◇坂本農水相の「生産基盤弱体化していない」していない発言。紙議員が政府文書や国会答弁を引用し、追及したところ、坂本農水相は「認識の誤りで、撤回、修正し、おわびしたい」と答弁。 新規就農者統計は、全国統計だけで都道府県別の推移は公表されていないと指摘。山田英也農水省統計部長も坂本農水相も「検討したい」と回答。 福島で新規就農者が増加。福島県では党の県議団が要求し「福島県農業経営・就農支援センター」を設置し、ひとつのフロアーで、ワンストップで相談に応じている。村井正親経営局長は、「優良事例を横展開したい」と回答。 認定農家が高齢で離農した際の農地管理/坂本哲志農水相は、「第3者継承も含め、後継者を確保することが必要。紙議員は、効率的かつ安定的な経営体や法人に絞るというのではなく、家族経営を重視するよう要求。 農村振興に平成大合併が大きな影響/農水相が「平成の大合併できめ細かな行政が行き届かなくなった。反省を踏まえながら考える」が答弁。紙議員は、農振振興に新機軸を作るよう主張。 中山間地域直接支払いは、個々の農家への支払いに拡充を。
○食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
今日の委員会の冒頭で坂本大臣から発言がありました。過去の政府文書や国会答弁などでは、生産基盤の弱体化などの課題に直面していると言ってきたと。したがって、私の認識に誤りがありましたと述べて、撤回し、おわびするというふうに言われました。
また、徳永議員の質問を決め付けの質問などと申し上げた点についても行き過ぎた発言だったと、撤回し、おわびすると言われました。
ただ、これ、撤回するまでは生産基盤は弱体化していないという認識だったことになるわけであります。出発点が違う大臣とこの間我々は議論してきたというふうに思うんですけども、そうすると、一体何のための基本法なのかなということになるわけです。
ちょっと私も引っかかっているんですけども、撤回されたというんだけれども、徳永議員のどこが決め付けというふうに大臣思われたんでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 前回の委員会で、委員からの生産基盤が弱体化してしまったとの理由を問う御質問に対しまして、私から、生産基盤が弱体化したとは思っていませんと反論の答弁を行った際、決め付けの質問などと申し上げた点につきましては言い過ぎた発言であったと思います。
冒頭にも申し上げましたとおり、生産基盤が弱体化したとは思っていないとの答弁につきましては私の認識の誤りということで、撤回、修正し、おわび申し上げたところでございまして、これに関連する決め付けの質問との発言についても、撤回し、改めておわび申し上げたいと思います。
○紙智子君 それは分かっているんですけど、だから、どの辺を、徳永議員の質問のどこに決め付けだというふうに思われたのかということを聞いているんです。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 先日の委員会の時点では生産基盤が弱体化したとは思っていないとの認識でしたので、生産基盤の弱体化を前提とした徳永委員の御質問について、決め付けの質問と答弁したものであります。(発言する者あり)
○紙智子君 答えていないという声もあるんですけども、やっぱり本来丁寧に説明しなきゃいけない大臣が、質問者に対して決め付けているというふうに断定されるのは、これ、そう言われてしまったら議論にならないことなんですよね。大臣の考えを逆に押し付けるということになってしまうわけです。
大臣の発言を聞いていて、私だけではなくて本当に日頃額に汗して働いている生産者やあるいは消費者が驚くし、落胆もし、怒りを感じているという声で、私たちの事務所にもそうですし、ファクスや、それから今日も国会の前で抗議の声を上げている人たち、関係者もいるわけですけども、こういう大臣の発言が生産現場やあるいは消費者、関係者に与えている影響についてどう思われますか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 私の前回の答弁について不快な思いをされている方がいらっしゃるとすれば、大変申し訳なく思います。
私としても、今回の基本法改正を通じた農業生産基盤の強化は喫緊の課題であると認識しており、現場の方々にも御理解賜れるよう、今後とも丁寧に説明をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 余り回答になっていないというふうに思うんです。
それで、生産基盤の弱体化していないということですとか決め付けだということに対して、これは撤回して謝罪をされたんですけども、はい、それで終わりというふうになるのかなというふうに思うんです。
私、前回、私のやり取りの中でも、安倍総理の、元総理の答弁を紹介して、それで、やっぱりこう言ってきたんだから、総理大臣の答弁で言ってきたんだからやっぱり修正された方がいいんじゃないかというふうに提案しました。大臣は、弱体化したというような言葉は当たらないということをあのとき三回強調されているんですよね。生産基盤の弱体化を全体的に日本の農業がというふうに、その農業全体の話にすり替えてしまっているというところもありましたし、それから、現在の基本法ができてから二十五年の話をしているのに、七十年間農村社会に住んで、七十年間の話にすり替えているという、このやり取りもあったんですよね。
やっぱり、大臣の発言はこれ本当に断定的発言で、しかも論点のすり替えもやっているということでは、これはちゃんと丁寧に説明しなきゃいけない、そういう責任の放棄ではないかというふうにも言いたくなるんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 午前中の答弁でも申し上げましたけども、私の頭の中に、生産基盤の強化という場合にはどうしてもやはり土地改良を含むNN事業のやはり予算増、あるいは経営体をいかに法人も含めて、個人も含めて確保していくかというようなことが頭の中にありましたので、そういう頭の中にあったことで、生産基盤の強化が必ずしも弱体化しているとは言えないというような言い方になりました。
それについてはおわびし、撤回いたしたいというふうに思います。
○紙智子君 私が紹介した安倍総理とのその議論で、安倍総理が、生産基盤の弱体化を受け止めて、農村の活性化は待ったなしの課題だから、農政全般に抜本的な改革を進めたいという、こういう発言をされていたことを紹介をしました。
この総理の答弁について、坂本大臣は、その後の答弁で、安倍総理のときには弱体化を正面から受け止めてというようなことを言われたということですが、だから、もう少し農業を自由化しなければいけない、競争にさらされなければいけないということに続いていくんだろうと言われました。
これ、弱体化したから、だからもっと自由化、競争にさらされなければいけないという意味でおっしゃっているんでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) その御質問を聞いたときに、私は安倍総理の答弁を読んでおりませんでしたので、安倍総理の成長戦略からすればそういう文言が後に続くのかなということで、推測で答弁をいたしました。おわびをいたしたいと思います。
○紙智子君 推測だったという今お話があったんですよね。それで、TPPの合意したときの安倍総理の記者会見を見ても、農業に与える影響への不安はあるという話は言っていましたけれども、弱体化したから自由化し、競争にさらしたという話はしていなかったというふうに思うんですよ。
それで、従来の政府見解とこの坂本大臣との認識の違い、この認識で議論をされていたとなると、衆議院でいうと二十三時間ですか、それからこの参議院に来て十数時間やってきているんだけれども、そういう質疑自身が何だったのかなというふうに思ってしまうんですね。やっぱり、そういう意味では、大臣の資質が問われる問題だというふうに、発言だというふうに言っておかなければならないと思います。
これは、ちょっと、まだほかにも言いたいことありますので、ここまでにしておきます。
それで、次に、前回に続いての質問になるんですけれども、新規就農者のことについて御質問します。
新規就農者が二〇一五年の六万五千人から二〇二二年に四万五千人になぜ減ったのかということを前回聞きました。そうしたら、様々な要因があると、例えば企業の定年延長で、定年帰農、つまり退職して農業に就いた人が減ったということも要因の一つだと言われました。そうであれば、この退職後に農業を始めた方ということではなくて、若い就農者を増やすことが課題になると思うんですよ。
政府統計の全国の新規就農者数の推移ということについて、なぜ都道府県別に出さないのかというふうに聞きましたら、これ、技術的な問題があるというふうに言われたんですね。確認をしたいんですけれども、この技術的な問題というのはどういうことなのか、説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
まず、新規就農調査でございますけれども、目的は、先生がおっしゃったとおり、新たな農業人材の確保、育成と、こういう目的で調査をしてございますので、様々な項目の調査を行ってございます。就農の形態、例えば親元就農とか雇用就農とか、あるいは就農者の年齢ですとか就農前にどういう就業状態だったかというようなことも調査しておりまして、実態を正確に把握するために、おおよそ七万という多くの方々に調査している、こういう調査でございます。
こういう様々な新規就農の実態を、統計調査としてなんですけれども、精度を確保しつつ、継続的、安定的に把握するということのためには、全国一本の母集団に対して、その中から必要十分なサンプル、標本ですね、調査対象者ですけれども、こういう方々を抽出して調査するということが統計精度上は適切なことであるということでございます。
これ、都道府県別に統計としてやろうとしますと、各県の母集団というのが必ずしも大きなものではございませんので、その中から適切に標本を抽出して、正確に実態を把握するということがこの統計技術的にはなかなか難しいということでございます。
こういった事情もありまして、調査の目的というのは新規就農施策に資するということでございますので、その下でどういう技術的な問題もあるのかということも考えながら、総合的に考えて現在の調査の形となっているということでございます。
○紙智子君 つまり、その標本抽出でやっているので正確さに欠けると、ということで、なかなかそれは把握できていないということなんですか。
いや、だから、この県で何人ぐらい新規就農者がこの間増えてきたのかというのが分からないと、その政府の新規就農者の農政、政策が有効なのかどうかというのは実情が分からないし、検証もできないんじゃないかというふうに思うんですけれども、これどうでしょうか。
○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
ただいま申し上げましたとおり、政策目的に照らしてどういう調査ができるのかというのは常に勉強しているところでございますので、また委員御指摘のことも踏まえて、また将来検討はしてまいりたいと思いますけれども、今申し上げたように、都道府県別に精度を確保して調査するというのがこの標本調査ではなかなか難しいということでございます。
○紙智子君 じゃ、どうしたらいいのかなというふうに、各県のデータを出すことは、じゃ、できないんですか。それぞれの県ごとに聞いたもので判断するということになるんですか。国としては全部一まとめにできないんですか、県ごとには。
○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますけれども、都道府県別に母集団を整備してそこから標本調査するということになりますと、統計の精度が保たれないということになりますので、正確なデータと私どもが思ってお示しできるデータというのは全国一本のデータということになってございます。
○紙智子君 いや、解決しようがないのかなと思うんですけど。やっぱり、各県の新規就農者の推移について見える化しないといけないんじゃないかというふうに思うんですよ。新規就農者を増やすということが重要だというふうにみんな言っているわけで、県別の推移が分かるように改善すべきじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
国としての統計の考え方については今統計部長から御説明があったとおりでございますけれども、我々としても常日頃各都道府県といろんなやり取りをしながら新規就農政策など、企画立案やっておりますので、その統計としてのその数字が出せるかどうかということはちょっとさておきまして、いろんなその各県の動向についてはそういった形で、我々として、政策担当をしております経営局としても何らかの工夫ができないかということについては検討していきたいと思います。
○紙智子君 検討していきたいということではあるんですけど、先日も岩手に公聴会に行ったときに、岩手県で新規就農者今どれぐらいですか、大体二百ぐらいですかねって言っていて、それで、この後どういうふうに増えていくかってことなんかも含めてどうですかって言ったら、いや、ちょっとこのままだったら下がっていきますという話もされていて、そういうのちゃんと県ごとに把握して、で、どうしたらもっと増えるのかということを考えてやっていく必要があると思うので、ちょっと今答えもありましたけれども、大臣、いかがですか。これ改善する必要あると思うんですけど。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) そこは今事務方からお答えしましたように、いろいろ検討してまいりたいというふうに思っております。
その上で、農業が将来にわたりまして食料の安定供給や国土保全等の役割を果たしていくためには、農業の担い手をしっかりと育成し、確保していかなければいけないというふうに考えております。
新規就農者の育成がうまくいっている地域では、新規就農者が機械、施設等必要な初期投資を行った上で都道府県や農業団体等からサポートを受け、しっかり経営を発展させています。例えば、佐賀県では、県、JA、地元農家、市町村が一体となって新規就農支援を行う体制を構築し、就農相談やトレーニングファームによる実践的な研修など、切れ目のないサポートを実施することで、産地の担い手確保、規模拡大に成功しているところです。
こうした事例も踏まえながら、農林水産省といたしましては、次世代の農業者の確保に向けて、引き続き就農に向けた様々な資金メニューでの支援、それから新規就農者の経営発展のための機械、施設等の導入支援、研修農場の整備など、サポート体制の充実への支援などの施策を講じることで、担い手の育成、確保を図ってまいりたいと思っております。
○紙智子君 是非、改善を急いで図っていただきたいと思うんです。
やっぱり、ちゃんとデータがなければ有効な政策出せないと思うんです。
私、福島で新規就農者が増えているという話をお聞きしたんですね。それで、これ二〇一一年ですから本当に震災があった年ですけれども、当時は百八十二人だった新規就農者が、二〇二三年に三百六十七人へと二倍に増えているんですね。特に、自営業者のうちの新規参入者は二十七人が八十三人に、三倍に増えていると。
どうして増やすことができたのかということでお聞きしますと、福島県では、福島県農業経営・就農支援センターというのを設置をして、福島県、それからJAグループ、それから、JAグループ福島、それから県の振興公社、それから農業会議所が一つのフロアで就農者の相談に応じているということなんですね。
センターがこれできるまではどうなっていたかというと、農地については農業会議所に行ってくださいと、それから就農準備金などについては振興公社に行ってくださいと、販路とか融資については農協行ってくださいと、制度の相談は福島県ですということで、言ってみればたらい回しにされ、あっちこっち行かなかったらなかなか解決にならないということで大変だったということなんだけれども、それをワンストップ、ワンフロアで相談できるようになったと。ですから、まさに就農から定着まで、ステージに応じて一貫支援が受けられるようになって非常に好評だということなんですね。
そのモデルになったのが二本松市だというふうに聞きました。ここは有機農業に取り組む農家が多いので、有機をやりたいという新規就農者が集まってくると。移住とか定住、こういうことで新規就農者の支援の専任の担当者が配置されていて、積極的に地域に入って地元の農家とつないでいると。イベントなんかもやって、新規就農者の集いにはそこに住んでいる先輩の農家も来て、出される希望や不安などを聞いて答えていくと。
JA福島が福島県アグリサポーターセンターというのを提案していて、これが県が設置したセンターのベースになったそうなんですけど、意見交換の場をつくって、例えば新しいことに挑戦したいとか、作付けや面積を増やしたいけれども資機材の導入の費用が大きくてできないとか、無農薬でやりたいけれども軌道に乗るまでは貯金を崩すしかなくて不安だとか、あるいは耕作放棄地ですね、これをなくしたいけれども、遊休農地でいいところがないだろうかと、紹介してほしいというような声が出されるわけですけど、これをみんなで共有してサポートしているということなんですね。地域のベテランの人が、農家がこの新規就農者の支援に非常に積極的だということで回っていっているということなんですよ。
ですから、大臣、是非国もこのワンストップで相談に乗れる取組を支援してはどうかと思うんですけど、いかがでしょうか。
○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
農業への新規参入を希望する方々に対しまして、昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法に基づきまして都道府県が整備する農業経営・就農支援センターにおいて、就農先市町村の紹介や活用できる支援策の情報提供、さらには就農から経営発展に向けた専門家による助言、指導等によりサポートする取組を行っているところでございます。
今委員から御指摘いただきました福島県農業経営・就農支援センターでございますけれども、同県センターにおきましては、県内関係機関が連携した相談窓口を設置をし、福島県内の新規就農者数について、令和五年は過去十年において最高の実績を上げているということで、今委員から御紹介いただきましたように大変大きな成果を上げていると我々も認識をしております。
今後も、委員御指摘の内容、現場の声を踏まえながら新規就農者の育成、確保についてしっかり取り組んでまいりますけれども、こういった優良事例をやはり横展開をしていくということが非常に重要だと思っておりますので、こういった事例、他県にも紹介をしながら、こういった取組が広がるように我々としても工夫をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 是非ワンストップ支援を広げてほしいと思います。
それから、新規就農者の支援は二〇二二年に拡充されているんですけれども、親元就農を含めて機械や施設を導入したときの支援が行われるようにはなったと、これはそうなったと。しかし、親元就農者への経営開始資金、これ年間百五十万円の支援というのは受けられないんですよね、今は。それで、新規就農者を増やす一番有効なのが、実は親元就農者の支援だと。いっぱい要求出されていると思うんですよ。
二十一日の岩手県の地方公聴会のときに、雫石で、課長さんに聞いたら、町独自に親元就農者に少ないけど三十万円出していると言っていましたよ。しかし、町の財政もあるから、そんなにそんなにやれないということがあって、こういうのは国にも是非やってもらったら有り難いという声が出ていたんですよね。
年間百五十万円の支援というのはこれ親元就農にも拡充するように、大臣、是非これ決断してもらえませんか。
○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) 恐縮でございます。ちょっとまず私の方からお答えをさせていただきます。
これ、午前中の藤木委員からの御質問に対する回答とも重複をするんですけれども、この経営開始資金でございますけれども、特に新規参入の方を念頭に、前職を辞めて就農するなど、生活資金の確保の厳しい中で新しく就農しようとする方を後押しするための施策として今展開をしておるわけでございますけれども、そういった中で、農家子弟であっても新規参入と同等のリスクを取って就農される方にはこの交付の対象としているということで、午前中も答弁させていただきましたけれども、実績の約三割程度が農家子弟への交付になっているということでございます。
さらに、令和四年度から措置をいたしました機械、施設導入支援策であります経営発展支援事業でございますけれども、これは新規参入者並みのリスクがない親元就農の場合でも支援対象とするなど、親元就農の支援策を充実させてきたという状況でございます。
こうした支援策を引き続き着実に実施をしながら、親元就農者も含め、新規就農者の確保につなげていきたいと考えておりますし、現場の声、実態を踏まえながら、我々としても今後の施策の在り方を検討してまいりたいと考えております。
○紙智子君 今、担い手が少ないわけですよ。今、一生懸命担い手増やさなきゃならないときじゃないですか。だから、いろいろいろいろ言って、出さないというのじゃなくて、思い切ってやっぱり増やそうと、そういうときにしなきゃいけないんじゃないですか。大臣、是非これ決断してほしいんですけれども。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 令和四年から、まずは親元就農の方々に対しまして、機械、設備、そういったものへの貸付け、そして返済の一部免除、こういったものを措置をしたところでございますので、今後の問題、課題として考えてまいりたいというふうに思います。
○紙智子君 もう是非ともやっていただきたいというふうに思います。足りないんですから。本当にもう飛躍的に増やさなきゃいけないんだから、是非やってほしいと思います。
それから、もう一つ課題ですけれども、認定農業者が高齢になって離農した後の農地の管理についてなんですけど、農地の受け手として規模拡大してきた生産者が高齢化し、生産できなくなったときに農地を誰が継承するのかと。これ、引受手が見付からないときにどうするのかということについて、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 規模の大小にかかわらず、後継者がいない高齢の農業者につきましては、第三者への継承も含め、できる限り後継者を確保することが重要と考えております。
現在、各市町村において、次世代に農地を継承するため、将来の農地利用の姿を明確化する地域計画の策定を進めていただいているところです。その際、後継者が不在などによりまして受け手がない農地は目標地図に示し、市町村が公表することとなっています。また、農林水産省でもそうした情報をホームページにリンクさせて、都道府県の農業経営・就農支援センターや市町村の就農相談窓口等で活用していただくことというふうにしております。
その上で、こうした農地に新たな受け手を呼び込めるように、就農に向けた経営開始資金、青年等就農資金などの資金の交付、そしてサポート体制の充実などの新規就農支援策、さらには、受け手となる経営体の経営発展への支援、そして農地バンクの活用を通じた農地の集積、集約化などの施策を講じまして、農地が将来にわたって継承されるように努めてまいりたいと考えております。
○紙智子君 人口減少が続いている中で担い手をどう増やすかと。これ、所得を増やすのはもちろんこれ大事なことなんですけれども、担い手という意味では、農業の生産活動に取り組む人は、効率的かつ安定的な経営体とか法人に絞るんじゃなくて、やっぱり広げることが大事だと思うんですね。ですので、法改正をするというのであれば、この農業生産に携わる家族経営を重視すると、もっと広げるという視点が必要だというふうに思います。
次に、農村の振興についてお聞きします。
現行法の第五条において、農村は、農業者を含めた地域住民の生活の場で農業が営まれているという規定が置かれています。三十四条では、国は、地域の特性に応じた農業生産の基盤の整備と交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備その他の福祉の向上を総合的に推進するというふうに書いています。
基本法を改正するに当たって、関係省庁と現状把握、課題などを議論したんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
現行法の三十四条、委員お話ありましたように、交通、情報通信、衛生等の生活環境の整備等を行い農村の振興を図ることにしておりまして、このため、農村振興政策は関係省庁と連携して進めているところでありますので、例えば、国土交通省が主催いたします地域の公共交通リ・デザイン会議では農村地域における地域の公共交通の在り方について、また、情報通信につきましては、内閣官房が関係省庁を集めるデジタル田園都市国家構想実現会議において中山間地域におけるデジタル技術の活用の後押しを、また、衛生につきましては、下水道を所管する国交省及び浄化槽を所管する環境省と協議をしておりまして、関係省庁と農村の現状把握や課題について議論し、政策を進めているところでございます。
引き続き、地域の課題を解決していくために、政府一丸となって農村の振興をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 つまり、関係省庁と協議しているということでいいんですね、協議しているということでいいんですね。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 政策の推進に当たりまして、関係省庁と協議しながら進めております。
○紙智子君 参考人として意見陳述された中山間地域フォーラムの野中和雄さんが、この農村政策、地域政策は関係省庁と連携して総合的に進めることだというふうに言われましたけれども、これ、交通にしても、それから教育や福祉にしても、良くなっているとは思えないんですよね。
農林水産省が検証部会に提出した資料には、農村の人口問題は人口流出という社会減から今は自然減になっていると、減少とか傾向が書かれているんですね。それから、高齢化率が高い農業集落は生活の利便性が低い傾向、生活の利便性が低いと、更なる高齢化、人口減少につながり、集落存続の危機が深まるというふうに書いてあるわけです。
この集落存続の危機が深まるというのであれば、なぜ農村がそういう状態になっているのか。地域のその格差ですね、地域間格差とも言われますけれども、これは政府の政策に問題があるから危機が深まっているんじゃないんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 今委員御指摘ありましたように、人口減については自然減が主因になっておりますし、それに伴って集落の活動が九戸以下になりますと非常に落ちていくということで支障を来しているということでありまして、そういうことも踏まえて、今後、国内の人口が減少し続ける中でも、農業従事者を含め農村人口の減少も避け難い状況にあるわけでありますが、こうした中でも農業を下支えする農村コミュニティーの基盤が維持されるように、農村地域の活性化をしっかりと図ってまいりたいと考えております。
○紙智子君 なぜ人口減少が進んでいるのかと、ここのところをいろいろ考えなきゃいけないんだと思うんですよね。
いろいろあるかもしれないけれども、一つ挙げるならば、私は平成の大合併の影響というのは大きいと思うんですよ。検証部会において、この平成の大合併が農村地域の生活や農業に影響を与えたかどうかというのは検証されているんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 市町村合併によります農林水産部門への影響につきましては、基本法検証部会におきまして、市町村役場への距離が遠いと高齢化率が高くなる傾向があるということが示されたところでございます。
また、農村振興局の方で行っております令和四年の新しい農村政策の在り方に関する検討会のとりまとめの中では、平成の大合併以降、地方自治体職員、特に農林水産部門に関わる職員が減少してきており、各般の地域振興施策を使いこなし、新しい動きを生み出すことができる地域とそうでない地域との差が顕在化しているというような指摘があったところでございます。
○紙智子君 農林水産省は、これ検討されているんですか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 検討会、農村振興局の検討会でありまして、我々としてそういう認識を持っているところでございます。
○紙智子君 平成の大合併が地域にどういう影響を与えたのかというのは、多くの指摘や論文が出されています。
日本村落研究会の「平成の大合併と農山村」というのがありますが、これには、合併によって過疎化の進展にブレーキが掛かった事例はないと、過疎化の進展にブレーキが掛かった事例はない、旧村ごとに行っていた独自の農政を消滅させた、予算の縮小が進められ、農政に特化した予算措置ができなくなったというふうに指摘しているんですね。それから、市町村の一般行政職員数は二〇〇四年から十八年間で一一・二%減、特に農林水産担当は二八・四%も減少していると。
それから、農業新聞の二〇二〇年の一月五日付けの「現場からの農村学教室」に、小島延夫さん、弁護士さんですけれども、卸売、小売、飲食店などの役場関連需要が減少、学校や幼稚園などの統廃合、郵便局、JAの統合など公務関連業種が減った、合併することで役場がなくなり、地域振興の原動力を失い、公務員が減り、地元商店、飲食店の顧客を失い、若い人がいなくなり、保育園、小中学校の生徒が急減したと言われていますと指摘するなど、そのほかにもいろいろ論文が出されていると思うんですよ。
この平成の大合併というのは地域農業に大きな影響を与えているんじゃないかと思うんですけど、これ、大臣、御認識を伺います。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 大合併につきましては様々な考え方があると思います。財政上のやっぱりスリム化等もあります。一方の方で、やはり合併したことでよりきめ細かな行政が行き届かなくなったというようなこともあると思いますけれども、合併がこれまで行われてまいりましたので、これからこういった検証、反省も踏まえながら今後どういう自治体行政をしていくのか、これは、農林水産省だけではなくて、総務省等も含めて考えていかなければならないことだと思っております。
○紙智子君 総務省も含めて、いや、もう国全体で考えなきゃいけない大事な問題だというふうに思うんですよね。そういうことをきちっと総括するというふうに思います。
それから次に、基本法の改正で、農村の位置付けについてなんですけれども、農政審答申の農村施策の見直しの方向というのがありますが、ここには、情勢の変化や課題を踏まえて食料安全保障の観点から見直すって書かれているんですよね。
それで、なぜ食料の安全保障から見直すということなんでしょうか。大臣、お聞きします。
○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) お答えいたします。
農村については、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしています。食農審の基本法検証部会におきましても、農業を下支えする農村の機能は農村集落の活動によって支えられてきたという認識が示されました。基本法制定当時と比べまして農村の人口は急速に減少する中で、特に中山間地域を中心として集落の存続は困難になってきている、その結果、農地の保全管理レベルが低下する懸念が増している、また、集落の共同活動、末端の農業インフラの保存、保全管理が困難になってきていると。
こういった農業を下支えする機能に関する課題が明らかになってきておりますので、食料安全保障の観点からも、農村施策に関して、地域社会の維持を図る、農村集落の機能の維持を図るという観点から施策の見直しの必要性があるとされたものでございます。
○紙智子君 先日の参考人質疑のときに野中参考人が言われていたんですけれども、都市住民から見ると食料の安全保障は重要だと、しかし、農村からいえば、仕事、暮らし、農業を続けていけるかどうか、住み続けられるかどうかが一番重要なんだというふうに発言されていました。
今回もし見直すんだとすれば、この住民生活が第一だと思うんですよ。政府挙げて、生活環境の整備、その他福祉の向上を進める政策は必要ではないのかなって、私は野中さんの意見聞きながら、いや、本当にそうだなというふうに思いました。
例えば、北海道でいうと、もう今病院が地方から消えていっているわけです。鉄道も廃線になっている、商店街も減っている。そして、札幌に人口がどんどんどんどんと集中しています。今地域を支えているのは、地域で病院なくなった中では例えば厚生病院であったり、それからガソリンスタンドもなくなっていくんだけど、農協のガソリンスタンドが何とかかんとかやっていたりとか、農協のお店なんですよね。
これって元々で言えば、これ公共インフラ整備に責任を持つというのは政府の役割だったんじゃないのかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 今委員御指摘のとおり、地域コミュニティーの維持のためには住民生活や生活環境の改善といった福祉の向上が必要であると考えております。そういう意味でも、まず、農林水産省におきましては、いわゆる農村RMOということで、農業活動とそれから生活の維持活動、そういったものを行います地域運営組織の形成を通じた地域課題などの取組を行っているところでございます。
このほか、地域住民生活でありますとか生活環境の改善につきましては、交通、情報通信の整備といった観点から他府省との連携も重要と考えておりますので、農業、農村の実情に応じてこれらの施策が活用されるよう、農業従事者を始めとする現場の声を聞き、その声を関係府省に届けるとともに、必要に応じて関係府省へ施策の改善を提案することなどによりまして、関係府省としっかりと連携をして地域の農業、農村振興を図ってまいりたいと考えております。
○紙智子君 今、実は大臣に聞いたんですよね。どうして大臣に聞いたかというと、大臣はまち・ひと・しごと創生担当大臣もされたことがあるので、大臣、いかがですかって聞いたので、是非お願いします。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 私も消滅しかかっている集落を幾つも抱えておりますけれども、やっぱりいろんな要因があると思います。仕事がない、そして子供がいない、やはり女性がいない、帰ってこない、そういったものが、いろんな要因があると思いますので、我々といたしましては、農林水産省としては、農村型の地域運営組織、いわゆるRMOをいかに有効にやはり活動、活用できるのか、そういったことを提言しながら、先ほども言いましたように、総務省、国土交通省、経済産業省、あるいは文部科学省、厚生労働省、様々な多岐にわたる要因が内在しておりますので、横の連携というのをしっかり図っていかなければいけないというふうに思っております。
○紙智子君 検証部会に全国町村会が意見書を出していますよね。七項目あると思うんですけど、その全部読み上げると大変なので、その中でも農村価値創生交付金の創設を求める意見書を出しているんですけれども、これについて説明をいただきたいんです。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
農村価値創生交付金は、平成二十六年に全国町村会が提唱したもので、農村の価値を持続的、安定的に高める地域独自の多様な取組を主体的に実施できるよう、国が使途の大枠を決定した上で、自治体に客観的な基準で配分する交付金とされております。
令和五年三月の基本法の見直しに関する意見では、交付金は、自治体が主体性を発揮すべき政策分野について、現行の国庫補助の仕組みからの移行を提唱するものであり、新たな財源措置を求めるものではない、また、農林水産関係予算総額の減少を予定しているものでもない、交付金は、国が政策目的の大枠と総額を決定した上で客観性に配慮した適切な指標に基づき自治体に配分し、自治体は配分額及び政策目的の範囲内で具体的な政策を企画、実施する、現行の個別の補助制度よりも大幅に自治体の裁量を広げることになる、詳細な制度設計は、政策効果の検証の視点や透明性を確保する仕組みを取り入れながら、国と自治体との協議の中で行われるべきであると説明をされております。
○紙智子君 やはり、この自治体の裁量を大幅に拡大しての農村価値創生交付金、こういうものを検討してもらいたいという要望出ていると思うんですよね。それで、やっぱりこういう意見書にも応えて、地域間格差の解消に本腰を入れるようなやっぱり新機軸が必要ではないかというふうに思います。これは主張にとどめます。
それから、あともう少し、時間がなくなってきたんですけど、中山間地域直接支払についてお聞きします。
日本では、EUのような個々の農業者への直接支払ではなくて集落活動をベースにした支払にしている、その理由について説明をしてください。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
中山間地域等直接支払制度は、中山間地域の農業生産条件の不利を補正し、農業生産活動の継続を支援する制度であります。
本制度の実施に当たりましては、EUと異なり、我が国においては中山間地域等における農業生産活動が地域の共同活動により支えられてきたことを踏まえ、共同して取り組むことが効果的であるとの観点から、地域の農業者等で構成される組織に対して交付金を交付することとしているところであります。
実際に、本制度は、荒廃農地の発生防止や水路、農道の維持保全だけではなく、中山間地域の大きな課題である鳥獣被害の減少、集落機能の維持等にも効果があると地域から評価されているところであります。
○紙智子君 一九九二年に新政策を打ち出したときに、農林水産省の主に企画官が構成員になって新農政推進研究会というのがつくられていて、「新政策そこが知りたい」という本を出していますよね。それで、EU型の条件不利地域対策について、我が国において対策地域、農家の限定を一律に行うことが技術的に難しいのではないか、実施すればばらまき的になってしまい、十分な政策効果が得られないのではないかと書いているんですよね。
今も中山間地域の直接支払ってばらまきだというふうに考えているんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) 現行の、今、先ほど申し上げましたように、中山間地域等直接支払制度、地域に渡してその中でいろいろ地域でしっかりと使っていただくことによりまして効果を発揮しておりますので、この仕組みでやっていくことが適当であると考えております。
○紙智子君 今もばらまきって考えているのかどうかと聞いたんです。
○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) これ自体は、この仕組み自体はばらまきではなく、集落機能の維持等に効果があるというふうに考えております。
○紙智子君 ばらまきでないというふうに思っているというふうに受け止めていいですよね。
だとしたら、やっぱりヨーロッパ並みに拡充すべきじゃないかと。いつでも集落を基礎にしなきゃいけないというんじゃなくて、やっぱり農民、農家個々に対して直接支払というのは必要じゃないかということを申し上げて、ちょっと時間になりましたので、続きはまた次回ということで、終わらさせていただきます。