◇漁業法改正案は、一方的に罰則を強化するもので、漁業者の経営と暮らしを守る改正案になっていない。 水産流通適正化法は、もともとアワビやナマコの密漁対策として手間とコストをかけない方法として始まったが、改正案は漁業者、流通業者に新たな負担が生じる懸念がある。
○漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 漁業法改正案、水産流通適正化法改正案に反対の討論を行います。
反対するのは、大間のクロマグロの漁獲量未報告事案を捉え一方的に罰則を強化するが、漁業者の経営と暮らしを守る改正案になっていないからです。
大間では、クロマグロの漁の枠が一人一・五トン程度ですから、収入は六百七十八万円程度、委託販売の手数料や燃料費、船の維持費を引くので生活できないと訴えておられます。取締りを強めるのならともかく、漁獲量の報告義務違反の罰則を六か月以下から一年以下の禁錮刑にし、新たに個体数などの報告等も求めています。これでは、経営意欲をそぎ、漁業者の減少、漁村を衰退させかねません。また、TAC報告義務に違反したらいきなり罰則というのはやり過ぎであって、漁業者との話合いや丁寧な指導から始めるべきです。戦後、漁業法ができたときは、浜は喜びに沸き起こったと聞いています。ところが、今の漁業法は、喜びが沸くどころか、漁業の未来に不安を抱かせる法律になっています。漁業法そのものの見直しが必要です。
水産流通適正化法は、元々アワビやナマコの密漁対策として、手間とコストを掛けない方法として始まりました。改正案は、新たに資源管理魚種、TAC資源、クロマグロを対象とするものですが、規制改革推進会議の答申に沿った改正です。地域産業活性化ワーキング・グループは、漁獲量未報告事案を捉えて、凍結されたマグロにタグを付けている大西洋クロマグロと、小規模漁業者含めて生鮮が主体であり流通時間が極めて短い太平洋クロマグロと、全く条件が違うのにイコールフッティングを求め、流通の監視を強化する議論を踏まえて答申を出し、政府の規制改革実施計画に盛り込みました。漁業者、流通業者に新たな負担を生じるのは明らかであり、TAC資源の対象が拡大されれば、その影響はクロマグロだけでなく漁業全体に影響する危険性があることを指摘し、反対討論とします。
○委員長(滝波宏文君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、横沢君から発言を求められておりますので、これを許します。横沢高徳君。
○横沢高徳君 私は、ただいま可決されました漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び国民民主党・新緑風会並びに各派に属しない議員寺田静君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
漁獲量が長期的な減少傾向にある中、将来にわたって持続的な水産資源の利用を確保するためには、適切な資源管理を進めることが重要である。不適切な流通事案の再発防止、我が国の資源管理制度に対する国際的な信用の回復に向けて、漁業者を始めとした関係者の理解と協力を得て今般の法改正を実効性あるものにする必要がある。
よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 特別管理特定水産資源を農林水産省令で定めるに当たっては、我が国水産業の実情を踏まえ、漁業者・漁業協同組合及び流通・加工業者の経営並びに地域経済に及ぼす影響について十分に配意すること。
二 資源管理に取り組む漁業者の経営への影響を最小化するため、漁業収入安定対策事業やクロマグロ資源管理促進対策の更なる充実・強化に努めること。
三 特定第一種第二号水産動植物等の譲渡し等の際に採捕に係る船舶等の名称、個体の重量等を記録・保存・情報伝達する制度の運用に当たっては、現場の関係者の過度な負担とならないよう、情報通信技術の活用の促進その他の必要な支援を行うこと。
四 北太平洋まぐろ類国際科学委員会の資源評価を踏まえ、中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会等において、太平洋クロマグロの漁獲枠の拡大に向けて精力的に交渉を進めること。
五 国際社会においてIUU(違法・無報告・無規制)漁業撲滅の実行が求められており、水産物輸入大国である我が国として、国際的なIUU漁業対策において積極的に役割を果たすとともに、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の適正な運用等を通じて、違法漁獲物の流通を防止すること。
六 広域漁業調整委員会指示による遊漁者のクロマグロの採捕の規制について、遊漁者への一層の周知を図ること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(滝波宏文君) ただいま横沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 全会一致と認めます。よって、横沢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。