◇生産者に自己責任を迫る新自由主義農政の転換を求める 食料の安全保障を強調して基本法を見なおすなら、食料の権利を明記するよう求めるとともに、いま急がれている能登半島地震における食料支援が必要だと指摘
○食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
まず、岸田政権の農政について伺います。
岸田政権が発足した二〇二一年十月八日の所信表明演説で、総理は、新自由主義的な政策については、富める者と富まざる者と深刻な分断を生んだといった弊害が指摘されていますと述べられました。そして、今年四月二十六日の農業基本法の本会議質問で、自民党の藤木眞也議員が、新自由主義的な発想によって離農が進み、耕作放棄地が増加したと指摘されました。自民党の幹部の方からも、誰とは言いませんけれども、幹部の方からも新自由主義に批判的な意見が出ているというふうに思うんです。
そこで、坂本農水大臣、この新自由主義的な政策が農業にどういう影響を与えたと思われますか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 平成十一年の基本法制定以降、農政は基本的に望ましい農業構造の確立など基本法に掲げる理念の実現を意識して政策を講じてきています。岸田政権以前の農業政策においても、農業の競争力強化のための産業政策と農村振興等の地域政策を車の両輪として進めてきています。なお、必ずしも市場任せというわけではなく、価格変動等の農業経営への影響緩和対策などを実施をしているところであります。その上で、岸田内閣におきましては、新しい資本主義に基づいて、国内外の社会課題の克服を成長エンジンとすることで課題解決と地域の持続的な成長の両方を実現していくこととしております。
この中で、農政においても、国際情勢の緊迫化等に伴います食料生産の不安定化、地球温暖化等の地球規模での環境問題への対応、国内の急激な人口減少に伴う生産体制の確保などの社会課題に対して、必ずしも市場任せにせず、国もしっかりと関与して対応していくこととしております。
自民党幹部の新自由主義に対する批判等におきましても、行き過ぎた新自由主義については、やはりこれは非常に弊害が大きいというふうに私たちは受け止めております。
○紙智子君 行き過ぎていなければ新自由主義は構わないということなんでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 一定の競争力、経営判断、こういったものをやはり加味しながら農業というものを成長させていかなければいけないというふうに思っております。
○紙智子君 そうなんですか。
ブログを見ていましたら、坂本大臣、過去に、新自由主義経済は行き着くところまで行き着いたというふうに発しているんですけど、本当はそういうふうな思いがあるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、新自由主義政策がこれ行き過ぎたというふうに私は思うんですけれども、農業に弊害を与えたという認識はあるかどうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 必ずしも弊害を与えたということではないと思いますし、長所もあれば短所もある、様々な課題があると思いますので、それをどう克服していくかというのが私たちの農林水産省としての役割であるというふうに思っております。
○紙智子君 私は、やっぱり競争原理を導入することで、強い者が生き残る、弱い者は消え去ってしまって仕方がないというような考え方に立って、農業でいえば、再生産を保障するんじゃなくて、その仕組みをなくしていくと、生産者に自己責任を迫っていくというのが新自由主義のその問題点というか特徴ではないかというふうに捉えているんですよ。
生産者の営農意欲をこれ奪ってきたんじゃないのかというふうに思うんですけど、いい面も悪い面もと言ったんですけど、悪い面で言うとそういうところがあったんじゃないですか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 現在の農業政策は、平成十一年に制定されました現行基本法に掲げます望ましい農業構造の実現を始めとする理念の実現を意識して政策の展開を、施策の展開を図ってまいりました。
農業が魅力的である、魅力ある産業として一人でも多くの人に参入していただくためには、農業者が創意工夫を発揮しつつ農業を収益性の高い産業にしていく必要があるというふうに考えています。農業は天候に左右されやすいことや、近年見られるような生産資材の高騰など、外部要因が農業経営に影響を与えることがあるため、これまでも収入保険の創設、あるいは飼料、肥料の高騰対策など、農業生産を維持するための各種の施策を展開してきているところでございます。今後もこの方向に変わりはございません。
○紙智子君 ちょっと質問していることの趣旨にかみ合っての答弁ではないかなと思うんですけど、今おっしゃったように、農業というのはもう自然相手でやっていくわけですから、もうその都度その都度条件が変わるし、一律にはいかない面というのは御存じだと思うんですけれども、そういう中で、やっぱり一律に対応していくようなやり方というのは生産者の意欲を奪うものじゃないかというふうに思うんですね。
それで、今年に入ってなんですけど、EU諸国で農家の人たちが抗議する姿がテレビでずっと映し出されたと思うんですよね。その理由については、これ各国、EUに参加している各国によって少しずつ理由違うようなんですけれども、実は、今年の二月に、八十名近い国会議員を有しているフランスの左翼政党の国会議員の方と懇談する機会があったんですね。
私、どうして農民の人たちがストライキしているんですかというふうにお聞きをしたんです。そうしたら、フランスのその議員の方は、生産性を上げて農産物価格を安くする、大規模化、大量生産、それから殺虫剤も使い機械化も進めたと、農業も経済活動の一つなので、市場経済、自由貿易を進めてきたと、農産物の価格の管理を解除した、その結果、農民は農業で食べていけなくなった、気候変動リスクも高まって、袋小路に入っているんだと言われて、こうした新自由主義的政策と決別することが必要なんだということを言われたんですよ。これって、新自由主義に対する批判って、EUだけじゃなくてほかにもあると思うんです。
それで、大臣は、基本法を改正するということなんですけれども、やっぱり市場原理一辺倒というか、そこに任せて自由化を進めていく農政の見直しということが本来必要なんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 市場原理は、市場における様々な価格の高低、それから価格形成、こういったものは是認しながらも、先ほど言われました自然環境に影響がある農業でございますので、それはそれとして、環境影響の対策というものをしっかりやっていく、両面でやっていくというような心構えであります。
○紙智子君 やっぱり、改正する以上は、そういう今までの流れを変えるということが私は必要じゃないかというふうに思います。
それから、次に、食料への権利、権利の問題についてお聞きしたいと思うんですね。
基本法の改正は、食料安全保障を位置付けました。ずっと今も議論になっているんですけど、坂本大臣は、食料安全保障に関するFAOの定義を踏まえて、その趣旨を漏れなく端的に規定したというふうに言われましたよね。
FAOは、食料安全保障を、十分で安全かつ栄養のある食料を、物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成されるというふうに定義をされているわけなんですけど、その定義付けというふうになったのは、もっと遡って、一九九六年の世界食糧サミットの世界食料安全保障に関するローマ宣言だったと思うんです。
この宣言では、全ての人は安全で栄養ある食料を必要なだけ手に入れる権利を有すること、また、全ての人は飢餓から解放される基本的権利を有することという宣言を出しました。ここで注目するのは、基本的人権として食料への権利ということをうたっていることなんですね。
なぜ、今度の改正案にこの権利という規定がないんでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 御指摘のローマ宣言につきましては、全ての人は、十分な食料に対する権利及び飢餓から解放される基本的権利とともに、安全で栄養ある食料を入手する権利を有するというふうにされたものというふうに承知しております。
食料は人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることから、国民の皆様に安定的に食料を届けることは国の重要な責務であるというふうに考えております。
この考え方を踏まえまして、今回の基本法改正案では、国民一人一人が安全で栄養のある食料を入手できるようにするために、基本理念において、食料安全保障を、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態というふうに定義をしたところであります。第一の基本理念として位置付けたところでありまして、まさにこれがローマ宣言をやっぱり体現するものであるというふうに思っております。
今後、具体的施策としての食料の円滑な入手の確保、こういったものは計画の中で進めてまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 だから、権利という言葉は使っていないけど、それに言い換えて違う言葉になっているけれども、そういう権利だということなんですか。いや、権利って書けばいいんじゃないかと思うんですけど。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 同じことであるというふうに思いますので、国民一人一人がこれを入手できる状態、これがまさに国が果たすべき役割であり、国民の皆さん方が持っている権利であるというふうに解釈しております。
○紙智子君 解釈しているって言うんですけど、いや、やっぱり書くのが一番分かりますよ、誰が見ても。
やっぱりこうやって基本法変えていく以上、そしてFAOのその定義を網羅していると言う以上、やっぱりきちっと書くべきだと思うんですよ。
FAOは食料安全保障について四つ要素があると言っていますよね。一つは供給面だと、それから二つは利用面、三つ目はアクセス面、四つ目は安定面だと。そのアクセス面でいうと、合法的、政治的、経済的、社会的な権利として、栄養ある食料を入手するように定義しているわけです。ここでも権利という言葉を使っているんですよね。FAOの定義を漏れなく規定するということであれば、やっぱりここはしっかり書き込むことが必要ではないかというふうに思います。
それから、国際社会は、一九九六年の世界食料安全保障に関するローマ宣言以降、二〇〇八年に食料危機に直面をしましたよね。国連は、二〇〇〇年の国連ミレニアム目標、このときはMDGsですけれども、それを経て二〇一五年からはSDGsの取組を進めています。一方で、国連人権理事会は、食料の権利ということでの取組を始めているんですよね、食料の権利。二〇〇〇年から食料の権利に関する特別報告者を任命していて、報告を求めているんですけれども、注目をこの間集めているのがマイケル・ファクリ氏の報告です。
コロナ禍で報告者に任命されたマイケル・ファクリ氏は、二〇二〇年に中間報告を出しています。そこでは、一九九五年にWTO協定の一部として発効した農業協定は食料の権利を完全に実現する上で障壁となっていると。農業協定が経済活動の観点からのみ扱われて、食料の権利の観点を除外しているとして、国際貿易の枠組みであるWTO協定における農業協定の停止と新たな食品協定の締結を求めているんですね。
そこで、大臣、この食料の権利をめぐるこういう動きに対しては、大臣の見解はいかがでしょうか、お聞かせください。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 新型コロナウイルスの蔓延や、それから、ロシアによりますウクライナ侵攻などの影響もありまして、二〇二三年の国連食糧農業機関、FAOの報告によりますと、世界中で約七億人を超える人々が飢餓に直面しているというふうに推定をされております。
このような世界的に食料安全保障が課題となる中、国連を始めとした様々な場での全ての人々が十分な食料を確保する権利が議論されていることは承知をしておりますので、その議論の動向をよく注視をしていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 注視していくということなんですけど、一九九六年に世界食料安全保障に関するローマ宣言が基本的人権として食料の権利をうたったけれども、現在の基本法にはそうした定義はないわけですよね。しかし、今世紀に入って二〇〇八年の食料危機があったと。当時、国連人権理事会の特別報告者に任命されていたオリビエ・デシュッターさん、この方は、二〇〇九年に、ドーハ・ラウンドが妥結しても食料に関する構造的問題は解決されないといって、WTO農業協定への懐疑的な報告を出しております。
WTO農業協定の在り方や食料の権利について、これ農政審議会の検証部会では議論されているんでしょうか。
○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) 食料の権利につきましては、先ほど議論しております一九九六年のFAOの食糧サミット、この中で食料安全保障の定義というのの原型も提起されたんですけれども、そういう中で議論されました。
令和四年十一月に開催されました第三回検証部会におきましては、この一九九六年のFAOの食糧サミットに関しての議論を行いました。その中で、食料安全保障の考え方につきまして、FAOにおける食料安全保障の定義というのは何かと、また、そういったFAOの食料安全保障の定義が様々イギリス等の諸外国における法律の中で主流化して、政策の目標として位置付けられていること、また、そういった食料安全保障に関する諸外国の政策、また、我が国においても食品アクセス問題といった形での国民一人一人の観点からの食品の入手に関する施策の充実の必要性、そういったことについて議論をいたしました。
こういった議論を踏まえまして、食料安全保障ということについて、国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を将来にわたり入手可能な状況というふうな定義をいたしまして、それを踏まえて今回の基本法の食料安全保障の定義ということに規定をさせていただいたところでございます。
○紙智子君 一人一人に行き渡るという、これは別にいいと思うんですよ。ただ、やっぱりここで指摘されているように、経済活動の分野のみが焦点当たって、WTO協定でいうと、だから輸出国、輸入国の関係っていろいろ複雑になってきたじゃないですか。途中で進まなくなっちゃったわけですよ。輸入している国、輸出国はどんどん攻めていくわけだけど、今度、受け入れる方が非常に大変な状況が出たりもして、そういう意味では、経済面からだけこの貿易の問題って考えればいいわけじゃなくて、そこで本当に一人一人に行き渡る状況というのはどうなっているのかということが検証されなきゃいけないんだと思うんですよ。
私は、このWTO農業協定やられた時期というのは、全世界的にも食料が結構余る時期に作られているもので、今は足りなくなるという状況の中で、このまんまでいいはずがないというふうに思うんです。ですから、やっぱり検証は必要だと思うんですよね。そして、やっぱり今回の、現在の基本法、つまり一九九九年に作られている基本法というのは、WTO体制に合わせてこの基本法が改正されているということがあるわけですよ。
当時、政府がこのウルグアイ・ラウンドの農業合意を受けて新たな基本法を制定するというふうに表明していて、一九九三年の十二月にガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意がされたと。当時、内閣総理大臣を本部長とする、当時は多分、細川内閣だったと思うんですけど、本部長とする緊急農業農村政策本部が設置されています。そして、翌年の一九九四年十月にはウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱というのが出されて、同時に、農業基本法に代わる新たな基本法の制定に向けて検討着手するというふうに表明されていました。
その一方でね、その一方で、世界はローマ宣言が出されていて、食料の権利というのが打ち出されていると。現在の基本法、つまり一九九九年の基本法というのは、このWTO農業協定には対応しているんだけれども、何でこの食料の権利という問題が入らなかったのか、入れなかったのか、この点どうですか。
○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 杉中淳君) お答えいたします。
現行基本法の制定時におきましては、その当時の社会的、経済的情勢ということを考えて、物流上又は経済上の理由による食品アクセスの問題というのは発生していなかったために、必要な量の食料が確保されれば、国民に適正に配分され、いわゆる国民に行き渡るということで、FAOの言う食料の権利は我が国においては確保されていたということから、基本理念には食料が安定的に供給されると、十分な量が確保されるということを規定しておりますが、国民一人一人が食料を適切に入手できるかということについては規定されていなかったというふうに認識しています。
○紙智子君 だから、一方の方は受け入れて、反映させようとなったんだけど、このもう一つの方の権利の問題というのは結局全然見向きされなかったということなんじゃないかと思うんですね。やっぱり基本法ですから、しかも今回二十五年ぶりということですからね、そういう状況を踏まえて基本法を改正するというんだったら、この大事な食料の権利、このことを踏み込んだ対応が必要ではないかというふうに思うんですよ。
そこで、この食料の権利として重要なのは被災地への対応なんですね。この議論するための権利じゃなくて、今現実にどうなっているかということで言いたいんですけれども、政府は能登半島地震における食料支援を行っていましたけれども、これ、いつ打ち切ったんでしょうか。今の食料支援というのはどうなっているのかということについて報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(内閣府大臣官房審議官 上村昇君) 政府におきましては、発災直後より、プッシュ型支援によりまして、食料、飲料水、毛布などの緊急性を要する物資の支援に加えまして、被災者のニーズを踏まえてきめ細かな物資支援を行ってまいりました。
その後、被災地の物流の復旧状況等を踏まえまして、県、市町とも協議の上、国によるプッシュ型支援は三月二十三日に終了し、現在は県、市町において、地元の業者等から食料などの支援物資の調達を行っております。これは、被災地の物流も回復に向かう中、なりわい支援的な意味合いもございまして、県、市町とも協議の上、県からの要請を受けて行ったものであり、その費用も災害救助法に基づき国の負担で行っております。
また、国は、調達先リストを県に手交しておりますほか、県や市町が地元業者等から調達が困難である場合には調達の支援を行うなどの協力を行うこととしてございます。
○紙智子君 つまり、三月の二十三日まではプッシュ型で国から支援をやっていたんだけれども、その後は災害救助法に基づくその自治体、地方自治体がやるということで切り替わっているということですよね。ただ、要望があれば応えていくということではあるんだけれども、それで、現在の食料が手に入らないという声が私たちのところにも寄せられているんです。
それで、私たち共産党としては、石川県の羽咋市というところに能登半島地震被災者共同支援センターというのをつくっているんです。もう一月以降ずっと活動しているんですけれども、それで、仮設住宅ができて、今行政の食料供給が打ち切られてしまって、食料支援の要請がこの私たちのセンターに殺到しているんですよ。
で、仮設住宅に入居する人たちが出ているんだけど、仮設住宅に入居したからといって生活困窮者の状態が改善しているわけではないんですね。食べるものはないわけですよ。多くの被災者は、家財を失っていて、飲食にも事欠く事態で、食料支援の打切りが行われて、一体どうやって生きろというのかという、もう痛切な訴えが寄せられているんです。車中泊ですとか自宅で住み続けている人を対象に、支援物資の個別配布をこれ三月末で終了したという報道もされておりました。
大臣、これ被災地でこういう状況にあるというのは御存じだったでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) プッシュ型支援といたしましては、先ほど内閣府の方からもありました。
農林水産省といたしましても、総数で五百十四万点の飲料、それから約十八トンの無洗米、こういったものを金沢市の広域物資輸送拠点に送付をいたしまして、関係省庁と連携をしまして各被災地へ食料を提供してきたところです。
そして、先ほどありました政府によるプッシュ型支援の終了に当たりましては、食料品等の企業リストを石川県と共有したほか、大量な物資調達等、石川県で物資調達が困難な場合には調達手配を支援することとしたところであります。
このような中で、自治体の方から要請があれば、いつでも私たちは支援をしていくというような体制を取ったところであります。
○紙智子君 それで、被災地の方から出てきている声では、米が不足しているということなんですね。ある市から、能登半島地震の被災者共同支援センターに米を提供してもらえないかということで、要請を受けているんですよ。
それで、そこでちょっと大臣に確認したいんですけれども、この災害において、大臣、熊本、熊本地震のときって経験されているというように思うんですけれども、災害において、近年、政府の備蓄米を活用したということはありますか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 東日本大震災のときは四万トンを、これは卸業者の方に給付しております。そして、平成二十八年の熊本地震のときは政府備蓄米を九十トン、精米で八十六トン、玄米で五トン支援を行っているところでございます。
○紙智子君 備蓄米も用いてこういう今支援、具体的にやられている、そういう実情、実情というか、そういう、実際にあったという答弁だったと思うんですよ。
それで、現地から要請されればということなので、是非要請に応えていただきたいと。何か県からまだ来ていないという話もあるんですけれども、そういうやっぱり深刻な事態なので、是非応えていただきたいというように思います。
それで、国のプッシュ型支援が終わって、災害救助法で自治体が対応するとなったんだけれども、私はそれだけでいいのかなって思うんですよ。それで、その後どうなっているのかということにちゃんと関心持って、ちゃんと行き届いたことになっているのかということは引き続いて把握する必要はあるんじゃないのかなと。
農水省は、東日本大震災と福島原発事故のときに、これを教訓に踏まえて、二〇一二年に緊急事態食料安全保障指針、局地的・短期的事態編というこの指針を出しているんですよね。東日本大震災の後、これ出しているんですよ、二〇一二年。それで、それを見ると、その中には、食料供給に支障が生じた地域において、その地域における健康、栄養状態に配慮するため、地方公共団体やNPO法人等と連携して、地域ニーズや食料状況を把握するとともに、食料の各品目について供給可能な事業者に関する情報を提供するというふうに書いてあるんです。
だから、能登半島地震のこの食料支援の現状、今申し述べたとおりなんですけれども、この指針がこれあるんだから生かされなきゃいけないのに、生かされていないんじゃないのかというふうに思うんですけど、いかがですか。
○政府参考人(農林水産省官房総括審議官 宮浦浩司君) お答えいたします。
今御指摘ございましたその食料安全保障指針に即しまして、今回の能登半島地震におきましても、まずは温かい状態で食べれるものが欲しいという声が非常に多くございましたので、アルファ化米ですとかレトルト食品、それからスープパスタなどを一番最初の頃に提供をしてきたところでございます。また、その後は、外食事業者の方々からも協力を得まして、キッチンカーを出しまして、牛丼、それからうどん、カレーライス、こういったものを、温かい食事を無償で提供するというようなこともしてございました。
それからさらに、二月の中旬頃からですけれども、石川県の栄養士会の協力も得まして、栄養バランスとそれから調理のしやすさ、こういうものに配慮した炊き出しのメニューというものも作って、これも支援をして、食事の質の改善を図ってきているところでございます。
プッシュ型の支援が終わった後ということでございましたが、現在でも、この外食事業者のキッチンカーによるその食事の提供というものと、それから栄養バランスなどに配慮した炊き出しメニュー、これにつきましては引き続き活用されているというふうに承知しておりまして、被災地の状況を踏まえながら、地方公共団体等と緊密に連携していきたいと考えております。
○紙智子君 いろいろ手を打ってきていることはいいんですよ。それは、現地にとって必要なことをやられていることはいいんだけれども、その後、やっぱり、国としての事業終わったよと、その後ね、やっぱり後はもう知りませんじゃなくて、ちゃんと随時把握しながらちゃんと行き届いているのかどうかということをやるというのが、今議論されている、一人一人まで行き届いた、やっぱり権利としてそこを確保していくということになるんだと思うので、特にこの被災地の食料支援については強く求めておきたいと思います。
それから、次なんですけれども、一九九九年の基本法の修正部分についてなんですね。
先ほど来議論になっていましたけれども、当時は、WTO協定による自由化への不安と運動の広がりを受けて、衆議院で、国内の農業生産の増大を図る、それから食料自給率の向上を図るということで修正がなされたわけです。
それで、私、本会議で、この前、本会議の質問のときに、国会の意思、国会で決議上げたわけだから、国会の意思をどのように認識しているのかと、自給率目標は一度も達成されていない、その反省はあるんですかということを総理に聞きました。そうしたら、岸田総理は、国会の修正内容については、政府としてはこれまで対応を進めてきたとしか答弁されていないんですよね。農業生産が増大をしてこの食料自給率は上に向かっていくんでなければ、これ修正が生かされていないというふうに思うんですよ。
改めて、基本法を制定したときと、それから最新の農業産出額と食料自給率を報告をお願いしたいと思います。
○政府参考人(農林水産省統計部長 山田英也君) お答え申し上げます。
改めてでございますけれども、まず農業産出額でございますが、現行基本法の制定されました一九九九年でございますけれども、九兆三千六百三十八億円となってございまして、直近年のデータでございますが、二〇二二年、九兆十五億円となってございます。
それから、食料自給率でございますが、こちらも改めてでございますが、カロリーベースで申し上げますと、一九九九年度は四〇%、それから直近データの二〇二二年度は三八%となってございます。
○紙智子君 ですから、増産どころかこれは減少で、そして向上どころか低下というふうになると思うんですね。
なぜ修正という国会の意思が果たされなかったのかなと。それは、やっぱりその後の政策の中でも、例えばEPAとかメガFTAを進めてきたということがあるんじゃないかと。
あれほど大きな議論に、焦点になった環太平洋経済連携協定、TPP協定などを受けて基本法の見直しというのがやられるかと思えば、話題にもならなかったわけですよね。ウルグアイ農業協定を受けて、当時、対策本部をつくって、大綱を作って基本法の見直しに着手したときと比べると全く違うんですよ、今回。
なぜこんなに違いが出たのか。私が思うには、それは安倍政権の時代に進めてきた成長戦略にあるんじゃないかと思うんです。現在の農業基本法によって食料・農業・農村基本計画を進めていますけれども、安倍政権の時代に官邸主導で新しい計画を作りました。農林水産業・地域の活力創造プランという名前の計画を作って、輸出とそのための基盤強化を重視をするということだったわけです。
私、二〇二〇年の三月の農林水産委員会で、農林水産業・地域の活力創造プランに対して、この中には国民への食料の安定供給は国内生産の拡大を図るということを基本とするということが書かれていませんよねというふうに指摘をしたんです。それで、基本計画でいくのか、それとも安倍政権が目指している規制改革推進会議の意向を酌んだこの計画プランなのか、どちらを軸にするんですかというふうに聞いたんですね。当時の大臣は江藤さんだったんですけど、江藤大臣は、両方のいいところはしっかり取り入れさせてやらせていただきたいというふうに、いいとこ取りしたいという話で答えられたんですけれども、事実上、そのときに計画が二つあるということを認められていて、その経過を見ると、やっぱり基本法に基づく計画があるのに、農林水産・地域の活力創造プラン、これを基本計画の上に位置付けて、農政を変えようとしたんじゃないのかなというふうに改めて今も思っているんですけど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 食料・農業・農村基本計画は、十年という中長期的な視点に立ちまして、食料・農業・農村施策の方向性を定めるものでありまして、おおむね五年ごとに今改定されるものです。一方、農林水産業・地域の活力創造プランは、政府においてスピード感を持って毎年実施する個別具体的な政策を盛り込んで、年次改定をしてきたところであります。
このため、五年に一度改定いたします基本計画と、それから必要に応じて改定していきます活力創造プランは、その性質、役割に応じて策定しているものであるというふうに認識をいたしております。
○紙智子君 やっぱり矛盾があったんじゃないのかなと思うんですね。片一方に基本法ありながら、もう一方でそうやって農業の進める形がなかなか進まない状況になったんじゃないのかなと。農業生産の拡大、それから食料自給率の向上という国会の意思に沿った基本計画は、結局そういう中で達成されていないわけです。
現行の基本法がWTO体制に合わせた改正だったとすると、今回の基本法の見直しというのは、言わば、この間のずっと路線でいくと、メガ協定などの自由化路線、プログラムに沿った輸出、スマートなど、官邸主導で始まった農政に合わせた改正になるんじゃないかと思うんですよ。
加えて言えば、この自由化と円安誘導策で酪農は今赤字になっています。米は低米価が続いています。足りなくなってというか、だんだん減ってきているという中で、今、一時期は米価上がっているようですけれども、続いていると。それなのに、TPPのときのような、なかなか現場から声が上がっていないよねとよく聞くんですけど、それはなぜなのかといったら、やっぱり安倍政権時代に農協法を改悪したということが国民的な運動を広げることにできなくなったからじゃないのかというように思うんですよ。
今の農政では、やっぱり幾ら意見を言ってもなかなか通らないと、現場の声幾ら上げてもなかなか受け取ってもらえないと、そういうような思いになっていて希望を見出せなくなっているんじゃないのかなと思うんですけど、この点について大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 食料・農業・農村基本法が制定されて以降の約四半世紀におきまして、人口減少に伴いまして国内市場が縮小をいたしました。基幹的農業従事者が半減する中にあって、それでも農業総産出額が九兆円前後を保っております。また、担い手への集積率が六割まで増加しておりまして、販売額五千万円以上の経営体や法人経営体も参加するなど、望ましい農業構造の実現に向けて進展しているというふうに考えております。
今後、農業者の減少が不可避となる中においても、農業が維持発展するためには、収益性の高い農業の実現を図ることが重要と考えておりまして、スマート技術の展開等によります生産性の向上や農業の付加価値向上、輸出による販路拡大等を図ってまいりたいというふうに思っております。
生産者の方々に対しては、やはり、それはしっかりと希望を持ち得るような、そういう農政にしていかなければならないというふうに思いますので、法案が成立した際に、法案を成立させていただきました際には、基本法に基づいてしっかりと施策を実行し、先ほども言いましたように、農林水産業に関わる方々が将来に向けて夢と希望を持ちながら取り組んでいただけるよう、職責を果たしてまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 やっぱり希望を持てるようにしていくということでいうと、やっぱりちゃんと意見が響いているなと、自分たちの意見は取り入れられているなというふうになることがすごく大事で、私、山田俊男先生が向こう側に今座っていますけど、当時、TPPの取組だって、もう全国どこの農協だって、TPP断固反対というので垂れ幕下がっていましたよね。どこ行っても、やっぱりこれ困るという話の中で、署名だって物すごいたくさん集まってきたわけですよ、紹介議員になってくれってことで。
わざわざあのとき、山田先生ね、外務委員会にその提出された署名がかかるというんで、これは農業に大きな影響あるんだから農水にかけなきゃ駄目だと言って、付け替えて、農水でその署名を採択するぐらいの、そういうことまでやってきたわけですよ。その当時から見たら、今本当に言っても無駄というような状況があるんじゃないのかって。そういう状況というのは本当に風通り悪いし、本当に希望を持てるようにするためには、本当に現場からの声や要求が届くような状況にしなきゃいけないと思うんですよ。
農政に希望を持てなくなっているというのは、農水省の姿勢も私はあると思うんですね。会計検査院が、食料自給率目標を達成していなかった場合の要因分析は行っていなかったというふうに指摘をしました。これに対して農水省は、外交とか経済など様々な要因によっていろいろ影響されるから、これは評価できないんだと、評価の対象にはならないというふうに答えてきたわけですよ。この言い方というのは自由化でも同じで、TPPなどの議論のときもあれほど大きな争点になったわけだけれども、政府は、影響試算を出して、決まって答えていたのは、いや、体質強化対策や経営安定対策を取るから影響ないんだという答弁ですよ。
二〇〇七年のときでしたっけね、あのときはEPAか何かだったと思うんだけれども、影響調査ということでちゃんと発表していましたよね。このままだったらこれだけのGDP比で減少、減収になるんだというのを出して、影響を分かるように少なくともしていたと思うんですよ。今、そうじゃないですもの。体質強化対策、経営安定対策取るから影響はないんだというふうに言うから、全然分かんなくなってきているわけですよね。
で、本当に影響なかったんですかというふうに聞くと、景気動向や為替の変化など、変動など、様々な要因が貿易に影響を及ぼすために、貿易額の変動からEPAの影響のみを取り出すことは困難だと、こういうふうに答えるわけですよ。輸入自由化路線が希望を奪っているのに、影響は分からないんだという話をしているわけです。だから、目標を立てても、影響を聞かれても、時がたったら、まあ外交、経済問題があるからねということでこの検証を避けると。これは行政責任の放棄じゃないかというふうに私は思うんですよね。
やっぱりこれは変わらなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) これまでの農林水産物の貿易交渉、例えばTPP、それから日EU・EPA交渉などでは、我が国の農林水産業の再生産が引き続き可能となるよう、重要五品目を中心に関税撤廃の例外を獲得することによりまして、必要な国境措置を維持してまいりました。
また、食料・農業・農村基本法案におきましても、第二十一条第二項におきまして、農産物の輸入の増大によって農産物の国内生産に重大な影響を与えるなど、必要な場合には関税率の調整、輸入の制限といったセーフガード措置を講ずる旨を規定しているところでございます。
こうした国境措置やセーフガード措置を確保した上で、国内生産の振興を図るための必要な施策を講ずることによりまして、先ほど申しましたように、生産者の方々が希望を持って農業に取り組めるような環境整備というのを図ってまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 ちょっと時間がなくなってきましたので、やっぱりどっちにしても、この説明の責任も十分果たさない、これも生産者が希望を見出せない原因になっているんじゃないかと思います。
食料自給率について最後ちょっとお聞きしたいんですけれども、本会議の質問のときに、食料自給率の目標は、その向上を図る指針という文言が向上の改善が図られるという抽象的な表現になったと、幾つかの目標の一つに格下げしたんじゃないですかということで質問したら、岸田総理は、農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨明記しているというふうに答えられたんですけれども、これは、現行法と改正案にある同じ文言をただなぞって言っているだけなんですね。質問に答えたことになっていないんですが。
改めてお聞きするんですけれども、現行法の第十五条の第三項、ここに、「食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針」というふうにあったわけですけど、今度の改正案では指針という文言が削除されていて、これはなぜなんでしょうか。
○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 現行基本法の第十五条の三項におきまして、食料自給率の目標につきまして、国内農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨を規定しておりました。
今回、改正案の第十七条第二項におきまして、食料自給率目標に加えまして、食料安全保障の確保に関する事項の目標についても基本計画に定める目標と位置付けています。その上で、第三項において、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう目標を定める旨の包括的な規定を設けたものでありまして、この中には改正前の規定の意味合いも当然含まれているというふうに思っておりますので、指針を上書きしたものというふうにお考えいただければいいかと思います。
○紙智子君 ちょっとなかなか上書きしたというふうには受け取れないですよね。「食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針」ということは、指針ということは方向を示すものですよね。そういう言葉を付けたということ自体が非常に重みがあったと思うんですけれども、これが削られてしまったということでは、ちょっとやっぱり意味が大分変わってくるかなというふうに思うんです。
それで、ちょっともう時間だということなので、続きはまた次回ということで、今日はここまでのところとしたいと思います。
ありがとうございました。