◇反対討論/食料供給困難事態法案は、生産者を統制する悪法で廃案にすべきだと主張/農振法改正案と農地法改正案は、農地を確保するために国の関与を強化するものであり賛成。農業経営基盤強化法改正案は、企業の農業参入の規制を緩和するものであり反対。
○食料供給困難事態対策法案(内閣提出、衆議院送付)
○食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
日本共産党を代表して、食料供給困難事態対策法案に反対、農業地域振興法など農地関連改正法案に反対、スマート農業法案に賛成の討論を行います。
まず、食料供給困難事態法です。
反対する第一は、強権的、統制的な法律であるからです。
米穀、小麦、大豆などの特定食料が不足した場合に生産者等に生産拡大計画の作成を指示し、それでも不足する場合は生産転換計画の作成を指示し、指示に従わなければ氏名を公表することになっています。計画を出さなければ罰金刑を科します。
これまで政府は、農産物の自由化を進め、生産者へのまともな所得対策がないまま、需要がある農産物の作付けと販売を求め、自己責任を迫る新自由主義的な農政を進めてきました。ところが、食料困難事態になれば、生産者に増産や生産転嫁等を強要し、生産者以外でも穀物などを生産することが見込まれる方の個人情報を集めて協力を求めるといいます。まさに、離農した生産者含めて監視することになります。
第二に、自由である作付けに対して増産や生産転換を事実上強要することは、憲法第二十二条の営業の自由を侵害しかねないからです。
職業選択の自由は、自己の従事する職業を決定する自由を意味し、営業の自由も含まれます。
第三に、戦争する国づくりを目指した安保三文書と軌を一にした法律だからです。
食料供給困難事態は、食料の供給が困難となる兆候については農林水産大臣が、困難事態については総理大臣が判断して発動されます。地政学的リスクも兆候や事態の要因に挙げられていますが、国家安全保障戦略で言うシーレーンにおける脅威も地政学リスクに入るのかと聞いたところ、坂本農水大臣は、シーレーンへの影響を含むあらゆる地政学的事情に対応し得ると答えました。
本来、どうしても食料が足りなくなれば、農業は命の源だから、生産者にもっと増産してほしい、政府ができることは何でもすると生産者の気持ちに寄り添って励ますことだと思います。それは、指示に従わなければ罰金刑だと脅すことではありません。
政府に欠けているのは生産者をリスペクトする姿勢です。食料が不足しないように国内生産の増大、自給率を高めるのが政府の責任であって、その責任を果たさず生産者を統制する悪法は廃案すべきです。
次に、農業地域振興法など農地関連改正法案です。
農振法の改正案と農地法の改正案は、農地を確保するために国の関与を強化するものであり、賛成ですが、農業経営基盤強化法改正案は、企業の農業参入の規制を緩和するものであり、反対です。
企業は、農業を行わずに、農地所有適格化法人に参入することで優良農地を確保し、食品企業の系列下に置くことが可能になります。農外資本の農業、農地支配が強まることが懸念されています。
スマート農業はロボットやAIなどの先端技術を活用した農業のことで、スマート農業法案は、スマート技術を活用する場合に日本政策金融公庫の長期低利融資や行政手続の簡素化をするもので、賛成ですが、平場だけではなくて中山間地域での利用、生産者の採算性が成り立つ安価なスマート技術の開発が必要です。農業の弱体化に歯止めを掛けることが必要です。
以上述べて、討論とします。
○委員長(滝波宏文君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
まず、食料供給困難事態対策法案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、横沢君から発言を求められておりますので、これを許します。横沢高徳君。
○横沢高徳君 私は、ただいま可決されました食料供給困難事態対策法案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び国民民主党・新緑風会並びに各派に属しない議員寺田静君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
食料供給困難事態対策法案に対する附帯決議(案)
世界人口の増加に伴い食料需要が増大する一方で、気候変動に伴う世界的な食料生産の不安定化等、世界の食料供給が不安定化することに伴い、我が国においても大幅な食料の供給不足が発生するリスクが増大していることから、政府が一体となり総合的に対策を実施することにより、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に支障が生ずる事態の発生をできるだけ回避し、又はこれらの事態が国民生活及び国民経済に及ぼす支障が最小となるようにすることが重要である。
よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 食料供給困難事態の未然防止を図るため、まずは国内の農業生産の増大を図り、食料自給率の向上に努め、我が国農林水産業の生産基盤の強化に向けた平素の取組の充実に努めること。また、日本の風土に適し連作障害もなく生産性も高い稲作が不測の事態において有する重要な役割に鑑み、需要に応じた生産を進めつつ、米穀の安定的な供給のため水田機能を維持すること。
二 食料の輸入については、不測時に備えた平時からの取組が重要であることを踏まえ、輸入相手国との連携強化のための政府間対話等の実施に一層努めること。
三 備蓄による対応は、国内生産量や輸入量が不足する場合の、初動的かつ即効性・確実性のある供給確保対策であることを踏まえ、特定食料等の備蓄に関して検討を行い、基本方針に適切に反映させるとともに、その他所要の措置を講ずるよう努めること。
四 不測時において国民に必要な食料を供給するため、スイスにおける食料安全保障の状況のシミュレーションや評価のための意思決定支援システムを参考にして、不測時の対応を迅速かつ円滑に行うことができるよう生産する品目や作付農地などのシミュレーションを行う仕組みを構築し、必要な生産の促進が円滑に行われるよう広く議論を行って、あらかじめ準備すること。
五 食料供給困難事態の発生等の公示に当たっては、国会に速やかに報告するとともに、国民生活及び国民経済に混乱が生ずることのないよう、国民に対し丁寧に説明すること。
六 関係省庁が適切に役割分担するとともに相互に連携協力し、政府一丸となって食料供給困難事態対策を講ずること。
七 計画届出の指示については、真に必要な者及び場合に限るなど、適切かつ慎重な運用に努めること。特に、規模の小さい家族経営などの生産業者に関しては、負担が大きいことに留意しつつ、指示を出す規模等の考え方を明確化すること。
八 計画変更の指示に従わなかった場合等の公表については、公表された者が誹謗や中傷を受けるおそれがあることを踏まえ、適切かつ慎重な運用に努めること。また、公表措置の対象とならない「正当な理由」が認められる場合について、具体的な事例を挙げながら関係者にわかりやすく示すこと。
九 食料供給困難事態が発生した際の対策その他の本法に基づく措置について、広く議論を行って、生産者を始めとする全ての関係者に対して、その目的及び内容について十分周知すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(滝波宏文君) ただいま横沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 多数と認めます。よって、横沢君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、坂本農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。坂本農林水産大臣。
○国務大臣(坂本哲志君) ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○委員長(滝波宏文君) 次に、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、横沢君から発言を求められておりますので、これを許します。横沢高徳君。
○横沢高徳君 私は、ただいま可決されました食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び国民民主党・新緑風会並びに各派に属しない議員寺田静君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
国際情勢の変化等による世界の食料需給の変動や、国内の農地面積の減少、農業従事者の減少・高齢化が進む中、将来にわたって国民への食料の安定供給を確保するため、農業生産の基盤である農地の総量確保と有効利用に係る措置を強化するとともに、地域において人と農地の受け皿となる法人経営体の経営基盤強化に係る措置を講ずることで、食料安全保障の根幹である人と農地の確保に取り組むことが重要である。
よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 人と農地の確保に向けた本法の措置については、農業従事者が安心して営農を継続できる環境整備を前提に、今後の人・農地政策の根幹となる地域計画と一体的に進めることが重要であることに鑑み、地域の実情に応じた地域計画の策定、農業従事者の所得向上等を通じた農業人材の確保、農地の集積・集約化、遊休農地や荒廃農地の解消等の関連施策の充実・強化を図ること。
二 確保すべき農用地等の面積の目標等に関する国と地方の協議の場については、これまでの地方分権推進の経緯等を十分に踏まえるとともに、食料安全保障の観点から、国全体として必要となる農地の総量確保の重要性について国と地方が共有しながら、協議が調うよう努めること。
三 農用地等の確保に関する基本指針の変更については、次期食料・農業・農村基本計画との一体的な検討を図るとともに、食料の安定供給の確保のため地域計画に位置付けられる農地の面積との関係も踏まえ、農地の確保とその有効利用が確実に担保されるよう、農地全体面積の目標を定めることを検討し、国と地方の協議の場も活用し、国と地方が基本的認識を共有しながら行うこと。また、基本指針の変更を受けて都道府県が基本方針を変更する際、特に都道府県面積目標については、市町村の実情を踏まえ、市町村との共通認識の下に定められるよう都道府県に周知すること。
四 国と地方公共団体との適切な役割分担の下、我が国全体及び各都道府県において必要な農用地等が確保されるよう、国の面積目標と都道府県面積目標の合計との相異、農林水産大臣が毎年公表する都道府県面積目標の達成状況等を踏まえ、必要があると認められる場合には、総合的な調整や対応のため、国と地方の協議の場の柔軟な活用を図ること。
五 市町村による農用地区域からの除外に係る協議を受けた都道府県知事の同意に係る事務が適正に行われるよう、同意の基準や除外に係る影響を緩和するために講じようとする代替措置の具体例を示すなど、必要な措置を講ずること。その際、一定の面積により一律に面積目標達成への支障如何を考慮するような基準等ではなく、地域の実情を考慮しつつ、当該協議に係る地方公共団体の負担等に配慮すること。
六 農地の権利取得の許可については、農業関係法令の遵守状況の確認等が円滑に実施され、農地を適正かつ効率的に利用する者による権利取得が促進されるよう、具体的な判断基準の周知を行うこと。
七 農地転用許可に係る定期報告、違反転用に係る公表も含め、違反転用を防止するための措置が効果的に実施されるよう、必要な措置を講ずること。また、食料安全保障の根幹は人と農地であることに鑑み、地域活性化の名目の下、安易な転用が行われないよう都道府県等に周知すること。
八 農業経営発展計画制度については、地域において人と農地の受け皿となる農業法人の経営基盤強化により、地域農業の発展に裨益するよう、地方公共団体と密に連携して運用するとともに、当該制度が適切に活用されるよう、制度の趣旨及び内容について、農業現場に丁寧に周知すること。
九 農業経営発展計画の認定に当たっては、十分な審査体制を構築した上で、投機目的の出資を排除するなど厳格に審査するとともに、計画認定後も、議決権要件の緩和に係る農村現場の懸念を払しょくできるよう、農業現場に寄り添った監督措置等を適切に講ずること。
十 議決権要件の特例により出資できる者の要件を、制度の開始のため省令で定めるに当たっては、農業に密接に関連する業種に限定することを要件の一つとした上で、出資を受ける農地所有適格法人と農業上の取引等の実績が十分にある等の基準を満たす食品事業者及び地銀ファンドとすること。
十一 地域の実情に応じた人と農地の確保を図る観点から、農業委員・農地利用最適化推進委員が現場活動に十分に取り組める体制の構築や、市町村の農政関係部署及び農業委員会事務局の人員を始めとした現場の体制整備のために必要な支援措置を十分に講ずること。
十二 この法律の施行に当たっては、特に不適切な営農型太陽光発電への対応、農業経営発展計画制度に係る農村現場の懸念払しょく状況等について、常時、きめ細かく把握・分析し、必要に応じて臨機に制度の見直し等の検討を行うこと。また、地域活性化の名目の下、安易な転用が行われないよう、農村産業法など、農地の転用に関する規制の特例措置について、必要に応じて見直し等の検討を行うこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(滝波宏文君) ただいま横沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 多数と認めます。よって、横沢君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、坂本農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。坂本農林水産大臣。
○国務大臣(坂本哲志君) ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○委員長(滝波宏文君) 次に、農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、横沢君から発言を求められておりますので、これを許します。横沢高徳君。
○横沢高徳君 ただいま可決されました農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び国民民主党・新緑風会並びに各派に属しない議員寺田静君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)
基幹的農業従事者数が今後二十年間で四分の一にまで急減することが見込まれる中、農業の持続的な発展及び国民に対する食料の安定供給を確保することが重要な課題となっている。このため、スマート農業技術を開発し、生産現場に効果的に導入するための措置を講ずる等、スマート農業技術の活用を促進することで、生産性の向上を図ることが求められる。
よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 スマート農業技術の活用の促進に係る基本方針の策定に当たっては、中小家族経営や中山間地域等の条件不利地を含めた農業者の生産性の向上に寄与するものとなるよう考慮すること。
二 食品等事業者が関与する生産方式革新事業活動については、農業者等の主体性が損なわれることがないようにするとともに、国産農産物の利用の拡大に資するものとなるよう配慮すること。
三 スマート農業技術の活用が適切に促進されるよう、高齢者を含む農業者に対してスマート農業技術の有用性とともに、導入による経営への影響についても丁寧に説明すること。
四 スマート農業技術をより効果的に活用できるよう、農業者を始めとする幅広い関係者の人材育成を支援すること。
五 スマート農業技術の活用の促進に向けて、生産及び開発供給現場の取組を支援するための十分な予算を確保すること。特に、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構による施設の供用や専門家の派遣等は、開発供給事業の推進に大きく寄与することから、同機構の施設や人員を充実させること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(滝波宏文君) ただいま横沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(滝波宏文君) 全会一致と認めます。よって、横沢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。