<第213回国会 農林水産委員会 2024年5月16日>


◇食料自給率目標を「国内の農業生産及び食料消費に関する指針」から「改善」を変えてことで食料自給率は向上するのかと質問。坂本農水相は「食料自給率が確実に上がると言い切ること困難だ」と答える。 農政審の基本法検証部会で農林水産省は「稲作経営は他品目と比べて農外収入が大きく、兼業主体の生産構造、稲作からの転換が進まなかったことが要因の一つ」と説明しているとし兼業農家の位置づけを質問。経営局長は、「農業で生計を立てる担い手ではないものの、農地の保全管理や集落機能の維持などの面で重要な役割を果たしている」との答弁にとどまる。

○食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ちょっと冒頭、私も午前中のやり取りを聞いていて、ちょっとこのままやり過ごせないなというふうに思うことがありました。
 それは、徳永さんだったかな、田名部さんが質問されていて、生産基盤の弱体化ということについてその認識を問うたときに、大臣の答弁は、弱体化しているとは思っていないという答弁だったんですよ。えっと思いました。ちょっとびっくりしたんですね。
 というのは、大体ほぼ与野党間でも、生産基盤が全体に、耕作者もそうですし、農業者ですね、それから農地もそうですし、ずっと右肩下がりで来ているというのは多分共通の認識で来ているんだというように思っていたんですよ。
 で、やっぱりそれは生産基盤そのものが弱まっているということを何回も質問してきましたけど、大体そこのところの認識は同じだったんじゃないのかなと思っていたんですけど、先ほどの答弁で大臣が、いや、弱体化しているとは思っていないというふうに言ったものですからね、それで、いや、ちょっと過去の質問でたしか共有していたよなと思いながら調べてみたんですけど、そうしたら、二〇一九年のときに、私、予算委員会で質問していて、こういうちゃんと図式でもって生産基盤の話をして、このときの総理大臣は安倍総理大臣だったんですけど、それで、こういう状況になっていて、生産基盤がこれ弱体化しているということなんですよねと、総理、これ深刻に受け止めているんですか、どうなんですかというふうに聞いたときに、当時の安倍総理の答弁というのは、今おっしゃった生産基盤の弱体化ということでございますが、こうした状況を正面から受け止めまして、農業の活性化待ったなしと強い危機感の下に農政全般にわたって抜本的な改革を進めてきたんだという話ししながら、やっぱりそういう農業に変えていかなきゃいけないというふうに思っていますという答弁なんですよ。
 だから、それから何か上向きに変わったのかって、そうじゃないわけですよ。むしろもっと数字は下がってきているという中で、それでちょっと、弱まっていると思わないという認識を示されたというのは、これ、岸田政権になったらそう変えたのかなと思ったんですけど、もしそうでないとしたらちょっとやっぱり修正された方がいいんじゃないのかなと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 午前中の御質問では農業生産基盤が弱体化しているというふうな決め付けの質問でございましたので、私の方からは、やはりこれだけ農林水産省も含めて努力しているのに、弱体化の一途ではない。私自身、七十年間農村社会に住んでいましたけれども、やはり以前よりも飛躍的に農業も、あるいは物言える環境も、そして選択肢もいろいろ広がってきております。
 ですから、弱体化というのをどこにやはり求めるのか、どこが弱体化しているのか、それは我々がこれからやらなければいけないことであるというふうに思います。人口減少、高齢化、あるいは様々な生産、流通の面、こういったものも含めてやはり考えていかなければならないと思いますけれども、日本農業が徐々に弱体化している、ここまで弱体化したというような言葉は当たらないというふうに思います。

○紙智子君 今の答弁だとなかなかちょっと納得できない。実際、耕作面積はずっと下がってきましたし、販売農家戸数も減ってきたし、基幹的農業従事者も減ってきたし、食料自給率も戻っていないというか下がったまんまの状態で来ているわけですから。
 それで、やっぱり、もちろんそれで黙って見ているわけじゃないよという気持ちは分かりますよ、それは。努力されて、いろいろ苦労しているというのは分かっていますよ。だけど、全体としてはそれが改善の方向に向かっているというふうにはなっていないわけですから、そこはちょっとやっぱり表現としては改めた方がいいんじゃないかというふうに思うんですけど、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 農地面積に関しては、農地面積が減少した分、集積、集約化を進めております。それから、従事者につきましては、これは稲作農家、これが、この方々のリタイアというのが非常に大きな影響を及ぼしております。
 ですから、それぞれの個々のやはり品目あるいは個々の分野のものを見ながら、どこが弱体化しているかというようなことはやはり私たちが考えなければならないことではございますけれども、全体的に日本の農業がやはり弱体化している、あるいは駄目になっているというようなことは当たらないというふうに思っております。

○紙智子君 あのね、やっぱり予算委員会での総理の答弁があるわけですよ。私、これって重いと思うんですよ。
 当時の安倍総理は、こういう現状を認めて、正面から受け止めて、そこを打開するために頑張らなきゃいけないんだという話をされていて、それでいいんじゃないかと思うんですけど、それをやっぱりそうじゃないんだというふうに言ってしまうとちょっと余り良くないなと、出発点からして違うんじゃないかと思うんですよね。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) もちろん、様々な課題は受け止めております。安倍総理のときに弱体化を正面から受け止めてというようなことを言われたということですけれども、だから、もう少し農業を自由化しなければいけない、競争にさらされなければいけないということに続くんだろうとは思いますけれども、やはり、それぞれの個々の課題に対して私たちが取り組んでいくこと、それはやっていかなければいけないと思います。
 しかし、全体的に、先ほどから言いますように、日本農業がやっぱり弱体化している、駄目になっている、そういうことではない。個々の問題をどうやってこれから改善していくかということであります。

○紙智子君 現場の農業者の皆さんって、大変な苦労していますよ。ですから、そういう努力とか、何とか頑張って打開していこうということでやっていることは私たちも高く評価していて、是非そこを応援しなきゃいけないと思うんですよ。
 だけど、やっぱりちゃんと冷厳に現実を見てちゃんと評価を正してやっていくというのは必要なので、ちょっとこれ、是非委員長にお願いしたいんですけれども、これをはっきりさせるということで、何というんですか、理事会の中でもまたやっていただきたいと思うんですけれども。

○委員長(滝波宏文君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 それで、私、今日質問したかった最初のところというのは、前回積み残した食料自給率についてなんですね。
 現行法の第十五条の第三項に、食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針というふうにあるわけですよね、現行法では。で、改正案では指針という文言を削除していると。それはなぜなんですかと聞きましたら、坂本大臣の答弁は、十七条の三項で改善が図られるようにというふうに規定を設けたんだと、それは指針を上書きしたものだという答弁だったんですけど、ちょっとこの上書きというふうに言われるとどういうことだろうということでちょっと理解できなかったんですよね。現行法では、食料自給率の目標は国内生産、食料消費の目指すべき姿を表す指針と、指針ということで示している意味だと思うんですけど、違うんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 現行法は、食料の安定供給の確保の状況を食料自給率という一つの指標で判断することから、その状況を指針とし、課題を明らかにして目標を定めることとしていましたけれども、改正案においては、複数の指標で食料安全保障の状況を判断するということになるため、唯一の指針との表記を避け、端的に複数の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるようと規定したところでございます。
 現行法と改正案では指標の数は異なるものの、食料の安定供給又は食料安全保障の確保を図るための目標を定めるという点では共通をしております。このことを踏まえて、前回は上書きしたものと答弁をしたところであります。

○紙智子君 分かりますかね、上書きしたというふうに言われて。
 で、表現は、だから、今度の新しい改定案は、食料自給の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう、改善が図られるようというのは上書きになるのかというふうに、要するに、指針というのは目指すべき目標をちゃんと掲げて向上するというところがある、あったわけですけれども、改善というような言葉になってしまったら改めればいいのかということになってしまうんじゃないかと、改善というふうになったらこれ改めればいいという話になると、指針とは相当意味が違ってくるんじゃないかと思うんですけど。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 私が上書きと言ったのは、これまで唯一の食料自給率という指針があった、しかし、今回は食料自給率ということだけではなくて、飼料も肥料も含めて全ての自給率、あるいはそういったものを加えたという意味で上書きをした自給体制というものをどうしていくかということで申し述べたところであります。

○紙智子君 ちょっとやっぱりなかなかよく分からないんですけど、やっぱり抽象的な目標に格下げしたんじゃないのかなというふうに思うわけですよ。
 それで、食料・農業・農村基本政策研究会が出している基本法の解説というのがあるんですけど、これちょっと見てみたんですね。そうしたら、食料自給率の目標の性格について、食料自給率の目標を基本計画の記載事項として掲げたのは、食料自給率の低下に対して生産者、消費者が不安を抱いていることから、その向上を図るための目標として基本計画に位置付けたんだと、で、向上を目指す目標だと書かれているんですけど、大臣、この考え方は変更ないということでいいんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 食料自給率の向上につきましては、改正案第十七条第三項におきまして、基本計画の記載事項といたしまして、食料自給率の目標に関し、食料自給率の向上が図られるよう農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨を明記しているところであります。
 国内で自給可能な米における基本法制定以降の消費面での変化が主たる低下要因となっている中、こうした食料消費の傾向がしばらく継続することが想定をされ、食料自給率が確実に上がると言い切ることは困難でありますけれども、いずれにせよ、食料安全保障の確保の観点からは、麦、大豆、加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目の国産転換といった食料自給率の向上にも資する取組を更に推進することが重要であると考えております。
 今後、食料・農業・農村基本法の改正案につきまして、国会で御審議をいただき、改正案を成立させていただきましたならば、それに基づきまして、基本計画の策定の中で、食料自給率のほか、その他の食料安全保障の確保に関する事項について、その適切な目標を設定してまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 今いろいろなことを言われたんですけど、つまりは向上を目指す目標だっていうふうに書かれていたんだけど、この考え方は変更したということなんですか、変更していないんですか、したのか、どっち。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 食料自給率の向上と第十七条三項に書いておりますので、食料自給率の向上を目指すというところについては変更はございません。

○紙智子君 変更がないっていうことですけど、食料自給率上げるということでいいんですよね。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 食料自給率の向上を図るための取組を進めていくということで、必要な施策を推進していきたいと考えております。

○紙智子君 同じく十七条について聞くんですけれども、改正案の十七条は、食料安全保障の確保に関する事項の目標は食料安全保障の確保に関する改善が図られるよう取り組む課題というふうになっています。
 そこで確認なんですけれども、食料安全保障という場合に、国内の生産が縮小したとしても輸入が確保されたらこれ食料安全保障は確保されるということになるんですか。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 世界の食料需給が不安定化をしておりますので、輸入リスクが高まっているという中で、将来にわたり食料の安定供給を図るためには国内で生産できるものはできる限り国内で生産をすることが重要だと考えております。
 そういう意味で、長期的な食料安全保障を考えた場合は、国内の生産を増大して輸入リスクというのを低下していくということが重要でございますので、輸入が増えればいいんだということではないというふうに御理解いただければと思います。

○紙智子君 輸入が増えればいいというわけじゃないということで、私も、食料安定供給をするためには、まずは、まずは国産農産物で安定供給することを重視すると、そのためには何よりも生産者の安心が本当に大事なことだと思うんですね。その上で足りないものを輸入するということが筋だというふうに思うんです。
 私、本会議の質問で、食料安全保障を確保するために、あえて輸入の頭の部分に安定的という言葉を付け加えて、安定的な輸入に依存する条文に変えたんじゃないかと、輸入を重視して国内生産の増大を軽視するんじゃないかというふうに、このときは岸田総理にお聞きしましたら、岸田総理は、食料安全保障をめぐって輸入リスクの増大も課題となる中で、安定的な輸入と備蓄の確保を適切に行うことが重要であるというふうに言われたんですよね。
 それで、輸入リスクが増大するというふうに言っているのにどうして安定的な輸入が可能になるのかなと、それは結局、ちょっと矛盾しているように思うわけなんですけど、結局、深読みすると、メガ協定諸国や日米二国間協定や自由貿易協定を結んだカナダやアメリカやオーストラリアなどから引き続いて小麦や大豆、飼料用の穀物を安定的に輸入し続けるということなのかなと思うんですけど、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 輸入リスクが増大していることは事実であります。これは気候変動も含めて、あるいは地政学リスクも含めてであります。そのためには、国内で生産できるものはできる限り国内で生産すると、これが重要であります。
 一方で、現在の消費に合わせた生産を図るためには国内の農地の約三倍が必要であるという試算もあります。どうしても自給できないものについては輸入による供給も不可欠であると考えます。
 このため、国と民間との連携によって、輸入の相手国の多角化、輸入の相手国への投資の促進などによりまして、輸入の安定化を図ってまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっと後ろの方聞いたところが余り答えられていなかったんですけど、要するに、アメリカやカナダやオーストラリアなどから引き続いて入れていくつもりなのかなと。
 それで、世界的な食料危機の中で、この輸入依存を脱却するということが大事だというふうに言いながら、安定的に輸入するというふうに規定を入れているわけですから、そうすることで、アメリカを始めとして自由貿易協定結んだ国から食料を安定的に輸入し続けるということになると、国内生産を幾ら増大増大といっても、今までと同様で国内生産を軽視することになりかねないんじゃないかと思うんですけれども。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 先ほど御答弁いたしましたとおり、国内で生産できるものは国内で生産する、そしてどうしても足らざるものは輸入を行う、そのための相手国を多様化するということであります。
 我々といたしましては、やはり、国内の農業者、国内の農産物、この生産と供給がまず第一でございまして、その上で、やはり足りないところにつきましては輸入というものを行っていくという考え方であります。

○紙智子君 だから、まず第一は国内でとおっしゃるんだけど、でも、規定の中に安定的な輸入と入れた以上、今までと変わらないんじゃないのかなと思うんですよ。
 ちょっとそれはまた平行になってしまうと思うんで次に行くんですけれども、担い手の問題です、多様な担い手ということをめぐってなんですが。
 食料自給率を高める上で農業生産を増大させることが必要だと。そのためには、やっぱり生産者をもっと増やしていく、それから農地の減少に歯止めを掛けて強化することが必要なわけです。農業の生産活動に取り組む人を増やすということが必要なんだけれども、この点で大臣の認識をお聞きします。どうやって増やすんですかね。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) これまで農業経営の規模の大小や家族か法人かを問わず、農業で生産、生計を立てる担い手を幅広く育成支援をしてまいりました。その結果、多くの品目で中小経営、家族経営も含めて担い手が農業生産の相当部分を担う構造になっております。
 今後、農業者の急激な減少が見込まれる中で食料の安定供給を図るために、担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保が必要であるとの考え方に変わりはありません。現行基本法第二十一条は、改正案の第二十六条第一項としてそのまま維持をしているところであります。

○紙智子君 二十六条のその第二項ということで、効率的、安定的経営体の育成を図るとともに、第二項でそれ以外の多様な農業者というのを位置付けていると思うんですね。それで、規模の大小を問わず農業の生産活動に取り組む生産者を増やすと、これは重要だと思うんですよ。
 それで、十四日の参考人質疑のときに農民連の会長の長谷川敏郎さんが、現場ではほとんど兼業農家なんだと、無理して専業農家を育てるやり方をやっぱり変えていくことで地域を守っていくことが当然できるというふうに思っているんだというふうに言われました。
 今年元旦に地震災害に、被害に遭った能登半島に行ったときに、私も、この地域は兼業農家が地域支えているんだと、重要な担い手なんだというふうにも言われました。
 今度の改正案で兼業農家の位置付けというのはどうなっていますか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
 今後も農業者の減少が見込まれる中、経営規模の大小や家族、法人などの経営形態を問わず、農業で生計を立てる担い手を育成、確保することが引き続き必要であると考えております。
 一方で、今先生から御指摘ございました兼業農家でございますけれども、兼業農家につきましては、農業で生計を立てる担い手ではないものの、農地の保全管理や集落機能の維持などの面で重要な役割を果たしていただいていると認識をしております。
 このため、今般提出をいたしました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案におきましては、今先生の方からも御指摘ございましたけれども、第二十六条第一項において担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保を引き続き図りつつ、同条第二項において担い手とともに地域農業生産活動を行う多様な農業者を位置付けたところであり、兼業農家は第二項の多様な農業者に含まれるものと考えております。

○紙智子君 だから、効率的かつ安定的な経営をやっているところと、そしてそれ以外の多様な担い手ということでその農地の確保を担っていただくということなんだと思うんだけど、この兼業農家については、先日の十四日の参考人質疑のときにも作山参考人が、兼業農家が重要なんだという話をしていて、基本法の議論で私が思い出したのは、多様な農業と言うと構造政策に逆行するという議論があったと、私はそれは時代遅れだと、やる人がいなくて困っているわけなのに、逆行する農家って一体どこにいるのかということを言われたんですよね。この構造政策に逆行するという考え方というのは今も変わっていないんじゃないのかなと思うんですよ。
 検証部会でも兼業農家が議論になっています。農水省は昨年三月に農業の今後の展開方向というまとめてある中で、食料の消費形態を見ると、生鮮食品の消費は減少し、加工食品の消費は増大しており、今後二十年でそのトレンドは加速化すると、生産者側はその需要に合わせて必ずしも十分に対応できていない、生産者側は対応できていないと、その背景には、稲作経営は他品目と比べて農外収入が大きく、兼業主体の生産構造、稲作からの転換が進まなかったことが要因の一つだというふうに説明しているわけなんですよね。
 だから、これ、作山さんが言われたように、兼業農家というのは構造政策に逆行するという考え方も今もあるんじゃないんですかね。これ、参考人、どうですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答えいたします。
 今先生が御指摘ございましたように、特に稲作の日本の農業構造でございますけれども、ある意味、出発点はやはり戦後の農地改革ということになろうかと思います。稲作は、そういったことを出発点にしながら、稲作については機械化等の進展を背景に少ない労働時間で生産できる体系が確立をしていると、こういったことも背景として、兼業形態あるいは高齢でも従事をしやすい、比較的規模が小さい農家でも経営を続けることができたと、そういった状況も背景に現在のような状況になっているというふうに考えております。
 その構造政策に逆行ということをどういった御趣旨でおっしゃっているかちょっと、済みません、私の方も十分理解をしていないところはございますけれども、基本的に、こういった構造の中で特に農業者の減少というのはずっと続いております。続いてきている中で、やはり日本の農業生産というのをしっかりしたものにしていくためには担い手の育成が必要であるという考え方の下にこれまで政策を展開してきているところであり、そういった基本的な考え方については変更はないというふうに理解をしております。

○紙智子君 これ、検証部会でもこの議論されてきたということではありますからね。変更がないということだから、やっぱりあるのかなというふうに思うんですけれども。
 それで、審議会や検証部会で政府の説明に対しても意見がたくさん出ていたと思うんですよ。例えば、JA全中の中家徹さん、今、替わりましたけど、会長は、今まで再三申し上げてきた、大規模な農業だけで地域農業は守っていけない、兼業農家、定年帰農者、だから定年してから戻って農業やる人ですね、それから半農半Xのような様々な方が地域で農業を守っている実態があるというふうに言われています。それから、全国農業会議所の柚木茂夫専務ですね、この方は、農水省は兼業主体の生産構造が変わっていないと言われたけれども、地域別とか経営の規模別の作物の作付け状況などを詳しくちょっと分析しながらちゃんと検討することが必要じゃないかということを指摘しているわけですよ。
 それから、現場では兼業農家が重要な役割を果たしているのに、政府が否定するからこれ生産者が減少していって、農地を維持する生産者も減ったというふうに言わざるを得ないんじゃないかなと私は思うんですね。
 次に、自給農家についてお聞きするんですけど、自給的農家というのはどういう生産者なのか、そして基本法の制定当時、これ二〇〇〇年のときとそれから二〇二〇年のときのこの自給的農家というのは何人いるのかということを説明してください。

○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
 統計上の定義で申し上げますけれども、自給的農家と申しますのは、農家のうち販売農家以外の農家ということで、経営耕地面積が三十アール未満かつ一年間の農産物販売金額が五十万円未満の農家ということでなってございます。
 今お尋ねがございました自給的農家の数でございますけれども、二〇〇〇年には七十八万三千戸、二〇二〇年は七十一万九千戸ということでございまして、こちらは農林業センサスのデータでございます。

○紙智子君 今お話ありましたけど、この二十年間で基幹的農業従事者というのは二百四十万人いたのが百三十六万三千人まで減って、二〇二三年には百十六万四千人に半減したんですね。だけど、今紹介あったように、自給的農家の減少率で見ると、これ一〇%もないんですよ。だから、七十八・三万人から七十一・九万人ですから六万人の減少なんですよね、減り方はすごく少ないと思うんですよ。これってなぜでしょうか。

○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
 あくまでこれ統計上のデータということでございますけれども、先ほど申し上げたような経営規模でありますとかあるいは販売金額で切った場合にこのような推移となっているということでございます。

○紙智子君 余り分析ができていないということだと思うんですけれども。
 自給的農家というのは、今お話があったように耕作面積が三十アール未満、まあ大体三反未満ということだと思うんですけど、かつ農産物の販売金額が年間五十万未満と、そういう農家と説明がありました。
 こういう農家の人たちって、野菜などが不足したときに出荷をお願いできる生産者で、農産物の需給を調整する上でも果たしている役割って本当に大きいんじゃないかなと思うんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
 まず、先ほどの減少率の関係でございますけれども、済みません、私の先ほどの答弁と重なるところはあるかと思いますけれども、特にこの自給的農家、稲作のですね、中心に営んでいらっしゃる経営体というのが非常に多いというところでございます。そういった中で、この機械化、稲作の場合には比較的早くからその機械化体系というのが確立をいたしました。そういった中で、兼業形態でも営めるというような特性もございます。そういった特性を背景に、このように自給的な経営体でも比較的高齢になるまで長く続けることができる、そういったことが比較的その減少率が少ない背景にあるのではないかなというふうに考えております。
 今お話ございましたその作物を転換した場合ということでございますけれども、当然、その作物を転換する場合に新たな作物を栽培するための技術の問題、あるいはいろんな資材の問題等々ございますので、これはそれぞれのその経営体、経営者のいろんな事情によっても左右をされるところはあろうかと思いますので、なかなか一概にこうだというところまでなかなか申し上げにくいところはあるかとは思いますけれども、ただ、自給的農家につきましてもそういった形の農業を営んでいただいている、そういった意味では、農地の保全という意味ではしっかりと役割を果たしていただいていると、そういったことで我々としては認識をしておるところでございます。

○紙智子君 十四日の参考人質疑のときにも兼業農家への支援が弱いという話もありましたけれども、地域で農業を支えて食料を供給している生産者としての位置付けというのは、やっぱり専業農家の補助者という位置付けではなくて、そこはやっぱり変えなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
 家族農業経営についてお聞きするんですが、改正案の二十七条、ここでは現行の基本法と同様に家族農業経営の活性化を図ると規定されています。
 今年、国連で家族農業十年が決議されてから折り返し地点なわけですね。三月二十二日の農林水産委員会でこの決議の具体化をどうするのかというふうに聞きましたら、大臣は、我が国の家族農業経営は農業経営体の九六%を占める重要な存在なんだと、引き続き支援をしてまいりたいというふうに言われたんですね。
 第二十七条で家族農業の活性化を図るというのは、この九六%を占める家族農業を支援するということで理解してよろしいんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 基本法改正案第二十七条第一項は、農業で生計を立てる担い手を育成する目的を達成するために、専ら農業を営む者や経営意欲のある農業者の創意工夫を生かした経営の展開を図ることが重要であることから、そうした家族経営の活性化を図る旨の規定であります。
 このため、農業で生計を立てる家族経営については、第二十七条第一項の対象として担い手への支援策を講ずることとなります。一方、担い手以外の家族経営は第二十七条の対象ではありませんけれども、農地の保全管理などの面で重要な役割を果たしていただいていることを踏まえて、その役割に応じた支援を行ってまいります。

○紙智子君 つまり、支援を差を付けるということになるんだなというふうに思うんですね。
 半農半Xについてお聞きするんですけれども、二〇二〇年の食料・農業・農村基本計画では、地域政策の総合化と多面的機能の維持、発展に半農半Xなどを位置付けました。
 この半農半Xというのはどういう生産者のことを指していますか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
 半農半Xとは、農業と他の仕事を組み合わせた働き方のことで、農業と別の仕事を組み合わせて生活に必要な所得を獲得するものであります。

○紙智子君 基本計画では、副業、兼業という言葉も使われています。改正案では、この半農半Xをどのように位置付けていますか。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 半農半Xという事業者というのは様々ございますので、主として農業に従事をして農業によって所得を得る、又は農業経営の構造の改善に資するという者については農業者と支援をしていくと。また、半農半Xの人が増えていただくということによって、農地の保全というものが図られるという中で、多様な農業者として農地の保全に役割を果たしていただくということになると思います。

○紙智子君 この半農半Xの支援と、それから二十六条の二項で言うそれ以外の多様な農業者との支援というのは違うんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 先ほどの先生の御質問も踏まえて、若干ちょっと補足をさせていただきたいと思うんですけれども、これ基幹的農業従事者と自給的農家と、そういう観点ではないんですけれども、我々、農業者、主業経営体、準主業経営体、副業経営体という観点での分類を行いました。その結果、主業経営体は五十代以下が四四%、準主業経営体が二八%、副業経営体については二%ということですね。実は農業で生計を立てていない人というのはより高齢化が進んでいるという実態も。
 こういう人たちは、先ほど申しましたように、これまでは農地という食料供給に重要な場を農業生産活動を通じて保全をしていただくということで非常に重要な役割を果たしていたわけですけれども、今後実はこういう人たちの方が急速に世代交代によって減少していくという危機感を持っています。
 そういう観点からは、将来にわたって食料の安定供給を図るというためには、こういう人たちの農地の保全活動というのが地域で行われる必要があるというふうに考えておりまして、そういう観点から、新たに二十六条の第二項というのを追加をさせていただいたところです。
 具体的には、やっぱり地域計画というのを今作っておりますので、そういう形で、このような多様な農業者も踏まえて地域の農地を守っていく活動というのを行っていくことになるというふうに考えています。

○紙智子君 半農半Xというのはもうちょっと広い、何というか、広い性格を持って見るということなんですか。その支援策の違いもあるのかなと思いながら聞いていたんですけど。
 やっぱり農業の担い手って、あくまでも効率的かつ安定的な経営体と農業で生計を立てる担い手という枠組みになっていると思うんですよね。その枠組みにずっと固執していくことになると、多様な担い手といっても支援が弱くなっていくんじゃないかと思うんですよ。この二十年くらいの経験から見てみると、今の担い手の枠組みにずっと固執してきたことで離農に歯止めが掛からなかったんじゃないかというふうにも思うんです。
 それで、改正案では、一方で法人への支援も重視されているんですけれども、なぜ二十七条の二項で法人への支援を明記しているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
 現在の日本の農業でございますけれども、個人経営体である基幹的農業従事者についてはこの二十年でおおむね半減をしている、その一方で、法人等につきましては農業従事者が増加をし、農地面積の約四分の一、販売金額の約四割を担う状況になっております。また、四十代以下の新規就農者のうち雇用就農者が四割強を占める、そういった状況にもなっております。そういった意味で、雇用の受皿としても農業法人が果たす役割は重要になってきていると認識をしております。
 一方で、農業法人でございますけれども、他産業に比べて自己資本比率が低く、財務基盤が脆弱であるなどの課題がございます。その経営基盤の強化が重要な課題となっている中で、今般の基本法改正案におきまして、新たに農業法人の経営基盤の強化を規定をしたところでございます。

○紙智子君 二〇一三年のときに日本再興戦略というのが出されていて、ここでは、今後十年間で法人経営体数を五万法人にするという目標を決めていました。しかし、二〇二三年の実績が三万三千法人にとどまっていると。
 改正案は、目標がそういう意味では達成できていないという中で、支援をもっと強化して加速化するということになるんでしょうか、つまりは。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
 繰り返しになりますけれども、今、我が国の農業の状況でございますけれども、基本的にはこの経営体の数で見れば九六%をこの家族経営が占めている。一方で、まだ数としてはまだ限られているといいますか、三万強ということで、状況ではございますけれども、法人経営が農地面積の四分の一、販売金額の四割を担うと、そういう個人・家族経営、法人経営の組合せで実際、地域農業を支えている状況だというふうに我々認識をしております。
 そういった意味で、先ほど申しましたように、法人のウエートが高まってきている中で、法人経営の経営基盤強化についてもこれからその施策の充実を図らなければいけないという認識でございますけれども、一方で、現在その九六%を占めている家族経営、これが引き続き重要であるという考え方には変わりはないということでございます。
 家族経営の活性化を図るという現行基本法の規定、これ、先ほども御議論がありましたけれども、第二十七条第一項として維持をしております。そういった意味で、基本的な考え方には変更はないというふうに理解をしております。

○紙智子君 今回法案を出して、農地所有適格化法人の経営基盤を強化しようというふうになっています。この法人制度ができたのは一九六二年、昭和三十七年ですよね。それで、法人制度をつくったのは、家族経営を中心にした農業経営の発展が目的であったと。
 この制度が大きく変わったのは、ウルグアイ・ラウンドの交渉が本格化した一九九二年です。この年に新しい食料・農業・農村政策の方向と、いわゆる新政策を出して、法人化推進をうたい、農地法を改正して、農業関係者以外の支配権が強まらないようにするために議決制限制度をつくったと思うんですね。
 その後も、この議決制限、これは緩和されているんですが、現在の基本法というのはこの法人化の推進としか書いていないんですけれども、改正案は経営基盤の強化とか促進という言葉を使っているわけですね。これ、ステージを明らかに変えてきているかなと思うんですよ。農業の主軸を、今、家族経営も大事なんだと言いましたけど、家族経営から法人経営にもっとシフトを変えていくということにしようとしているのかなと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 我が国の農業は、九六%を占める家族経営と、そしてそれ以外の法人、この組合せで成り立っております。経営体の数からいたしましても、家族経営が重要であるということに、考えには変わりはありません。
 家族経営の活性化を図るという現行基本法の規定は二十七条第一項として維持しておりまして、ステージが変化する、変わるということは、いうものではありません。

○紙智子君 ステージは変わらないんだという話ではあるんですけれども、日本でも世界でも、やっぱり農業の主軸というのは家族経営だと思うんですよ。ずっとそうだと思うんです。
 改正案は法人の位置付けを強化しているんですけれども、やっぱり兼業農家を含めて、農業で生計を立てていない生産者も農業の重要な担い手なんだと思うんです。家族農業の位置付けを強化する規定こそが設けられるべきものじゃないのかなというふうに主張したいと思います。
 それから、新規就農者支援の問題なんですけれども、農業の生産を担う生産者、とりわけ新規就農者を増やすというのが大事なわけです。新規就農者は、十年前は、二〇一五年の六万五千人が二〇二二年には四万五千人に減りました。なぜこれ減少したんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申し上げます。
 新規就農者の減少でございますけれども、今先生から御指摘ございましたように、いわゆる親元就農を、あるいは定年帰農等含め、親御さんのその経営を引き継ぐという形での就農者の減少というのがこの全体の減少の一番大きな要因だというふうに考えております。

○紙智子君 なぜ減少したんですかって聞いたの。

○政府参考人(農林水産省経営局長 村井正親君) お答え申します。
 これ、様々な要因があるかとは思いますけれども、例えば、最近、やはり六十代以上も含めた定年帰農と思われるそういった就農者の数が減少しておりますけれども、こういったことについては、例えば企業の定年延長、こういったことも一つの要因にあるのではないかなというふうに考えておるところでございます。

○紙智子君 これも余り分析されていないのかなと思うんですけど、政府の統計で全国の新規就農者数の推移というのが出ているんですけれども、これ都道府県別にどうなっているかって聞いても、これ出ていないんですよね。なぜ出さないのかなと。どこの県で何人増えたのか分からなかったら、政府の新規就農者政策って本当に有効になっているのか、実態が、実情が分からないし、検証もできないんじゃないかと思うんですけど、この点どうですか。

○委員長(滝波宏文君) 時間が迫っておりますので、答弁は簡潔に願います。

○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
 新規就農者調査でございますけれども、これ調査技術的な問題で、全国の家族の経営体、あるいは関係機関からどうやって的確に把握するかという問題がございまして、いろんなことを考量した上で、統計調査として一定の精度を確保しつつ、継続的、安定的にデータを提供すると、こういう観点から全国値を把握するということで、現在の調査を行っているところでございます。

○紙智子君 ちょっと時間が来てしまったので、また続きはこの次やらなきゃいけないんですけど、ちょっと新規就農者がどうなっているのかって、各県ごとに表があるのかなと思ったらないんですよ。ちょっとやっぱりそれ自体もきちっとやっぱり把握しなきゃいけないし、そうじゃなかったらちゃんとした対応策取れないんじゃないかなということも非常に強く感じているということを述べさせていただいて、質問をこれで終わります。ありがとうございました。