<第213回国会 国土交通委員会 2024年4月18日>


◇政府は4月1日に「防衛体制の強化」のためと称し、7道県の16施設を「特定利用空港・港湾」に指定した。北海道では5港湾が指定、有事の際には敵の標的になる不安もあるのに、議会や住民へのまともな説明がないとし、軍港化をやめるよう求める。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 特定利用港湾の指定についてお聞きします。
 政府は、四月一日に、総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラの運用・整備方針について発表しました。目的には、国家安全保障戦略で掲げた総合的な防衛体制の強化の一環として、自衛隊や海上保安庁のニーズに基づいた公共インフラの整備や機能を強化するとあります。
 今回この指定されたのは七道県の十六施設、予算額で三百七十億円ということになります。
 そこで、北海道で指定された五港湾についてお聞きします。
 方針では、自衛隊、海上保安庁のニーズに基づき整備するとありますけれども、この北海道でなぜ五港湾が指定、選定されたのか、防衛省に伺います。

○政府参考人(防衛省大臣官房審議官 米山栄一君) お答え申し上げます。
 政府が本年四月一日に公表いたしました「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラの運用・整備方針について」に記載されております自衛隊のニーズでございますが、こちらは、平素における訓練などに加えまして、国民の生命、財産を守るため、例えば災害時における救援部隊の派遣や弾道ミサイル対処が必要な場合などがございます。これらの取組を行うことは、ひいては武力攻撃事態のような有事における国民保護を始めとする対応にも資するものというふうに考えてございます。
 また、先生御指摘の北海道の五つの特定利用港湾を選定した理由でございますけれども、北海道には陸上自衛隊の二個師団、そして二個旅団があるなど多くの部隊等が配備されてございます。これらの部隊等の近傍に所在する港湾の重要な特性に着目いたしまして、その整備状況等も踏まえたものでございます。

○紙智子君 北海道には大きな部隊があるからという説明だったかと思います。
 今回、選定に至る経過を見ますと、議会にも住民にもまともな説明がされていないんじゃないかと思うんですね。釧路市には、昨年の二〇二三年十月十三日に内閣府の関係者が来たようです。そのときに釧路港が候補地になるという説明はなかったというんですね。その後、じゃ、国が説明に来たのかというと、そういう報告もないと。まあメールのやり取りだったのかもしれませんけれども。で、十二月議会、そして今年の三月議会でも十分な審議ができていないわけなんですね。住民への説明もないと。ですから、四月一日にこれ発表されて驚くわけなんです。
 地方議会やこの地方自治が軽視されているんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君) 今般の特定利用空港・港湾に係る取組は、総合的な防衛体制の強化の一環として、自衛隊、海上保安庁が必要とする空港、港湾を平素から円滑に利用できるよう、インフラ管理者との間で円滑な利用に関する枠組みについて確認ができた空港、港湾を特定利用空港・港湾としております。
 政府としましては、昨年九月以降、関係省庁で連携し、インフラ管理者である関係自治体等との間で十分に調整を行ってきたところでございます。関係閣僚会議の資料の公表や、本件取組についての二十六問にわたるQアンドAを作成し公表するなど、今回の取組について公開し、地方議会や地域住民の皆様を含め広く関係者の理解が進むよう努めてきたところでございます。関係地方自治体にも十分調整を行っております。
 関係自治体において政府側と枠組みを確認するに先立ちどのような手続を取るかは、最終的にはまさにその自治体に御判断いただくものと考えておりますが、国土交通省としては、引き続き関係省庁と連携し、地方議会や地域住民の皆様の御理解が進むよう、自治体等と丁寧に調整を進めてまいりたいと思います。

○紙智子君 三十八の空港、港湾が候補だという報道がありました。しかし、指定されているのは十六施設だと思うんです。沖縄や鹿児島、熊本、福井など、保留したり先送りした港湾があるというように思うんですけれども、その理由についてはどういうことか、御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(運輸安全政策審議官 藤原威一郎君) お答えいたします。
 特定利用空港・港湾については、五か所の空港と十一か所の港湾についてインフラ管理者との間で円滑な利用に関する枠組みを設けるに至り、四月一日の関係閣僚会議で確認したところですが、調整を行った自治体のうち、委員から御指摘のあった四県、沖縄県、鹿児島県、熊本県、福井県が管理者となっている空港、港湾は、特定利用空港・港湾には含まれておりません。
 これらの県ともこれまで丁寧に調整をさせていただいてきましたが、沖縄県につきましては、現時点では情報が不足し判断できない、引き続き調整が必要といった内容をお聞きしているほか、ほかの県につきましても、基礎自治体等への丁寧な説明を継続する必要があるなどの状況を伺っているところでございます。
 いずれにいたしましても、国土交通省としては、引き続き関係省庁と連携し、自治体等と丁寧に調整を進めて、早期に御了解をいただけるよう努めてまいります。

○紙智子君 四月の九日付けの読売新聞によりますと、八施設が対象となった鹿児島県あるいは三施設が候補となった熊本県は、政府に要望した地元住民らへの説明がなかったということを理由に見送ったと報道しています。
 熊本県の危機管理防災課は、防衛力の強化を掲げる以上、身近な空港や港が攻撃を受ける危険性を不安視する県民は少なくないんだと、丁寧な説明がなければ判断できないというふうに報道しているわけで、今ちょっと説明もありましたけれども、住民への説明もなしにどんどん決めることはできないということではないかと思うんですけど、大臣、どうですか。

○国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君) 繰り返しになりますけれども、地元自治体、港湾や空港を管理している自治体に対しては、十分、我々、国として丁寧な説明をし、調整をしてきたところでございます。
 その自治体がどういうふうに地域住民の方に説明をするかはその地方自治体の主体性にお任せしているところでございますけれども、この点は御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 やっぱり、自治体に説明をしてもらうということではあるんだけど、結局住民は知らないままこれが進んでしまうということになってはやっぱりいけないんだと思うんですね。やっぱりこの住民自治ということを軽視してはいけないというふうに思うんです。
 それから、釧路港なんですけれども、二十六億円の予算が付いています。釧路には東港、西港があるんですけれども、それぞれの予算額と、どのような整備をするのかということについて説明をしていただきたいと思います。

○政府参考人(国土交通省港湾局長 稲田雅裕君) 釧路港でございますが、民生利用を主としつつ、自衛隊、海上保安庁の艦船の円滑な利用にも資する施設の整備として、令和六年度予算で約二十六億円を配分をしてございます。
 具体的には、西港区におきまして防波堤や水深十四メートルの航路、泊地の整備として約二十五億円、東港区におきましては防波堤の老朽化の改良のための予算約一億円を配分してございます。

○紙智子君 そういうことを含めて全然知らない状態であったということなんですね。既にある港湾整備計画があるのに、例えば自衛隊のニーズに合わせてこの二十六億円もの予算を付けるということになるんだろうと。
 一月、能登半島地震で港湾や漁港に大きな被害が発生しました。今、復旧するために予備費から約二百四十七億円付けたということなんですけれども、これ、まだ復旧のための費用で、今後本格的な復興に向けた予算というのが必要になってくると思うんですよ。全国でやっぱり特定利用港湾・空港のために三百七十億円計上しているということなんですけれども、やっぱり今急いでやらなきゃならないとなると、復旧復興のためにこの能登半島の地震対策に付けるべきではないのかというふうに言っておきたいと思います。
 さて、四月一日の通知についてなんですけれども、有事の際の展開等を目的にした、ちょっと中抜きますけれども、自衛隊、海上保安庁のニーズに基づきと、公共インフラの整備というふうにあります。有事の際の展開ということについてはどういう意味なのか、説明いただきたいと思います。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 室田幸靖君) お答えを申し上げます。
 先ほど先生がおっしゃいましたところは、御指摘の運用・整備方針におきまして国家安全保障戦略の特定の文章を引用した中に出てくるところでございます。総合的な防衛体制の強化の一環として、自衛隊、海上保安庁による国民保護への対応、平素の訓練、有事の際の展開等を目的とした円滑な利用、配備のため、自衛隊、海上保安庁のニーズに基づき、空港、港湾等の公共インフラの整備や機能を強化するための総合的な仕組みを創設するというふうにございまして、これを踏まえて、今般、特定利用空港・港湾を設定をしたと、こういう文脈で出てくるものでございます。
 具体的な意味という御質問でございましたけれども、自衛隊、海上保安庁は平素から民間の空港、港湾を訓練等で円滑に利用できるようにしておくことが、これが重要でございます。それは何でかといいますと、それは、有事におきまして自衛隊、海上保安庁は国民保護などに従事することがあり得ますが、有事になって初めて空港、港湾を利用するということでは十分な対応ができない可能性がございます。そういう観点から、平素より有事等を念頭に置いた形で空港、港湾を利用させていただく、それを円滑に利用させていただく枠組みをつくるべきと、こういうことでやらせていただいたということでございます。
 なお、有事という言葉がございましたけれども、今般の枠組みは、あくまで平素における空港、港湾を自衛隊、海上保安庁がより円滑にできるようにするということを対象にしたものでございます。したがって、武力攻撃事態のような有事の利用を対象にした枠組みではございません。
 武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態における空港、港湾の利用調整については別の法律がございまして、これは特定公共施設利用法というものがございます。こういった法律に基づいて行われる話とは別の枠組みということで御理解をいただければと思います。

○紙智子君 有事に備えて平時から訓練しておくためのものなんだというようなお話だったかと思うんですね。
 加えてちょっとお聞きするんですけれども、自衛隊や海上保安庁のための機能を強化した港湾を例えばアメリカ軍から使用要請があった場合は、これは拒否できるんでしょうか。外務省にお聞きします。

○政府参考人(外務省大臣官房参事官 宮本新吾君) お答え申し上げます。
 一般論として申し上げますと、日米地位協定第五条に基づきまして、合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入りすることができるということになっております。
 ただし、実際の使用に当たりましては、米軍は、民間機や民間船舶等による使用への影響が最小限にとどめられるよう、関係当局と所要の調整を行うということになってございます。

○紙智子君 民間との調整という話ありましたけど、今の答えでいうと、やっぱり地位協定五条でもって拒否できないということになるんだと思うんですね。利用料を払わないで使えるということでもあるんですけれども、この機能を強化した港湾を米軍も使用することが可能になるということだったと思います。
 それで、特定利用港湾、これ、平素の訓練を目的にした施設整備ということなんですけれども、特定公共施設利用法、いわゆる武力攻撃事態法が発動された場合どうなるのか。総理の判断でこれ自衛隊などが優先して利用することが可能になるんだと思うんです。ですから、まさに有事になったらどうなるか、特定利用港湾が相手国のミサイル攻撃の目標になるんじゃないかという不安を住民の皆さんが持っているわけなんですけれども、そういう不安の声に、大臣、どのようにお答えになるでしょうか。

○国務大臣(国土交通大臣 斉藤鉄夫君) 繰り返しになりますけれども、今回の取組は、総合的な防衛体制の強化の一環として、自衛隊、海上保安庁が必要とする空港、港湾を平素から円滑に利用できるよう、インフラ管理者との間で枠組みについて確認ができた空港、港湾を特定利用空港・港湾としておるところでございます。
 この円滑な利用に関する枠組みが設けられた後も、自衛隊、海上保安庁による平素の利用に大きな変化が起こることは想定しておらず、そのことのみによって当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとは言えないものと承知しております。むしろ、自衛隊、海上保安庁の航空機、船舶が必要な空港、港湾を平素から円滑に利用できるように政府全体として取り組むことは、我が国への攻撃を未然に防ぐための抑止力や実際に対応するための対処力を高め、我が国への攻撃の可能性を低下させるものであり、ひいては我が国国民の安全につながるものと、このように承知しております。
 政府としては、このような考え方や取組について広く国民の理解を獲得するよう努めてきたところであり、引き続き丁寧な説明に努めてまいりたいと思います。

○委員長(青木愛君) おまとめください。

○紙智子君 むしろ安心というか安全につながるというお話だと思うんですけど、いろんな考えの方々がいますし、やっぱり実態としては民間港湾の基地化につながるんじゃないかということも含めてこれありますから、やっぱり軍事利用に使われないようにしてほしいという、そういう広く住民の思いはしっかり受け止めていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。