<第217回国会 農林水産委員会 2025年3月13日>


◇年に平均8万人が離農しているのに、新規就農者が3万人にすぎない/「地域おこし協力隊」は増えている。農林水産省も本気になって担い手支線を/農家の育成・確保を国家プロジェクトに位置づけた総合的な支援策を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私も先日の大臣の所信を受けて、たくさんのことがあるんですけれども、その中の担い手のところに焦点を絞って質問をしたいと思います。
 農業者が急減する中で、担い手の生産性向上させながらより多くの離農農地の引受けを進めていけるように農地の集約化への支援制度の見直し、強化を検討する等々、いろいろちりばめられていると思うんですけれども、それで、この生産者の減少に歯止めが掛かっていないと。米の不足、価格高騰をどう打開するかも問われていますけれども、ここでも生産基盤の弱体化の問題や農地と生産者の減少は課題になっていると。で、各地回りますと、もう農業で生活できないよとか、あるいは後継者がいないという悩みが出されます。担い手をどう確保するかというのは、これ農業にとってもそうですけど、地域社会にとっても非常に大事な課題だというふうに思うんですね。

配布資料1〜3

 資料配付をしましたので、一枚目、見てほしいんですけれども、この基幹的農業従事者、これ二〇〇〇年から二十年間で二百四十万人から百三十六万人に半減していると。特に、二〇一五年から二〇年の五年間で二割以上減少しているわけです。二〇〇〇年以降でいうと最大の減少割合になったと書かれています。このままいけば三十万人に減少するという資料だと聞いています。
 これ、ずっとそれが当たり前のように言われているんだけれども、なぜ三十万人になるのかというのをまずちょっと説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) 基幹的農業従事者については、二〇四〇年に三十万人程度まで減少するおそれがございます。
 この内容ですけれども、現在の農業者の年齢構成につきまして、現在六十歳以上の層が約八割、九十万人となっており、今後、高齢化の進展により順次リタイアしていくこと、また新規就農者の動向などの趨勢を踏まえて、今後の構造変化の大まかな見通しで二十年後の基幹的農業従事者の数を試算したものでございます。

○紙智子君 それで、この資料の中で右側の方になるんですかね、下の方に赤でくくってありますけれども、この表を見ても、二十年後七十歳になる四十歳代以下の人だけで見ると十三万人ですよね。
 で、今のこの基幹的農業従事者が百十六万人だと、一人の生産者でいうと大体百人ぐらいの食料を生産しなきゃならないという計算になるわけなんですね。生産者が三十万人になるということは、一体どういう日本になるんだろうかと思うわけですよ。
 それで、今、中山間地の話ありましたけれども、中山間地域でやっている人たちが残れるんだろうかとかいうことも考えますし、例えば人口が減少しているので、今一億二千万ってずっと思っていたんですけれども、例えば一億人というふうになった場合に、一人の生産者が大体単純計算でいうと三百五十人分の食料を生産することになるというんだけど、そんなことできるんだろうかと思うわけですよね。
 生産者の減少を放置すれば、これ、国民に安定的に国産の食料を供給することができなくなるんじゃないかと、それから食料自給率の低下につながるんじゃないかというふうに思うんですけど、この点、大臣の御認識、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) そういうおそれはやっぱり持っておかなければならないと思っています。持っておかなければなりませんが、しかし、そうならないように何とかあらゆる政策を駆使して頑張らなければいけないというふうに思っております。
 先ほど舟山先生とも随分議論をさせていただきましたが、やっぱり単位面積当たりの生産性を上げるということも大事ですし、一人の農業者が生み出すその生産の量、価格、品質、それも上げていく必要があるんだろうというふうに思っています。
 ですから、一人当たりの生産性を上げなければなりません、確実に減るわけですから。そのために地域計画を今一生懸命作っていただいています。一応、三月三十一日が期限となっておりますが、間に合わない方もおられる。そういう方には、農林水産省がしっかり寄り添って、何が難しくて計画が期限内にできなかったのか、その意見聴取をした上で地域計画を作り上げていくことが大事だと思っています。
 そして、分散錯圃の農地の形状のままでは生産性は上がりませんので、地域計画がしっかりできたら、土地改良事業、農地の改良事業等をしっかりやって、そして農地の大区画化もやっぱりやっていく必要があると思います。
 そして、やっぱり、これから先、技術はとんでもない勢いで進歩をしていきますので、IoTであったりスマート農業であったりですね、様々なそういった生産向上に資する人間の手以外の力も使いながら、何とか食料自給率を維持できるように、更に向上できるように頑張っていきたいと考えております。

○紙智子君 食料自給率向上させるようにというんだけれども、できるのかなって、三十万になったらですね。本当に地域社会そのものを維持すること自身も本当に大変になるんじゃないかというふうに思うんです。
 それで、配付した資料にありますように、二〇一五年から二〇二〇年の五年間に基幹的農業従事者が四十万人減少しているわけですよね。これ、一年間にすると八万人が離農しているということになるわけです。それで、一方で新規就農者が三万人ということなので、これ、新規就農者が離農者数には追い付いていないということですよね。日本の農業がこれ危ないというふうに言っても過言じゃないと思うんです。
 今、新規就農者を増やす目標というのは、農水省は持っているんでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 目標としては、平成二十五年の日本再興戦略におきまして、十年後に四十代以下の農業従事者四十万人にするという目標を立てました。立てましたが、まあ十年後となる令和五年の数値は二十一万五千人でございます。目標を達成していないということであります。
 なお、次期基本計画での目標の設定については、企画部会に諮っていただいておりますが、目標、KPIの例をお示しした上で御議論をいただいているところであります。まだ、目標、KPIは現時点でまだ決まったものではありませんので申し上げることはできませんが、基本計画の策定に当たっても、しっかり整理した上でお示しをしたいというふうに思っております。

○紙智子君 計画の中で議論している最中ということもあると思うんですけど、今の時点でも持っていないというのはちょっとなというふうに思うんですよね。
 新規就農者に関する統計というのは何があるのかということについて、これ、統計部長に説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省統計部長 深水介君) お答え申し上げます。
 新規就農に関する統計といたしましては、農林水産省で毎年実施しております新規就農者調査におきまして、個人経営体の家族で、過去一年間にその家族が行う農業に従事することとなった新規自営農業就農者、過去一年間に法人等で雇用され農業に従事することとなった新規雇用就農者、土地や資金を独自に調達して、過去一年間に新たに農業経営を開始した新規参入者のそれぞれの人数につきまして全国値を把握しているところでございます。

○紙智子君 今、新規就農者調査ということで、三つ、種類ですかね、言われたと思うんですけれども、それで、その全国的な数字は私も前に聞いたことがあるんですけれども、都道府県の数字というのは出ていないと思うんですよね。この新規就農者がなぜ増えていないのかということの分析なんかも含めて、そこはどうなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) お答えいたします。
 新規就農者が増えていない分析でございますけれども、委員御指摘のように、新規就農者調査によりますと、平成二十七年の約六万五千人から直近の令和五年は約四万三千人となり、約三割減少しているところでございます。
 その内訳を見ますと、新規自営農業就農者、これ親元就農などを含むものが平成二十七年の五万一千人から令和五年の三万人と減少傾向で推移し、外部からの新規参入者、これは平成二十七年の三千六百人から令和五年は三千八百人で、これは僅かながら微増しております。また、新規雇用就農者につきましてはほぼ一万人前後で推移しておりまして、新規自営農業就農者の減少が新規就農者全体の減少要因となっております。
 この新規自営農業就農者が減少した原因というのは様々な要因があると思いますけれども、年齢別に見ると、一番減っているのが六十歳から六十四歳の就農者が一万人、八年間で減少しております。これは、生産年齢人口が減少する中で、六十歳代だけではなくて、従来は一定程度帰農が見込まれていた六十代前半の年齢層、これは全産業で奪い合いになり、六十歳以上の就農者が、ああ、就農者じゃなくて、雇用全体で六割増加するという中で、他産業にて定年延長などをするというところでこの大宗のニーズが高まっているという中で農業における人数が減っているということが大きな原因なのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 今の分析でいいのかどうかなというのはちょっとよく分からないですけど、もう一つちょっと聞いていましたけれども、都道府県別の数字って出ていないんですけれども、これは出さないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) 都道府県別の数につきまして、前国会でも様々な議論があったと承知しておりますけれども、統計調査については、全国別の調査ということで、都道府県別の調査を行っていないということは御説明をいたしました。
 その中で、何らかの目安となるものを出せないかということについて、我々としても新規就農者数の目標及び実績を、各都道府県で出している都道府県サポート計画、これに基づいた調査をやってみたところでございます。同計画で示された就農調査を再度確認をして分析を行ったところ、各都道府県の新規就農者数の合計は、令和元年から四年にかけて一万一千二百四十六人から一万一千九百二十六人と微増傾向になっています。
 この計画は、都道府県が予算事業を執行するに当たって国の支援策の活用を念頭に置いて調査を行ったものでございますので、全体の新規就農者数よりかなり少なくなっているというふうに思いますけれども、参考としての傾向になると思います。
 この調査結果が出そろっている令和四年につきましては、過去五年間で新規就農者数が最多となった自治体が十四、最少となった自治体が八ございます。この増加と減少の要因ですけれども、具体的には、就農から経営安定までの一定的なサポート体制をしっかり整備した、また法人における働きやすい雇用環境を整備したなどの取組が新規就農の呼び込みに効果を上げたというふうに考えております。
 農水省としては、これまで実施した新規就農施策というものの効果が現れていると考えておりますので、こういった都道府県との連携も更に踏まえつつ、必要な支援を一層推進していきたいと考えています。

○紙智子君 ちょっと、以前、都道府県別の資料を出してほしいと言ったときに出てこなかったんですよね。だけど、やっぱり本当に増やそうと思ったら、ちゃんと全体として把握して、国自身がそれをどうやって増やしていくのかということを具体策を持っていかなきゃいけないことだというふうに思うんですよ。
 それで、かつては親元就農ということも多かったと思うんですけれども、今、学校を卒業した方を新規就農につなげていくというのもすごく必要なことだと思うんです。令和五年の新規自営農業者は三万三百三十人というふうに言っていましたけれども、新規学卒就農者で七百八十人だと。雇用就農者では九千三百人中千四百人だというふうに聞いています。
 農業大学校や農業高校を卒業して就農した人がどれぐらいいるのかというのは把握されているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 杉中淳君) お答えいたします。
 令和六年三月に農業大学校、農業高校を卒業した方のうち就農した方の数につきましては、農業大学校におきましては卒業者千六百九十八名中八百九十七名、農業高校では卒業者二万千四百七十一名中五百六十七名が就農されたというふうに把握しております。

○紙智子君 都道府県の新規就農者の統計もすごく大事だと思うし、学校卒業した後、就農者がどうなっているのかという把握はやっぱりもっとしっかりやっていかないといけないと思うんですよ。学校は出たけれども違う仕事に就いていたりとかするわけですから。そういう意味で、本当に新規就農者、担い手をしっかり育成して世代継承していくという構えを農水省自身がしっかり持っていくということが必要ではないかと思うんです。
 昨年は、私、福島県でワンストップサービスを行って、福島県の農業経営・就農支援センターを設置して新規就農者を増やしているという事例を委員会でも紹介をさせていただきました。今日は、福井県の、前にお邪魔したんですけれども、かみなか農楽舎というところがあるんです。御存じの方もいるかもしれませんが。
 それで、七年前なんですね、二〇一八年に、福井県の若狭町の農業法人かみなか農楽舎というところを訪問させていただいたんです。ここは、地域住民、民間企業、それから若狭町が協力して出資をして設立した法人で、十七年間で四十五人研修生を受け入れて、そのうち二十六人が町内に就農して定着していたんですね。二十代から三十代の、Iターンですね、Iターンの若者たちが町内の農地の大体一割、二百三十ヘクタールを耕作をしているということだったんです。
 もうあれから七年たつのでどうなっているかなと思って聞いてみましたら、今も毎年新しい担い手を生み出していて、現在、卒業した担い手だけでも、専門学校ですね、卒業した担い手だけでも町内の農地一五%ぐらいを担っているんだということで、募集も掛けているわけなんですね。
 それで、どうしてこの農楽舎を選んだんですかということで、現地の方に聞いてみました。それからいろんな苦労や課題も聞きました。そもそも町としてはどんな考えでこの取組を始めたのかというふうに聞いたんですけれども、とにかく町長さん、危機感でいっぱいだったわけですね、このままだったらもう町が消えてしまうと。若い人はみんな外に出ちゃって、もうあと年寄りしかいないということで、このままだったらもう大変だということで、大変な危機感の中で、何とかいいやり方はないかということで、知恵を絞ってこういう法人をつくったわけなんですよね。
 そして、実際に若い人を受け入れてきて、それで町の中はどうなったかといったら、今までは若い人いなかったのが、若い人が来てやってくれていると。今まで子供の遊ぶ声もしなければ赤ちゃんの泣く泣き声もしなかったと。それが、若い人たちが来て、家族つくって、農作業するのに赤ちゃんの泣き声聞こえるようになったといって、お年寄りの方がもう涙流して喜んでいるという話と、それから、新しく入ってきた人に聞いたら、どうですかといったら、いや、物すごく温かく迎え入れてくれていて、大事にしてくれていると。そういうことを、地域との結び付きというのがつくられてきているんだなということを感じて、とても感銘をしたんですよね。
 そういう経験というのはほかにもあると思うんです。各地のところでも努力があると思うんですけれども、そういう経験をどういうふうに把握して、そして共有するように、農水省、しているんでしょうか。これ、大臣にお聞きしますかね。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) この二つの事例については聞き及んでおりましたが、今日先生から更に詳しい話を聞いて、すばらしいと思いましたね。
 やはり、お金を配ることよりもいかに温かく迎え入れるか、そして、その地域のコミュニティーに、やはり、Iターンであれば、まあ悪い言い方をするとよその人ですから、よその人が入っていって疎外感を覚えるようなことはない、そして温かくその地域のコミュニティーの一員として自分を認めてくれるということは、もうとてもいい話だなと思って聞いておりました。
 こういう例はどうやって農林水産省発信したらいいかはよく考えようと思います。確かに、地域が連動しているような研修農場をつくったりとか、いろいろやっています。それから、ワンストップでやるようなこともやっておりますけれども、しかし、こういういい事例をもっと知ってもらうことが、そして、できれば基礎的な自治体に対して、こういう事例があるけれども、あなたのところも、そんなに限界集落なんて言われてしんどいんだったらトライしてみたらというような働きかけをするとか、農政局もあるわけですから、そこの地方参事官なんかを活用してこういうことをやはり普及啓発することが成功事例の横展開につながるなということを今日は大変よく感じました。ありがとうございます。

○紙智子君 それで、ちょっと時間が押してきたのでこちらの方で言っちゃいますけれども、やっぱり新規就農者を増やす目標と段取りが大事だと思っていて、注目したのが、地域おこし協力隊が最近増えていることなんですね。
 資料の二枚目を見てほしいんですけれども、農水省の新規就農者育成総合対策と総務省の地域おこし協力隊の資料を抜粋したものなんですね。
 地域おこし協力隊、二〇二六年度の目標が一万人となっていますけれども、農水省の方は目標は特にないとなっていまして、それで、協力隊の活動に関する経費でいうと、総務省の方は二〇二五年でこれ五百五十万円、そして報償費で三百五十万円、その他二百万となっています。
 それで、農林水産省の方のこの経営開始資金というのが百五十万円。これ、実は二〇一二年の制度の発足以来ずっと同額のまま続いていると。
 一方、地域おこし協力隊の方は、下の方の表ですけれども、二〇〇九年が三百五十万円、二〇二五年度、来年度が五百五十万円で一・五倍化、増額と。
 新規就農者を増やすということでは、これ、農水省こそ本気になって、予算も含めてやっていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 実は、私の長男も、一部上場企業に勤めておったんですが、いきなり、突然辞めて地域おこし協力隊に行ってしまって、その地域に根付いて結婚して、家庭を持っております。やはり地域おこし協力隊は、やはり地域を再興する上ではすばらしい、人の呼び込むツールとしては有効だと、びっくりしましたけれども、思っております。余計なことを言いましたが。
 確かに、年間百五十万の資金支援があります。それから、しかしですね、機械とか施設等の初期投資への支援、これは経営発展支援事業、事業名はこれですが、これがございますし、長期無利子の青年等就農資金の貸付け、これもあります。そして、もう先生御存じだと思いますが、新規就農する際の支援の内容としては、いわゆる資金面の支援としては、支援額は最大四百五十万円、百五十万円掛ける三。そして、機械と施設等の導入も、いわゆる経営発展型の支援であれば、これは県の百二十五万円というものを乗せた数字ではありますけれども、八百二十五万までありますし、投資支援コースになりますと最大では一千二百万までありますので、農林水産省としてもやはりしっかり応援をしていくということであります。
 御指摘の経営開始資金についても、事業開始以降に県外からの新規就農者が大体二・七倍に増えたという実績を上げております。ですから、その後のフォローアップについても御指摘がありましたが、資金支援終了後も大体九八%の方が営農は継続していただいているということでありますから、結構いい感じだなというふうに思っております。
 さらに、今年、令和六年度の補正予算からは親元就農、これは御存じのような見直しもしたところでありますので、経営のバージョンアップをすれば支援の対象となる新規就農として認めるということでありますから、様々な政策を駆使してこれからも応援していきたいというふうに考えております。

○紙智子君 ちょっとどんどん時間が押してきちゃっているので、本当は総務省に聞こうと思っていたんですけど、起業支援だとかサポート支援とか、空き家の改修支援とか、いろいろとあるんですよね。それで、本当にいよいよそこに入ろうと思ったときには、空き家の対策なんかも含めて支援額があるというのがちょっとその表の中でもあるんですけれども。
 それで、農林水産省の方の新規就農者の支援策というのも併せて書いているんだけれども、地域おこし協力隊の取組に合わせてくださいと言うつもりはないんですけれども、しかし、やっぱり農林水産省の方がもっとそこを、熱心に担い手を育てていくという姿勢を示すことが必要じゃないのかというように思うんですよ。
 今地域計画が作成の途中だと思うんですけれども、担い手をどう確保するかという議論もされているんだと思うんです。農林水産省としては、さっき、これ舟山さんの質問とも重なるんですけれども、効率的かつ安定的な経営体と、農業で生計を立てられる方の支援はあるんだけれども、そうじゃない人、兼業農家だったり自給的農家だったり、効率的、安定的な経営体をサポートするという位置付けになっているんですけど、これもっと幅広く、その兼業の人も含めて幅広い人たちを含めて支えるような政策に変えてほしいと思うんです。
 兼業農家も自給的農家も新規参入者も担い手として定着するように、本当に支援を具体的に強化するべきではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) おっしゃっていることは大変筋が通っておられると思います。
 現状では、兼業農家、それから、もう自分のところで食べてしまう、御親戚、縁故米とかで処理してしまうような方々で全体の農地面積の四割を保全していただいているというのが今の日本の農地の現状でありますから、それはもう事実として、この方々がいなくなったら農地の保全が難しいということは間違いない事実だというふうに思っております。
 そして、農地を手放す方が多く見込まれます、残念ながら。その方々は地域計画の過程の中でだんだん明らかになってきました。これはやはり兼業の方が多いというのもやはり事実としてあります。ですから、政策にこだわることなく、様々なプレーヤーに入ってきてほしいと思います。
 ただ、申し上げておきたいことは、兼業農家や自給的農家の方々も、中山間直払いであったり、それから多面的機能支払だったり、まあ水活は九年まで、九年以降は変わりますけれども、水活であったり、そういったものの対象にはなることはできるということでありますから、全くその支援がないということではないというふうに御理解いただければいいと思います。
 今後は、農地所有適格法人の出資要件を緩和するとか、(発言する者あり)ちょっと短くした方がいいと。もうやめますが、これでやめます、じゃ、時間がないんでですね。

○紙智子君 ありがとうございます。
 最後にちょっと質問をしたかったのが、将来、生産者が三十万になるって想定するなら、それをどうやって打開していくかというか増やしていくかということに発想を変えていくというか、減るからしようがないんじゃなくて、やっぱり増やそうよというふうにいかなきゃいけないというふうに思うんですよ。
 それで、やっぱり生産者の育成を政府が国家プロジェクトに位置付けて、もう本当に総合的に取り組んでいくことが大事じゃないかと。
 私、先日、茨城県の鯉淵学園の教員を長くやられてきて、そのあと有機農家を育てておられる涌井義郎さんという方とお会いして懇談したんですね。こういう本出しているんですよね。(資料提示)「未来の食と環境を守れ」ということで本出していて、それで、涌井さんは、年平均で八万人が離農しているのに新規就農者が三万人でいいのかと考えて、新規農業者を増やす試算を出されているんです。
 この三枚目に配っている資料なんですけど、新農家百万戸育成計画となっていて、それで、就農準備資金、これ研修中の二年間、就農後は経営開始資金を三年間給付を受けられると、合わせると五年間ということなんです。初年度は対象が六万人で、千二百億円になるんですけれども、二年目は更に六万人ということで二千四百億円だと、五年間で六千億円必要というふうに試算されています。指導農家支援というのがあって、これ六百億円で、涌井さんが言うには、十二年掛けて、自分、先生終わった後ですね、十二年掛けて独自にずっとやっていて、二十人の就農者を育てたんだという話なんですね。指導農家には生産者や県の指導農業士も考えられると。四万戸ぐらいの指導的農家をつくってもらって、そして二年間行う研修支援をやると。指導的農家に年百万円、六万人でやるということになると、支援をやると六百億円だと、二年間だと千二百億円だと。農家を育成するには、技術と経営を指導し、研修農場などの学びの場がどれだけつくれるかが鍵だと。行政や学校や農家連携システムが必要だって言われたんですね。学校を卒業して新規就農につなげる支援の拠点を全国に三百か所ぐらいつくることを前提にして三千四百億円だと。それらを計算すると、初年度で五千二百億円と見込まれていて、これはもうあくまでも、大臣、一つの事例ですけれども、こういうことを提案を考えている方がいらっしゃると。
 こういう項目で施策と予算をやっぱり農水省としてもそういうプロジェクトとして考えていく必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 質問通告をいただいて、とてもちょっと本を読む余裕まではなかったんで読んでおりませんので申し訳ないんですが、役所の諸君がちょっと読んでくれて、要点だけ私にレクチャーをしてくれました。大変炯眼である部分もある一方、ちょっとなかなかかなという部分があります。
 ですから、様々な先生方が様々な視点に立って日本の未来の農政の姿、農村の姿、農業の姿を考えてくださることは大変有り難いことでありますので、決して一学者の意見だというようなことで一笑に付すことなく、こういったものについても検討材料の一つとしては私は有効なものであろうというふうに考えます。

○紙智子君 もう時間になりましたから、やっぱり本当に本気度が問われているときだというふうに思うんですよね。それで、安全、安心な食料はやっぱり日本の大地からにしようと、そして国家プロジェクトに位置付けて、新規就農者を増やす対策を是非とも具体化を図ることができるようにということを申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。