<第213回国会 農林水産委員会 2024年4月18日>


◇桃や梅、桜の樹木を食い荒らす外来種・クビアカツヤカミキリ(通称クビアカ)の被害が拡大/和歌山での被害実態を告発しながら、生産者支援策等を求める。

○紙智子君 紙智子でございます。
 今日は、カミキリムシの一つで、クビアカツヤカミキリによる環境被害、農業被害について質問します。
 桜の季節で、今だんだん北上して、北海道はこれからなんですけれども、桜の幹を食い荒らしたり桃の木にも被害を与えるクビアカツヤカミキリの被害が急速に広がっています。
 環境省に最初お聞きするんですけれども、そもそもクビアカツヤカミキリというのはどういう害虫なのか、そして、急速に広がっている要因について説明をしてください。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 堀上勝君) お答えいたします。
 クビアカツヤカミキリは、中国、朝鮮半島などが原産のカミキリムシでありまして、幼虫が梅や桜などのバラ科の樹木を加害いたします。
 我が国におきましては、二〇一二年に愛知県で発見された後に、現在は十三都府県にまで分布が拡大しておりまして、その加害された梅や桃などの木が枯れるというような農林水産業に係る被害も確認されておりますほか、森林生態系等への被害が懸念されているところでございます。こういう被害がありますことから、環境省では、平成三十年に本種を外来生物法に基づきます特定外来生物に指定をしております。
 それから、本種が我が国において急速に広がった原因でございますけれども、これは、幼虫が樹木に侵入するわけですが、その初期段階では、まだ花とか実が付くというような、いわゆる樹勢が衰えないということがありまして、被害に気付きにくいということで発見が遅れやすいというのが一つ要因ではないかというふうに考えております。

○紙智子君 和歌山の桃の生産者から、通称クビアカって言っているらしいんですけど、クビアカ被害についてお話を聞きました。ある生産者は、桃の木が七十五本あったようなんですけど、二〇二二年には四、五本で被害が出たと。年が明けて、二〇二三年の夏の終わりには一気に広がって四十本で被害が出たと。木の内部を食い荒らしてすかすかになってしまうので伐採したって言うんですね。恐ろしいのは、一本の木に幼虫、あっ、成虫が三百ぐらい付いて、約一千個の卵を産むと。農業被害もあれば、桜での街路樹の被害もあると。
 それで、政府挙げた緊急対策が必要だと思うんですけれども、大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) クビアカツヤカミキリは、今言われましたように、桜などの街路樹や公園、そして学校等の樹木の被害だけでなくて、梅、桃などの果樹に大きな被害を与えます。
 私も、梅の生産地でございます和歌山県の国会議員の方々から何とかしろというふうな要望を受けて、農林水産省の方と現在防除対策をやっているところでございます。
 このため、我が省では、クビアカツヤカミキリに対する防除対策を進めるためには、当省のほかに環境省、文部科学省、そして国土交通省を始めとした関係省庁が危機意識を共有し、自治体を含めた連携を促進することを目的として開催いたします外来カミキリムシ類に関する関係省庁連絡会議、これを令和三年に発足をさせております。各省の被害対策の共有や、そして関係機関の情報提供を行っているところであります。
 ただ、このカミキリというのは、足腰も強くて、そして歯も強くて、なかなか厄介な外来、生存力が非常に強い外来種でございますので、今後、しっかりと情報を入手しながら対応してまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 環境省にお聞きするんですけれども、奈良県の大和高田市には高田千本桜で有名な名所があります。それで、市が管理する四百五十本の桜の木のうち約百五十本でクビアカの被害が確認できたようです。市が初めてクビアカ被害を確認したのが去年だというふうに報道されていますから、すごい速いスピードなんですけれども。
 それで、特定外来生物に指定されると、まずはどのような支援があるのか、それから二つ目にどのような特別交付税の措置があるのかを説明してください。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 堀上勝君) まず、環境省におきましては、平成三十年に特定外来生物に指定をしておりますが、それ以降、本種の早期発見に必要な同定マニュアル、それからチラシの作成をいたしまして、それを配布して注意喚起を行ってまいりました。
 加えて、令和五年度からでありますが、地方公共団体が実施する生態系等に係る被害防止対策への交付金による支援を進めてございます。令和五年度は、本種に係る生態系被害防止に関する事業二十件に対しまして必要な資金的支援をこの交付金で行っております。
 また、地方公共団体が実施する被害防止対策につきましては、令和五年度から特別交付税措置の対象にもなっているところでございます。

○紙智子君 そうしますと、その交付金を使ってやるということですが、特別交付措置というのがあるということですよね。
 それで、農林水産省にもお聞きするんですけれども、このクビアカの駆除には相当労力や費用が掛かるというふうにも聞きました。桜の木四十本を駆除した和歌山県の、和歌山の生産者の方は、四十本を駆除するのに三日間掛かったと。それで、伐採して、で、木を焼却するんですね、燃やさなきゃならないというか。それで、一人でこれできる作業ではないというふうに言っていて、一つには、その伐採、焼却などは農家負担なく駆除する支援はあるのかということが一つです。それからもう一つは、蔓延防止策、予防策として効果があると言われるネットを設置する場合にその支援があるのかということについて説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) お答えいたします。
 クビアカツヤカミキリの防除については、委員が御指摘のとおりで、農業者個々の取組では十分ではなくて、蔓延を防ぐためには地域でまとまって取り組むことが重要でございます。このため、農水省では、防除に必要な様々な取組に対して支援を行っているところでございます。
 具体的には、我々果樹を対象ということになりますけれども、一つは、早期の発見が非常に重要でございますので、幼虫が食害している痕跡、これフラスといいますけれども、こういったものを調べるなど、地域の発生状況の調査を支援するということとともに、委員からもお話もございましたけど、蔓延防ぐためには被害樹の伐採だとか伐採した後の焼却処分の取組というのが必要でございます、こういうものを支援する。さらには、農薬や捕殺をしたといった形の防除であるとか、委員からもお話ございましたけれども、羽化した成虫がほかの木に移らないためにネットを張るといった様々な防除対策について支援をしているところでございます。

○紙智子君 ちょっとその支援をもうちょっと具体的に言ってください、何分の一の支援があるとかね。それから、ネット支援はどういう支援なんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) お答えいたします。
 支援に関しては基本的に二分の一の支援ということでございます。県によっては、和歌山県を始めとして県独自でも支援をしておられます。まさに和歌山県の例でいうと、伐採とか焼却とかそういった処分に、あっ、伐採に関してですね、そういった県としての支援などをされているというところでございます。(発言する者あり)
 ネットも同様でございます。そういった意味では、地域でネットを張るといったことに関しても二分の一の補助をしているところでございます。

○紙智子君 それで、農薬についてなんですけど、農薬はできるだけ使いたくないというふうに、食べるものに農薬使いたくないというのがあるんですけれども、特に収穫期には使いたくないと。一方で、木に入り込んだクビアカを効果的に駆除できる農薬があればという意見もあるんですね。
 この効果的な有効な農薬というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) お答えいたします。
 現在、クビアカツヤカミキリに適用のある農薬、幾つかございます。梅とか桃とかスモモとか、そういう意味では、害のある植物に対する登録もあるところではありますが、実はこれらの多くは成虫に直接散布した場合効くような農薬でございます。
 それに対して、クビアカツヤカミキリのその被害の中心は幼虫が木を枯らすというところがございまして、この木の中に入った幼虫にも効果のあるものというものがやっぱり現場では期待されているところでございます。
 こうした防除効果の高い新たな農薬の登録に向けて、現在、県の試験場において試験の効果を確認するような試験などが進められているというふうに承知をしております。
 農水省としては、こうした効果のある農薬が出てくれば、農薬メーカーから農薬登録の申請いただければ、関係府省と連携して速やかに手続を進めたいと考えております。

○紙智子君 今研究している最中ということでもあると思うんですね。
 それで、今後心配されるのは、管理をされていない桜の木とか、それから耕作放棄地、ここはもう手付けられないということで、どんどん広がるだけ広がっちゃうということがあるんですね。そういうところに対してどういう対策を取るのかの説明をいただきたいんですけれども、まず一つ、桜の木はこれ環境省だと思うんですね。それから耕作放棄地は農水省だと思うので、それぞれちょっとその対応策についてお話しいただきたいと思います。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 堀上勝君) 桜の木に限らないわけでありますけれども、まず各地方公共団体におきまして防除をしているというのが現実でございます。各地方公共団体におきまして、このクビアカツヤカミキリの防除に際しては、分布状況の調査あるいは被害木の伐採をしていくと。それは主体的に防除計画を策定して防除を進めているということで承知をしております。
 その際、被害木の所有者にかかわらず防除は実施していくということが可能ですので、環境省におきましては、こうした地方公共団体の防除対策につきまして交付金により支援をしておりますし、先ほどお話もしましたとおり、特別交付税措置の対象にもなっているというところでございます。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) 農林水産省の方は耕作放棄地の対策ということで、現在の対策は、耕作している園地での被害防止を中心としてこれまでは防除対策進めてきたところでございますが、現場を回ってお話をお伺いすると、耕作放棄地がやっぱり発生源となって周辺の農地に影響を及ぼしているという声も多く聞かれているところでございます。このため、本年度からですけれども、これまで耕作園地のみを対象にしていた支援策の運用を改善して、こういう耕作放棄地における被害樹の防除についても支援の対象に追加するということにしたところでございます。
 もちろん、耕作放棄地の所有者の同意を得るといったことが前提にはなるんですけれども、こうした対策を活用して被害地域の拡大防止に取り組んでいただきたいと考えております。

○紙智子君 所有者が定まらないというか、分からない場合というのはどうされるんですかね。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 堀上勝君) お答えいたします。
 外来生物法の規定にそういったことの規定がございまして、防除に必要な場合には、地方公共団体の職員が他人の土地に立ち入って、特定外来生物の捕獲、樹木の場合では伐採でございますけれども、こういった伐採をすることができる規定がございます。それは、その都道府県なり市町村というところでそういった職員が行うことができる規定があるということが外来生物法の中で整理されてございます。

○紙智子君 それで、侵入経路なんですけど、日本にいつぐらいから、どういう経路で侵入しているのか、これって解明できているでしょうか、農水省にお聞きします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) お答えいたします。
 クビアカツヤカミキリについては、輸入してくる植物以外にも様々な、船舶を始めとして侵入経路想定されるところでございます。現時点では、残念ながら侵入経路の特定には至っていないところでございます。
 引き続き、クビアカツヤカミキリの特性だとか生態などについて、海外でもいろいろ発生していますので、そういった知見だとか、国内での情報収集を進めて、こういった知見は被害地域の拡大防止にも役立ちますし、防除の対策にも生かすことが可能かというふうに思っておりますので、こういった知見を集積しながら、侵入原因についても究明していきたいと考えております。

○紙智子君 例えば、輸入で入ってくる木材に入っていたなんということもあるのかなと思うんですけど、そういう可能性というのはどうなんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) 輸入検疫におけるちょっと御説明をさせていただきます。
 クビアカツヤカミキリが付着するおそれのある木材といったものがございます。こういったものについては、輸入時に全荷口に関して検査を実施しております。ちょっと具体的に数字を調べてみたんですけれども、二〇一二年から二〇二三年まで二万九千件の検査を行っております。この結果、薬剤による殺虫処理などが適切に行われておりまして、クビアカツヤカミキリを始めとした、ほかのカミキリ類も含めてですね、付着していないことを確認したもののみが国内に流通するというふうな形になっているところでございます。

○紙智子君 二〇一二年に最初の被害が発見されたというふうに聞いているんですよね。その後、十年で十三都府県に被害が広がったと。だから、すごいスピードが速い広がりで、その対策が追い付いていない状況というふうにも聞いています。地域を見ますと、関西圏、それから中部圏、それから関東圏で被害が発生していますけれども、それぞれの地域の侵入経路というのが解明されているわけじゃないんですよね。
 それで、国内での蔓延を防止するということと同時に、輸入による侵入を防ぐ必要があるというふうに思うんですよ。いわゆるこの水際対策、それから防疫、それから物流対策などを強化すべきではないかと思うんですけれども、これ、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 輸入時の植物検疫につきましては、引き続き、クビアカツヤカミキリの侵入を許さないようしっかり検査を行っていかなければいけないと思いますが、これは、先ほど言いましたように、非常に強靱な足を持っておりまして、そして、コンテナにも、それから木材にも、いろんな形でやはり張り付いてくると。しかも、生存能力が強くて、そして歯も非常に強いということで、やはり外来生物として一番注意をしなければならない害虫で、外来害虫であります。
 ですから、国内につきましては、被害地域が拡大しないよう、関係各機関が連携をして、まずは早期発見、そして早期防除を進めるとともに、地域が一体となって被害状況に応じた対応を続けていくことが重要であるというふうに考えております。
 これまでも地域の実情や声を聞き支援の充実などに取り組んできたところでありますけれども、地域と連携しながら、現場の取組が進むよう、必要な支援を行ってまいりたいと思います。関東と関西に今のところ集中しておりますので、日本全体に広がらないようにしっかりとやってまいりたいというふうに思います。

○紙智子君 和歌山のその生産者から話を聞いているわけですけど、梅の産地である紀中、それから紀南への影響も心配しております。それで、すごい、日本の中でもあの地帯って本当に大事な梅の地帯でもありますから、そういうところに広がってきてもう切らなきゃいけないということになると本当に大変だというふうに思います。それで、全国の、そういう意味では桃の産地も懸念をされているということですよね。
 それで、日本って天敵がいないんだと。いや、中国だとか来たんだけれどもそこはどうなっているんですかと言ったら、天敵がいてバランスが取れているからそんなに広がっていないという話だったんですけど、これ、あれ、天敵というのは何か研究されているんですかね。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 安岡澄人君) 御指摘のとおりで、海外では結構天敵がいて、まさにその地にいる生物が天敵となっているということでございます。
 今のところ、やっぱり天敵も、それもまた外から持ってくるというわけにいきませんので、在来の中でいい天敵があるかどうかというのを調査をしています。実は、少しそういったものの候補になるようなものも一部の研究では見付かってはきているんですが、そういうものがどれだけ有効なのか、まさに、それと、これもまた違うところに持っていくと新しいものになってしまいますので、本当に使えるのかどうなのか、そんな研究をしながら、対処策、様々な対処策が考えなきゃいけないと思いますので、天敵も例外にせず検討をしていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 慎重でないと、確かに、また、それがまた悪さをするということになったら困るので、是非、非常に繁殖力が強いと、そういうクビアカの対策なんですけれども、スピード感を持って強力に進めていただくようにお願いいたしまして、質問終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。