<第213回国会 農林水産委員会 2024年3月25日>


◇自民党の裏金事件は「肝心なことが何一つ解明されていないと批判し、経緯を知るキーパーソンである森喜朗元首相の聴取、証人喚問を要求/能登半島地震・津波被害で農林漁業に甚大な被害が発生/農業と漁業の復興は観光にとっても重要だと指摘し、農業では水の確保を急ぐこと、漁業では県管理漁港と市町村管理漁港の復旧は差を付けずに進めるよう求め、岸田文雄首相は「差はでない。スピード感を持って取り組む」答弁。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、裏金問題で総理に伺います。
 衆参の政倫審が開かれました。しかし、いわゆる安倍派五人衆と言われる安倍派の幹部議員は、収支報告書不記載について、昨年秋から暮れにかけて報道されるまで知らなかったと口をそろえました。
 そこで、ちょっとパネルを見てください。(資料提示)
「聴き取り調査に関する報告書」より
これは、自民党が二月十五日にまとめた「聴き取り調査に関する報告書」の一部です。当時から還付金等を認識していた者三十二名、そのうち収支報告書に還付金等の記載がないことを認識していた者十一名、いずれも安倍派の所属です。
 十一名もの安倍派の議員が不記載を認識していたと回答しているのに、政倫審に出席した安倍派の幹部のみんな、これ報道されるまで知らなかったと言っている。総理、これおかしいと思いませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、政倫審、我が党の十名の国会議員が衆参の政倫審で弁明を行いました。それに先立って検察の捜査も行われ、そして報告書の修正、会見、また自民党自身も聞き取り調査を行ってまいりました。
 私としては、現時点において、この検察の事実認定を覆す材料、あるいはこの全議員の説明が虚偽であると断定できる材料は持ち合わせておりません。
 引き続き、党としても聞き取り調査を行っていきたいと考えております。

○紙智子君 おかしいと思わないかと聞いたんですよ。おかしいと思わないんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今申し上げたように、その弁明を覆す材料は、私自身は今現在持ち合わせておりません。
 引き続き、聞き取りを行いたいと思います。

○紙智子君 全然答えになっていないですよね。見ている人はみんなおかしいと思っているわけですよ。
 この十一人については、総理として、政倫審に出席して説明するように促すことを求めたいと思います。
 裏金問題で肝腎なこと、何一つ解明されていないと思うんです。一つは、裏金システムが、いつから、誰の指示によって始まり、何に使われたのか。二つ目は、参議院選挙のときは全額キックバックという参議院独自のやり方、これが、いつから、誰の指示で始まって、選挙に使われていなかったのかということ。そして三つ目に、安倍派の幹部がキックバックはやめることを決めたのに復活をしたと、これ誰の判断で継続されたのか。この肝腎なことが何一つ分からないわけですよ。
 だから、各メディアの世論調査では、政倫審で派閥の幹部らが十分に説明したと思うかという問いに対して、八、九割が思わないと回答しているわけですよね。
 総理、党としてこの処分を検討しているということですけれども、疑惑の解明が不透明なままで、一体何を基準に処分するんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 検察の捜査によって法律的な責任は追及されたわけでありますが、関係者は政治家であります。法的な責任だけではなくして、政治責任、道義的責任があると我々は考えています。そのために、引き続き事実解明を続けていきます。
 そして、事実解明を進めながらも、この政治責任について党としての判断を行う、これは適切なタイミングで行っていかなければならないと考えております。こうした取組を進めるために事実解明も続けてまいります。

○紙智子君 同じ答弁ばっかり繰り返さないでほしいんですよね。
 それでね、これ、実際何を基準かということさえも言わないと。処分のためにアリバイづくりの聞き取りをやるんであってはならないと思うんですね。真相解明のために行うということであれば、これ、裏金問題の経緯を知るキーパーソンと思われる森喜朗氏からもしっかり聴取するということを約束していただきたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 党として追加の聞き取りを今予定しております。対象あるいはやり方について今調整を行っているところであります。事実、多くの国民の関心に、関心事に応えるために、このやり方について適切に判断いたします。

○紙智子君 すごく曖昧な答弁なんですよね。
 三月十五日、この場で我が党の小池晃氏の質問に対して、事情聴取の関係者に森氏は入ると答弁されているんですよ。答弁されていましたよ。ですから、ちゃんと答弁を、答弁じゃなくて、その中に聴取するということをしていただきたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 私は、今回の件の関係者のお一人であるということを申し上げました。その上で、関係者に対してどのように対応するか、これを判断いたしますと答弁したと記憶しています。

○紙智子君 逃げちゃ駄目ですよ。もう逃げですよ、それは。ちゃんと答弁、答えているわけですよ。政倫審では真相が解明できなかったと。ならば、うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問こそが、これ、最良の方法ですよ。
 政倫審に出席した安倍派元幹部、森喜朗元総理、そして松本淳一郎元安倍派の事務局長、この証人喚問について自民党総裁として実現を決断すべきです。いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 党としては、先ほど申し上げたように、事実確認を続けてまいりますが、その中において、今委員の方から証人喚問ということであります。証人喚問については、今日まで政倫審を始め国会でのこの弁明や議論等を踏まえた上で、この国会での日程等もしっかりと頭に入れた上で、行うべきかどうか、これについて国会において判断すべき課題であると考えます。

○紙智子君 先日のNHKの討論でも、結局、自民党、公明党さん以外は証人喚問で一致しているわけですよ、野党は。公明党は、自民党の判断を待ちたいと。ですから、これ、岸田総裁がやると決めれば実現できるわけですよ。やるべきですよ。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) これは、国会のこの現場において、今までの議論を踏まえた上で、やるべきかどうか、これを判断するものであると考えております。

○紙智子君 本当に、すぐ最後には国会でと言うんですけども。
 委員長、今挙げた方々の証人喚問の実現についてお取り計らいをお願いしたいと思います。

○委員長(櫻井充君) 後刻理事会で協議させていただきます。

○紙智子君 次に、石川県の能登半島地震、津波被害についてお聞きします。
 私は、三月の五日から七日まで、能登半島の能登町、それから珠洲市、七尾市、輪島市に行きまして、農業や漁業の現場で話を伺いました。お会いした農家は、住む家が倒壊し、避難している方も多いと、用水路や農地の被害の全体像は把握できていないし、行政もそこまで手が届かないと言われました。漁業は、冬は加能ガニ、ノドグロ、能登寒ブリ、そしてイカ、春からはメバル、サワラ漁も始まるけれども、一月の水揚げはゼロと、ほとんど変わっていないと、収入のめどがない漁師も多いというふうに言われました。
 石川県能登の魅力というのは、何といっても、やはり新鮮でおいしい海の幸、お米、山の幸です。農業と漁業の復興は観光にとっても重要だと思います。被災された皆さんが希望を持ってなりわいを再生するためにも、スピード感そして中身のある復旧が必要ではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 農業、漁業、これは能登半島の基幹産業であります。また、世界農業遺産に登録された里山里海、これは能登地方の誇りでもあります。日本の宝でもあります。
 私自身、先月二十四日、輪島市に赴き、白米千枚田の被害状況、また基盤隆起等の被害が甚大な輪島港、これを視察するとともに、被災された農業者や漁業者の方々からスピード感を持った復旧の必要性等を伺い、早急な復旧となりわい再開支援に取り組む思い、これを改めて強くしたところであります。
 営農再開に向けては、この春の作付け時期を見据え、農地や水路などの応急復旧を早急に図り、育苗の調整等、この支援を加速してまいります。
 また、漁港、漁場のこの早期復旧に向けては、国による直轄代行工事のほか、地盤隆起により航行できない漁船のサルベージ船活用による移動、これを進めています。
 今後とも、被災された農林水産業者の方々に寄り添いながら、魅力ある能登の復活に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。

○紙智子君 先の方まで答えていただきましたけど、農家は春になって田植が始まって緑が生えてくると元気になると言われます。で、急がれるのが水の確保と。
 能登町の農家は、県道が崩れて、その下にある幅三メートル前後の農業用の水路が破損して水が流れなくなっていました。約百戸の生産者が影響を受けると聞きました。輪島市では農地ののり面や用水路が壊れて、ため池の多い七尾市でも水の確保が急がれます。
 当面、この仮設のパイプラインの設置とか河川から水を引くポンプアップなど対策が急がれます。田植に間に合うように急ぐべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 現在、農林水産省では、延べ七千七百人に及ぶMAFF―SATを現地に派遣をいたして、それぞれに相談を受けております。
 そして、災害復旧事業におきましては、今春の作付けに間に合うように、査定前着工制度を活用して、そして農道や用水路等を応急復旧することが可能であります。
 農林水産省としても、できる限り多くの農地で今春の作付けが行われるよう、引き続き査定前着工制度を活用して早期復旧を図ってまいります。

○紙智子君 もう一つ、これ、田植のためには苗の確保が必要で、三月二十二日の政府の本部会議で岸田首相は育苗の調整の支援を進めていただくというふうに言われています。
 この苗の支援にも乗り出すということでよろしいんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 田植、大体五月の上旬というふうに聞いております。育苗が一か月は必要でございますので、三月末までにはひとつ判断をして、しっかり苗の育苗ができるようにしていきたいと思います。最大限、リミットで六月上旬ということも言われておりますので、そういうことを見計らいながら、苗に無駄がないように、しっかりと作付けが間に合うようにしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 能登町と輪島市の漁港にも行ってきたんですが、総理も輪島港と朝市の現場に行かれたと思うんですね。輪島港では、海底が隆起して船を出せる状態ではありませんでした。漁港は二メートルから四メートル隆起していて、船は水深が二・五メートル以上ないと浮かばないと。それで、海底が隆起したために〇・七とか〇・八メートルしかないということで、潮の満ち引きや波によって、この船底、船底がエンジンとか岩に当たって破損している可能性があるということでは、船を持ち上げて調べて、損傷がなければしゅんせつして深くなったところから入れるんだという話でした。
 それから、小木港の方は日本三大イカ釣り漁港ということで、隣は九十九湾があるんですけれども、こちらの方は二メートルを超える津波で小型のイカ釣り船が転覆をし、多くの小型船も転覆をし、流出する被害を受けています。
 県が管理している漁港というのは国が代行してこの災害復旧事業を進めるようなんですけれども、市町村管理の漁港は国が代行する仕組みになっていないんですね。で、市町村が管理する漁港の復興が遅くならないかどうかと、この支援の差が出ないかということが心配されていたので、先日、農林水産委員会で質問したときに、坂本農水大臣が差は出ないというふうに言われたんです。
 それで、総理も、人も業者もそれから資金もこの県の管理漁港と同じように支援するということでよろしいですかね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の農林水産大臣の答弁と私も同じ考えであります。
 能登半島の漁港の復旧については、県管理漁港か市町管理漁港かを問わず、地元の方々のニーズを踏まえつつ、水産庁職員による技術支援、県外の自治体等からの人的支援を行うとともに、激甚災害指定に基づく手厚い財政支援を行っています。今後も適切にこうした支援を進めます。
 県管理漁港でも市町管理漁港でも、地元の方々のニーズを踏まえて必要な復旧が迅速に実施できるよう、スピード感を持って取り組んでまいります。

○紙智子君 当面の生活の支えになる支援も必要だと思います。
 総理が行かれた輪島にはかなり海女さんがおられるんですね。素潜りでサザエとかアワビを捕って生活をされていて、これ海に潜れなければ収入はゼロということです。
 総理は記者会見で、漁場の調査活動支援、これを開始しようと思いますと言われました。この素潜りが得意な海女さんは漁場の状況を調査するには適任だというふうにも聞きました。もちろん、海女さんだけではなくて、復旧復興の仕事で被災者の力も生かして、被災者自身の生活の糧ともなる対策を求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 被災者支援パッケージの中で、を取りまとめまして、現在、被災された農業者そして漁業者への必要な支援を行っております。
 まず、農業者の方々に対しましては、多面的機能支払交付金、それから中山間地域の直接支払交付金などを活用いたしまして、自力で施工をされる方は自力で施工をして、そしてその復旧作業に対してこの交付金制度を活用していただきたい。それから、農業法人の方が被災農業者を一時的に雇用して作業に従事させ、あるいは研修をしていただく、そういった方々に対しても月十万円、年間百二十万円の支援を行うところでございます。
 それから、漁業者の皆様方に対しましても、調査、漂流あるいは堆積物の除去、さらには漁場環境改善のための活動等への支援を行っております。今委員の方から御指摘がありました、漁業再開までの間の海女さんの皆さん、海女の皆さんたちによる漁場環境調査を行っていただきますと、それに対しても支援をしてまいるということにしております。

○紙智子君 是非よろしくお願いしたいと思います。
 それから、東日本大震災のときもそうでしたけれども、自宅の再建やなりわいの復旧をするにしても、マイナスからの出発なんですよね。それで、今の制度で手が届かないところをどう支援するかということで、東日本大震災のときには自治体で自由に使える取崩し型復興基金がつくられました。熊本地震のときもつくられました。
 そこで、総務大臣にお聞きするんですが、この基金はどういう趣旨でつくられ、どんな制度なのか、説明お願いします。

○国務大臣(総務大臣 松本剛明君) 御質問に御答弁申し上げたいと思います。
 東日本大震災の際には特定被災地方公共団体である九県に、また熊本地震の際には熊本県に、復興基金が設置されました。この復興基金は、極めて大きな災害が発生し、復興に相当な期間を要すると見込まれ、各年度の措置では対応が難しい場合に、個別の国庫補助を補い、国の制度の言わば隙間の事業について対応する例外的な措置として実施されたものでございます。
 復興基金の使途については、今申し上げた基金の趣旨を踏まえ各県において判断することとなっておりまして、東日本大震災や熊本地震の復興基金につきましては、被災者への生活支援対策、利子補給等の住宅対策、中小企業への支援などの産業対策、教育、文化の振興や震災の記録、広報等といった事業に活用されていると承知をいたしております。

○紙智子君 とても有効にこれ活用されたんだと思うんですよ。
 総理は現地に入られて、じかに被災地を御覧になられました。この取崩し型復興基金、私、先週の農林水産委員会でも質問しまして、このときに坂本農水大臣は、この意見を受けて、財政当局とも話し合うという趣旨の答弁をしてくださいました。
 そこで、総理、是非とも、この国庫補助で対応できない支援、今隙間というような話ありましたけれども、自治体が自由に使えるこの基金を創設していただきたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) ただいま総務大臣から答弁がありましたように、この復興基金、国庫補助を補い、国の制度の隙間の事業について対応するために実施してきたものであります。ですから、まずは今の段階では、国による支援、これをいかに充実させるか、いかにスピード感を持って取り組んでいくか、これがまず第一であると思います。その上で、国庫補助等を補う隙間の事業に対する対応をする、こういった観点から復興基金の必要性について適切に判断をしてまいります。
 過去の地震の例を挙げられましたが、熊本地震の際には、四月二十六日発災して、十月十一日に復興基金設置のための補正予算が成立する、こういったスケジュール感で補正を、復興基金についても対応しております。

○紙智子君 スピード感と言っているわけですから、まず国がやってからじゃなくて、やっぱりこういうのが打たれると現場は安心しますよ。是非やっていただきたい。
 それから次に、農政について質問します。
 今年は農業基本法の見直しの年です。
 日本の食料自給率が三八%と、農地や生産者が急激に減少しています。それで、パネルを見ていただきたいんですけれども、これ基幹的農業従事者、専業農家というのは二十年間で約百万人減っている、耕作面積は五十万ヘクタール減少しているわけですよ。農水省は、この後二十年後のことを言っていまして、二〇四〇年の専業農家というのは三十万人になると想定しています。三菱総研は、二〇五〇年の米の生産量は最悪二百九十一万トンに半減すると推定しているわけですね。
生産基盤の推移と日本が締結した貿易協定
 総理、これ、この後も人が減って、米の生産も激減すると。これ、日本も食料危機が現実味を帯びてきていると思いませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) ちょっと冒頭、先ほどの答弁で、熊本地震の発災日、四月二十六日と申し上げたようですが、正確には十六日でありました。訂正をして、おわび申し上げます。
 その上で、今の御質問についてですが、農業者の減少、高齢化、さらには農地面積の減少など、国内の食料供給基盤の弱体化、これは危惧されています。ウクライナ情勢に見られるこのサプライチェーンの混乱、あるいは気候変動による世界的な不作の頻発など、世界的に食料需給は不安定なものになっています。その中で、我が国において食料危機の到来とならないよう、食料安全保障の強化、これは待ったなしの課題であると認識をいたします。
 こうした認識に基づいて、今国会提出している食料・農業・農村基本法の改正案においては、食料安全保障の確保、これを基本理念に位置付けております。そして、これを実現していくために、米の消費量の減少を踏まえて、需要に応じた生産を図りつつ、過度に輸入に依存している麦、大豆等の国内生産の拡大を一層後押しするとともに、担い手の育成、確保を図りながら、スマート技術の導入や農地の集積、集約による生産性の向上を図り、持続可能な農業を実現していく、これが政府の方針であります。

○紙智子君 なかなか危機感が感じられないんですよね。本当に何か大丈夫だろうかと思うんです。
 農家や農地の減少になぜ今まで歯止めが掛かっていないのか。これ、決して自然現象なんかじゃありません。農産物の取引を自由な市場取引に任せて、価格の下支え、農業の再生を保障する仕組みをなくしてきたからです。輸入自由化で安い外国産が入れば、国産の農産物が買いたたかれます。これ、政治の責任は極めて大きいと私思うんですね。
 生産者は何と言っているか。米作って飯食えないと言っているんですよ。それから、農業法人協会会長が、若い人が何で定着しないかといえば、農業で食えなくなっているからだと語っています。
 そこで、もう一つパネルを見ていただきたいんですけれども、
稲作経営の時間当たりの農業所得
これ稲作経営の時間当たりの農業所得です。農業所得は、二〇一五年が五百九十二円、そして二〇二〇年は百八十一円、二一年と二二年は連続して十円、ちょっとこれびっくりするんですけど、たった十円と。
 五百九十二円が百八十一円に下がった理由、百八十一円が十円に下がった理由を説明してください。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 二〇二二年の水田作の経営の一経営当たりの農業所得を単純に労働時間で割って算出いたしました一時間当たりの農業所得は十円と低い水準になっておりますが、しかしながら、この結果は、採算抜きで自分たちで作る、自家消費のために作るなどの小規模な経営も含めた全ての水田、水田作経営体の平均値であります。ですから、経営状況について様々な経営体の実態を踏まえて見ていく必要があるというふうに考えております。
 例えば、水田作経営のうち農業の所得が主である主業経営体で見ますと、一時間当たりの農業所得は平均で六百九十九円、さらには、水田作付面積が二十ヘクタール以上の層につきましては、直近の統計値である令和三年におきましては千八百七十七円というふうになっております。
 このように、経営規模の拡大に伴いまして生産性が向上し、収益の向上も顕著に見られるというところであります。(発言する者あり)

○委員長(櫻井充君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(櫻井充君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 下がった理由につきましては、統計の取り方が変わりました。交際費とか様々な経費、これを含めて計算するようになりました。それは、農家の方々が、やはりいろんな手順を簡素にする、そういう簡素にして届出しやすくする、そういうことで統計の手法を変えたということでこのような状況になっておりますが、十円になっているのは先ほど御説明したとおりであります。

○紙智子君 あのね、総理、いろいろひっくるめてやると十円なんだって言うんだけれども、それにしたって十円は低過ぎると思いませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) その十円になったことの理由は今農水大臣からありました。統計の取り方等であるという答弁があったわけですが、その十円自体については農水大臣のその前の答弁がその答えであると思います。
 要は、この自家消費を主とする小規模な経営体を含めた全ての水田、水田作経営体の単純平均を行った、自分で消費するこの農家の分も含めてこの単純平均を行った、このことによって十円になったという説明、それが前の前の答弁の答えであったと思っています。

○紙智子君 十円についてどうかということをおっしゃらないんですけど、全部ひっくるめて、小さい自家農家も含めてにしても、それにしても十円って低くないかというふうに私は聞いたわけですよ。
 さっき農水大臣が答えて、いや、専業の農家はもっと高いんだよと話されたんだけど、それだって決して高くなんてないんですよ。二〇二〇年のときには九百十八円だったのが、二〇二一年に八百十九円になって、二〇二二年は六百九十九円と、どんどん下がってきているわけですよ。
 労働者は、最低賃金で今千五百円実現を求めているわけですね。総理は、労働者の賃上げは必要だって言われているわけですけれども、これ農家の手取りどうやって上げるんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほどの農水大臣の答弁の中でも、経営規模の拡大に伴って生産性が向上し、収益性の向上が見られる、こういった答弁がありました。
 だからこそ、農地の集積、集約化等によって経営規模の拡大を図るとともに、スマート農業や省力栽培技術の導入により生産コストの低減を進めて、水田経営における農業所得の向上を後押ししていくことが重要であると認識をしています。

○紙智子君 生産者に対してまともな支援がなかったから十円になったんじゃないですか。
 パネルをもう一つ見てほしいんですけれども、これ、二〇二一年の各国の農業関係予算に占める直接支払などの割合です。EUは七二・七%、英国は六八・三%、フランス四八・四%、ドイツ三三・九%に対して、日本は二八・〇と最も低いわけですよ。
 これ、直接支払など、もっと抜本的に増やすべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 日本の場合には、直接支払という概念、それからEUの直接支払という概念は少し違いまして、そこで示されております二八・〇%、EUでは入っているけれども、日本の場合には、例えばインフラ整備の財政措置あるいは農業基盤整備や集出荷施設などの財政措置、そういったものは入っておりませんので、トータルで見れば、日本の直接支払というのは欧米と変わらない、あるいは欧米よりも多いというようなことがデータとして表されております。

○紙智子君 そうですかね。私はそう思わないんです。
 日本では、生産農家に米を作るなと言いながら、外国からは米の輸入を続けているわけですよ。パネル、もう一つ見てください。
ミニマムアクセス米(MA米)の入札結果と国産米の平均取引価格
 二〇二二年のミニマムアクセス米の入札結果なんですけど、国産米の平均価格、これが一万二千七百十一円なのに、アメリカ産の輸入の価格は一万四千三百三十五円と。一方、高く買って安く国内で売るものですから赤字が膨らんでいるということで、その表の下見てほしいんですけど、例えばMA米を飼料用に販売すると、トン当たり七万円の赤字、五十万トンでやれば、これ合計赤字は三百五十億円。援助用はどうかというと、トン当たり十二万円の赤字で、五十万トンだったら合計六百億円と。それが、矢印のように、一九九五年から二〇二一年の累計で五千六百七十七億円。二〇二二年、更に六百七十四億円増えているわけです。
 国内の生産者は米価が下がってこれもう続けられないよと悲鳴を上げているときに、輸入米については赤字を続けながら相変わらず七十七万トン続けているわけです。この赤字をどう減らすんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 米のこのミニマムアクセス米につきましては、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意に伴いますこれ約束事でございます。その中で、米のミニマムアクセス導入に伴う転作の強化は行わないと閣議了解を踏まえた上で、ミニマムアクセス米が国産米の需給に影響を与えないように国家貿易として管理をしているところであります。
 そういう中でも、農林水産省といたしましても様々な努力をしておりまして、ミニマムアクセス米を加工用や新たな仕向け先の開拓、そういったものに努めております。それから、保管、輸送、販売、管理業務などは民間に委託をいたしまして、ひところは二百六十五億円の保管料があったんですけれども、現在は百億円というような、やはり保管管理料の努力もしているところでございます。
 その中で、令和四年度のミニマムアクセス米の損失額が六百七十四億円となりましたが、その理由は、主産国の干ばつ等によります国際相場の高騰や円安等の影響により買入れが、買入れ費が増加したということであります。ミニマムアクセスは大体アメリカ米とそれからタイ米、まあ半々でございますけれども、特にアメリカが干ばつで暴騰したというのが、赤字がこのときは膨らんだという理由でございます。

○紙智子君 赤字の話ししましたけど、赤字をなくすというのは言えなかったわけですよね。
 MA米というのは義務ではないわけですよ。輸入機会の提供だということは政府も認めているわけです。だから、中国とか台湾、韓国などほかの国も、国家貿易だからといって全量入れているわけではありません。何で日本は七十七万トン続けるのか。それは政府の統一見解があるからだと思うんですね。
 もう一度、パネルの一番下の欄を今度見てください。
 MA米の国内需要量に対する割合ですけども、関税化になった二〇〇〇年の国内の需要量は九百十二万トンだった。このときのMA米七十七万トンの割合が八・四%。二〇二〇年の需要量七百四万トンは一〇・九%。農水省の推計でも二〇四〇年の需要量は四百九十三万トンに減るとしていて、MA米輸入しますと一五・六%になるんですよ。それでもですね、それでも七十七万トン入れ続けるつもりなんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) このミニマムアクセス米は、ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の中で、従来の輸入がほとんどなかった品目について最低限の市場参入機会を与える観点から、農業分野以外の分野も含む全体の一つのパッケージとして、全ての加盟国の合意の下に設定されたものであります。
 もし、これの合意を見直そうとするならば、WTO加盟国の百六十四か国、この全ての地域に、あるいは加盟国に確認を求め、反対がないことをやっぱり確認する必要があります。その代わりに、どういう条件をまた突き付けられて、結果的に日本の国益が大きく損なわれるということも考えられます。
 そういうことで、しっかりとそこは約束事としてミニマムアクセス米の輸入は果たしていかなければならないということであります。

○紙智子君 全くもう理解できないわけです。政府統一見解をやめればいいんですよ。だから、WTOのパッケージに手を付けろと言っているわけじゃなくて、政府の統一見解で勝手に厳しくやってきたわけだから、それをやめればいいと。もう一九九五年からですからね。もう半世紀にわたってこういうやり方を続けるのかというのは、本当にもう不思議な話であります。
 ちょっと時間なくなりましたけども、最後に、私たち日本共産党は食と農の再生プランを提案しています。柱が四つあるんですけども、四つ全部言えないので、その四番目のところの一つだけちょっと質問したいと思うんですけども、農林水産予算の削減をやめて増やすことということで、このパネルを御覧いただきたいんですけど、これ防衛予算と農林水産予算の推移です。
農林水産予算と防衛予算の推移
 一九八〇年当時、防衛予算が二兆二千三百二億円、そして農林水産は三兆五千億、これもう逆転してしまって、完全にですね、今防衛予算の方がもう三倍にも膨れ上がっているわけで、今本当にその食料の安全保障ということが焦点になっているときに、日本の農林水産の予算を抜本的に増やすことこそ、政府は果たすべき責任じゃないかということを一言。

○委員長(櫻井充君) 時間が参りました。一言でお願いします。岸田内閣総理大臣、時間内でお願いします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) はい。一言でということですが、令和六年度の農林水産関係予算、これについても令和五年度予算を上回る二兆二千六百八十六億円を計上するとともに、この令和五年度補正予算により前倒しで対応しています。
 こうした予算を活用して、実践的な農林水産政策、これを展開していくことが重要であると認識をしております。