◇改定食料・農業・農村基本法を受けて、有機農業やアグロエコロジー(生態系と地域経済を生かした持続可能な農業)への取り組み強化を要求。坂本哲志農水相は「諸外国の事例の収集、把握や意見交換を実施することが重要だ。農水省一丸となって取り組みたい」と答弁。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
昨日、五月二十九日に食料・農業・農村基本法が成立をいたしました。その上に立ってなんですけれども、有機農業とアグロエコロジーについて今日お聞きします。
改正基本法の第三十二条は、環境への負荷の低減の促進ということを規定しました。国は、農業生産活動における環境への負荷の低減を図るために、農業の自然循環機能の維持増進に配慮しつつ、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進、環境負荷への低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進その他必要な施策を講ずるというふうに書いてあります。
この有機農業とアグロエコロジーを示す表現というのがどういうふうになっているのか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 改正基本法における有機農業とアグロエコロジーの位置付けという御質問だと理解しておりますけれども、改正基本法におきましては、御指摘のように、農業が環境に負荷を与える側面があることを正面から捉え、基本理念として第三条に新しく食料システムを環境と調和の取れたものにしていくということを位置付けております。また、基本施策としても、第三十二条におきまして農業生産活動における環境への負荷の低減の促進を図る旨を位置付けております。これらの規定に基づく取組には、有機農業や環境との調和を図る農業の研究に資する農業生態学、いわゆるアグロエコロジーの活動の推進が含まれているというふうに考えております。
引き続き、環境と調和の取れた持続的な食料システムの持続に向けて、関係者の理解を得ながら、様々な取組というのを進めていきたいと考えております。
○紙智子君 含まれているという、この文言に含まれているという話なんですけれども。
それで、立憲民主党と国民民主党さんがその修正案を出して、その中で有機農業の促進を明記するように提案をしたと思うんですよね。私も実は同じ思いで聞いていたんですけれども、修正案に対する質疑では、政府提出法案の位置付けが弱いという認識なんですかというふうにお聞きをしたら、提案者の徳永エリ議員から、政府のみどりの食料システム戦略で二〇五〇年までに全農地の四分の一、百万ヘクタールを有機農業にするという目標を立てているにもかかわらず、改正案の条文には一切書かれず、含まれていると言われても説明がなければ全く分かりませんと。そこで、修正案で持続可能な農業の中核として強力に推進するべき有機農業を条文に明記することとしておりますということで、大変熱弁を言っておられたと思うんですよね、振るわれたと思うんですね。こういう議論そのものができたということ自体、大変良かったというふうに思っています。
その上でなんですけれども、政府提出の改正案は、まあ昨日成立したわけなんですけれども、この条文上、有機農業やアグロエコロジーが読み込めるというふうに言うんだけれども、やっぱり説明なければ分からないわけですよね。そうなんですよ。で、それだけでは理解が広がらないんじゃないかなと思うわけです。分かりやすい形で国民に知らせる手だてというのは必要ではないかと思うんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(農林水産省大臣官房技術総括審議官 川合豊彦君) お答えいたします。
有機農業、非常に大切だと感じております。それから、アグロエコロジーにつきましても、世界的に統一的な定義はないということでありますが、農林省では、気候変動に伴う農産物の品質低下、災害の激甚化、こういったもの様々起きております。こういった中で、環境への対応が非常に重要だということで、令和三年五月にみどりの食料システム戦略を策定し、現在それを一生懸命進めております。
全ての都道府県でこのみどりの食料システム法に基づく計画が立てられ、現在、農家の認定も進めているということでございますので、こういった中で、有機農業あるいはアグロエコロジーのような取組もどんどん進められていると感じておるんですけど、今回の改正法におきましても環境と調和の取れた食料システムの確立を柱として位置付けたということで、ここを大きくアピールしたいと考えています。
引き続き、化学肥料、化学農薬の低減、有機農業の取組面積の拡大、こういったものを一生懸命、省一丸となって、関係省庁とも連携しながら進めていきたいと考えております。
○紙智子君 環境の関係ともやっぱり調和を図っていくということ、すごく大事だということを言われていたと思うんです。
それで、やっぱり改正基本法の具体化というのがすごく大事になってくると思うんですね。
アグロエコロジーですけれども、三月二十二日のときの農林水産、この委員会で質問したときに、平形農産局長が、フランスで進められていましたアグロエコロジープロジェクトというのがあると、これは経済性と環境性能を両立させる生産モデルというふうに言われていたんですけれども、この生産モデルというのはどういうものでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) フランスのアグロエコロジープロジェクトでございますが、二〇一二年に、当時のルフォル農業大臣、フランスのですね、が打ち出された政策というふうに承知しています。
文献等によりますと、フランスにおけるアグロエコロジープロジェクトは、五つ、いや、十の分野別の計画というのがありまして、例えば、農薬の削減ですとか有機農業、それから農業教育によるアグロエコロジーの定着など、そういった分野別の計画があり、これらを通じて、経済的かつ環境的な二重のパフォーマンスを革新的な農業のやり方の中心に据えることを目的としているということを踏まえて発言をさせていただきました。
○紙智子君 FAOにも定義はあるんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省大臣官房技術総括審議官 川合豊彦君) FAOが示すアグロエコロジーの定義でございますが、アグロエコロジーの十の要素につきましてであります。
多様性、知識と共創の共有、相乗効果、効率性、リサイクル、回復力、人間的、社会的価値、文化と食の伝統、責任あるガバナンス、循環及び連帯経済であると承知しております。
○紙智子君 十項目っておっしゃいましたっけかね、今お話あったと思うんですが、日本でもやっぱりアグロエコロジーの定義付けも含めて議論を始めるべきではないのかなというふうに思うんですね。
農業基本法の改正案の参考人質疑で意見陳述をされた長谷川敏郎さんがパンフレットを皆さんにお配りをしました。それで、その中に世界の動きも紹介してあったんですけれども、紹介すると、イギリスにはアグロエコロジー議員連盟があると、ラテンアメリカではアグロエコロジーの学会があると、それから中南米の政府がアグロエコロジー政策を採用している、それからマリ共和国ですね、二〇一五年に宣言を出しているというようなことが書かれているわけなんですけれども、ですから、今まで、聞いても、なかなか定義がよくはっきりしないということを言われていたんだけれども、そういう定義も含めて、どうするのかということも含めて、やっぱり改正基本法を具体化するために、なぜこのアグロエコロジーが広がってきているのかということだとか、各国の取組も調べるというか調査をしていくということは必要じゃないかなというふうに思うんですけど、これ大臣、いかがですか。
○国務大臣(坂本哲志君) アグロエコロジーにつきましては、世界に統一的な定義はないと承知していますが、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための新たな政策方針といたしまして、みどりの食料システム戦略を策定し、持続可能な食料システムの構築に向けまして取組を進めているところです。
みどりの食料システム戦略の取組の推進に当たりましては、諸外国の様々な取組事例の収集、把握や意見交換を実施することが重要であるというふうに考えております。
農林水産省といたしましては、環境と調和の取れた食料システムの確立に向けまして、議員御指摘のとおり、海外の事例も参考にしながら、農林水産省一丸となって取り組んでまいります。
○紙智子君 是非、ちょっとそういう意味では、環境との調和ということを言われている中で、みどりの、もちろん日本の中の政策もあるんですけれども、やっぱりよく取り入れながらやっていっていただきたいと思うんです。
長谷川会長は、アグロエコロジーは、自然の生態系を活用した農業を軸に、地域を豊かにし、環境も社会も持続可能にしていくと、循環型地域づくり、多様性ある公正な社会づくりを目指す運動として、FAOも推進をし、世界の大きな流れになっているということを言われていたと思うんです。
日本でも、日本流のアグロエコロジーの在り方を研究して、やっぱり実践している例というのはあると思うんですよ。そういうのもやっぱりよく聞くとか、自治体でも関心持って今やろうとしているところもあるわけですから、まずはその取組の事例も集めていくとか、関係者から聞き取りをするとか、そういうところから始めてはどうかと思うんですけど、大臣、どうですか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) みどりの食料システム戦略の取組の推進に当たりましては、それぞれの地域で培われてきました技術や経験も含めた優良事例の横展開が重要であるというふうに考えております。
このため、国内各地の優良事例の収集、把握や、意見交換を実施し、これも委員御指摘のとおり、地域の事例も参考にしながら、環境と調和の取れた食料システムの確立に向け、農林省一丸となって取り組んでまいります。
○紙智子君 アグロエコロジーというと、まだなかなか知られていないというふうに思うんです。改正基本法を受けて、日本でも具体化に取り組むように求めておきたいと思います。
それから、有機農業についてなんですけれども、みどり戦略における二〇三〇年の有機農業面積の目標というのは六・三万ヘクタールだということですよね。それで、改正基本法を受けて、この二〇三〇年目標をどう具体化するのかということもお聞きしたいんです。基本法との整合性ではどのようにそれを図っていくのかということについて、どうでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 二〇三〇年の目標の前に、二〇五〇年に二五%ということ、紙先生、紹介していただきましたが、この目標の達成に向けて、まずは有機食品の理解の浸透ですとか、輸出促進に伴うマーケットの拡大など、先進的な有機農業者の栽培技術の横展開を進めて、二〇三〇年までに六・三万ヘクタールまで拡大をしていくというふうにしています。現在、市町村が中心となって、生産から消費まで一貫した取組を地域ぐるみで行うオーガニックビレッジの創出というものをやっておりまして、有機農業の取組面積の拡大に取り組んでいるところでございます。
基本法との関係なんですが、最初に杉中総審が言いましたとおり、環境と調和の取れた食料システムの確立ということが基本理念の中に入っております。また、環境への負荷の低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進ということが基本的施策として位置付けられております。
こういったことを踏まえまして、令和七年度より次期対策期間が始まります環境保全型農業の直接支払交付金について、有機農業の取組面積の拡大等の観点から見直しを検討することなど、有機農業の推進に更に積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○紙智子君 みどりの戦略緊急対策交付金というのがありますよね、この交付金の趣旨を説明していただきたいと思います。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 御指摘のあったみどりの食料システム戦略緊急対策交付金なんですけれども、有機農業、特に産地づくり推進事業というのをその中でやっておりまして、地域ぐるみで有機農業の生産から消費まで一貫して取り組む先進的な産地、オーガニックビレッジの取組など、このみどりの食料システムの中でも目標として大きなものになっております有機農業の産地づくり等について、地域を挙げてというんでしょうか、それで、できるだけ早い時期にということで緊急というふうに名前付いています。そういったものが、取り組むという、そういう趣旨の補助金でございます。
○紙智子君 有機農業の産地づくりで、今お話あったオーガニックビレッジ、これを進めていくというふうにあるんですけれども、これは学校給食での活用を広げる取組なのかなというふうにも思うんですけれども、どんな取組なのか、予算も含めて、予算額も含めて説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) オーガニックビレッジなんですけれども、学校給食だけではなくて、有機農業の推進に向けて地域一体となった取組ということで、一つは栽培技術の普及だとか実証によります有機栽培の拡大ということ、それから、おっしゃるとおり、学校給食での利用ですとか農業体験など地域の子供だとか住民が有機農業に触れる様々な機会の創出ということ、三つ目、学校給食だけではなくて、マルシェだとか道の駅等で販売を通じた販路拡大など地域ぐるみの取組を支援するということでございます。
これに関しましては、有機農業産地づくり推進事業というものがございまして、令和五年度の補正で二十七億、令和六年度の当初で六億五千万という、この事業の中でこのオーガニックビレッジは実施をしているところでございます。
○紙智子君 産地挙げて産地づくりということ言われるんだけれども、それにしては予算が少なくないかなというふうに思うんですよね。
そして、それと同時に予算の透明化ということもいろいろ議論にもなっていまして、話が出ていまして、予算の透明化ということをめぐっては、例えば水活から畑地化へというところでは、地域協議会にそれが任される形になっているじゃないですか。そうすると、地域協議会の中でいろいろいろいろ議論されるんだけれども、結論としてどういうふうになったのかとか、その中で、やっぱり自分はもうちょっとやっていけないという人も出たりとか、もういいわ、やらないわと、もうやめちゃうわというのも出てきたりとか、いろいろになるんだけれども、最終的には地域で、その協議会で決めていくというときに、どうなったのかということがよく見えないというのが出てきたりもするんですよ。
そういうことをやっぱり、どうなったか分からないんじゃなくて、よく見えるようにしていくということが大事ではないかなと思うんですけど、その点、どうですか。大臣、大臣かな。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 済みません、ちょっとこれ技術的な話なので、ちょっといいですか。済みません。
まず、水田活用なんですけれども、これは国が直接交付金を支払うということなんですね。地域協議会というのがありますけれども、個々の生産者からの申請書を取りまとめて国に持ってきていただいて、国の方で交付決定するということなので、もし変なことがあれば、当省ホームページに通報サイトもありますし、我々も立入調査というのをやっていまして、この執行の適正についてしっかりやっているところでございます。
オーガニックビレッジにつきましては、個々への支払ではなくて、地域へのお支払になっていますが、要綱に基づいて市町村が取組内容をホームページで公表するというふうになっております。また、予算の使途についても都道府県において確認するというようなこともありますので、当省にも御報告をいただきながら、適正に執行されるように、これしっかりやっていきたいというふうに思っています。
○紙智子君 その辺の説明責任というのは誰が、どこが果たすんですか。
○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) もちろん、農林水産省もしっかりこれやっていますし、このオーガニックビレッジに手を挙げていただいた都道府県、それから市町村についてもしっかりやっていただきたいというふうに考えています。
○紙智子君 オーガニックビレッジの目標が、二〇三〇年までに、今二四年ですからあと六年ということなんですけれども、までに二百市町村目指していると。それで、農地面積の目標が六・三万ヘクタールということで、現在が九十三市町村なんですよね。学校給食を始めとして、地産地消の取組を強化是非していくべきだと思うんですけど、大臣、これについてちょっと決意を語っていただきたいと思います。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) オーガニックビレッジにつきましては、市町村長のリーダーシップがやっぱり重たいと思います。私のところも、山都町、南阿蘇村、それぞれ市町村、町村長のリーダーシップでございました。そして、その取組内容をホームページ等で公表しながら各地域の実情に応じた様々な取組が展開されておりまして、大きな成果をそれぞれに上げていただいているというふうに思っております。
農林水産省といたしましては、パンフレットやホームページに加えまして、本年一月にはオーガニックビレッジ全国集会を開催するなど、こうした先進的な取組の横展開を図っておりまして、他の市町村からの関心も高まっていると実感しておりまして、本年度も多くの市町村から要望をいただいているところでございます。二〇二五年までに百市町村、二〇三〇年までに二百市町村のオーガニックビレッジの創出を目標に、引き続き、予算の確保に努め、地域の取組を後押ししてまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 オーガニックでの給食をもっと普及しようということで議連もつくられた、超党派で議連もつくられていますから、是非やっぱり推進していかなきゃいけないと思います。
それと、あと一分ということなので、改めてちょっと、アグロエコロジーの問題というのは、余りみんなまだ認識が深くないということの中で、先日の参考人質疑のときに改めてこの認識を新しくしたというか、結局、生物が本当にお互いに仕事をしながら、自然の体系を守りながらやっぱり発展させていくという、実は効率上げよう上げようとなると、もう手っ取り早くやってしまおうとする傾向はあるんだけれども、長い目で見たら、このやり方というのは、実は本当は持続可能な、そういう生産活動なり含めてつながっていくんだなということを思いますので、やっぱり農業を駄目にさせないでというか、生かしていくということで、是非真剣に取り組んでいきたい、いただきたいということを最後に述べまして、終わります。
ありがとうございました。