<第213回国会 東日本大震災復興特別委員会 2024年5月17日>


◇災害援護資金の返済が生活困窮者の生活再建の妨げになっているとして、早期に免除を要求/東日本大震災の記憶や体験を伝える伝承活動への支援を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日、私、二つのテーマでお聞きをしたいと思っています。
 その一つは災害援助資金についてです、援護資金です。
 この災害援護資金というのは、震災で負傷又は住居や家財に被害を受けて所得の金額が一定以下の被災者が、生活再建の資金として市町村から最大三百五十万円まで貸付けを受けることができる制度なわけです。それで、内閣府は、県や政令市の災害援護資金の償還状況を公表しています。昨年末に公表されたものによりますと、滞納件数が九千七百四十五件で、滞納金額は五十七億五千九百二十一万円というふうになっています。
 土屋大臣、この被災者の生活が改善していないからこれ返せなくなっているんじゃないんでしょうか。どう思われますか。

○国務大臣(復興大臣 土屋品子君) 実際はそういう方もいらっしゃると思いますので、そういう場合は、それぞれの被災者の状況に応じてきめ細かく対応していくことが重要だと認識していますし、実際もきめ細かく相談をしていると思います。

○紙智子君 きめ細かくということで、やっぱり、実際もう十三年たっているんだけれども、返したいけれども返せないという現実があると思うんですね。
 それで、今年から償還期限をちょうど迎えたという人も中にいます。それで、毎年、震災が生じる、発生した三月になると、この未納問題というように言われて、回収業務を担う自治体の事務負担が増えているということが報じられているんですよね。
 それで、しかしながら、生活が改善していないのに返せるのかと。宮城県のある自治体では、この災害援護資金を借りたお父さんが亡くなってしまったと、で、娘さんが引き継いでいるんですけれども、この娘さんの収入は障害年金しかないということなんですね。我が党の地方議員と一緒に役所に相談に行って、とにかく毎年請求は来るわけですよ、払ってくれというのは来るわけなんだけど、これ役場に行って相談したら、取りあえずこの請求は止まったというふうに聞いたんですけれども。
 それで、内閣府にお聞きするんですけれども、こういう状態で返せると思われますか。

○政府参考人(内閣府官房審議官 田辺康彦君) 返せる、返せないかということでございますので、免除の規定を御説明させていただきますと、市町村は、災害援護資金の貸付けを受けた方が死亡されたとき、精神若しくは身体に著しい障害を受けたため災害援護資金を償還することができなくなったと認められるとき、破産手続開始の決定若しくは再生手続開始の決定を受けたとき、これらについては、償還未済額について免除することができるとされております。
 また、東日本大震災に係る災害援護資金については、これに加えまして、災害援護資金の貸付けを受けた方が無資力又はこれに近い状態にあるため償還金の支払の猶予を受け、最終支払期日から十年を経過した後において、なお無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、当該償還金を支払うことができることとなる見込みがない場合については、市町村は償還未済額について免除することはできることとされているところでございます。

○紙智子君 今のそういう仕組みはあるんですよね。あるんだけれども、この人の場合は、お父さんの代のやつが、これ自分が引き継いでいるわけですから、この対象にはなっていないものですから、自治体もずっと送ると、請求するということになっているんですよね。私は、やっぱり障害年金で何とかこの間生活してきている方が返せるとは思いません。
 それで、阪神・淡路大震災のときのケースを紹介したいと思うんですけれども、災害援護資金の債権放棄、免除に当たって、久元喜造神戸市長は、今年一月十四日付けの朝日新聞のインタビューで、震災関連の取組で印象的なこととして、阪神・淡路大震災の被災世帯に貸し付けた災害援護資金の債権を放棄したことを挙げておられるんです。家も仕事も失った人たちが高齢化をして、少ない年金の中から千円だ、千五百円と払ってきたと、この問題について国に働きかけをして、市議会も議決を行って、この返済を免除したんだと、時間がたっても厳しい状況に置かれた人を放置すべきではないと思ったというふうに語っておられるんですよね。私、この言葉というのは、やっぱり東日本大震災でも同じことが言えると思うんですよ。
 こういう返済が困難となっている被災者の生活再建を優先した対応を取る必要があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、どのように思われますか。

○国務大臣(復興大臣 土屋品子君) 神戸の場合は、神戸市が決断をしたということなんだろうと思います。
 一方で、免除については、支払猶予以上に債務者間の公平性の確保が重要であるということもありますし、東日本大震災では、最終支払期日から更に十年経過した後においてなお無資力等である場合には市町村が免除できるということになっていることは承知しておりますが、いずれにしても、この点については今後の課題であろうと考えております。

○紙智子君 今後の課題ということで先に送っていくという感じなんですけど、先に送らないでほしいんですよね。
 災害援護資金というのは被災者への貸付制度なわけですけれども、今の免除要件では、やっぱり生活と返済が成り立たない状況に置かれた被災者にとってはおもしにしかならないんですね。もう払いたいけれども、請求はどんどん来るけど、払えないということだから、毎年来るたびにぐっと重くなるというね、追い詰められてしまうということになるわけです。
 災害の法制度の専門家の方で、日弁連の災害復興支援委員会の委員長も務められて、現在委員でもある津久井進弁護士も、この返済の長期化は復興に負の影響を及ぼしていると述べられているんですね。今の免除要件は余りにも重過ぎると思います。
 被災者の生活再建にやっぱり責任を持つというのが復興大臣の担っているところだと思うんですけれども、この免除要件を是非緩和するように決断すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(復興庁審議官 瀧澤謙君) 先ほどからお話のありましたように、この返済が困難な方を放置すべきでないというところは御指摘のとおりでございますが、大臣も説明申し上げましたとおり、この免除の規定もございますし、このほか、支払の猶予の規定でありますとか、毎月少しずつ返済をしていく少額償還と、こういう仕組みもございます。
 これらを具体的にどういうふうに運用していくかということにつきましては、地方自治体と十分に相談して検討されるべき課題であると思っておりますので、制度を所管する内閣府とも相談しながら対処してまいりたいと思います。

○紙智子君 この間ちょっと何回かやり取りしていて、それで、確かに免除するというのはあるんだけれども、これ実際上は、返済免除については、今後の償還状況も踏まえて、償還免除が可能となる二〇三四年までに内閣府において検討していただくというふうに言われていたんですよね。二〇三四年ってことは更に十年先じゃないですか。十年も待たせるというのはやっぱり酷じゃないかと。
 阪神・淡路大震災、東日本大震災と、この返済に関する問題というのは被災者の生活再建にとっては大変大きな課題となっていると。生活再建が進んでいない方はやっぱり直ちに免除してほしい。これ、能登でもまた同じようなことが起きるんじゃないかと思うんですけれども、というふうに思います。これ強く申し上げておきたいと思います。これが一つ目です。
 それから、もう一つの問題についてなんですけれども、東日本大震災の伝承活動についてなんですね。
 土屋大臣は所信表明で、東日本大震災の記憶と教訓を後世に継承することは重要だというふうに述べられていました。震災が発災したのが、二〇一一年の七月に決定された復興の基本方針のその当初から災害の記録と伝承ということで明記されていたと思うんです。
 それで、震災から十三年目を迎えて、改めてこの震災の記憶や経験を伝えていく重要性について、まず大臣の御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(復興大臣 土屋品子君) 私の所信でも、この問題については非常に重要だということの認識を述べさせていただきました。
 それで、例えば、次世代の方々が被災地への訪問を通じ、自身の肌で被災状況や復興状況を学ぶことができるように、震災遺構や伝承館のガイドブックを発行し、るるぶですけれども、被災三県の全学校や、全国の県教育委員会、公立図書館等に配布したほか、中学、高校生に福島の復興の状況や魅力を理解していただくことを目的とする出前授業等を実施しているところでございます。
 また、被災者自らが震災の経験を話すことを通じて人とのつながりが生まれる側面もあることに鑑み、被災者の生きがいづくりに資する伝承活動へ支援を行うなど、被災地に寄り添った施策を進めてきたところでありますが、やはり高齢者が多いわけでして、これから伝えていく人が少なくなってきている中で、今後、若い人たちで災害に遭っていない人でも、やはり学んでいただいて、伝承する活動をしていただけるように、この間、表彰した学校の子供たちがいたんですけど、クラブ活動みたいなのを自分たちでつくって伝承をお互いに勉強しているというのもありましたから、そういうのが広く伝わって、いろんな学校でやってもらえるように、また努力していきたいなと思います。
 それから、海外からも広く知見が欲しいという要望もありまして、例えば、ウクライナの副首相も復興庁に来庁しました。それから、ウクライナの訪問団以外にはハワイ州知事の方もお越しになったし、あとはトルコ、シリア両国の駐日公館に英語版、これ全部英語版作っておりますので、在外公館等にも周知しています。
 それから、ちょっと話は違う話ですけど、私、日本カナダ議員連盟の副会長、そして幹事長をやっております。今、カナダから国会議員が八名来ておりますけれども、私は、京都行くとかいろんなことをおっしゃっていたんですが、是非、福島、宮城行ってくださいと。宮城には……(発言する者あり)閖上、ああ、そう、どうもありがとうございます。行ってきましたよ。閖上にカナダの議員が行ってもらって、昨日、電話で聞いて、すごい喜んでいまして、カナダが寄附してくれたところで御飯を食べたということで、そういう意味でも、できる限りインバウンドの方を紹介するとか、来ていただくような活動も重要だと思います。ちょっと長くなってごめんなさい。
 それから、あっ、ごめんなさい、じゃ、それで、そういうことでよろしく。頑張っていきたいと思います。

○紙智子君 どうも、とても大事だという認識をお話ししてくださいました。
 それで、読売新聞の三月十日付けで、東日本大震災十三年と題して、宮城、岩手、福島の沿岸と福島第一原発周辺の四十二の自治体の首長さんにアンケートを行っていることが報じられています。三十五人の首長さんが、これ震災の風化を感じるというふうに答えているんですよね。それで、今ずっといろいろ話をしてくださったんですけれども、この被災地での伝承活動の現状がどうなっているかと。
 復興庁は、各地の伝承施設を対象にして、施設の運営や展示内容や伝承活動に関わる課題についてアンケート調査を行っていますよね。課題として一番そこで寄せられているのが、語り部やガイドの不足、人材育成と。どうしてこういう声が一番多く寄せられていると思いますか。

○国務大臣(復興大臣 土屋品子君) 実際には語り部となるべき高齢者がお亡くなりになっている数が多くなっているのかなと思います。それと同時に、若い方に伝える方法というか、そういう仕組みができていないということなんだろうと思います。
 そして、今後、やっぱり震災を知らない職員が増えたということも何か自治体でも言っていますので、そういうところにどういうふうにこれから働きかけをして伝承していくかということは重要な課題だと考えております。

○紙智子君 アンケート、復興庁でやっているわけだから、ちょっと中身の分析もやっていただきたいなというふうに思うんです。
 陸前高田市の観光物産協会の職員の方からお話を伺ったんですが、語り部と震災遺構を巡る震災学習ツアーとか高田松原津波の復興祈念公園内を案内するパークガイドをしておられます。東日本大震災を体験して、震災当時のお話ができる方というのがもう六十代とか七十代になっていて、現状を考えると、震災の実体験を持っている人で伝承を伝えていくのが難しいという話が出されているんですよね。
 被災地ではどこでも同様の課題を抱えているんですけれども、福島県が福島再生加速化交付金を活用して語り部の後継者の育成を行っているというふうに聞きました。これ、どういう仕組みか、説明してください。

○政府参考人(復興庁審議官 瀧澤謙君) お答え申し上げます。
 福島県では、東日本大震災及び原子力災害の発生から十年以上経過し、風化が進む中で、語り部の生の声による伝承が重要視されたことを踏まえまして、東日本大震災、原子力災害に関する伝承活動を行っている一部の団体から同意を得まして、令和四年に東日本大震災・原子力災害ふくしま語り部ネットワーク会議の設立を支援いたしました。当該会議では、語り部の役割や伝わりやすい話し方などを講座とする伝承者育成事業や、語り部の県外派遣事業を実施しております。国においても、福島再生加速化交付金により、これらの事業の支援を行っているところです。

○紙智子君 福島県で今行われているこの語り部の人材育成の取組、非常に重要だというふうに思うんですよね。国も支援をしていると。
 それで、陸前高田市がある岩手県とかあるいは宮城県では、福島のような対策というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(復興庁審議官 瀧澤謙君) 例えば、被災者の自らが震災の経験を話すことを通じての人とのつながりが生まれる側面があるということで、復興庁で、被災者の生きがいづくりを目的とした活動の一つとして、震災を伝承する機会の創出についても支援する、こういう別のパターンの支援なども行っているところでございます。
 福島でやっているもの、そのまま全て、事業も個別性がありますので、そのまま、岩手、宮城でそのまま当てはめるということはできない部分もございますけれども、いずれにしても、東日本大震災の風化防止、教訓承継、しっかり行っていくべきというのはそのとおりだと思いますので、それぞれどういう形で国が支援できるのかというのは、それぞれ考えていくべき課題であると考えます。

○紙智子君 同じ被災県なのにどうして差があるのかなというふうに私は思うんですよ。岩手県は、伝承、発信の担い手の確保や育成などを継続的に行っていく必要があるということで、新たな支援制度の創設を求めているんですね。それから、宮城県からも同じ趣旨の要望が出されていると思うんですよ。
 それで、大臣、この要望に応えてやっぱり同じように支援すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 土屋品子君) 要望が出ているということでございますので、これからどういうふうに支援したらいいかも考えていきたいと思いますが、全く同じような形ではない、できないかなと思いますけれども、今、伝承活動を持続可能なものとするための調査をしておりますので、その調査を踏まえて、自治体と共有している、これからどうしたらいいかということで見直し、取り組みたいと思います。

○紙智子君 今の大臣の答弁というのはちょっと希望が持てるかなというふうに感じる答弁で、いろいろ要望出ているけれども、いや、それは独自にやってくださいというのじゃ、ちょっと困るんですよね。今の大臣の答弁だと、これからその辺考えていくということではあると思うので、ちょっと希望が持てるかなというふうには思ったんですけれども、やっぱり、同じ被災県として差を付けるべきではないというふうに思います。
 所信の中で、現場主義を徹底するというふうにおっしゃってもいますので、その被災地の自治体から寄せられている声に応えていくというのは、言わば現場主義ということでもあると思いますから、是非、この東日本大震災を風化させないために、そして今起こっている、実際の能登でもそうですけれども、そういう災害もある中で、しっかりとやっぱり教訓を生かして、これからに向けて生かしていくことができるようにその支援を求めまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。