<第216回国会 農林水産委員会 2024年12月19日>


◇酪農経営は危機的状態、緊急支援を求める

○紙智子君 紙智子でございます。
 酪農、畜産価格について質問をさせていただきたいと思います。
 ちょっと最初に、通告していないですけれども、大臣、十二月十三日付けに報道ステーションで酪農のあれを特集していたんですけど、御覧になってはいませんかね、十二月十三日……(発言する者あり)あっ、そうなんですか。
 千葉県で、ちょうど今の時期って学校給食もうないんですよ。牛乳を飲む量がぐっと減るということがあって、千葉県内で無料配布して、とにかく年末年始は飲んでもらいたいということのキャンペーンを張っているのが、映像が流れて、千葉で。それで、そこに酪農家の女性の方で、西岡牧場というところの方がインタビューに答えていて、コロナが終わって酪農の景気も戻ってくると思って、みんなお金を借りて何とかしのごうと思っていたのに、何も戻ってきていない上に、円安でじりじりじりじり厳しくなっていて、来年は離農が加速するんじゃないか、心配だということをおっしゃっていたんです。
 これ、聞きたいことは、さっき徳永さんもされていたこととも重なるんですけれども、中央酪農会議が十二月二日に発表した調査、この中で数字言っていましたよね。酪農家が一万戸割れ、六割の経営が赤字、八割が経営環境が悪いと回答して、半数が離農を検討という報告なわけですよ。それで、実際にこの間の離農のペースが年率で六%って、これまでにない高水準になっていると。都府県は北海道よりもっと高くて八%ということで、物すごい加速的になっているということの数字だったと思うんです。
 それをもうちょっと具体的な表れで言うと、さっき言ったテレビの映像の中で示されている声になってきているというふうに思って、それでちょっと、私も大臣にそのことに対する危機感というか認識をまず最初にお聞きしたいと思うんです。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これまで私も酪農政治連盟というのの幹事長をずっとやってきましたので、酪農家の方々とはかなり密にお付き合いをしてきました。
 様々厳しい場面もあって、特に系統に入っていらっしゃる方々については頭数を減らしていただいたり、乳量を減らしていただいたり、様々な現場の御苦労もいただいた上で今があるわけですが、それでもこうなるということですので、これは本当に厳しい状況だなと。これ以上増やすことは国民にとっても決して利益になりませんので。
 国民は新鮮な牛乳を求めています。先ほどチーズのお話もありました。様々な技術革新も進んでいるわけでありますから、しっかりとした支援を考えていきたいと考えております。

○紙智子君 危機感ということでは多分共有していると思うんですけれども、じゃ、なぜこうなっているのかということについて、端的に言うとどういうふうにお考えですか。(発言する者あり)なぜこういう厳しい状況になっているのかということです。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) それは複合的な原因があると思います。酪農家の中の方には借金がないから今のうちにやめようという方もおられるというふうに聞いています。もう逆に借金があるからやめられないという方もおられると聞いています。そして、もう後継者がいないから、そして自分の息子以外にその後継者も見付からないからやめるという方も、黒字であってもですね、という方もおられますので、複合的な原因があると思います。
 本当に経営が厳しくて、もうにっちもさっちもいかなくなってやめるという方も当然おられるわけであって、ここに至る経過について、政策的なことについてお尋ねになっているんだと思いますが、そのタイミングタイミングでは、現場の方々と意見交換をしながら一生懸命やってきたつもりです。しかし、現実の現象としてこのようなトレンドが止まらないわけでありますから、一定の責任はやはり政治にもあるんだろうと思っています。
 常に反省に基づいて前を向いていかなきゃなりませんので、これ以上このトレンドが加速化しないようにしっかり検証を進めてまいりたいと思います。

○紙智子君 農水省から資料いただいたものを見ますと、令和二年度、つまり二〇二〇年には、トン当たりで六万七千円の程度だった配合飼料の農家の購入価格なんですね。令和四年度、二〇二二年には、これ、十万を超える水準まで高騰しているわけですよね。
 それで、お配りした資料がありますけれども、ちょっと数字が小さ過ぎて見にくいんですけれども、これ、輸入原料価格の推移と配合飼料価格安定制度の補填の実施状況というふうになっています。
 それで、これ見てもらうと、令和四年、つまり二〇二二年ですけれども、黄色の部分、棒グラフですね、黄色の部分というのは異常補填ですけど、一番大きいときで一万千三百四十六円、その下の緑の通常補填が五千四百五十四円で、合計すると一万六千八百円の補填が出ていると。それで、年平均にすると八千八百二十五円が補填されているということなんですよね。
 それで、これちょっとお配りしていないんですけれども、二〇二二年の営農類型別の農業経営統計ってあるんですけど、この中で見ると、農業経営の所得というのはマイナス四十八万円になっているんですよ。配合飼料の補填はされているんだけれども、酪農経営が赤字ということで、総合乳価も百十八円というふうに引き上げられているんだけれども、それでも、二〇二二年のこの営農類型別の農業経営統計の調査を見ると、酪農経営の年収というのはマイナス四十八万円ということなんですよ。
 この赤字ってどう考えたり分析しているのかということについて、参考人の方にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 松本平君) 委員から御指摘ありました令和四年の経営統計調査、こちら酪農の経営につきましては、飼料費、また動力光熱費の上昇によりまして、経営収支が赤字となっております。令和四年十一月以降、四回にわたりまして乳価の引上げにより、この経営収支については改善する方向であると私は考えているところでございます。一方、飼料、その他のコストの高止まりもあり、輸入飼料への依存度が高い経営や借入金の返済がある経営につきましては厳しい状況が続いていると承知しております。
 安定した酪農経営を推進するために、引き続き、脱脂粉乳の在庫対策、需要対策、需要拡大を支援することにより需給を安定させ、国際情勢に影響を受けにくい構造転換するため、国産飼料の生産、利用の拡大を推進してまいりたいと考えております。

○紙智子君 それでね、この四十八万円赤字となっている中には、クラスター事業などによって借り入れた借金の返済は含まれていますか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 松本平君) こちらにつきましては、返済は含まれております。(発言する者あり)減価償却費で含まれています。

○紙智子君 減価償却費として含まれているということだけども、実際上はこれ入っていないですよね。そういうふうに説明を受けましたよ、先日。

○委員長(舞立昇治君) 松本局長、もう一度。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 松本平君) 申し訳ございません。
 改めて正確に申すと、減価償却費として返済は含まれております。

○紙智子君 ちょっとそこのところ、私も頭が回らないんですけれども、飼料への補助を幾分か手厚くしてはこの間やってはいるけれども、酪農経営の改善にはつながっていないんじゃないかということを言いたいわけですよ。
 それで、加えて、次の年の令和五年の、二〇二三年、この表で見ると、飼料価格が一トン当たりで九万五千円から九万八千円ということで、高止まりしているわけですよね。だけど、この去年の十月の段階で、これ青色の棒グラフありますけれども、青色の緊急の補填金、これが大きく減少していって、一月以降は打ち切られているわけですよ。
 これは、打ち切られているのはなぜなんですか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 松本平君) 配合飼料価格安定制度につきましては、急激な高騰、これに対しましてその補填金、異常補填を発動するという形になっております。今回は、このような状況から、急騰している状況でないというところから発動されていないということになっております。

○紙智子君 そうなんですよね。
 だから、実際上はずっと高止まりしているんだけれども、今まで補填されていたものが出なくなっているということなわけですよ。そういう意味では、やっぱり本当に十分な補填になっていないと。二三年度は、ですから、二二年の四十八万円の赤字の状況から更に悪化している可能性もあるんだと思うんですよね。
 価格が下降局面だというふうに、上がり過ぎていたのが少し収まってきているとは言うんだけども、しかしながら、直近でも飼料はトン当たり九万円超えている金額に高止まりしているわけですから、これらのやっぱり緊急対策必要じゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 非常に悩ましいところでございます、正直なところですね。おっしゃるように、九万五千円ぐらい、ちょっと正確に数字覚えておりませんが、大体それぐらいです。一番高かったときよりかは安いですけれども、もう非常に二年前から比べればとても高い水準でありますから。
 緊急対策思い出しますけれども、保証基準価格、いやいや、配合飼料価格安定制度を発動するに当たっては、過去一年の平均を四半期と比較をして発動させるというルールなのを二年半に延長して、過去の安いときの数字も入れて発動基準を無理やり下げた。そのときも随分乱暴なことをするなという意見もありました。でも、それで総額で五千七百億ほどお配りすることができたわけでありますけれども、じゃ、これを四年にするのか五年にするのかという話になるとなかなかこれも厳しい話があって、今、昨日も衆議院の農林水産委員会でも議論があって、緑川議員だったかな、緑川先生から御質問いただいたんですが、一番頭を悩ませているのはこの問題でございます。
 ちょっと答弁が長くなって恐縮ですけれども、特に非常補填について、商系の方々が借金をしてまでもう付き合いたくないと、我々は我々なりの商流を持っているので、配合飼料価格安定制度は、牛、豚、鶏全部丸めていますから、それぞれの業種によって考え方も違います。例えば豚の方々は、今の値段はそこそこ安定しているので……(発言する者あり)あっ、済みません。
 と、いろいろまとまりがないんで、悩みながら今考えているというところでございます。

○紙智子君 私も聞いて、配合飼料って、これ、豚も鶏も牛も全部ひっくるめているんですよね。どちらかというと鶏とか豚には行っていた、だけど牛には余り回っていないというのが現状だったと思うし、先ほど声紹介したように、実際にはもう四十八万円赤字だという現実がある中で、そこでもう三期終わったからもう切りますよってなってしまったら、本当に潰れてしまいかねないという状況だと思うんですよ。
 だから、是非これやってほしいと思うんですよね。飼料の高騰対策の制度というのは、余りそういう意味では機能していないんじゃないかというふうに思うし、燃油や電気代や粉ミルクや敷料やわら、乾燥牧草、こうしたほかの資材の高騰はそもそも特に支援策がないわけですから、是非やってほしいと思います。
 それで、もう一つ、ちょっと時間の関係が出てきているから、加工原料乳の生産者補給金についてもお話ししたいんですけれども、北海道の酪農家を訪ねて回ると、どの方からも、加工原料乳の生産者補給金は、この間、生産コストの上昇をちゃんと反映していないよという訴えがあるんです。補給金はちゃんとこれ引き上げるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これも、畜産経営に関する法律、古い法律ですけれども、根拠法に基づいてルールがあって、それに基づいて算出しなきゃなりませんので、なかなか大臣の権限で数字をいじるということがそう簡単でないということは御理解いただきたいと思います。
 もう先ほどから答弁させていただいているように、数字だけ入力すれば結果が出るというものであってはならないというふうに思っています。我々政治家が一番その現場の状況は知っています。それで、この委員会の中にもそれぞれの地域、立法府に籍を置く者として責任ある発言をされている方がたくさんおられるわけですから、そういったことは当然、私はしっかり受け止めて反映させるべきだというふうに思っております。
 しかし、いろいろな御意見がありますが、私は、三百二十五万トン、今年の実績ベースでいうとこれぐらいの数字になりますけれども、十銭ぐらい上げることによって大体三億二千万ぐらい農家にはお金が余計に行くわけですから、最後の、今、銭という単位は使いませんけど、日本では流通する貨幣価値ではありませんが、そういう端数についてもこだわって、決定に向かって努力をしたいと思っております。

○紙智子君 いつも、加工原料乳でいうと算定方式がありますからって言われて、それで期待するけれども、なかなか一円にもならないと。何銭単位なわけですよ。それで失望するわけですよね。それで、やっぱりこのやり方自身がもっと根本的に見直さなきゃいけないという声はずっと出てきているんですよ。
 で、先日も私申入れしたときに、大臣は、算定式がありますからということだけではなかなかねという話おっしゃっていて、思いとしてはそういう思いあるんだろうと思うんですよ。是非、この期、そういうことをしっかりと検討していただいて、やっぱり実態に合っていないというか、実際に経費、こんなに上がっているのに、それ反映しないということが言われている以上、そこは是非改善を図っていただきたいということを強く申し上げたいと思います。
 それから、集送乳調整金についても、これ燃油高だとか、それからコストが高騰しているという中で、あとドライバーの問題も今心配されているわけですよね、いないということで。そういう見合った単価にすべきだと思います。
 それからもう一つ、酪農に関して大変評判が悪いものでいうと、改正畜安法の問題なんです。
 二〇一八年の改正で、流通自由化を促すと、系統外もこの補給金の対象に組み入れたわけなんですけれども、系統外のいいとこ取りだとか、二股出荷のこの生産取扱量が年々今増えてきていると。で、現場からは、系統に出す、出荷する農家が、拠出金ということで、日頃いろんなリスクをフォローするために、需給調整のために負担をしているのに、ふだんはそこに参加しないのに都合のいいときだけ参加するというのはこれ不公平じゃないのかという声が出ているわけなんですよ。
 これ、大臣、どう解決するのかということをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これは厳しい質問であります。気持ちはよく分かります、よく分かります。「ガイアの夜明け」である放送がされて、急にこれが政治のトピックスとして持ち上がって今の現状に至っているわけであります。
 系統外の方々がいい思いをしているんじゃないか、厳しい事態になったときには指定団体にちゃんと集乳をしている者だけが頭数制限であったり乳量制限であったりそういう厳しい現状打開のための努力を強いられるのに、状況が回復したら国の支援も含めて系統も系統外も等しくやるのはおかしいと。理屈は分かるんですが、私もこれを法律に基づいて何とかできないかということは考えたことが何度もあります。しかし、その系統外の方々を無理やり、君たちは全部もう指定団体に入りなさいということを強制することは法律的にもこれ不可能なので、まあ勝手といえば勝手ですから、世の中はやっぱり矛盾でできているなと思う部分が正直ありますよ。
 ですから、先生の御指摘はまさに現場の声を反映されている御意見であって、重く受け止めさせていただきますが、この場でどうするんだと言われてこうしますということを言えないということは是非御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 恐らく、私が聞いているだけじゃなくて与党の先生方も聞いていると思うんですよ、さんざん、今までも。で、やっぱりちゃんとそこは検討してもらいたいというふうに思うし、今のこの不満の状況が続くということは、結局は乳価全体の水準の引下げにつながっていくんですよね。そして、酪農家の離農に拍車を掛けることになるし、生産基盤を一層弱体化することにつながるんじゃないかと思うんです。
 当面の、いろいろ規律を強化しなきゃいけないとかという話も聞いていますけれども、やっぱり、そういう対策も含めてこの法改正の見直しは是非とも急いでやっていただきたいということを主張しておきたいと思います。
 ちょっと時間がもうあと二分しかないということなので、カレントアクセス、最後にちょっと言いたいんですけれども、乳製品を輸入し続けることについて、カレントアクセスですね、これ、到底農家の納得できる状況ではないと思うんです。
 以前、私、質問を農水委員会でしたときに、農林水産省の答弁の中で、WTO協定には生乳換算の十三万七千トンの乳製品を全量輸入する義務は規定されていませんというふうに認めているわけなんですよね。それはもう規定されていないんだと言っていたわけです。
 それであれば、この十三万七千トンを全量入れる必要はないというふうに思いますし、この需給調整をやっぱり生産者にさせるべきでないと思うんですよ。もうずっと酪農家を回って歩くと、結局国は我々で調整弁にしているんじゃないのかと。そうじゃなくて、国家貿易だと言うんだったらカレントアクセスで調整弁にするべきだという声も上がっていますから、そのことをちょっと最後に申し上げたいと思いました。
 それで、ちょっと、あと一分かな、三十秒ぐらいあるので、一言どうぞ。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) カレントアクセスについては、これ、義務内容、まあ義務という言葉を使うとまたいろいろ怒られそうですけれども、輸入の機会を提供する、だけども、ずっとフルで入ってきていますから義務のように見えますけれども、機会を与えているということであり、もうほとんどバター、まあ脱脂粉乳も一部ありますけど、ほとんどバターという状況であります。
 これについて廃止を検討してもいいんじゃないかということもありますが、このときにウルグアイ・ラウンド交渉の中で決まったことでありますけれども、そのときの合意に参加した国の全ての了承を取り付けなければいけないという難しい難しいルールがありますので、まあなかなかこれをバツにするのは難しいと思いますが、先生の御意見は的を得たものでもあると思いますし、生産者の方々がそういう御不満を持っていらっしゃるということも私もしっかり聞いておりますので、心にしっかり留めさせていただきたいと思います。

○委員長(舞立昇治君) まとめてください。

○紙智子君 時間になりましたので終わりますけれども、やっぱり調整弁にするべきでないと、生産者を、国内の、ということを強く申し上げて質問を終わります。

・・・・・・・・・・・・

○委員長(舞立昇治君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 田名部さんから発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代さん。

○田名部匡代君 私は、自由民主党、立憲民主・社民・無所属、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員寺田静さんの共同提案による畜産物価格等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    畜産物価格等に関する決議(案)

  我が国の畜産・酪農経営は、依然として担い手の高齢化、後継者不足が進行しており、畜産物の生産基盤は弱体化している。また、物価上昇による和牛肉等の需給の悪化や、飼料等の資材価格の高騰による生産コストの高止まりがみられる一方で、畜産物への価格転嫁は十分とは言えず、さらには家畜伝染病の発生・まん延の脅威に常にさらされているなど、畜産・酪農経営を取り巻く環境は厳しいものとなっている。これらに対応し、畜産・酪農経営の安定と営農意欲の維持・向上を実現するとともに、畜産物の安定供給を確立することが重要である。
  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和七年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、生産コストの上昇を踏まえ、再生産を可能とすることを旨として適切に決定すること。また、子牛価格が低迷する中、厳しい経営環境が続いている肉用子牛生産者の経営改善の支援を拡充するとともに、肉用牛の生産基盤の維持・強化を図るため、優良な繁殖雌牛への更新等を支援すること。さらに、和牛肉の需給の改善を図るため、和牛肉の需要拡大の取組を支援すること。
 二 加工原料乳生産者補給金及び集送乳調整金の単価・総交付対象数量については、飼料等の資材価格や輸送費の高騰等により酪農経営が依然として厳しい状況にあることを踏まえ、中小・家族経営を含む酪農経営が再生産可能なものとなるよう決定すること。また、生乳需給及び酪農経営の安定を図るため、国産の牛乳・乳製品の需要拡大及び脱脂粉乳の在庫低減対策等の取組を支援するとともに、バター等の輸入数量は慎重に検証した上で決定すること。
 三 高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の発生予防及びまん延防止については、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図るとともに、発生時の被害を軽減する農場の分割管理の導入等の取組を支援すること。また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の侵入防止のため、水際での防疫措置を徹底すること。さらに、これらを着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員及び産業動物獣医師並びに輸入検査を担う家畜防疫官の確保・育成及び処遇の改善を図ること。あわせて、農場の経営再建及び鶏卵の安定供給を図るための支援策を拡充すること。
 四 配合飼料価格の高騰による畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営するとともに、畜産・酪農経営の安定が一層図られる制度となるよう引き続き検討を進めること。また、生産現場における負担の実態を踏まえ、離農・廃業を回避できるよう、必要に応じて生産者の負担を軽減するための対策を柔軟に措置すること。さらに、青刈りとうもろこしや飼料用米等の活用及び耕畜連携等による国産飼料の生産・利用拡大を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。あわせて、飼料穀物の備蓄や飼料流通の合理化による飼料の安定供給のための取組を支援すること。
 五 畜産・酪農経営を再生産可能なものとするため、生産から消費に至る食料システム全体において畜産物の適正な価格形成が推進される仕組みの構築を図るとともに、消費者の理解醸成に努めること。
 六 畜産・酪農経営の省力化を図るため、スマート農業技術の導入やデータの活用を支援するとともに、飼養管理方式の改善等の取組を支援すること。また、中小・家族経営の酪農家の労働負担軽減のために不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、人材の育成や確保のための支援のほか、酪農家が利用しやすくするための負担軽減策を講ずること。
 七 中小・家族経営の畜産農家・酪農家を始めとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き、現場の声を踏まえつつ、生産基盤強化に資する施設整備等を支援すること。また、経営規模と収支との関係の分析を踏まえ、飼養規模の在り方について現場と情報の共有を図るとともに、畜産農家・酪農家の既往債務については、返済負担の軽減に向けた金融支援措置等の周知徹底を図ること。
 八 畜産物の輸出拡大に向けて、相手国における輸入規制の緩和に向けた協議を進めるとともに、畜産農家・酪農家・食肉処理施設・食肉流通事業者等と品目団体との連携による販売力の強化、輸出対応型の畜産物処理加工施設の整備等を支援すること。
 九 SDGsにおいて気候変動を軽減するための対策が求められ、我が国においても二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を目指していることを踏まえ、家畜ふん堆肥の利用推進や高品質化、家畜排せつ物処理施設の機能強化等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援すること。
 十 畜産GAPや農場HACCPの普及・推進体制を強化するとともに、家畜伝染病予防法の定める飼養衛生管理基準や国際基準を踏まえた飼養管理指針に基づき、アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理の普及・推進を図ること。
 十一 東日本大震災からの復興支援のため、原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された牧草、堆肥等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(舞立昇治君) ただいまの田名部さん提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(舞立昇治君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。