<第213回国会 農林水産委員会 2024年3月21日>


◇「能登半島地震・津波被害への支援」と「食料自給率の検証」

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 大臣所信の冒頭にもありますように、能登半島地震、津波被害についてお聞きをしたいと思います。
 一月一日に震度七を記録した能登半島地震から、二か月半じゃなくて、あと十日で三か月になるわけですけれども、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 人命が優先されますけれども、三月に入って今年の苗作りが始まりますので、基幹的産業である農業の復旧も急がれます。
 三月上旬に私も能登半島に行ってまいりました。住む家が倒壊し、避難されている農家が多く、連絡が取れないということから実態把握も進んでいないということですけれども、分かっているだけでも、用水路やため池が壊れて、今年の作付けの見通しが立っていません。把握している範囲で、農地被害が七百六十一か所、そのうち珠洲市、輪島市、能登町、穴水町で石川県全体の約七〇%を占めています。用水路の被害は千百四十五か所、珠洲市が三百七十三か所と一番多くて、志賀町、そして能登町、輪島市で百か所を超えています。
 訪問した能登町では、県道が崩れて、その下にある幅三メートル前後の農業用の水路が破損し、水が流れなくなっています。資料でお配りした写真のブルーシートのところです。その壊れた下に流れていたのが止まっていると。約百戸の米農家に影響すると聞きました。その下の河川の写真なんですけれども、輪島市でも川ののり面が崩壊をして、水を取る取水口から用水路が崩壊し、その地域では田植ができる状態ではありませんでした。例年よりも田植が遅れても、五月末頃までには水を確保したいというふうに言われました。
 水を確保するためには、当面、仮設パイプラインを設置するとか河川から水をポンプアップするなどの対策が急がれるというふうに言われております。これをめぐってはどのような支援策があるのか、まずお聞きしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
 今般の地震によります農地、農業用施設の被害につきましては、これまで延べ七千五百名以上のMAFF―SATを現地に派遣し、被災自治体や関係団体等と連携して被害の状況把握や応急対策等を行っているところであります。
 災害復旧事業におきましては、営農再開に必要な農業用水を確保するため、査定前着工制度を活用いたしまして、仮設水路でありますとか仮設ポンプ等を応急的に設置することが可能であり、被災自治体等と連携いたしまして、既に仮設ポンプの確保等にも取り組んでいるところであります。
 農林水産省といたしましては、引き続き、査定前着工制度を活用した応急工事につきまして、被災自治体への周知を図ってまいります。

○紙智子君 まあ査定前着工を活用してということで、既に始まっているということなんですけれども、急がれていると思います。
 それから、ため池の被害が全県で三百十一か所、特に多いのが七尾市、輪島市、珠洲市で、全県の七〇%を占めているといいます。ため池から水を確保している地域が多く、七尾市では一集落に一つはため池があると聞きました。ため池の修復が一つ、一か所というか、二億円とかですね、非常にお金が掛かるということで、農家負担は僅かだといっても、生産者の数で割ると結構な費用になるということなんですよね。修繕するのか、それとも諦めるのかと、こういうことでなかなかまとまらないという状況もあるというふうに聞きました。
 踏み込んだ支援が必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 長井俊彦君) お答えいたします。
 被災したため池などの災害復旧におきましては、国庫補助率がかさ上げされ、高い補助率が適用される仕組みとなっており、今般の能登半島地震のように激甚災害に指定された場合には国庫補助率が更にかさ上げされます。また、補助残につきましては、農家に負担を求めず地方公共団体が全て負担することも可能であり、地方公共団体が補助残を負担する場合には地方財政措置が適用され、地方公共団体の実質的な負担が低減されます。
 農家負担の軽減が図られますよう、このことにつきまして被災した地方公共団体等への周知に努めてまいります。

○紙智子君 河川が低くて湿地地帯が多い地域では、このため池というのが非常に重要な役割を果たしているということなんですね。是非踏み込んだ支援を求めたいと思います。
 それから、水を確保して、次は水田に水を張るということなんですけど、しかし、この水田に亀裂や水漏れがあれば水は張れないと。生産者が自ら修理できるところの支援も必要だというふうに感じてきました。
 東日本大震災の支援の事業に被災農家経営再開支援事業というのがありました。水田作物の支援単価や復旧作業の事例について、ちょっと説明をお願いしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答えいたします。
 被災農家経営再開支援事業は、東日本大震災において、津波等の被害に、影響によりまして平成二十三年度以降の農作物の作付けが困難になった農地のうち、共同で復旧作業を行う場合に面積に応じて経営再開支援金を交付する事業でございます。
 支援単価なんですが、十アール当たりで、水田作物が三・五万円、露地野菜が四万円、施設野菜が五万円、果樹が四万円となっておりますが、公共事業によらず自力で施設の撤去等を行う場合、露地野菜で七万円、施設野菜で十四万円、果樹が九万円となっております。
 具体的な復旧作業として、農地や農地周辺のごみや礫の除去、水路や農道の補修、土作り等を行う取組に対して助成が行われたところでございます。

○紙智子君 ありがとうございます。
 それで、大臣、この今お話、説明あった東日本大震災の支援というのが今回の能登でも必要じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 東日本大震災におきましては、津波等の影響によりまして広大な範囲で平成二十三年度以降の生産を断念せざるを得なくなった農地、そして倒壊した畜舎、こういったものが数多く発生をいたしました。
 震災関連被害が広範囲に及んだことから、農地等の復旧に当たる事業者等の確保が当面困難な状態ということにありました。また、農地や水路の補修に加え、津波による漂流物の除去も要したことから、事業者等が確保されるまでの間も復旧の取組を進めるため、地域において共同ごみや礫の除去等の取組に対し助成を行い、地域農業の再生と早期の経営再開を図ることとしたものです。
 一方、能登半島地震においても、相当な範囲及び程度で被害が発生をしていますが、東日本大震災と比較をいたしますと、津波被害や地震による重大な被害が能登半島に集中しており、能登以外の事業者にも協力をいただきながら復旧を進めていくことで、早期の営農再開につなげるべく支援パッケージを取りまとめ、必要な支援策を措置をしているところでございます。
 今般の震災におきましても、復旧作業に係る技術力を十分に有している農業者におきましては、多面的機能支払交付金や中山間地域等直接支払交付金などを活用いたしまして、自力施工で農業者が直接必要な施工を実施すること等も可能としているところでございます。
 さらに、農業法人等が被災農業者を一時的に雇用して作業に従事させ、研修する場合にも支援をするということにしております。これは、月十万、年間百二十万というような支援額でございます。
 地域や経営の事情に合わせて適切な復旧が速やかに進むよう、農林水産省といたしましても、現場への周知を図るとともに丁寧に相談に乗ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 何とかやっぱり作付けにこぎ着けたいという思いでいっぱいでいるわけで、そういう生産者の支援を求めたいと思います。
 それから、三月に入りましたので、苗作りが始まります。生産者は、苗を植えて田んぼの緑が生えてくると元気が出てくるという話もありまして、石川県で米の品種で有名なひゃくまん穀とか能登ひかり、この苗を備えておくことが必要だと。まだちょっと見通しが立っていないんだけれども、とにかく自分のできるところからということで、苗の準備をしなきゃいけないということで注文しようとしているんだけども、苗を買っておいても余った場合どうしようということで悩んだりしているということもあります。
 余ったときはやっぱり支援策も検討していただけないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 稲作などの地域農業を支える方々の農業再開につきましては、能登は五月上旬からの田植期に向けて、農業者の御意向を確認した上で、水張りが可能かどうか、そして圃場の被害状況を確認した上で、必要な苗の確保等をスピード感を持って進めることが肝要と考えております。
 このため、農林水産省では、先ほど事務方からも言いましたように、地震による農地や水路、ため池等の被害につきまして、延べ七千人を超えるMAFF―SATを現地に派遣いたしまして、被災自治体や関係団体と連携をして被害状況把握や応急対策を全力で進めているところです。その上で、県、市町や農協等の関係団体と連携し、今年産に必要な水稲の苗の計画的な供給に努めてまいります。
 石川県内では、一般的に田植は五月上旬ですが、六月上旬まで遅らせることも可能と伺っております。六月上旬に田植を行う場合は五月中旬まで育苗の調整を行うことができるため、余った苗への支援は適当でないというふうに考えておりますが、五月上旬に田植をする分、それから六月上旬に田植をする分、そういうふうなことで、計画的に苗の供給を現地と連携をしながら進めてまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 パッケージの中にはこれ入っていないと思うんですけれども、是非ロスが出ないように、結局、先にやっていたけども使わないで捨ててしまったということにならないように、ロスがないようにちょっと調整をやっていただきたいと思います。
 次に、漁業ですけども、漁港は能登町、輪島市に行ってきました。資料に写真を載せています。
 日本三大イカ釣り漁港というふうに言われる小木港も、それから隣接する九十九港も二メートルを超える津波被害を受けていました。この地域はリアス式海岸になっていて、台風が来ても波が立たないで、しけのときは実は船の避難港になっていたという話も聞いて驚いたんですよね。
 しかし、津波はしけの波と違ってもう容赦なく打ち付けて、床下浸水が発生して、この小木港では、このひっくり返っている船のところがそうですけども、小型イカ釣り船がひっくり返り、それから、九十九港、九十九湾では小型船が転覆をすると、流出する被害が出ました。輪島港では、海底が隆起して船を出せる状態ではありませんでした。漁港が二メートルから四メートル隆起すると。
 船は水深が二・五メートル以上ないと浮かばないということなんですけど、海底が隆起したために、〇・七とか〇・八の漁港が結構あると。潮の満ち引きや波によって船底が、プロペラやエンジンが岩に当たって破損していると。だから、船を持ち上げて調べて、損傷がないかどうかと、なければしゅんせつして、この海岸のところをしゅんせつして、深くなったところから船を入れられるようにしたいということなんですけど。
 そこで、まず漁港の災害復旧事業についてお聞きするんですが、県管理の漁港もあれば市町村が管理している漁港もあります。県管理は国が災害復旧事業を代行して、自治体に代わって本格復旧を進めることになっているんですけども、市町村管理の漁港は代行する制度がないんですよね。国が代行した港湾の復旧は早いけれども、市町村管理の漁港は遅くなると、この支援に差が出ないかという声が出ております。差が出ないような対策が必要ではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 今回の地震では石川県の市町管理の、市と町の管理の六十一漁港のうち五十三漁港で岸壁の損壊等の被害が確認されております。農林水産省といたしましても、石川県及び関係市町への人的及び技術的な支援を現在も行っているところです。
 具体的には、一月以来、MAFF―SATとして水産庁の職員延べ十八人を能登五市町に派遣をし、災害復旧事業の円滑な実施に向けた助言を行うとともに、関係都道府県及び関係団体に協力を呼びかけ、派遣された各県等の職員が被災状況、あっ、六市町に、済みません、能登の、さっき私は五と言いましたかね、六の市町です、六の市町に派遣し、そして関係都道府県及び関係団体に協力を呼びかけて派遣された各県等の職員が被災状況調査を支援するなどの人的支援を行っているところであります。
 県管理と違って差が出ないかというようなことでありますけれども、これは激甚にも指定されておりますし、それから財政措置もしっかり付いております。そういうことで差が出ることはないというふうに考えております。
 そして、今、石川県下でも応急工事を開始している漁港、十六港のうち市町管理の漁港は十二漁港、もう既に復旧工事が始まっております。また、一部の地域では既に定置網などの操業も再開されており、引き続き、漁業の一日も早い再開に向けて、石川県や関係市町と、市町と連携をして漁港の復旧にスピード感を持って取り組んでまいります。

○紙智子君 隆起した漁港の復旧って本当に大変だと思って見ていたんですけれども、しゅんせつの作業、船の点検、修理を進めながら、漁を始めるための仮設の桟橋とか係留場所が必要じゃないかと思うんですけれども、これ支援策はあるんでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官  森健君) 水産庁、農水省では各漁港について予備費を活用した緊急調査ということで被害状況を把握するための詳細な調査を行っており、これを踏まえて、この結果を踏まえて仮復旧、本復旧という形で復旧作業を進めていく考えでございますが、その際、仮復旧に当たりまして、仮桟橋や仮係留施設の設置が必要となった場合には、これも災害復旧事業により支援することが可能でございます。

○紙智子君 確かに調査をしないと分からないというのがあると思うんで、調査しながら是非迅速に進めていただきたいと思います。
 それから、沈没、転覆した漁船や船外機が流出をして新潟に流れ着いた船もあって、これ、廃棄物として処理する支援が必要だと思うんです。で、東日本大震災の際に災害廃棄物処理したということなんですけれども、これ、環境省にちょっと説明をしていただきたいと思います。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 飯田博文君) お答え申し上げます。
 環境省では、倒壊した家屋等の解体を始めとする災害廃棄物の収集、運搬及び処分に対し、災害等廃棄物処理事業費補助金により市町村への財政支援を行っているところであります。
 事業活動に必要な漁船等の処理につきましては、原則として事業者が対応することとなりますが、津波等により損傷、沈没し、所有者が特定できない漁船等の災害廃棄物については、海岸保全区域外の海岸に漂着し、市町村が生活環境保全上の支障があると判断する場合には、災害等廃棄物処理事業費補助金の補助対象となり得るとしております。

○紙智子君 つまり、災害廃棄物を処理する補助金はあるということだと思うんです。
 で、大臣、是非、これは環境省と相談をしていただきながら是非善処していただきたいというふうに思います。お願いしておきます。答弁は要りません。
 漁船や漁具の買換えは、申請して許可を受けた後の発注では手に入れるまでの時間が掛かると思うんですね。さらに、操業を始めるまで時間が掛かると、収入が途絶える期間が長くなってしまうんですね。公共事業などの査定前着工のように、漁船を確保するために事前着手できる仕組みが必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官  森健君) 御指摘の共同利用漁船等復旧支援対策事業についての御指摘だと理解しておりますが、これは被災した漁業者のために協同組合等が行う漁船、漁具の導入を支援する事業というもので措置しているところでございます。
 この事業は、早期の復旧に着手した漁業者にも支援が行われるよう、発災した令和六年一月一日以降に着手、着工した場合であれば本事業の対象となるように措置をしているところでございます。

○紙智子君 事前手続はオーケーということですよね。
 被災した漁場の再生のために漂着物や瓦れきを撤去する必要があります。輪島には素潜りでサザエやアワビを捕る海女さんが活躍されてきていたんですよね。海に潜って漁場の状況を調査するにも適任だという話も聞きました。
 漁場復旧対策支援事業というのは、これ海女さんも活用できるんでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官  森健君) 御指摘の漁場復旧対策支援事業は、漁業者の生活を支えながら漁場環境を回復するために漁業者などが取り組む活動等へ支援を行うというものでございます。
 現在の石川県におきまして既に活動が開始をされているところでございますが、海女の皆さんによる漁場環境調査が行われる予定とも伺っているところでございまして、これらの活動に対しても支援を行うことが支援対象となると考えております。

○紙智子君 すごく助かると思います。
 今回の地震で海底が大きくずれた可能性があります。国土交通省に聞きましたら、地形の調査はしていないと聞きました。それから、水産庁も、漁場までは手が回っていないと聞きました。海底や漁場が変わって潮の流れが変化すると、これ魚の生息域も変わることがあるんだという話も聞きました。
 当面、だから試験操業にならざるを得ないというふうに言うんですけれども、これパッケージには支援策はないんですよね。これ必要じゃないかと思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官  森健君) 漁場復旧対策支援事業におきましては、漁業者等が行う海底地形や藻場等の環境変化に係る状況把握等、調査の活動も支援の対象としているところでございます。

○紙智子君 支援の対象になるということですか。ありがとうございます。
 それから、基金についてなんですけど、今日、総務省に来ていただいております。東日本大震災のときに取崩し型基金がつくられました。小規模農地や補助対象外の農林水産業の施設の復旧などの支援や苗木の購入支援が行われました。基金の使途や運用について、簡単に説明していただきたいと思います。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 濱田厚史君) お答えいたします。
 東日本大震災の際には特定被災地方公共団体である九県に復興基金が設置されましたが、復興基金は、極めて大きな災害が発生し、復興に相当の期間を要すると見込まれ、各年度の措置では対応が難しい場合に、個別の国庫補助を補い、国の制度の隙間の事業について対応する例外的な措置として実施するものであるという趣旨を踏まえ、基金を具体的にどのような事業に活用するのか、直営方式、財団方式等どのような運用をするのかについては各県において判断することとなっております。
 以上でございます。

○紙智子君 ありがとうございます。県の判断に委ねられるということだったと思うんですね。
 そこで、大臣、このパッケージを出されているんですけれども、今、東日本大震災で使ったことを参考にして、基金などの設置を検討したらいかがと、していただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 今後のことでもございます。しっかり御提言受け止めたいと思います。

○紙智子君 検討していただけるということでよろしいんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 財政当局との様々なお互いの話合いもありますので、農林水産省としてやるべきことを財政当局の方には訴えていかなければいけないというふうに思っております。

○紙智子君 ありがとうございました。是非、ちょっと実現をさせたいと思っています。
 最後に、食料自給率の問題についてお聞きしたいと思います。
 会計検査院が令和四年度決算検査報告の中で、総合食料自給率等の指標の検証状況を報告しています。総合食料自給率の目標年度についてどのように報告していますでしょうか。

○説明員(会計検査院事務総局第四局長 遠藤厚志君) 委員お尋ねの総合食料自給率等の指標の検証状況につきましては、基本計画等に示された指標の中には目標年度において目標を達成していないもの、目標と対比可能な実績を把握していないものなどが見受けられましたが、農林水産省は進捗状況を検証していたものの、目標年度における目標の達成状況を確認して、達成していなかった場合の要因分析をするなどの検証は行っていなかったことなどを報告しております。

○紙智子君 つまり、会計検査院は、検証は行っていないということを指摘したんですよね。これに対して農水省はどういうふうに答えているかというと、農林水産省は、総合食料自給率については、平成十六年に総合評価による政策評価を実施したものの、外交、経済等の様々な要因により決定されることがあることなどから政策評価の対象とすることができないとしたというふうに答えられたようなんです。
 そこで、この総合食料自給率について、外交や経済等の様々な要因により決定されるというのはどういう意味なのかなということをお聞きしたいと思うんですけど。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官  杉中淳君) この点について、より正確なやり取り等も踏まえて回答したいと思います。
 まず、食料自給率目標でございますけれども、これは農業者、食品産業事業者、消費者に係る幅広い問題でございまして、現行基本法でも農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めると規定しておりますように、広範な政策分野にわたる取組の組合せとして数値が出てくるものと考えております。一方、政策評価は、個別の政策分野単位ごとに測定指標及び目標を定め、その達成状況を評価するものでありまして、その組み合わせる大目標については政策評価の測定指標に位置付けていないところでございます。
 農林水産省から会計検査院への返答においても、まず政策評価は政策分野ごとに評価されるものであることと、また、その追加的な要因として、議員御指摘のような外国の経済状況などによって左右されるものであるということを踏まえて、食料自給率そのものの分析表などの作成はしていないと回答させていただいたところでございます。

○紙智子君 なかなか分かりづらいなというふうに思うんですよね、今の説明聞いても。
 それで、様々な要因とかということもあっていろいろあるんだということなんだけれども、やっぱり例えば輸入自由化政策や円安誘導策など、食料自給率の目標達成にどのような影響を与えたのかということは分析されたのかな、されていないんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 坂本哲志君) 食料・農業・農村基本法、基本計画で定めた目標につきまして、進捗状況は検証していても、目標年度における目標の達成状況は検証していないという指摘がなされていることは委員御指摘のとおりでございます。
 食料・農業・農村基本法で定めた目標につきましては、目標年度の十年後を待たずに、その見直しを行う五年ごとに食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら検証、見直しを行ってきたところですが、会計検査院からは目標年度の十年後における目標達成、おける達成状況の分析が不足しているとの指摘があったものというふうに思っております。十年後の目標を立てる、しかし、私たち農林水産省としては五年ごとに見直しをしているというようなことでありますけれども、その十年ごとの、十年目の、十年ごとの検証がなされていないんじゃないかというような御指摘であるというふうに考えております。
 今回、基本法の改正案では、食料自給率やその他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定め、目標の達成状況を少なくとも毎年一回調査し、その結果を公表するなど、目標の達成状況を踏まえてPDCAサイクルを回す新たな仕組みを導入することとしております。自給率や今後新たに設定される目標の達成状況の評価をしっかりと行えるようなものにしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 今の説明聞いても、さっきも質問あったんだけど、どうして今まで掲げた目標ができなかったのかということについては分からないままなんですよね。その検査の方に農水省が答えた、外交、経済等の様々な要因によって決定されるというふうになっているんだけど、例えば、いや、さっき言われたんだけど、政府が出した政策に対してそれが良かったのかどうだったのかということの見返りがされたのかというのがよく分からないまんまなんですよ。だから、輸入自由化路線を取ってWTO以降ずっと外国から入ってくる、それによって日本の農業、どう影響されたかとか、円安とか円高とかっていろいろあるわけだけども、それによってどんなふうに農業が影響されたのかということをめぐっての分析、そういう政策を押し出したことの中身でどうだったのかということについては、時間ということなんですけども、分からないので、是非またこれは引き続き議論をしていきたいということを申し上げまして、質問を終わります。