<第213回国会 政府開発援助等および沖縄・北方問題に関する特別委員会 2024年5月24日>


◇ラファ侵攻を止め人道支援再開を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。初めに、日ロ領土交渉についてお聞きします。
 今年は戦後八十年ということで、北方墓参からは六十年の節目になります。元島民の皆さんの平均年齢が八十八・五歳ということで、今月の十四日に松本侑三千島連盟理事長は、政府には、領土交渉の具体的な展望を示して解決に向けた糸口をつかんでほしいと。とにかく一歩でも島に近づきたいというのが島民、元島民の思いだというふうに述べられています。
 しかし、首脳級の会談は、二〇二二年の四月に林芳正元外務大臣がガルージン駐日ロシア大使への申入れ以降、ロシアとの首脳級の会談というのはなくて、今後も予定はないというふうに聞いているわけです。そこで、上川大臣、この松本侑三理事長の思いをどう実現されるのでしょうか。

○委員長(藤川政人君) 答弁は。中村審議官。

○外務省大臣官房審議官(中村仁威君) よろしゅうございますか。(発言する者あり)

○委員長(藤川政人君) はい。答弁してください。

○外務省大臣官房審議官(中村仁威君) はい。今お尋ねのあったロシア側との関係でございますけれども、ロシア側との首脳会談や外相会談等、ハイレベルの接触について現時点で今決まっているものはございません。
 ただ、ロシア側とは隣国として処理すべきことが多々ございますので、常に相互の大使館等を通じて日々のやり取りをずっと行っています。これをずっと継続していこうとは思っております。

○紙智子君 ちょっと時間、あっ、大臣。

○外務大臣(上川陽子君) 北方領土のこの問題につきましては大変重要な案件であるということで認識をしております。特に墓参に臨んでいる高齢になられた皆様の思いというものを私も直接伺っているところでもございます。こういったことも真ん中に据えて、しっかりと対応してまいりたいと、この思いでいっぱいでございます。

○紙智子君 しばらくやられていないんですよね、この問題で、真っ正面から。是非、何とかやっぱり糸口をつかむということでは、首脳級の会談の道を探って、是非実現をしていただけるようにお願いしたいと思います。次に、北方基金についてお聞きします。北方基金は毎年四億から五億円を取り崩しているわけですけれども、当然これ基金は減少するわけですね。
 二〇二二年の十二月に、私、基金の積み増しが必要じゃないかということを質問いたしました。
 そのとき、伊藤審議官が、道庁を通じてお申出があればしっかり相談に乗ってまいりたいというふうに答弁をされていたんです。それで、北特法の附則にも、これ、交付金に関する制度の整備その他必要な財政上の措置については検討を加えて必要な措置を講ずるとしているわけです。その後、北海道からは、昨年の十月、そして今年五月と、この財政措置を要望されているわけなんですね。そこで、自見担当大臣に、具体的にこれ、財政上の措置、基金積み増しの検討をされているんでしょうか。

○内閣府特命大臣(沖縄及び北方対策)(自見はなこ君) お答えいたします。現時点では、令和六年度事業計画を踏まえた基金の残高見込額は七十九億四百万円となっておりまして、まずは現在の基金の運営の中で事業を継続していくことが原則と考えてございます。他方で、その時々によりまして、事業ニーズの変化や集中的な事業に取り組むという必要性があるということも十分に理解してございます。そのような場合におきましては、北海道において、隣接地域自治体や元島民の方々の意見もよく吸い上げた上で、毎年度の支出計画の事前協議の場で御相談いただければ、内閣府としても丁寧に対応してまいりたいと考えてございます。

○紙智子君 新しい事業をしたいんだけれども、基金の残高が気になって思い切った事業ができないという実情にあると思うんですね。それで、基金の積み増しの検討などしっかり行っていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。次になんですけれども、ODAについてお聞きします。イスラエルによるガザ地区への侵攻開始後七か月を過ぎて、死亡者数が三万五千七百人を超えています。ガザ地区への軍事攻撃で約百八十五億ドル、日本円で約二兆八千億円相当のインフラが破壊されたというふうに報道されていますけれども、日本のODA支援の施設などの被害の状況というのを把握できていないというふうに答弁をされていました。
 ユニセフ広報官の報告によりますと、約十三万五千人の、これ二歳未満の子供が飢餓の危険にさらされているというふうに言われて、この改善の兆しが全く見えていない状況だということですよね。
 それで、二十一日に、ICC、国際刑事裁判所が、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相に対して戦争犯罪や人道に関する罪として逮捕状を請求するというふうに報じられました。カーン主任検察官は、イスラエルの国民を守る権利は国際人道法を遵守する義務を免罪するものではないと、イスラエルに対して国際法遵守を求めているわけです。このICCの検察官によるイスラエルに対する逮捕状、この請求に対して、上川大臣の御認識を伺いたいと思います。

○外務大臣(上川陽子君) 二〇二四年六月の二十日でありますが、ICCのカーン検察官は、パレスチナの事態に関しまして、ハマスのシンワル・ガザ地区政治局長、デイフ軍事部門司令官及びハニーヤ政治局員、局長、そしてイスラエルのネタニヤフ首相及びガラント国防相に対する逮捕状を第一予審裁判部に請求した旨発表したと承知をしております。今後、この第一予審裁判部は、本件請求及び検察官が提出した証拠その他の情報を検討した上で、逮捕状を発付するか否か判断するものと承知をしております。我が国は、ICCの締約国として、また本件がイスラエル・パレスチナ情勢に与える影響の観点からも、今後の動向を重大な関心を持って引き続き注視してまいりたいと考えております。

○紙智子君 注視をしていくというふうに今お答えになったわけなんですけれども、UNRWAは二十一日に、イスラエル軍にラファ検問所が占拠されて、攻撃が激しくて安全を確保できないということで、食料配給を一時停止したということなんですね。WFPも、これ備蓄物資が底をついて、ラファでの配給を止めたという報道がされているんです。
 これ、イスラエルの人々を飢餓に陥れている行為というのは明らかな国際人道法違反ではないんでしょうか、いかがでしょうか。

○外務大臣(上川陽子君) 戦闘が長期化する中におきまして、現地の危機的な人道状況が更に深刻さを増していることを深く憂慮しております。特に、ラファハにおけるイスラエルの軍事行動の動きを深く懸念をしているところであります。さきのG7外相会合でも一致したところでありますが、ラファハへの全面的な軍事作戦には反対でありまして、我が国として、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待をしているところであります。
 また、ガザ地区におきましては、これまでも援助関係者を含みます多くの民間人の方々が攻撃を受け、犠牲になっている状況であります。国連職員や援助関係者を含みます民間人の中にも被害が発生しているということを深く憂慮をしているところであります。これ以上一般市民や援助関係者の死傷者が出ないよう、また、そうした危機的な状況にある人道状況をしっかりと改善するためにも、引き続き、全ての関係者が国際人道法を含む国際法に従って行動する、このことが重要であると考えているところであります。同時に、人道支援活動が可能な環境確保、こういった観点から、ラファハの検問所の再開、これが極めて重要でありますので、この点を含めまして、引き続き、イスラエルへの働きかけを始めとした外交努力を粘り強く行ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 国連のフランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者は、三月に、パレスチナ人に対してジェノサイドを犯していると信ずるに足りる合理的な根拠があるという報告書を国連人権理事会に提出しています。このラファ検問所を直ちに開放して人道支援が継続できるようにイスラエルに直接伝えるべきだというふうに思います。強くこれ申し上げておきたいと思います。それから、アメリカの大学で、今、ジェノサイドはやめよという抗議行動がずっと行われています。ニュースでも流れていますよね。日本でもこのところ、東京大学を始めとして主な大学の学生が、全国の街角で、ガザの侵攻をやめよという行動が広がっていると思うんですよ。今月六日に市民が主催したピースマーチでは、渋谷の街を千五百人もの人たちが、直ちに空爆やめろ、子供を守れと、命を守れというふうに訴えているわけです。参加者の多くは若い方や、それから子供連れの将来世代の方々がたくさん出てきているわけですね。このピースマーチの呼びかけに、例えば中学三__年生からは、私たちはこれ以上ジェノサイドを見て見ぬふりすることはできませんと、今何もしないことはジェノサイドに加担していることと同じなんだと。それから、高校三年生は、世界各地で紛争や問題が絶え間ない今の世の中がとても怖いと、だけど怖いと思うだけでは何も変わらないというふうに言っている。それから、平和と殺りくを止めてほしいという、こういったメッセージが多く寄せられているわけなんですけれども。上川大臣は、こういう多くの市民の、子供を守れ、あるいは命を守れと、この声をどのように受け止められるでしょうか。

○外務大臣(上川陽子君) ガザ地区では、これまで連日にわたり、多数の子供たち、また女性や高齢者を含みます死傷者が発生していることに加え、大多数の人々が元いた住居を離れましてガザ地区内の避難施設等に身を寄せており、大変過酷な生活を強いられていると。こうした危機的な人道状況への対処は最優先課題であると認識をしております。
 そして、日本国内において、若い世代を含みます多くの方々が中東の現実に心を痛め、平和の実現に向けて声を上げていると。国際関係が相互に複雑に絡み合う今日、私といたしましても、中東の問題は遠く離れた場所での出来事ではなく、日本にも影響を与え得る、与える問題であると考えております。であるからこそ、私は、外務大臣として先頭に立って、人質の解放や、また停戦の実現、現地の人道状況の改善に向けまして様々な取組を行ってまいりました。引き続き、解決すべき課題は多くある中ではございますが、今後も、中東での一日も早い平和の到来を願う皆様の声にしっかりと耳を傾けながら、粘り強く積極的に外交努力を積み重ねてまいりたいと考えております。

○紙智子君 この現地の状況に詳しいNGOの団体は、恒久的停戦と飢餓回避のための人道支援の即時再開のためにイスラエルに強く働きかけるように求めているんですよね。多くの市民の声でもあり、政府への要請でもあるんです。是非早急に応えるべきだというふうに思うんですけど、最後に一言、大臣、いかがでしょうか。

○外務大臣(上川陽子君) イスラエル側に対しましては、このラファハにおきましての全面的軍事作戦への反対も含めまして、今の現状を十分に、日本の考え方、また方針、こういったことにつきまして直接強く申し入れているところでもございます。

○紙智子君 時間となりましたので終わりますけれども、本当に一日も早くこの殺されている事態を解決をしていただきたいということを心から訴えまして、質問を終わらせていただきます。