<第213回国会 農林水産委員会 2024年6月11日>


◇食料供給困難事態対策法案、農振法等改正案、スマート農業技術法案 農林水産省は食料の供給が困難になる「兆候」は、地政学的リスクに伴うサプライチェーン(物流)が混乱するケースだと説明している。「国家安全保障戦略」(安保3文書)で言う「シーレーンが脅かされる事態」も兆候に入るのかと聞くと、坂本哲志農水相は、「シーレーンへの影響を含むあらゆる地政学的事象に対応し得るもの」と回答。戦争する国づくりと軌を一にした悪法であることが明らかに。 作物の作付は生産者の自由なのに、増産や生産転換を強要することは、憲法22条の営業の自由を侵害するものになりかねず、強制的、統制的な法律だと指摘。 コメ不足が深刻に。町の米屋さんからコメ不足の訴えが。お米屋さんの経営を守り、社会的弱者の方が入所しているところにお米が届くよう求めると、農産局長は「卸売業者間のスポット取引は高騰しているが大きな影響はない」と答弁。 政府備蓄米の放出を求めると、坂本哲志農水相は、「販売店で欠品が多い状況ではない。政府備蓄米の放出は考えていない」と、真剣に向き合う姿勢示さず。

○食料供給困難事態対策法案(内閣提出、衆議院送付)
○食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 食料供給困難事態法についてお聞きします。
 前回の質問で、食料の供給が困難になる兆候や困難事態の判断は政府の裁量に委ねていることが分かりました。そこで、私、地政学的リスクという抽象的な言い方ではなくて判断基準が分かる資料を求めまして、提出をいただきました。兆候となるか否かは、個々の地政学リスクに伴ってサプライチェーンの混乱、物流の混乱によって国内に実体的な影響が出るケースという説明であります。そして、衆議院において、我が党の田村貴昭議員が、地政学的リスクというのは日本における戦争有事も含まれるのかというふうに聞きましたら、大臣、サプライチェーンに影響するあらゆる地政学的事情に対応し得るもの、あらゆる事態というふうに答弁をされていますから、これ限定はないということだと思うんですね。
 この地政学競争という言葉がですね、二〇二二年の十二月の閣議決定をされた安保三文書の国家安全保障戦略に出てくるんですね。地政学的競争、地球規模課題への対応等、国家の対応を高次のレベルで統合させる戦略が必要で、我が国の安全保障に関する最上位の政策文書であるというふうに定義をしています。戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するというふうに書いております。あわせて、軍事と非軍事、有事と平時の境目が曖昧になっているので政府横断的な政策を進めるというふうに言って、シーレーンにおける脅威に対して、同盟国、同志国等と連携し、航行、飛行の自由や安全を確保する取組を進めるというふうに書いているわけです。
 大臣、このサプライチェーンに影響するあらゆる地政学的事情に対応し得るものというふうに答弁をされていますけれども、国家安全保障戦略で言うシーレーンが脅かされる事態も想定しているということなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 食料供給が大幅に減少するリスクの要因の一つといたしまして、地政学的リスクを想定をしております。一般に、地政学的リスクとは、政治や社会情勢等の要因により特定の地域における緊張が高まることで、その地域や世界全体の経済等の先行きが見通せなくなることを指しておりまして、本法案は、こうした地政学的要因によるシーレーンへの影響を含むあらゆる地政学的事象に対応し得るものというふうに考えております。
 より現実的なリスクといたしましては、具体的には、気候変動に伴う干ばつの発生や災害の激甚化、頻発化による不作、それから家畜伝染病や植物病害虫の発生、蔓延、そして新型コロナウイルスのような感染症の蔓延によるサプライチェーンの混乱等のリスクを想定しているところです。
 このように、食料の供給が減少する要因には様々なものが想定されますが、本法案においては供給減少の要因を問わずに各種の措置を講ずることとしているところであります。

○紙智子君 いろいろな限定なしということだと思うんですけれども、国家安全保障戦略は食料についても記述しています。食料安全保障に関し、国際社会における食料の需給や貿易等を含む状況が不安定かつ不透明であり、輸入に依存する我が国の食料安全保障上のリスクは顕在化している中、我が国の食料供給の構造を転換していくこと等が重要である、国際的な食料安全保障の危機に対応するために、同盟国、同志国や国際機関等と連携しつつ、食料供給に関する国際環境の整備を実現していくというふうに書いております。
 あらゆる地政学的リスクに対応するということですから、これ安保三文書に沿った対応が進んでいくんじゃないかと、軌を一にして食料事態法になっていくんじゃないかというふうに思います。
 次に、内容についても聞きますけれども、第十七条は、米、麦、大豆などの特定食料などの生産を促進する必要があるときは、生産者に生産を行うよう要請することとなっていますけれども、この要請する生産者というのは担い手だけなのか、兼業農家とか半農半Xも含まれるのか、どういう方になるのかということをお答え願います。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) お答えいたします。
 実際に要請の対象とする生産者ですけれども、これは実際に発生する食料供給困難事態の態様によって変わってきますので、それごとにどれぐらいの生産を確保する必要があるのかというところに基づきまして、具体的には政府本部の下で実際の状況に応じて策定する実施方針の中で定めていくということになります。
 一方、先ほどから御答弁していますように、まずは、現在の食生活を守るという観点から、最も蓋然性が高い不作等によって特定食料が二割程度供給減少する場合というのに備えたいと考えておりまして、そういう場合には速やかに、生産だけじゃなくて、いろんな供給の確保というのが開始できるように、そのために要請を効率的かつ効果的に行う観点から、要請の対象は一定規模以上の事業者に限定をするということも必要であるというふうに考えております。
 こうした要請の範囲をどうするかということについては、関係事業者やその団体とも調整をして決定をして、基本方針にその考え方を定めるということを検討しておりますけれども、いただいた意見なんかも参考にしながら今後議論を進めていきたいというふうに考えています。

○紙智子君 今後検討していくということなんだろうと思います。
 同じく十七条なんですけれども、こうあります。生産者以外でも、特定食料の生産をすることができると見込まれるものとして主務省令で定める要件に該当するものに対して要請するというふうにあるんですけれども、この生産をしていない者というのをどう把握するんですか。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) お答えいたします。
 まず、生産可能業者につきましては、今後、要件を省令で定めていくことになりますけれども、基本的には、その農業者が現在持っている土地であるとか、あと農業者が持っている技術、機械とか、それで対応できるということと、あと、土地の形質を変更しない、果樹から畑作とか施設園芸から畑作というようなことを行わないということを要件にしたいと考えておりますので、基本的には生産可能業者は限定的な範囲で定めていくということになるというふうに思います。
 そういう人たちをどういうふうに把握していくかということにつきましては、生産については現在も交付金や補助事業等によって事業者というのは把握をしていますので、そういう中から、今は作っていないけれども過去にそういう品目を生産していたとか、あと、関係団体とかの情報提供を求めるなりして、平時からあらかじめ生産できる人というのの候補者の整理を行っていきたいと考えています。それを踏まえて、速やかに要請等を行えるような準備をしていきたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 そうすると、既に離農した人なんかも含めて個人情報を集めるということになったら、これは農家が監視されることにもなりかねないんじゃないのかなというふうにも疑問を持ちます。
 それから、営業の自由についてなんですけれども、先週、参考人質疑で池上甲一参考人が、条文上は、出荷、販売の調整の要請、出荷販売計画の作成指示、出荷販売計画の変更指示という体裁を取っていると、その義務に従わないと氏名の公表と罰金刑がペナルティーとして科されてしまう、営業の自由を貫くも前科が付いてしまいかねないと、こうした一連の流れは、農民の営業の自由を著しく損なうおそれが高い、日本国憲法二十二条に規定されている職業選択の自由、その中に含まれる営業の自由を侵害するおそれが極めて高いというふうに言われたんですね。
 営業の自由の侵害という指摘については、これ、大臣、どのような見解をお持ちでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 本法案では、要請により事業者の自主的な取組を促すことを基本としています。その上で、国民生活、国民経済上の支障が実際に生じた場合にのみ計画作成、届出指示をすることができるというふうにしております。生産計画の作成、届出指示につきましては、あくまで指示を受けた生産業者等が実施可能な範囲で定めるものでありまして、増産を強制するものではありません。
 また、生産可能業者の要件につきましては、今後省令で定めることとなりますが、生産に当たって土地の形質の変更を要しないこと等を要件とすることを想定しておりまして、参考人の発言にあったように、果樹農家に米や麦の生産を強制するものではありません。
 なお、これらの措置は法目的を達成するための必要最小限の措置として類似の法制度を参考に規定したところであり、憲法上の問題があるとは考えていないところであります。

○紙智子君 違反はしないと、憲法上の問題はないというふうにおっしゃるんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 必要最小限度の措置としてこういうことを行っているわけでありまして、憲法上の問題があるとは考えておりません。

○紙智子君 私は、やっぱり可能でない場合はそれは課さないというんだけれども、それってどういう基準でやるのかというのもよく分からないわけですよ。
 それで、何でこんな強権的な、言わば統制的なそういう制度をわざわざつくらなきゃいけないのかというふうに思います。営業の自由については幾つか本が出されていますけれども、岩波書店が出している「憲法」の最新版で芦部信喜さんという方が書いています。憲法二十二条の保障する職業選択の自由は、自己の従事する職業を決定する自由を意味し、自己の選択した職業を遂行する自由、すなわち営業の自由も含まれると言われていますから、憲法研究者の中でいえばこれは常識だというか、それを守られるのは常識だというふうになっていると思うんですよ。
 どうしてこんな強権的な、統制的な法律になるのかということでいえば、先日、池上参考人は、本法案に決定的に欠けているのは、農民の立場と農家の視点が欠けていることだと言われたんですね。それから谷口参考人は、全部克明にして情報を出させて、監視もし、毎日文句を言うと、最大の問題は、農民が尊敬されていないことが問題だというふうに言われていました。
 ですから、やっぱりどうしても食料が足りなくなってしまったときに、生産者の人たちに、もっと生産を増やしてほしいんだと、農業はやっぱり命の源なんだから増産してほしいんだと、政府ができることはその代わり何でもするよと、そういう生産者の気持ちに寄り添って励ますことが大事なんであって、それは指示に従わなければ罰則だということで脅すことではないと思うんですよ。事態法は、そういう意味では非常に強権的な法律案というふうに指摘をしておきたいというふうに思います。
 そこで、困難事態に備えるためにどうするかということなんですけれども、備蓄制度についても議論したいんですけれども、ちょっと順番を少し変えまして、今起こっている米不足についても質問したいと思うんです。
 改正食料・農業・農村基本法は、食料の安全保障を国民一人一人がこれを入手できる状態というふうに定義しました。しかし、今、米不足で食料が手に入らない状態が生まれているんですね。
 これ、具体的には、都内のお米屋さんから訴えがありました。昨年十月の千葉のコシヒカリの仕入れ額、仕入れ値は一万四千五百円、これ六十キロですけれども、でしたけれども、最近二万五千円から二万六千円だと、約二倍になっている。それから、ふさこがねという種類ですけれども、これ一万七百円だったのが二万四千円だと、二・三倍だと。もう高くて手が出ない。
 老人施設などに納品しているんですけれども、買わざるを得ないということで言われていて、こういう状況があるんだということを農水省は把握しているでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答えいたします。
 まず、お米の流通の過半を占めるのが、その集荷業者と卸売業者間の相対取引でありますけれども、相対取引価格を見ますと、今年の、六年四月までの五年産の平均で、前年比千四百四十九円高の一万五千二百九十三円、六十キロとなっております。これは、プラス一〇%ぐらい前年よりも上がっております。極端な上昇とはなっておりません。
 また、小売の価格の動向なんですが、二つデータがありまして、一つはPOSデータというのがございます。これも、四月の平均価格が五キロ当たり二千八十三円、昨年よりも一〇・三%高くなっています。
 もう一つ、総務省の小売物価統計というのがございます。これ、コシヒカリなんでちょっと高めなんですけれども、昨年の五月の平均と比べて九・六%高の五キロ当たり二千四百九十円というふうに、価格になっていて、約一〇%高というので、相対取引とおおむね同じ動きになっています。
 一方で、紙先生御指摘のこの価格なんですが、多分これに近いのは、スポット取引というものがございまして、この結び付きで、集荷業者から卸売業者買って、小売さんが手に入れる、あるいは施設が手に入れるというんではなくて、その都度その都度いろんな品目を当用買いするようなときに利用されるものなんですが、これについてはおっしゃるとおりに非常に値段が上がっている品目がございます。
 ただ、この当用買いの方になりますと、この相対取引というのは年産でほとんど、上がり下がりがほとんどないんですね、十月から五月ぐらいまで。スポット価格は、もう毎度毎度買うので、もう十月のときと四月、五月のときと値段がもうぐんぐんぐんぐん上がってきて、すごく変わってくると、そういうふうな状況になっております。全体として見ればそれほど大きな価格の変動になっていないんですが、当用買いで手にされる方に関しては、そういうルートによって非常に高いものを今手にしていらっしゃる方もいらっしゃるというふうに承知をしております。ふさこがね等についても同じでございました。
 高齢者施設についてなんですが、この米穀店からそういったものを入手しなきゃいけないような施設について、個別の事案についてちょっと我々も承知を今しておらないところです。
 ただ、米穀店のアンケート調査を見ますと、仕入れできる量が少なくなっているというのが六六%ぐらいあるんだと、仕入れることができないと言っている小売業者も一八・六%あるというふうに、調達に苦労されているというような、そういうような話も伺っております。

○紙智子君 日本農業新聞の六月七日付けに、利ざやでもうけようとするブローカーがいるほか、相場上昇を見越して売り渋る動きが品薄に拍車を掛けているという報道がされています。
 それで、卸間のスポット買いって今お話あったんですけれども、このスポット買いが相場をつり上げて、米屋さんの仕入れ値を高騰させているんじゃないかというふうに思うんですけど、そういうことなんですかね。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) おっしゃるとおり、スポット取引は民間の取引会社が公表しているものなんですけれども、主に中小規模の卸売業者間で転売される取引で、どうしても調達する必要のある銘柄を数トンから数十トン程度の小ロットで当用買いしていきますので、取引量が少なくて、全体の価格動向を評価できるものではないんですけれども、そういった今、スポットの価格が今高騰していると。これが米穀店のこの仕入価格に全く影響しないとまでは言えないんですが、取引の過半を占める相対取引価格や小売価格の上昇が、先ほど申しましたとおり一〇%ぐらいということで、それほど大きくなっていないことから、スポット価格の高騰が米穀店の仕入価格全体に大きく影響しているというところまではなっていないというふうに思っております。

○紙智子君 全体には影響していないという話なんだけど、現に困っているわけですよね。このお米屋さんは、一週間後に更に注文をしようと思って電話を掛けたら、今度は三千円値を上げるという話になっていて、六月に入ってから大手の卸から出荷制限のお知らせが届いたというんですね。その理由については、令和五年産の米の原料不足によって新米の発売まで継続して出荷できなくなる可能性があるためですということで、制限の文書が来ていると。こういう事態というのは把握していますか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 多分、紙先生おっしゃられたのは、六月十一日に業界紙にあったんですけれども、全農パールライス株式会社の新潟支店というところなんですけれども、そこが、令和五年産米、昨年取れたお米の出荷について、この令和四年産、その前の年の精米、玄米の合計実績を超える発注は内容を確認の上制限させていただくことがありますという告知をされたというふうに承知をしております。
 これにつきまして、新潟では、令和五年産米の作況が九五というふうになっておりまして、令和四年産に比べてみると生産量は約三万トンぐらい実は少なかったというのが背景にあるのじゃないかというふうに考えられるところです。

○紙智子君 やっぱり実際に今現場で起こっていることをきちんと把握する必要あると思うんですよ。
 それで、このお米屋さんは、社会的弱者の方々が入所しているところに届けているわけですよ。そういうことなのに、納品を止めることできないわけですから、だからこの方は保険を解約して仕入れに充てたという話なんですよ。そうやって何とか、やっぱり切らすわけにはいかないから、届けなきゃいけないということでやっているわけなんですね。自分の仲間の中でも既にやめるというお米屋さんも出ていると。民間在庫を含めて米は全体としては足りているという話なんだけども、何でこの大手卸が出荷制限掛けるのかということなんですよね。
 お米屋さんの団体である日本米穀商連合会が、五月上旬のアンケート、先ほどアンケートの話されたんですけど、仕入れることができないという人が二割で、仕入れに苦労しているということを含めると八五%だと、価格が三千円以上上がっているという人たちが五割いると、三割の業者が在庫量も逼迫していると答えているわけですよ。現に困っている人たちがいるということですよ。
 米価が高騰して米が手に入らない現実が二割以上もあって、備蓄米をやっぱり少しでも出してほしいだとか、米屋の経営や社会的弱者の方が入所しているところにお米が届くように、これもうすぐ解決しなきゃいけないという問題だと思うんですけど、この点は、大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 現時点におきましては、年間の需要量六百八十一万トンでございますけども、それに対します令和六年四月の民間在庫量の在庫率は二六・四%と、コロナ禍前の時期とほぼ同水準であります。相対取引価格や小売価格に上昇が見られますけども、前年よりプラス一〇%程度と、著しい上昇にはなっておりません。多くの販売店等で欠品が多くなっているなどの状況にはなっていないというふうに理解します。このため、主食用米の全体需給としては逼迫している状況にあるとは考えておらず、主食用向けに政府備蓄米を放出することは考えておりません。
 一方、販売店や御指摘の施設を個別に見ていきますと、入手困難な状況にある方もおられるかもしれません。そのような方から相談があった場合には、業界団体等とも連携し、卸売業者等を紹介するなどの対応を考えたいと思います。
 それから、米の入手が困難な米穀店や、そこから供給を受けている高齢者福祉施設の状況につきましては、厚生労働省の担当部局や老人福祉施設の全国団体とも連絡を取りながら把握に努めるなど、今後注視してまいりたいと考えております。

○紙智子君 もうちょっと危機感を持って答えてほしいんですよ。そういう人もおられるかもしれないって、いるから今こうやって取り上げているんですよ。そういう訴えを聞いているから、すぐ解決しなきゃいけないからということでここで言っているわけですよ。
 それで、やっぱり実際、すぐに解決するための対策取ってもらえますか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 今のところ逼迫しているという状況はないと思いますけども、私たちとしては、相談窓口等も含めてしっかり対応してまいりたいというふうに思っております。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 紙先生がおっしゃられた状況ということでございます。
 農林水産省では、集荷団体、卸売業者、今おっしゃられた日米連も含めて、いろんな方々との情報交換ふだんから行っております。それの中でいろいろお話を伺っておりますし、また、その上でなんですけれども、農林水産省に総合窓口というのがございまして、御意見、御質問等を随時受け付けているんですが、本年五月以降、全体、御意見が省全体で七百件ほどございました。そのうち、米価高騰ですとかあるいは米不足で入手できないというお問合せは二件ございました。
 また、電話等で我々のところに直接掛かってくる案件もございますが、実は五月以降でいうと十件程度というふうになっておりまして、紙先生おっしゃる、すぐということなんですけれども、いろいろ、どういうところにそういうのがあってというのをよくお伺いしながら、我々も実際一個一個の対応についても考えていきたいというふうに考えています。

○紙智子君 すぐ解決してあげてほしいんですよ。もう潰れてしまうところが出てきているって言っているし、潰れてしまうということは届かなくなってしまうわけですから、すぐに解決してほしいし、今、相談窓口はあるとおっしゃったんですけど、こういう米の相談で、これをやっぱりうんと強化していただいて、どこに連絡すれば答えてもらえるのかということ分かるようにして、徹底してそこを、対策を急いで取ってほしいということを申し上げておきたいと思います。
 次に行きます。
 備蓄制度についてなんですけれども、米、小麦、食用大豆、それから飼料穀物の備蓄制度について、ちょっと簡潔に説明お願いします。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 米については、まず政府備蓄でございますけれども、十年に一回の不作があっても一年間国産米を供給できる水準として百万トン程度の運用を行っております。このほか、必要に応じて民間在庫についての支援も行っています。
 また、小麦の備蓄につきましては、国内需要の八割を占める外国産小麦を対象として、輸入の途絶、遅延等が発生したときの代替輸入先の確保に要する期間を勘案して九十万程度を備蓄しています。また、国産の小麦、大豆につきまして、民間事業者の調整保管について支援をしているところです。
 さらに、飼料穀物の備蓄につきましては、主要輸出国の一時的の停滞に備え、一か月分の需要量に相当する約百万トンを備蓄しているところでございます。

○紙智子君 つまり、米でいうと政府備蓄で百万トンですよね。十年に一度の不作に対処の水準だと。それから、民間在庫が二百万トンというふうに聞いています。
 それから、小麦が九十万トン備蓄していると。それで、海上輸送中のものも二か月分ですよね。それから、食用のものは特になしと。
 それから、飼料用の穀物が、今百万トンと言いましたけれども、大体一か月ぐらいということですよね。海上輸送中のものもということなんですよ。
 それで、備蓄とそれから在庫というのは何が違うんですか。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) まず、在庫につきましては、一般的に、サプライチェーンの各段階において、民間企業が原料品、仕掛品、製品など様々な形態で通常の生産活動の一環として保有しているものとか、民間企業が自主的に供給不足に備えたリスクマネジメントの一環として、一定のバッファーとして保有しているものとされております。
 それらの備蓄については、一般的に、民間や政府を問わずに、供給不足に備えて保有している在庫を示すものというふうに認識をしております。

○紙智子君 先日の参考人の質疑のときに谷口参考人が、在庫というのは流通の間で止まっているもので、備蓄とは違うという話されていたと思うんですよ。
 それで、参考人質問のときに柴田明夫さんが意見陳述されていましたけれども、柴田さんは、世界の穀物市場のマーケットは薄いと、貿易に出されている穀物は生産量の六分の一程度だから、生産国の需給の増減次第で価格変動は大きいんだということを指摘されました。そして、日本の備蓄水準については低過ぎると、中国は戦略備蓄を行っているんだと、日本では、安心できる水準、せめて数か月ぐらいは持つべきなんじゃないかというふうに言われているわけですよ。
 やっぱり、止まっているものというか、今動いている最中のものまで含めて、いや、これ備蓄だというのは、届かない可能性だってあるわけですから、どうなのかなと。そうではなくて、公的な備蓄制度を拡充すべきではないかと思うんですけれども、これ、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 備蓄は国内生産や輸入と並びます食料供給の重要な手段でありまして、特に食料供給が大幅に不足する事態における初期の対応策として重要な役割を担っていると認識しております。
 一方、過大な在庫や備蓄につきましては、当然コストが掛かることから、民間事業者の経営圧迫や膨大な財政支出につながることも認識しておく必要があります。現在、百万トンの備蓄に対しまして五百億円の事業費を必要としております。
 このため、政府のこれまでの施策でも、米の政府備蓄を除きまして、米も含めて民間在庫を政府が支援する方法を取っています。これは、民間の在庫と一体的に管理できるので、在庫の管理や取崩しなどで効率的であるということからであります。
 このため、今国会に提出をしております食料供給困難事態対策法案におきまして、基本的には民間備蓄の活用を念頭に、出荷、販売の調整の要請を行う等、不測時において食料を適切に市場に供給していくこととしております。
 また、このような特定食料等の平時からの備蓄の在り方につきましては、改めて基本方針において定めることというふうにしているところであります。

○紙智子君 時間になりましたけども、先日の参考人質疑のときにも意見言われていました。新しい備蓄制度はやっぱり驚くべき見直しだと言っていて、備蓄と在庫は違うと、困難事態になる要因にサプライチェーンの混乱等を挙げながら、流通段階のものを含めて備蓄制度に組み込むことはおかしいというお話もありました。
 在庫だけでは不安だと、やっぱり国民が安心できる公的な備蓄制度を拡充するように求めて、質問を終わります。