◇日本生活協同組合連合会が求めている「財政支出に基づく、生産者への直接支払い」について聞いたところ与野党から推薦された参考人全員が賛成と答える。 岩手大学の横山英信教授は、食料自給率が食料安全保障に関するさまざまな指標と並列で扱われているため自給率の目標がぼやけるとし、「現行基本法からの後退だ」と指摘する。 水田活用交付金の見直しおいて、「5年に一度の水張り問題は、ないほうがいい」との指摘も。
○食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇盛岡地方公聴会
公述人 株式会社西部開発農産代表取締役社長 照井勝也君
全国農業協同組合連合会岩手県本部県本部長 高橋司君
賢治の土株式会社代表取締役 畠山武志君
岩手大学人文社会科学部教授 横山英信君
─────────────(略)─────────────
○公述人(株式会社西部開発農産代表取締役社長 照井勝也君) 株式会社西部開発農産の照井と申します。
本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、簡単に自己紹介をさせていただきます。
弊社は、昭和六十一年、北上市に設立をしております農業生産法人です。設立当時は約六十ヘクタールという規模でありましたが、地域の担い手として耕作依頼があった農地を引き受け続け、今年度の実績は管理面積で約九百四十ヘクタールまで拡大をしております。
栽培品目は、水稲や大豆等の米穀作物を中心に生産しているほか、畜産部門では黒毛和牛の生産を一貫で取り組んでおり、繁殖牛約百頭、肥育牛約百七十頭を生産管理しています。さらに、六次化にも取り組んでおり、精米やみそ、乾麺の商品化や直営焼き肉店の経営も行っております。
現在、岩手県農業法人協会の会長も務めさせていただいており、日本農業法人協会の政策提言委員会にも属しております。本日は、そういった立場から意見を述べさせていただきます。
大規模経営の立場から、十年、二十年先の未来ある日本農業を願いまして、現基本法の改正案について発言させていただきます。
私たち大規模経営は、現基本法がうたう効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造の実現に向け、自己責任と創意工夫で自立した経営の確立に邁進してまいりました。当社も含め志を同じくする全国約二千百社の農業法人が集まる日本農業法人協会は、先週十六日に二〇二三年の農業法人白書を公表しました。
この農業法人白書によりますと、会員の平均売上高は約三億九千万円に上り、十年前と比べて約一・五倍に拡大しています。これは、農業法人を始めとする大規模経営が国民への食料の安定供給の中心的な役割を担ってきているという紛れもない事実であります。
昨年五月になりますが、日本農業法人協会が現基本法の見直しに対する意見を公表し、検証部会の委員でもある齋藤会長が検証部会にその意見を提出させていただきました。
その意見の中では、効率的かつ安定的な農業経営の発展には、農地バンクの活用などによる農地の集積、集約化が重要であると提言しています。そして、現在各地で進められています地域計画の策定に当たっては、私たちのような農業経営が主体的かつ積極的に関与できるよう求めています。
しかし、全国の会員からは、地域計画の協議の場に呼ばれていないとの声をよく聞きます。また、地域計画の作成状況も分からないとの声も多数あり、地域計画をリードする関係機関の取組姿勢に不満を持つ会員もいます。
基本法制定から二十年間で個人経営体数は大きく減少し、その一方で法人経営体は増加しています。また、農水省によれば、二〇四〇年に基幹的農業者が現在の四分の一、約三十万人まで減少すると予測しています。しかしながら、改正案では、望ましい農業構造の確立に当たって、農地の確保が図られるよう多様な農業者にも配慮するとしています。
私は、決して個人農家を否定するわけではありませんが、担い手と副業的な農家が同系列に扱われ、私たち担い手への農地の集積、集約にブレーキを掛けることにならないか、そして、これまで進めてきた望ましい農業構造の実現に向けた改革を後戻りさせるのではないかと大変危惧しております。
それから、私たち生産者は、いかに生産コストを下げ、そしていかに生産量を上げるか日々努力をしています。それは圃場の条件によって大きく左右します。改正案では、農業生産基盤の整備及び保全に係る最新の技術的な知見を踏まえ、農地の区画拡大、畑地化について必要な施策を講ずるものとすると新設されています。農地の基盤整備は生産コストや収量に直結する効果が得られること、また、畑地化は自給率が低い需要のある作物に対しての効果が得られることが期待できるというところから、非常に意味のあるものと考えています。
また、海外の情勢不安や円安の進行などによって、飼料や農業生産資材の高止まりの影響を大きく受けています。効率的かつ安定的な農業経営に取り組む大規模経営ですら、自助努力では打開できない域に達しています。先ほどの農業法人白書では、現在の経営課題の第一位に資材コストが三年連続で挙がっています。改正案では、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するための必要な施策を講じることが新設され、こちらも意味のあるものと考えています。
その一方で、農業に関する団体の努力については、現基本法の理念の実現に主体的に取り組むよう努めるから、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、積極的に取り組むよう努めると改められています。
現基本法の下で、平成二十八年に生産者の努力では解決できない構造的な問題を解決するため、農業競争力強化プログラムが決定しました。その中では、生産資材価格の引下げや流通の構造改革などが挙げられています。農業に関する団体の取組姿勢が主体的から積極的に改められることで、生産資材などを取り扱う業界団体の構造改革に歯止めを掛けることになるのではないかと、こちらも大変危惧しております。
全体を通して言えば、今回の改正案は評価できる部分はあるものの、これまで進めてきた改革の時計の針を巻き戻してしまうのではないかというのが率直な感想です。旧基本法の改正時には、国民的議論を交え、何年もの歳月を掛けて改正したと聞いています。現基本法の改正の柱が食料安全保障の確保である以上、旧基本法の改正時に増して十分な国民的議論と国民の理解が必要と考えています。その点を考慮いただきたいというふうに願っています。
以上をもちまして、私からの発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○団長(滝波宏文君) ありがとうございました。
次に、高橋公述人、お願いいたします。高橋公述人。
○公述人(全国農業協同組合連合会岩手県本部県本部長 高橋司君) 全農岩手県本部の高橋でございます。
本日は、このような時間、意見を申し述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。ただ、諸先輩方がいらっしゃる中ですので、なかなか意見をしゃべりづらいというのも実情でございますが、御容赦いただきたいと思います。
まず、私の方からは、岩手県の今の農業の実情を若干御説明をさせていただきたいと思います。資料の方にはちょっと載せてございません、口頭でだけで失礼いたします。
今の農業人口につきましては、五万二千人、二〇二〇年の数値でございます、岩手県の農業人口が五万二千人。十五年前は十一万四千人おりました。ですので、その当時から比べると四五%にまで減ってきている。これは日本全国どこも同じ傾向だと思います。その中の基幹的農業従事者というのが四万四千人。これも二〇二〇年の数値でございますが、これも二〇〇五年と比較した場合、十五年前と比較した場合は六三%に減っております。
ただ、農業者人口の減少よりは基幹的従業者の減少率は少ないというようなことがございますので、あともう一つ、規模別に見ますと、三千万以上の経営体数というのが九百七十経営体ございます。十年前は、これはちょっと十五年前の数字がなくて十年前ですが、八百二十三経営体でございました。先ほど照井さんから言われたとおり、大型の経営体、こちらの方は増えていると、岩手県でもそういうような状況でございます。ですので、農業を進める上で大型経営体への集積というのは岩手県でも進んでいるということが見えるかと思います。ただ、農業生産法人であったり集落営農組織を推進してきたということがございますが、その結果、このような数字になっているというような状況でございます。
岩手県の農業の実情については、ちょっと人口の部分だけで御説明をさせていただきます。
あと、今回の農業基本法の部分で若干お話をさせていただきたいと思いますが、今回の案の中で、第二条の五項の中で、持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるべきというような格好の表示がございます。そのために合理的な費用が考慮されるということで、その合理的な費用というのはどういうことかというのが、法律の文面ではなかなか出てこないとは思いますが、それをどういかに具体的に実現していくか。
農家の方々から言われるのは、コストが上がった分を生産物にいかに価格転嫁できるかということを常日頃言われております。その中で、需給バランスで決まってくる農業生産物に関していかに合理的な費用を価格転嫁できるようになるのか、こういうところがこの法律の趣旨に基づいて実現できるようどう組み立てていくかというところが一番重要なことかなというふうに私は考えてございます。
また、今度の二十三条の中でも、食料の持続的な供給に要する費用の考慮というような表現がございます。これはもう先ほどの発言と同じような中身で、それをいかに具体化するかというのが重要なことであろうというふうに思っております。
それと、あと、また条文が進みまして、十九条のところ、食料生産に加え流通面について、十九条の中では、食料生産に加えて流通面に言及している点。これにつきましては、食料生産だけではなく物流システム、これらがいかに重要であるか、どんなにものを作っても、必要なところに必要なものを必要なときに届けられるシステムというのが必要と、それらを構築していく必要があるということを今回の農業基本法の中で言及されているというのは、非常に評価できる部分だろうなというふうに思ってございます。
あとは、ちょっと条文とはずれますが、衆議院の決議の中での附帯決議、参議院の中で衆議院の話をして大変恐縮ではございますが、附帯決議の八項目めのところで、多様な農業者が地域農業に大きな役割を担っているという点を取り上げてくださっております。
私ども系統組織、農協としては、当然、担い手の方々、地域を代表する法人なり集落組織であったりという担い手の方々を中心に集落の農業は構築されていかなければならないということはございますが、反面、その中で、規模は小さくても地域の中で十分大きな役割を果たしている農業者というのがいらっしゃいます。その方々に光を当てて、その方々が十分農業を営める対策を当然つくっていかなければならないというふうに思っておりますので、この附帯決議の中の一言、一項目は非常に有り難いというふうに考えてございます。
これらを踏まえて、資料の方にお出ししておりますが、JAグループの政策提案ということで、これは先般、自民党さんの方にもお出しさせていただいたような内容でございますし、JAグループの政策提案として発表しているものでございます。
ちょっとページを振っていなくて大変恐縮でございますが、表紙をめくっていただいて、もう一枚、二枚めくっていただいて、(5)経営安定対策の強化というところがございます。そこを御覧いただきたいと思います。
ここの中で、三行目のところに、現在のセーフティーネットを組み合わせても補い切れない生産資材価格の高騰に対応し得る政策を充実させることということを提案させていただいております。
先ほど、価格転嫁がなかなか難しいというお話をさせていただきました。実際、日本の資本主義の中で価格転嫁を強制的にやるというのはなかなか難しいことだと思います。ですので、農業者に対するセーフティーネットの充実、単価がなかなか確保できない、販売をしても赤字になるというようなところを補填できるようなセーフティーネット、今現在も様々なセーフティーネットを設定していただいております。それをいかにコストが上がった分を含めて充実させていけるか、そういう点を是非実現できるような農業基本法、それが第一義として実現できるような農業基本法にしていただきたいというふうに思っております。
また、こちらの提案の方に、もう一枚めくっていただきまして、資料、次のページの(3)の@というところで、担い手、多様な農業者、サービス事業体への支援ということで、多様な農業者という格好で提案をさせていただいております。
中で、@のところで、二行目から、地域計画に位置付けられた多様な農業者への施策を抜本的に拡充することというふうな提案をさせていただいております。
先ほども若干お話し申し上げましたとおり、地域の中では多様な担い手がいらっしゃいます。また、大型の農家の方々、大型の法人なり集落組織の方々が地域の農地を引き受けてくださって、農地を農地として維持してきていただいております。ただ、それも限界に近づいている地域も多数ございます。そうなると、受けれない、経済的な部分で考えると受けれない、だけどその農地を耕作放棄地にするわけにいかない。そうなった場合には、その多様な担い手、地域の中で農業を小規模だけれども農業をやっていく方々、そういう方々をやはり残していかないと、その地域は日本全国ぽつんと一軒家だらけになってしまうという危惧がございます。
ですので、そのような大きな担い手の方々、中小の方々への支援を並行して進めていただければというふうに思っております。
農村地区、私も実は農村地区に住んでおりますが、人口減、担い手不足、耕作放棄地の増加という問題点を抱えてございます。それに対して、集落組織なり法人化により地域のコミュニティーを維持しようというふうに取り組んできてございます。その中でも限界になっている、農地を受け得る、農業を受ける法人、もうこれ以上無理だという限界になっているところも多数ございますので、そこら辺を含めて、セーフティーネットを充実させることによって中小規模の農家でも十分生活できるところ、ただ不必要な農地の貸し剥がしのようなことは不要だと思いますが、地域としてそのコミュニティーを維持するための対策というものを今後十分に検討した中での法律を作っていただければというふうに思っております。
済みません、ちょっと話が前後したりして聞きづらかった点があろうかと思いますが、以上で私からの意見陳述とさせていただきます。大変本日はありがとうございました。
○団長(滝波宏文君) ありがとうございました。
次に、畠山公述人、お願いいたします。畠山公述人。
○公述人(賢治の土株式会社代表取締役 畠山武志君) 賢治の土株式会社の畠山武志と申します。
本日は、大変貴重な場に呼んでいただきまして、誠にありがとうございます。
当社は、設立は平成十五年、今年で二十年となります。主な核となる事業につきましては、産直施設の運営でございます。特に、農産物を始め県産の加工品から民工芸までというようなところの展開をいたしております。私も、一方では認定農業者としてトマト作りもやってございます。
今日は本題の前に、今から、初めて産直に取り組んだときの経緯も含めて、より本題の方に御理解をいただけるような御説明を申し上げたいと思います。
まず、産直を始めた経緯は、盛岡市内から県北方面へ約三十分、渋民地区、これが二〇〇八年に新しい商業施設開業計画がありまして、その中で道の駅同様の産直施設を造りたい、その運営をしてほしいとの要請に応えたものであります。
その中の目的としては、玉山渋民地域の活性化に資すること、二つ目として、農家の手取り収入を高めること、お客様に喜んでいただける販売価格の実現を行い、頼りにされる施設にすること、そして、安全、安心を担保すると、この四つでございました。
その中で、役割分担としては、売場それから設備、これについては商業施設のオーナーに受け持っていただく。次に、売場の商品であったり、それから農作物以外のお取引先の部分に声を掛けて、その集約は賢治の土が、また販売システムも賢治の土がやる。そして、一番核となります農産物につきましては、JAさんの協力を得て、産直部会、この設立と、あわせて、安全、安心、当然のごとくそこはJAさんがしっかりやっていますので、農薬であったり栽培履歴であったり、そういったものを担当された。
その中で、特にも我々が一番力を入れて、そして調査をし行ったのが、生産者の農家の手取り収入のアップをするんだと、この取組でございます。
当時、今から十六年前になるわけですが、通常の農家が出荷をして、首都圏を想定した場合に一品の売上げ百円、それを売り上げたときに、輸送料であったり段ボールの資材のコストであったり、そういったものを、経費を差し引いたときの手取り額が四十円から四十五円、こういう結果でございました。私たちは、これを何とか手取りを上げたい、地域にいて収入が取れるそういう施設にしたい。その中でやったのは、いわゆる施設の運営オーナーと、それから私ども賢治の土と、そしてJAさん、その中で私たちは持続していけるような施設を造ろう、そして実現したのが手取りが七十五円から八十円、そういうところに行き着きました。
やはり、もう一つの意味合いとしては、お客様に、地域の消費者、市民の方々に産直野菜、そして、そこに記載されている文があります、鮮度であったり顔が見えたり、そして、なおかつ、いつでもよりどころ、野菜のお買い場としてのよりどころ、これを実現をするためにそういう組立てをいたしました。
ようやく、その中で、安全、安心については、JAさんの指導も含めて、例えば表示関係については東北農政局さんの方に御相談をし、勉強会も実施もいたしました。それから、表示関係、これらについても保健所さんの方に御指導いただいてやってございます。そういう中で、まずは産直、私どもが考えた産直はそういう形でございます。
さて、次に、その産直の今、今どうなっているのか。先ほど県の本部長さんの方からもお話があったんですが、今生産農家が抱えている喫緊的な課題というのは、いわゆる資材の高騰でございます。それから、薬剤、関連するもの、特にも露地栽培の場合のマルチ、これは二倍になってございます。それと、種子、こちらの方は三倍になっております。
そのような状態の中で、お話を申し上げたとおり、それを消費者に、いわゆる資材の高騰を理由に価格転嫁、本当にできるものだろうか。特に、我々は、先ほど申し上げましたとおり、産直という形の中で、よりどころとしてお客様が買えるぎりぎりの、そういうような考え方で進めてございます。そういたしますと、倍です、資材が。それが単純に足し算で、掛け算ででき得るものではございません。そうなって、今の状況はやはりお客様に買ってもらえるぎりぎりの価格。何でか。作り続けるとは、継続的に買っていただかなきゃならないじゃないですか。ですから、そういうような状況です。やはり、その辺のところも含めて、国の方では何らかの支援措置というものをお考えいただきたい。
次に、産直農家というのは、役割として、小規模ではありますけれども、地域の消費者に向けた農産物の安定供給の担い手でございます。ですから、産直野菜というものはそのものが付加価値商品でありまして、さきに述べましたとおり、生産資材の高騰分も十二分に反映できないけれども今頑張っている、そういう状況です。それから、特にも強調を申し上げたいのは、この産直に期待をしてくれるお客様、消費者へ産直だからできること、お客様とのつながり、喜んでいただきたい。それが、厳しくとも作りがい、そして生きがい、やりがいになっております。その実感こそが、頑張ろう、このエネルギーを生み出しているんです。
小規模家族経営体の農家は、地域の食あるいは地域コミュニティーを支えていっていると言っても過言ではありません。年々農業を取り巻く環境は厳しさを増しており、合理的な価格形成を維持しつつ国民一人一人がこれを安定的に入手すること自体が大変困難になっていくような気がしてなりません。
また、温暖化による厳しい気象変化の対応、予防とか、そういう対応、対処できるような栽培管理方法の習得、これも非常に重要な課題であります。岩手でも、昨年度は記録的な猛暑により、また春の凍霜障害により農産物に大変な被害が出ました。でも、結果的にそれを受けるのは消費者なんです。農家も大変です。計画したものが取れない、販売高もキープできない。でも、そのまた消費者のところにそれが全て行くわけです。
そして、そういった部分で対応策、今JAさんとか、本部長がおられますけれども、JAさんを通じたいろんな対策の方をなさっておりますけれども、やはりそれが満遍なく順次というわけにはいきません。是非、今はスマホもあるじゃないですか、いろんなその気候、予測される気候に対して、農業の方で地域若しくは品目別でこういう対処をした方がいいとか、そういうサジェスチョンが、是非やはり国の方で、順次で見れる、今年の傾向はこうだ、こういったものが気を付けなきゃならないよ、そういったものがもしできるものであれば、その情報システム構築という部分も是非お願い申し上げたいと思います。
また、耕作放棄地の拡大、これについても、非常に県内でも放棄地と見られるところが拡大をしております。深刻な問題だと思います。特にも中山間地区、高齢化、労働力不足等の影響で原野化している状況と、更に進行している状況にあります。地域によっては集落戸数の減少も耕作放棄地の拡大に拍車を掛けており、その対応は急がれるところであります。
放棄地再生対策としての耕作、栽培する、活用する仕組み、手だてが喫緊の課題であると思われますが、一方では、環境保全型農業の推進にも阻害要因となっているというふうに思います。結果、鳥獣害対策の面において耕作放棄地対策は非常に重要であると。
また、農地の再生、復元も、放棄年数が長くなりますと再生に経費が多く掛かると聞いております。平場であれば大きな機械で大きな企業さんがやっていただければすぐ復帰するんだと思いますが、中山間地区はそうはいきません。その辺のところも考えた中で再生、復活をお願い申し上げたい。
また、中山間地域における放棄地についての対策としては、小規模農業者との連携が必要であります。両輪を、大きな企業的農業がやる放棄地の再生、復活と中山間の農業の方々がやる対策、この両面がやはり必要ではないのかと。
特にも、農村基本法第二十九条、農業生産の基盤の整備及び保全の一文で水田の汎用化及び畑地化ということがありますが、私は、岩手県県北の中で三十年も、すなわち中山間の地形を利用し、山合いの畑で雑穀、それを作ってきた農家、頑張ってきたところを見ております。その方々は、その地形を巧みに生かして、そして新しいその地域ならではの生産性が出るような作物をきっちりと栽培をしてきております。
この条文の中で畑地化が進む、そして、平たんで、特に県央部、県南部の方であれば容易に、平野部のところで仮に雑穀だとかそういったものが非常に簡単にできるわけじゃないですか。そういったものがなったときに、その今まで頑張ってきた、中山間で頑張ってきたそういう農家はどうなるんだろうな、そういう心配をしております。
また、農業は一色ではないんだというふうに個人的に思います。地域を支える地場産業型の農業は、産直等で地域の食を守り、地域コミュニティーはもとより、自治会組織では地域の環境整備、草刈り機を持っていわゆる自分たちの地域を一生懸命きれいにする、そういうことをなさっております。
それから、農業者年金だけに頼らないで、生計費の確保は農業収入で、産直に出した部分だとかそういう形で年齢問わず頑張っているわけです。その方々が気力とやりがいを持って農業に取り組めるような基本法にしていただきたい。特にも、耕作放棄地の再生、復活の役割を担う場合には、地場産業型経営体が受け持ち、なおかつ国が所得の安定を図ることも重要だと思います。
先駆的で最新のテクノロジーを駆使して農業の発展に貢献できる農業企業体、地域で活躍できる地場の小規模農家との役割分担ができるような形、大小の力を合わせて農業を守るような農村基本法となりますことを切にお願いを申し上げます。
以上でございます。
○団長(滝波宏文君) ありがとうございました。
次に、横山公述人、お願いいたします。横山公述人。
○公述人(岩手大学人文社会科学部教授 横山英信君) 岩手大学の人文社会科学部で農業経済論を担当しております横山と申します。
このような機会を与えていただきましたことをまず御礼を申し上げます。
私の発言は皆様のお手元にありますレジュメに沿って進めたいと思いますので、お手元に資料を御用意いただければ幸いです。
まず一番目として、この間の岩手県農業をめぐる概況について、一応のことは記しましたけれども、こちらは先ほど高橋公述人の方から詳細な説明がありましたので割愛させていただきます。
一言で特徴付けると、規模の大きな農業経営体、法人も登場しているものの、岩手県農業は全体として加速度的にやはり衰退している、生産基盤も弱体化していると言わざるを得ないということです。そういう中では、日本と岩手県に農業が必要であるとするならば、早急な対応が求められることは言をまたない、これは皆様方同じ認識だろうというように思っております。
それを踏まえてなんですけれども、食料・農業・農村基本法改正案に対する私見を述べさせていただきます。時間の関係上、農村については先ほど畠山公述人の方からも詳しい御説明ありましたので、私の方からは食料と農業に限定した叙述をしたいというように思っております。
まず、改正案の提出理由と内容との関係です。
改正案の提出理由は私も拝見いたしました。これにはそれほど違和感はありませんけれども、問題はその内容が最重要理念たる食料安全保障の確保に対応するものになっているかどうかではないかというように思っております。
まず一番目、食料自給率の格下げということですけれども、以前の基本法では、基本計画の目標としては食料自給率のみだったわけですけれども、これが食料自給率に加えて食料安全保障に関する様々なものも盛り込むということになっております。
確かに、一つの指標だけで食料、農業に係る全ての状況を把握できないのは当然ですけれども、あれこれの指標を並列的に挙げるならば、食料自給率の目標がぼやけてしまうのではないだろうかと。はっきり言いまして、私は、これは現行基本法からの後退であるというように思っております。
食料安全保障の確保を掲げるのならば、やはり最重要視すべきは供給熱量だろうと。農水省の各資料でも、あちらこちらで世界の食料需給の不安定さが強調されているところです。そうであるならば、やはり指標として一番重要なのは供給熱量自給率だろうと、他の指標はそれを補完するものとして位置付けるべきだろうと、ここは曖昧にしてはならないというように思います。
二番目、関連してなんですけれども、第二条第二項では、国内の農業生産の増大を図ることを基本とするとともに、安定的な輸入という文言が入っております。しかし、これは、同じ第二項の中で、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑みとしていることとの間でやっぱり不整合、論理矛盾があるのではないだろうかというように思います。こういう中で、本当に国内の農業生産の増大を図ることを基本とするものに今回の改定案がなるのかどうなのかと。改定案の中では、第二十一条の第一項で輸入の相手国への投資の促進、いわゆる開発輸入が新設されていますけれども、やはりこれも輸入に傾斜する、そういうおそれを私は感じております。
ですので、第二条第二項については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とするだけでいいのではないかと考えております。ここでは、基本とし、これと併せて安定的な輸入云々かんぬんとなっておりますけれども、併せてというこの言葉が入ることによって、国内生産の増大を図ることを基本とすると、その基本が曖昧になってしまうのではないかというように感じております。
めくっていただきまして、二番目、海外への輸出が強調されています。第二条第四項と第二十二条の関連です。
ここでの改定案の認識については、国内の人口が減少すると国内の食料の需要も減少する、だから農産物輸出によって日本農業の活路を開く、大体こういう流れになっていると思いますけれども、日本の人口が減少して国内の食料、農産物市場が縮小したとしても、供給熱量自給率を現在の三八%から大きく増加させていくならば国内における国産農産物の市場は拡大していくと当然考えられるわけです。輸出による活路というのは、自給率が一〇〇%に近いと、だから、これから人口が減少して市場が縮小して日本の農業の生産が影響出ると、だったらそのときに心配すればいいことであって、低自給率の現状で農政の基本に置くべき性格のものではないというように私は思います。
また、この間の農産物の輸出の伸長ですけれども、農水省の資料では、二〇一二年から二千六百八十億円、二〇二三年に九千五十九億円というのが示されていますけれども、しかし、やっぱり問題は、加工品、加工食品を含めた農産物の中で国産農産物がどのくらいの比重を占めているのかということです。
今日の私の資料の最後に、これも農水省の輸出・国際局が出している資料を付けておきましたけれども、見てお分かりのとおり、一番金額として大きいのは加工食品、その中でもアルコール飲料ということになっておりますし、米菓、あられ、煎餅もありますけれども、その他お菓子類については当然小麦粉が使われているということになります。また、穀物等のところで、米、援助米除くですね、これも掲げられていますけれども、例えば輸入小麦が一〇〇%を占める小麦粉の輸出もこちらに入っているということで、どのくらいこの中で純粋な国産農産物があるのだろうかということをやっぱりはっきりさせなければならないだろうというように思います。
先日の鹿児島の地方公聴会でも公述人から指摘がありましたけれども、輸入農産物を原料とした農産物の輸出が伸びても国内農業の生産拡大にはやっぱりつながらないと、ここはきちんと認識しておくべきだろうというように思います。輸出による活路を言うならば、最低でも農産物中の国産原料割合をきちんと算出、提示すべきだろうというように思っております。
さらに、考えなければならないのは、外国に対して日本産農産物の輸入拡大を求めるならば、外国からも当然のことながら外国農産物の輸入拡大を求めることになるだろうと、そして、そのことは国内の国産農産物の市場を狭めることにならないかと、ここもきちんと考えるべきだろうというように思います。
ですので、品質が高い、そういう国産農産物の輸出全てを否定するものではないですけれども、少なくとも、輸出による活路というのは食料安全保障の確保を図るための中軸的な施策にはなり得ないというように思っております。
次に三番目、生産者手取り価格についてです。こちらは第二条第五項、第二十三条、第三十九条関連です。一言で言って、日本農業、地域農業の衰退、生産基盤弱化の原因は、採算が取れない、これに尽きるというように私は思っております。
改正案が強調する価格転嫁は、採算性の改善にどれくらいの効力を持つのかと。先ほど、高橋公述人や畠山公述人からもこれに対する危惧が示されたところです。生産、流通関係の経済主体間に価格交渉力の差がある中で、生産者手取り価格が採算の取れる水準にまで達する保証はどこにもないだろうと。特に、実質賃金が現在のように下がっている状況では、価格転嫁による生産者手取り価格の引上げは困難と考えざるを得ません。
仮に、価格転嫁によって引上げができなかった場合に、頑張ったけれども駄目だったということで済ませるならば価格転嫁という方法もあるでしょうけれども、農業経営を安定させて国内の農業生産を増大させることを真剣に追求しようとするならば、生産者手取り価格を採算が取れる水準まで確実に引き上げるための措置がどうしても必要だろうと。ですので、かつての農業者戸別所得補償制度のような、市場価格と生産費の差額を補填し採算を保障する価格・所得補填措置を再構築すべきだろうと。現在も、麦、大豆等に畑作物の直接支払交付金制度はありますけれども、やはり補填水準は不十分だろうと。さらに、こういう価格・所得補填の措置をとる場合には、適切な輸入規制、抑制措置も必要だろうというように思っております。
改正案では、環境保全型農業やスマート農業の推進も強調されております。しかし、これも採算が取れなければ現実化しないわけです。新規就農者の増加も採算性が保障されてこそです。水田の畑地化、農地転用規制強化を進める上でも、採算性の確保というのは重要だろうというように思っております。
考えなければならないのは、なぜ自給率が低い中で米のみ過剰で減反が行われているのかと。これは、農産物の全般的な輸入自由化、関税引下げ、市場開放によって安価な外国農産物が流入し、国内の農産物の国内市場価格が低下して米以外の主要穀物の採算性が低くなっているために、採算性がまだましな米に生産が集中しているだろうと。ミニマムアクセス米もその過剰に拍車を掛けていると。ですので、価格・所得補填の充実で米以外の多くの作物の採算性が大きく改善すれば、米過剰の解消と自給率の向上を同時に図ることができるというように私は思っております。
四番目、多様な農業者の位置付けです。これについては、地域における協議とか、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者が位置付けられたと。これは現実に即したものであって、大いに評価することができます。
これは、昨年四月施行の改正農業経営基盤強化促進法や改正農地中間管理事業推進法の中でも取られた考え方です。しかしこれは、従来の政策が推進してきた企業の農業参入、農地利用集積、規模拡大が想定どおりには進まない中、地域農業衰退、生産基盤弱化が進行したことへの対応という側面を持っているわけです。
そうであるならば、追求すべきは望ましい農業構造ではなくて、家族農業経営を中心とした多くの農業経営体の維持及びそのための再生産の保障、具体的には、平均的規模の家族農業経営が採算が取れるような価格・所得補填の実施ですけれども、これを行うべきだろうと。そして、このような経済的条件が存在してこそ大規模経営の発展も見込めるというように思っております。特にも、第二十七条、家族経営の活性化を図るというのは旧二十二条の文言をそのまま踏襲しているわけですので、家族農業経営を再度重視すべきだろうというように思っております。
最後に、不測時における措置ですね。
これに関連して、現在、食料供給困難事態対策法案も審議されているところですけれども、食料供給の混乱が生じた場合に、これに対応することは当然です。しかし、具体的な効力として、買占め、売惜しみ等の排除のための出荷又は販売に関する要請等、これはともかくも、国内の食料供給量確保のための輸入に関する要請や農林水産物の生産に関する要請、こういったもの、生産転換の効力にはやっぱり大いに疑問符が付くと。
そもそも、世界の食料の需給及び貿易は不安定な要素を有しているのではなかったのかと。にもかかわらず、安定的な輸入を求めるというのはやはり論理矛盾だろうと。さらに、生産転換による特定食料の生産には一定の時間を要します。農林水産物の生産業者とか農林水産物生産可能業者という文言が出ますけれども、そういった想定されている方々はすぐに対応できるのだろうかということもやはり懸念としてあるわけです。
したがいまして、ふだんから供給熱量自給率を高めておくことこそが最大最良の不測時対応になるのではないだろうかと。自給率が高ければ、生産転換のような半ば強権的措置と言ってもいいような措置をとる必要も小さくなるというように考えます。
まとめですけれども、改正案が食料安全保障の確保を掲げるのならば、供給熱量自給率の向上を中軸に据えて、平均的規模の家族農業経営が採算が取れるような価格・所得補填を行う措置を農産物の輸入規制、抑制措置と一体的に打ち出していく必要があるというように考えます。
以上で私の発言を終わります。
○団長(滝波宏文君) これより公述人に対する質疑を行います。
─────────────(略)─────────────
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
今日は、四人の公述人の皆さんの貴重な御意見、本当にありがとうございます。
それで、私も、先ほど来、水田活用交付金のことが議論にされているんですけれども、これ、私北海道出身なんですけれども、もう随分あちこち回って、何か私がお叱りを受けるというふうな、何でこんな大変なことをやるのだという声も随分聞かされてきました。
それで、先ほど来出ていましたけれども、岩手県のその農協さんからも、それから県議会からも国に対しての意見が上がっていたと思うんで、ちょっとこれ四人の方にそれぞれ短くですけれども答えていただきたいんですけれども、それについての御意見と、それから、今度の改正案の第二十九条に書かれているんですけれども、農地の区画の拡大、水田の汎用化及び畑地化ということで、これが明記されているわけなんですね。それで、その前の文章のところを読みますと、地域の特性、環境との調和、先端技術を活用した生産方式との適合というふうに書いてあるんですけれども、日本という国は、言ってみればアジア・モンスーン地帯ということで、気候的にもそうですけれども、非常にいろいろ変化があるわけなんですけど、そういう地帯で固定的に畑地化ということを進めることが果たしてこの地域の実情に合っているのかどうかというふうに思っているんですけれども、この辺りのところ、ちょっと一言ずつ御意見をお願いしたいと思います。照井さんから順番にお願いします。
○公述人(株式会社西部開発農産代表取締役社長 照井勝也君) 第二十九条のところなんですけれども、非常に私はここは意味のあるものだなというふうに思っております。
その地域の特性に応じてということで、やはり農地ってその地域によって条件が違うものですから、特にその中山間地ですね、本当は全部が全部その基盤整備になればいいんですけれども、なかなかそういうわけにはいかないでしょうから、じゃ、その中山間地は中山間地でどうやっていくか、そういったところを私たちは畑地化をして耕作をしているといったところです。まあそういったところです。
○公述人(全国農業協同組合連合会岩手県本部県本部長 高橋司君) 水田活用の必要性についてはそのとおり必要であるというふうに考えておりますし、五年水張りの問題についてはできればない方がいいということはあるんですが、ただ、現実問題としては、水田を水田として使っていないということは、そういう指摘は受け入れざるを得ないかなというふうに思っております。ですので、それに代わる対策を構築していく必要があるだろうというふうに思っております。
あとは、その畑地化については、本当に適する場所、私も家で百姓をやっているんですが、田んぼを無理やりに畑地にしても粘土質で全く使えないというようなところも多数ございます。ですので、適地での対策、水田として使うのが一番効率がいい場所は水田として使う。ただ、それを主食用米を作るのかどうかは別として、ホールクロップサイレージだとかそういうところも加味しながら取り組んでいきたいというふうに思っております。
○公述人(賢治の土株式会社代表取締役 畠山武志君) 私も、この畑地化については、やはり場所、やはりその位置するところという部分が非常に重要になってくると思いますし、また転作するにしても、やはり中期的な形で、そこの単体の部分でどうこうというよりも、やはりそういった計画の中でやられた方がよろしいかと思いますし、やはり一度やってしまうと元に戻すこともなかなか難しくなってくる。ですから、やはりそのようなところを加味した中で計画をし実施をするというような流れがよろしいかと思います。
○公述人(岩手大学人文社会科学部教授 横山英信君) まず、水田の汎用化とか畑地化については、私、実際自分が農業をやっているわけではないので農業者の感覚がきちんと身に付いていないかもしれませんけれども、結論的にはやっぱりケース・バイ・ケースだと思うのと、あと、汎用化がいいところもあれば、もう畑地にした方がいいところも恐らくあるんだろうというように思います。
問題は、先ほど横沢議員や舟山議員の方からもありましたけれども、市場価格プラスの畑作物の直接支払交付金、これだけではやはり採算が取れないと。これに水田利活用の交付金が入って初めて採算が取れると。そういうところは、都府県の田作、北海道の田作もそうだと思いますけれども、そこがやっぱり大きいのかなと。
先ほど照井公述人の方から、水田利活用はやめて、ただ上に畑作物の直接支払交付金を増やすという御提案がありました。これは一つあるのかなと。ただ、その場合は、きちんと全部の作物が採算取れるような、そういった水準に引き上げることが必要だろうというように思います。そこを曖昧にしたまま畑地促進をやってもなかなか進まないと思いますし、はっきり言えば、畑地促進も今のままだと手切れ金で終わってしまうだろうというように思います。
○紙智子君 ありがとうございました。私も、適地にちゃんと作れるということがやっぱり大事だし、それから、やっぱりどれを作っても成り立つようにしなきゃいけないんじゃないかということは思っております。
それから次に、実は、高橋公述人にお聞きしたいんですけれども、私、二〇〇六年だか二〇〇七年に岩手に、ちょうどあの品目横断的経営安定対策が導入されたときなんですけど、調査に来たときに花巻に入りまして、そのときに、要件として、対策の対象となる要件、規模要件というのがあって、認定農業者は北海道だと十ヘクタール、都府県で四ヘクタール、集落営農なら二十ヘクタールという区切りがあって、当時、花巻では二十ヘクタールの集落営農つくるために大変な努力されていたんですよね。何回も地域で話し合って、なかなかまとまらないという中で、本当にリーダーの人苦労されて、そういう努力をされていたんですけれども、それからもう既に十五年ぐらいたっているんですけど、その後、うまくいけばいいなと思っていたわけなんですけど、どうなっているのかなというのが気になっていたのと、もし困難に直面しているんだとしたら、さっき担い手の話がされていましたけれども、どういった対策が必要だと思われるのか、お話しいただきたいと思います。
○公述人(全国農業協同組合連合会岩手県本部県本部長 高橋司君) 大変ありがとうございます。
そのとおり、花巻のみならず、多分岩手だけじゃなくて日本全国苦労されていたと思いますが、集落営農を何とかかんとかつくり上げた。ただ、ここで、言うとなんちゃって集落営農も実はでき上がりました。枝番を付けて、集落営農に見えるけれども個人でやっているというようなのも、実際、制度に乗るためにつくったというところも正直ございました。そういうところに関しては、その後法人化というのが出てきたときに非常に苦労をした、したというか、しているという状況でございます。
ただ、先ほど統計にもあったとおり、大型化が進んでいる、大型経営体が増えているというのは、そのときの努力が実って経営体としては何とかやってきている。何とかやってはきているんですが、先ほどもちょっとお話ししたとおり、後継者がいないというような問題があったり、あと、私どもにも責任の一端はあるんですが、米価の下落というような問題があったりして集落営農組織が維持できないという問題が浮上してございます。そういうところは隣近所のところと広域で合併したりというような取組をしておりますし、解消したというところもゼロではございませんが、数少ない状況ではございます。何とかかんとか今のところは維持しているという状況です。
ただ、今の問題点は、先ほどもちょっとお話ししたとおり、その集落営農組織はもうこれ以上農地を受けられないという状況になっておりまして、ところが高齢で個人でやられていた方がどんどん栽培できなくなっている、そこが耕作放棄地化する、それをどのようにやっていくか。ですから、中小規模でその地域で受け入れられる方、半農半Xというような格好でやられている方々でその地域をいかに守っていけるか、それらに対する支援というのが必要なんだろうというふうに考えております。
済みません、ちょっと長くなりました。
○紙智子君 ありがとうございます。
北海道も、北海道って主業の農家がほとんどというか、だから、いつも要求としてはそこに力を入れてくれよと言われるんですけど、ただ、最近ちょっと変わってきているんですよね。それで、やっぱり今言われた中小の、片方で仕事を持っていたとしても、そうやって農地を続けてやっていこうという人たち、半農半Xという話もあるんですけど、そういう人たちもやっぱり必要だというか。地域を担っていく、支えていく人たちというそういう目で、やっぱりそこに対する対応策もちゃんと充実させる必要があるということに言われていますし、私もそう思っています。
それから、最後になりますけれども、今どこに行っても農業で生活できないよという声が出ています。それで、現在の農業の課題、生産者の所得を確保するということが特に大事なんですけれども、必ずこの間、参考人の方に聞いてきたんですけど、日本生活協同組合連合会が基本法の見直しに関する意見書の中で、やっぱり財政支出に基づく生産者の直接支払、これを求めておられまして、これについての御意見をまた四者の方それぞれお願いします。
○公述人(株式会社西部開発農産代表取締役社長 照井勝也君) 直接支払についてですけれども、私は賛成ですが、ただし、以前、戸別所得補償出したときあったじゃないですか。あのとき土地改良予算が減ったんですね。そのことによって基盤整備が進まなくなったと。なので、私はこれ両方同時に進めてくれるんであれば非常にいいと思うんですけれども、何かの予算を削ってということであればどうなのかなというふうに思います。
○公述人(全国農業協同組合連合会岩手県本部県本部長 高橋司君) 私も、戸別の補償というのは必要なことだろうかと思います。
ただ、モラルハザードというところもありますので、いわゆる俗に言う収支が合わないとき、何か事態があったときのセーフティーネットという位置付けでの対策ということが必要だというふうに考えております。
○公述人(賢治の土株式会社代表取締役 畠山武志君) 私は賛成です。
○公述人(岩手大学人文社会科学部教授 横山英信君) 私も賛成です。
ただ、ただといいますか、例えば消費税の引上げのときに、増税分を価格に転嫁できなくて中小企業の方が苦しんでというのをいろんな新聞記事で拝読していました。ですので、今回、例えば価格転嫁ということになれば、恐らく似たような状況が出てくるだろうと。確実に食料安全保障の確保のために国内生産を増大させると本気で思うならば、きちんと生産者の所得を確保するためのそういった財政支出、それに基づく制度の確立が必要だろうというように思います。
○紙智子君 ありがとうございました。
貴重な御意見、是非今後に生かしていきたいと思います。どうもありがとうございました。
○寺田静君 公述人の皆様、本日はありがとうございます。