<第210回国会 農林水産委員会 2022年12月9日>


◇畜産業の倒産件数の増加について/乳価と生乳生産費について/価格が高騰する輸入乾牧草、稲わらへの支援について/生産コストの価格高騰分を補てんする緊急支援について/自家配合飼料への支援について/生乳、乳製品の需給調整と国の責任について/加工原料乳生産者補給金の単価の大幅引き上げについて/集送乳調整金の単価設定について

○畜産物等の価格安定等に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 畜産業の現状についてまずお聞きします。
 今、肥料や飼料などの生産資材価格の高騰などに苦しむ酪農、畜産関係者が、酪農、畜産を守ろうということで全国各地で集会を行っています。十一月三十日には全国農民連と全国食健連が、日本の畜産の灯を消すな、畜産危機突破緊急集会を農水省前で行いました。

配布資料 畜産業 倒産件数推移

 お配りした資料一枚目を見てください。
 これ、帝国バンク、帝国データバンクの全国企業倒産集計です。酪農、そして養鶏、養豚などの畜産業を営む法人の倒産件数が、二〇二二年の、紺のグラフのところですけど、一月から十月の間の累計で十七件と、昨年の十一件を大幅に上回って、過去五年間見ても最多を更新しています。このペースが続けば、二〇一四年以来八年ぶりの二十件台に達する可能性が高まるとしています。
 大臣、この倒産が増えている現状をどのように見ておられますか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 今、紙委員から出されましたこの数字を見ておりまして、私も同じことを言おうかなと思っていたところですが、まあ、確かにここ数年の中では最高二十七件というのは、これはまだ一月から十月ですから、十一、十二で行くと本当に二十件を超えていくのではないかという大変厳しい見方をしておりますが、いろんな、北海道の皆さんや、また全国の酪農家の皆さん方の御意見を伺っておりまして、今回の補給金なり、あるいはまた、ほかの対策等に、関連対策等についてもいろんな要望がございましたので、そういった声を真摯に受け止めながら、厳しい状況の中でどういう対応ができるかということを今現在詰めているところでございます。
 したがいまして、さっきも答弁しましたように、来週早々には皆さん方にも御報告できるのではないかと、こんなふうに思っておりますが、いずれにしても厳しい状況であることは間違いないと思っております。

○紙智子君 この帝国データバンクの集計対象というのは企業的経営体ですけれども、大規模経営がこれ潰れると、その行き先のない子牛の価格が暴落するわけですよね。家族経営も含めると、数字以上にもっと広い範囲で離農や廃業が進んでいると。さっきも話ありましたけど、十二月五日付けに掲載された日本農業新聞の指定団体の調査では、飼料高によって酪農家の離農が加速して、四月から十月末の段階で前年比で四百戸を減少していると、減ってきていると、まあ五百とか六百って話もありましたけれども。畜産業の生産基盤の崩壊がこれ始まっているというふうに思うんです。
 なぜこういう倒産や離農が増えているのか。飼料代が二年前と比べて四七%、肥料代が四五%、電気代などの光熱動力費が二八%値上がりするなどの生産費が急騰して、この乳価が上がらないからですよね。先月、酪農関係者と消費者による集会が茨城県で行われて、私も参加してきたんですが、関東の酪農家は、搾れば搾るほど赤字だ、夏に三千万円の運転資金を借りたけれども、一月で五百万の赤字になるので半年もたないって言ってたんですね。

配布資料 生乳生産費を下回る乳価と加工原料乳

 次の二枚目の資料を見てほしいんですけれども、これ、農水省の統計では、生乳の生産費、生産に係る諸経費、これ一番新しい数字ですけど、二〇二〇年なんですね、その生乳一キロ当たりの生産費は百十七・六円と。総合乳価はっていうと、その隣ですけれども、一キロ当たり二〇二〇年は百五・五円。北海道は大部分が加工原料乳ですけれども、価格は、二〇二〇年八十二・八、六円と。乳価が生産費を下回っているわけですよね。これ、総合乳価十円上がったとしても届かないわけですよ、生産費には。ですから、やっぱりこういう状況の中で搾れば搾るほど赤字になっているということですし、これで倒産とか離農が増えるというのは当然でないのかなというふうに思うんですけれども、農水省、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 畜産統計によりますと、酪農家の戸数は毎年五百から六百戸程度減少しているわけでございます。今年の離農戸数明らかでありませんけれども、この最近の酪農の経営環境につきましては、飼料ですとか肥料、建築資材の生産費の生産資材費、光熱動力費や雇用労賃といった生産コストの上昇に加えまして、ホル雄初生価格の低落で副産物収入の減少などがあって厳しい状況にあるというふうに認識をしてございます。
 委員お示しの二〇二〇年の生産費でございますけれども、これ確かに都府県の生乳生産費百十七円程度でございますが、これほかに副産物収入が二十円近くございますので実際それを差っ引くと百円弱が掛かっていると。加工原料乳価、確かに八十二円、八円でございましたが、これ低いんで、ここに私ども、加工原料乳生産者補給金制度に基づきます補給金などを交付しますので、それで十一円程度手取りが増えるというような状況であることはちょっと申し上げたいと思います。
 ただ、これ二〇二〇年ですので、この後、生産、飼料価格の高騰とかというのはまたこの後進んでいますので、冒頭申し上げましたとおり、かなり厳しい状況になっているというのは事実であろうかというふうに存じます。

○紙智子君 乳価が生産費を下回ったら、これ再生産できないというのは当たり前だと思うんですよ。赤字をカバーしていたぬれ子やその小牛価格が暴落をしていると、まさに酪農経営が危機的状態だというふうに思うんですね、皆さんおっしゃってますけど。
 日本農業新聞の調査に答えた近畿生乳販連、ここが、離農が加速している理由に、粗飼料の高騰の影響が大きいんだということを挙げています。酪農は、輸入粗飼料の割合が大きいために異常な円安等様々な影響を受けています。
 第二次補正には、この配合飼料価格の高騰対策はあるんだけれども、高騰している輸入乾牧、乾牧草ですね、稲わらなどの支援はありますか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 令和四年度第二次補正予算でございますけれども、配合飼料に対する予算はございますけれども、輸入乾牧草ですとか輸入稲わらに対する支援は含まれてございません。

○紙智子君 ないということですよね。
 それで、輸入飼料から国産に転換するということは必要なわけなんですけれども、しかし、生産者は支援を今求めているわけですよ。異常な円安と価格高騰というのは生産者には何の責任もないわけで、私たちは、ですからこれまでも緊急提案として、飼料価格の高騰分をやっぱり農家に直接補填するようにすべきだということを提案してきました。
 とにかく今乗り切るための臨時的、緊急的な対策を求めたいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 我々は、我々というよりも農水省としては、粗飼料については、輸入飼料の依存から脱却していわゆる自給飼料を生産しましょうということを強くお願いをし、そしてまたそれに対する予算措置もしておるわけでありますが、今おっしゃったように、確かに輸入乾牧が上がっていることはもう十分承知いたしておりますが、かといって、それに支援をいたしますと、むしろ逆に輸入飼料を奨励しているということにも一方ではなってしまいますので、確かにきつい経営でありますけれども、可能な限り自給飼料の生産を増産をしていただきたいと、こんなふうに思います。
 一つの例ですが、自分のところの鹿児島のことを言っちゃいかぬのですが、余り、今年、経済連が二百ヘクタール実は土地を借り上げまして、そこに全部コントラクター組織をつくって粗飼料増産をしておりまして、こういったいろんな工夫も必要だろうなと、こんなふうに思います。

○紙智子君 あのね、自給飼料っていうのは、それはそうですよ、それは全然私も反対じゃないんだけど、今求めているのは、未来永劫やれって言っているわけじゃなくて、今の段階で、これ、もたないですよと、緊急的な対策やらないともたない、その臨時的な緊急な提案を私たちはしているわけで、是非これ検討してほしいと思うんですね。
 それから、あわせて、さっきも議論になりましたけど、養豚農家の方からも訴えがあって、丸粒トウモロコシとか大豆かすとかを自分で仕入れて、おいしい豚を育てようということで、自家配合、さっきも話ありましたけど、自家配合しています。しかし、急激な飼料価格の高騰は、自家配合を行っている養豚農家、それから肉牛の肥育農家にも大きな負担になっていると。経営を圧迫しているわけですね。
 一般社団法人の日本養豚協会もこれ自家配合の飼料に取り組む生産者の対策を行うように検討を求めているわけなんですけど、これ何らかの新たな支援を検討すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 自家配合飼料に取り組む農家さんですが、飼料用米ですとかエコフィードの利用を含めて、いろいろ本当に工夫をしてコストダウンなどをされているということは承知をしてございます。
 この自家配合飼料でございますけれども、経営体によりましてエコフィードを始めとして原料の種類が様々でございまして、その使用量あるいは価格を把握ができないということで、なかなか販売数量などを用いて補填額を算定するような配合飼料価格安定制度に類する補填というのは難しいというふうに思ってございます。
 そういう中で、飼料用米などは耕種と畜産農家のマッチングですとか、エコフィードについては更に地域で未利用の食品残渣などの飼料化の支援といったような飼料価格の低減努力をしてまいりたいと考えてございます。

○紙智子君 先ほど来、これ随分やり取りをやっていて聞いてますけども、やっぱり生産費が上昇しているわけです。だけど、生産費が上昇しているけども、今までのやっぱり枠にとらわれない緊急の対策が必要だと思うんですよ。これってやっぱり、大臣、政治判断が必要なんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) まあ政治判断をしなけりゃならないときは今だというお話だと思いますけれども、非常に長期的にもやっぱり考えていかなきゃならないこともありまして、どういったような経営が安定するような仕組みがあるのかということで、特に酪農の場合は、生乳だけ、生乳とか牛乳だけではなくて長期保存が可能な乳製品への加工により需給調整を図ってきているところでありまして、加工原料乳の生産者補給金制度によってそれを下支え……(発言する者あり)ああ、豚か。
 豚についてもやっぱり同じことが言えると思うんですけども、豚の場合はほとんどが自家配と、自家配というかエコフィードなんかを使いまして努力されているのはよく承知しておりますけれども、なかなか自家、自分のところでそういった自給飼料を作るというのが難しい。昔は私もやっていましたけれども、自分のところでカンショを食べさせたりとか、あるいは配合飼料なんというのは昔の豚は食っておりませんでしたから、そういう意味では大変おいしい豚ができ上がっておりましたんで、やはりそういったところも考えなきゃいかぬと思います、はい。

○紙智子君 やっぱり、いろいろやれないことを言うのではなくて、新しい支援策を強く求めておきたいと思います。
 それから、生乳の需給の緩和という問題なんですけど、酪農の現場では、生産を抑えるために、配合飼料の構成を変えて乳量を抑えたり、それから乳量が落ちた乳牛を前倒しで淘汰したりとかしているわけです。畜産は生き物相手ですから、赤字だからといってスイッチを止めて休業するなんということはいかないわけで、毎日必要な量の餌を与えて、搾乳をしなければ牛というのは乳房炎とか病気になるわけですよね。
 二〇二〇年の三月に決めた酪肉近代化の方針は、これ生乳生産量七百八十万トンということで増産を決めています。生産者は国の政策に沿って規模拡大、増頭、増産を進めてきたわけです。にもかかわらず、今、生乳や、生乳が過剰になったということで、乳製品の需給調整というのは、これ生産者、メーカーに任せてやってきていると。
 これは是非、増産方針を決めた以上、この需給調整にはちゃんと国が責任を果たすべきじゃないかと思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 今、紙委員のおっしゃること、よく理解できるんですが、ただ、やっぱりその短期的な需要の変化ではなくて、やはりこの構造的に生産量を調整するという仕組みが、今の長期保存が可能な乳製品への加工によりまして需給調整を行っておりまして、それが言わばベストな選択であったのではないかと、こんなふうに思います。
 それをなぜやったかというのは、もう委員も御存じのように、二十六年のバター不足騒動がありまして生乳の増産をお願いをしてきたわけでありますが、今回、コロナの感染拡大によりまして需要が減少した、こういった不測の事態が重なって需給バランスが大きく崩れたということが大きな要因だと思いますので、この需給バランスを今、元に戻すような形でやらせていただいています。

○紙智子君 需給バランスをという話するんですけど、需給調整をするためには、四百六十九万トンにも及ぶ乳製品の輸入を減らしてやっぱり国産との置き換えを進めるべきだというように思うんですね。
 同時に、即効性のあるのはやっぱり消費拡大だと。新型コロナ発生後に二〇二〇年四月から農水省が呼びかけた牛乳・乳製品の消費拡大、プラスワンプロジェクト、それから、生産者や乳業メーカーなどの関係者の努力によって家庭でのこの牛乳類の消費が増加をして、生産、生乳の廃棄を回避してきたこともあると。
 牛乳の消費が落ちる冬の期間というのは、例えば学童保育だとか公共施設での牛乳の活用なんかもできないかとか、もうあらゆるところを知恵を絞って消費の拡大にやって取り組む必要があると思うんです。
 農水省の見解をこの点で短く簡潔に求めます。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 渡邉洋一君) お答えをいたします。
 生乳需給がまた大幅に緩和する年末年始に向けまして、業界でも新商品を出したり活用レシピを提案するといったようなキャンペーンをしておりますし、生産抑制対策ですとか乳製品工場の稼働日の調整などしております。また、牛乳でスマイルプロジェクトなど、また、年末年始、カルシウムが不足がちになることに着目した消費拡大キャンペーンを始めたところでございます。しっかり取り組んでいきたいと思います。
 学童、学校給食への支援というのは引き続きしっかりやっていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 それで、畜産物価格が決定されるわけですけれども、生産費の高騰によって経営が危機的な状況の中で、今年の価格決定というのは本当に重要だと思うんです。生産コストが高騰していると。加工原料乳生産者補給金の単価というのは大幅な引上げをするということ、それから対象数量の枠もしっかり増やすように求めたいと思いますけども、大臣、お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) これ、徳永委員のときも申し上げましたけど、また同じことになりますが、要は、一つのやっぱりルールに基づいて計算をしております。したがって、そのルールを変更するということには、これは食料・農業・農村政策審議会の意見を基にしながらやっていかなきゃなりませんので、私どもはやっぱり一定のルールに基づいて計算をしていかざるを得ないと、こんなふうに思います。

○紙智子君 ですから、やっぱり上乗せをしてほしいんですよね。いろいろ計算決まっていると言うんだけど、今の状況を踏まえてやっぱり政治判断で上乗せをしてほしいというふうに思います。
 それで、次に、集送乳調整金についてなんですけど、原油価格が一年前と同様に高止まりをしていると。燃料価格の高騰に加えて、ドライバー不足というのもあるんですね。ドライバーの確保を含めて、指定生乳生産者団体が条件不利地を始めとして全ての地域で集乳できるようにコスト上昇に見合った設定にすべきだと思いますけども、最後にお聞きします。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 集送乳の価格につきましても、先ほど申し上げました一つのルールがありまして、それに基づいてやらざるを得ないと。その中には物価のこの動向も入っておりまして、今おっしゃいました、燃料が上がっている、そのことはきちっとやっぱり織り込んでくれると、こんなふうに思っております。

○紙智子君 とにかく潰れないようにしないといけないと思うんですね。本当に農家の人たちを生かしていくと、一人の離農者も生まないと、そういう覚悟で対策を求めていただきたい、求めまして、質問終わります。

○委員長(山下雄平君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さん及び寺田静さんの共同提案による畜産物価格等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    畜産物価格等に関する決議(案)

  我が国の畜産・酪農経営は、畜産クラスター等の地域の関係者が一丸となった取組の結果、畜産物の生産量が増加傾向で推移する一方、依然として、担い手の高齢化、後継者不足が進行しており、特に、中小・家族経営における経営の継続を困難なものとしている。こうした事態に対応するためには、生産基盤をより一層強化する取組や次世代に継承できる持続的な生産基盤を創造する取組の継続が重要である。
  このような中、ウクライナ情勢や異常な円安等に伴う穀物価格の上昇等による配合飼料等の資材価格の高騰や、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少は、畜産・酪農経営に対し営農継続が危ぶまれるほどの甚大な影響をもたらしている。特に、飼料価格の高騰は、飼料自給率の低い我が国において食料安全保障に関わる問題であることから、飼料の輸入依存からの脱却を目指すとともに、畜産・酪農経営の安定を図り、営農継続の意欲を維持し、高めていくことが重要な課題となっている。
  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和五年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 配合飼料価格の高騰による畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営し、配合飼料価格の高止まりによる生産者の負担増加を抑制するための対策を着実に実施するとともに、今後の畜産・酪農経営の動向を見定め、必要に応じて追加の対策を講ずること。また、耕畜連携による飼料用とうもろこし等の国産飼料の生産・利用の拡大、飼料用米、稲発酵粗飼料の生産・利用の推進、草地等の生産性向上、稲わら等の国産粗飼料の広域流通等による国産飼料に立脚した畜産・酪農への転換を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。加えて、飼料穀物の備蓄をはじめとする配合飼料の安定供給のための取組を支援すること。
 二 配合飼料に加え、単品の濃厚飼料、購入粗飼料の価格高騰等により、生産コストが上昇している畜産・酪農経営を支援する施策を講ずること。また、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少で乳製品在庫が高水準にある中、生乳の需給ギャップを早期に解消するため、生産者による一定期間における生産抑制への取組、国産チーズの競争力強化、生産者団体・乳業者による乳製品の在庫対策を支援すること。その際、生産者の経営継続、将来的な生産力回復に配慮すること。さらに、牛乳・乳製品の消費拡大に取り組むこと。
 三 高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の感染拡大防止は、現下の家畜伝染病の防疫上、最重要課題である。そのため、各種対策を強力に推進し、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図り、感染リスクを低減させる取組を支援すること。また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の流入防止のため、水際での防疫措置等の発生予防対策を徹底すること。さらに、これらの措置を着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員や産業動物獣医師の確保・育成を図るとともに、豚熱の予防的ワクチン接種体制を強化すること。
 四 加工原料乳生産者補給金については、飼料等の資材価格の高騰を踏まえ、中小・家族経営を含む酪農経営の維持が可能となるよう単価を決定すること。集送乳調整金については、輸送環境が急速に悪化していること等を踏まえ、条件不利地域を含めて確実にあまねく集乳を行えるよう単価を決定すること。また、総交付対象数量については、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少を踏まえつつ国産乳製品の安定供給が図られるよう適切に決定すること。
 五 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、生産コストの動向等を踏まえ再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。また、肉用子牛の価格が短期間で大幅に下落し、生産者の経営環境が急激に悪化していることに鑑み、肉用子牛生産者の経営改善を支援すること。さらに、肉用牛生産基盤の維持・強化を図るため、優良な繁殖雌牛の導入、和牛受精卵を活用した和子牛の生産等酪農経営と肉用牛経営の連携等の取組を支援すること。
 六 経済連携協定等が、我が国の畜産・酪農経営に与える影響について、統計データ等を常に注視し、分析を行い、これを公表すること。また、関税削減や日米貿易協定に基づく牛肉セーフガードの見直し等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、生産者が経営の継続・発展に取り組むことができるよう、実効ある経営安定対策を講ずること。その際、実施した施策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。
 七 畜産・酪農経営における経済性や採算性の分析を不断に行い、大規模化の効果やリスク、飼養形態・飼養規模の在り方などを検証し、現場と情報の共有を図ること。
 八 中小・家族経営をはじめとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き、現場の声を踏まえた事業執行に努めつつ、飼料増産や収益性向上等に必要な機械導入や施設整備、施設整備と一体的な家畜導入等を支援すること。また、既往債務が畜産・酪農経営に与える影響に鑑み、償還負担の軽減に向けた金融支援措置が十分に活用されるよう、その周知徹底を図ること。さらに、乳業工場・食肉処理施設の再編整備及び機能強化等を支援すること。
 九 酪農経営の労働負担の軽減のため、飼養方式の改善、機械化、育成の外部化を支援するとともに、特に中小・家族経営にとって不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、その要員の育成や確保、傷病時の利用料金の軽減等のための支援を行うこと。また、ICTやロボット技術の活用等により生産性の向上と省力化を図るとともに、後継者による継承や新規就農の推進のための取組を強力に支援すること。さらに、畜産・酪農の現場に外国人材が円滑に受け入れられるよう環境整備を進めること。
 十 国際社会において、SDGsに基づく環境と調和した持続可能な農業の促進が求められていることを踏まえ、持続的な畜産物生産に向けた家畜ふん堆肥の利用推進や高品質化、家畜排せつ物処理施設の機能強化等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援すること。また、畜産GAPの普及・推進体制の強化を図るための指導員等の育成やGAP認証取得等の取組を支援するとともに、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の普及を図ること。
 十一 家畜能力等の向上を図る取組を一層支援すること。また、関係者の長年の努力の結晶である和牛遺伝資源の厳格な流通管理及び知的財産としての価値の保護を確実に実施すること。
 十二 畜産物の輸出促進を図るため、畜産農家・食肉処理施設等・輸出事業者が連携した産地のコンソーシアム化、コンソーシアムと品目団体との連携による販売力の強化等を進めるとともに、国産畜産物の需要の増加に対応できる生産基盤の構築や輸出対応型の処理加工施設の整備に取り組むこと。
 十三 原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された稲わら、牧草等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(山下雄平君) ただいまの徳永君提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(山下雄平君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。