不安に思っている方々がおられるということは我々としても十分認識はいたしております。ですから、このため、農業者の中で、放射性物質量それから空間線量、希望者の方々だけですけれども、希望された場合にはしっかり農林水産省としてコミットをして調査をするということを行っておりますし、被曝防止の啓発資料、こういうのはですね、委員は多分御覧になっていると思いますけれども、これによって、例えばふだんちゃんと手洗いをしましょうとか、それからうがいをしましょうとか、ですけど、ふだんやっている作業をしっかりやっていただければ、日常の農作業でいわゆる被曝する量について取り除くことは十分可能だというような啓蒙活動であったり啓発活動であったり、そういうこともやっておりますし、地域において健康講座も開催いたしているところであります。
 それに加えて、農林省ではありませんけれども、環境省では、福島県県民の健康管理基金、ここに交付金を出して、県民の健康状態を把握するための健康診査等の、健康診査を支援しておりますので、我が省としては、このやっぱり農民というのは福島県民ですから、この事業にやっぱり参加していただいて、これを活用していただいて健康の管理をしていただきたいということをお願いしているところであります。

○紙智子君 やっぱり、何回話を聞いても、あくまでも労働者はきちっと義務化して健康に被害をなくしていくための努力されているんだけども、この農民の場合でいうと、まあ希望があれば除染を言ってくださいと、それから希望があれば福島県で健康調査してくださいという、あくまでもそういう形なんですよね。それじゃ駄目だと思うんですよ。
 今まで何度も交渉やってきたんだけど、結局、環境省も厚生労働省も農水省も、みんなうちではないといってたらい回しになってきたんですよね。結局は、ちゃんと受け取るところがなきゃいけないというふうに思うし、そういう意味では、私はやっぱり農水省に、ちゃんと生産者に寄り添う部署を考えてもらえないかと思うんですけど、農水大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先ほども答弁させていただきましたように、やはり農民の方々、農家、そして戻ってこられた方々もおられますので、それから新しく入植された方々もおられますので、そういった方々の不安に寄り添うということは極めて重要だというふうに私も思っております。
 しかしながら、現在、十四年がたって、今どういう状況にあるのか。そして、委員からは新しい制度をつくれということでありますから、制度ということになると設計しなければなりません。そして、農業者だけ切り取ることが果たして適切かどうかということも考えなければなりません。
 ですから、その考え方分からないということではもちろんありませんが、委員の御指摘も踏まえて今後も福島には寄り添ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 やっぱり寄り添う部署ということですから、制度をつくらなきゃいけないとかというのもあるんだけれども、まずは受皿となって、しっかり話を聞いて、で、どういうことが必要かということをはっきり整理して、省庁と協力しながらここをやるというような形でやっていただけないかなということをちょっと再度申し上げておきたいと思うんですよ。
 で、セシウム137の物質的な半減期というのが約三十年です。生産者の方は、この放射線被曝から逃げることできないわけですよね。健康を守る制度をつくるということで、是非そこは考えてほしいということを改めて申し上げたいと思います。
 生産者の健康を守る上で農地の放射線を管理することが重要だということで、これ二〇二〇年の六月に私、質問で、放射性セシウム濃度の測定箇所がチェルノブイリの百分の一って少な過ぎるんじゃないかということで提起をしました、もっと増やす必要があると。そのときの大臣が江藤大臣だったんですよね。江藤大臣はそのときに、今後は、濃度の推移、経年変化などを検証し、分析もしっかりしたいというふうに答弁をされました。
 そして、その後、十二月に、福島県における農地土壌中の放射性物質濃度分布図等の経年変化についてということでまとめていただきました。その点は感謝をいたします。そういうのなかったら分からなかったわけだけど、それをまとめていただいたことで、その分析を見ますと、土壌の採取地点によっては放射性セシウム濃度が、測定値が一時的に増加している年度があると。その要因の一つとしてと書いてあるんですけど、農地土壌の除染を行っていないということや土壌の耕起を行っていないと、耕していない、それから土壌の攪拌がされていないことによって、同一圃場内で土壌中の放射性物質に偏りが生じていると考えられますというふうに書かれているわけですよね、分析して。
 初めに配付した資料にもありますけれども、ちょっともう一回見てほしいんですけれども、果樹園ではどの地域も極めて高い数値なんですね、ベクレル。線量が高い、まあ木に、樹皮に付くというから、その線量が高い樹皮を剥ぎ取るとか水で洗うということは今までもやってきているというふうに聞いているんですけれども、表土、土ですね、表土については高いままで来ているということなんですよ。
 だから、生産者からは、果樹園で表面に砂とか土をしいて、一旦放射線を遮断して、で、そこの濃度が少し下がっているということは報告を受けているんですけれども、この濃度をどう抑えていくかということについては研究とか検証必要だと思うんですけれども、これされているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省技術会議事務局長 堺田輝也君) お答えいたします。
 農林水産省におきましては、発災直後から農地等におきます放射能汚染対策技術の開発に取り組んでまいりました。
 例えば、ヒマワリなどを用いた植物吸収によりまして放射性物質濃度を低減させる研究なども実施してまいりましたけれども、土壌の放射性セシウム量に対して植物に吸収される量というものは非常に少なく、植物による除染は非常に長い時間を要するという結果が出ております。
 こういった中で、営農の早期再開に向けましては、やはり表土の削り取りなどによりまして土壌中の放射性物質濃度を低減する対策ということで進めてきたところでございます。
 あわせまして、農作物への放射性物質の吸収を抑制する効果を持つカリ肥料を施用する対策を推進してまいりました。
 今後とも、営農再開、それから生産者が安心して営農するために必要な取組を推進してまいる考えでございます。

○紙智子君 この資料のように、やっぱり十四年たっても依然としてこういう高いベクレル数が出ているという中で作業しているということですから、是非それは、低めていくということだとかあらゆることをやって、生産者任せでなくて、こういう果樹園の濃度を抑える研究や支援策を示していただきたいというふうに思うんです。
 それから、山林についてもお聞きするんですが、森林や山林の再生ができるのか、一体どこまで進んでいるのか、全く見えないという意見をよく聞きます。
 出荷制限されている特用林産物、これ、さっきも話があって、全体では二十二品目、十四県百九十六市町村に及んでいると。原木シイタケについては六県九十三市町村。既に廃業した人もいます。
 政府は、二〇二四年の十二月に決定した復興基本方針で、帰還困難区域を含めた森林・林業再生を進めるために、林業における作業の実施や伐採木、それから樹皮の扱いなどに関する必要な運用の見直しや林業作業のガイドラインの策定、リスクコミュニケーションなどに取り組むというふうに書いてあるわけです。
 この林業作業のガイドラインというのは、今できているんでしょうか。

○政府参考人(林野庁次長 小坂善太郎君) お答えいたします。
 農林水産省におきましては、令和六年三月十九日に閣議決定いたしました復興の基本方針に基づき、議員御指摘のとおり、帰還困難区域の森林整備の再生に向け、一つは、森林内の空間線量の分布を明らかにするためのモニタリングの実施、二つ目としまして、安全に森林作業を行うための事業体や作業者向けのガイドラインの作成、さらに三つ目としまして、航空レーザー計測データ等を活用した森林整備が必要な箇所の洗い出し、こういうことに取り組んでいるところでございます。
 このうち、ガイドラインの作成につきましては、令和六年度におきまして間伐を実施した作業者の個人線量計のデータを収集、分析いたしまして、林業の作業いろいろございます、伐倒や作業道の作設、そういった作業内容ごとの被曝量を推計する、そういうことを検討し、さらには、専門家の意見を聴取し、作業に当たっての留意事項を取りまとめたところでございます。
 これらの内容を踏まえまして、今年度中に安全に森林作業を行うためのガイドラインを作成するとともに、リスクコミュニケーションにもしっかり取り組んでいく考えでございます。

○紙智子君 林業事業者のガイドラインというのも大事なんですけれども、農業用のガイドラインも出してほしいと思いますし、山が見捨てられたと思われない再生プランや工程表を示すように求めておきたいと思います。
 それから、あと残りの時間で、災害援護資金についてお聞きします。
 昨年、本委員会で私、阪神・淡路大震災のときに被害を受けた被災者が活用していた災害援護資金の返済について神戸市が免除したということを紹介をして、対応を求めました。当時、土屋復興大臣だったんですけれども、免除は公平性の確保が重要だと、東日本大震災においては無資力等の場合は市町村が免除できるが、いずれにしても今後の課題だという答弁があったんですけれども、それで、大臣、その後どうでしょうか。どういうふうに現状はなっているでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 伊藤忠彦君) 私も、四月一日のNHKの「クローズアップ現代」、あれで災害援護資金についての報道をされまして、大変胸を痛めたところでございますが。
 災害援護資金に関しましては、これまで復興庁に対しても被災地から御意見、御要望、多く寄せられておりまして、内閣府にもその旨伝えて、今般ようやく、災害庁の、坂井さんのところで取り上げていただいた上で、償還期限の延長に関する法令改正を作業を進めていただいていると承知をいたしております。
 被災自治体には、返済困難な被災者の事情をよく聞き取るなど最大限寄り添いつつ、少額返済、猶予、免除など、きめの細かく対応していただくことが重要と認識をいたしております。
 復興庁といたしましても、被災地に寄り添い、御意見、御要望を聞き取って、関係省庁に情報提供し、何とか形を付けてまいりたいと、安心していただけるようにさせていただきたいものだということでやってまいります。

○紙智子君 それで、防災大臣がテレビでもおっしゃっているということで、それでやっぱり猶予ということだと思うんですね。猶予の対象を広げるかという話だと思うんだけれども。やっぱり、もう十四年たってきていて、現地の声からいうと、払えなくて大変な人たちに対して相変わらず請求書が届くと。それから、自治体の方は、心苦しいけれども出さなきゃならないということでずっと何年も続いていて、これから先もということはとっても苦しいことであって、そして、実際に復興を再生させようという側から見ると、やっぱりもうこれは、もう本当に、阪神の、神戸市がやったような形にならないものかと。猶予ではなくて、なくなる方向に行かないだろうかというふうにつくづく思うわけなんですけど、その辺いかがでしょうか。やっぱり難しいとおっしゃるんでしょうか。

○委員長(小沢雅仁君) 申合せの時間が来ておりますので、坂井担当大臣、簡潔にお願いします。

○国務大臣(防災担当大臣 坂井学君) この災害援護資金制度そのものは返済を前提とした貸付けの制度としてつくられたものでございまして、税金を原資としております以上、国、地方自治体の債権を保全する必要があること、また、期限どおりに実際返済をされておられる方も大勢いらっしゃることなどから、まずは返済に向けて御努力いただくことが原則であると思います。
 しかし一方で、もう委員も十分御承知だと思いますが、東日本大震災については、通常の免除事由のほか、貸付けを受けた方が一定の無資力要件を満たす場合にも特例的に免除が可能とされておりますので、こうした制度をきめ細かく御活用いただくよう対応してまいりたいと思います。

○委員長(小沢雅仁君) おまとめください。

○紙智子君 ちょっと時間になりましたけれども、是非、もっと踏み込んでいただけるように御努力お願いいたしまして、質問終わります。