<第210回国会 政府開発援助等および沖縄・北方問題に関する特別委員会 2022年12月7日>


◇日ロ漁業交渉について/北方領土 元島民の思いへの受け止めについて/北方領土返還運動と支援体制づくりについて/北方領土隣接地域振興等基金について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 参議院選挙後、初めての委員会ということであります。ロシアによるウクライナ侵攻から九か月が過ぎました。今日に至るまでのこの日ロ領土交渉について検証することが求められていますが、今日は影響が心配されていた漁業からお話を伺いたいと思います。
 それで、まず、日本とロシアに四つの漁業協定がありますけれども、例年は十二月頃から交渉が行われているんですけれども、今年は、この漁業交渉の妥結が遅れたり、操業が遅れたりということで影響があったと思います。
 この交渉結果について、まず外務省からお聞きしたいと思います。

○政府参考人(外務省欧州局長 中込正志君) お答え申し上げます。
 我が国とロシアとの間には三つの政府間協定及び一つの民間取決めございまして、本年二月のロシアによるウクライナ侵略以降も、我が国の漁業活動に係る権益の維持確保のため、ロシア側との協議を行ってまいりました。
 具体的には、日本水域のサケ・マス漁業交渉については本年四月に、それから民間協議であります貝殻島昆布交渉につきましては本年五月から六月に協議を行って、それぞれ妥結し、操業を行っておるところでございます。
 一方で、ロシア水域のサケ・マス漁業交渉については、国の事業による試験操業を民間で実施させるということでございますので、その緊急性、必要性などを総合的に判断しまして、本年の操業及び交渉を見送ることといたしました。
 それから、日ロの地先沖合漁業協定に基づく操業につきましては、昨年末に本年の操業条件について妥結していたものの、ロシアによるウクライナ侵略を受けた影響等によって一部の魚種につきましてはロシア水域での操業を断念せざるを得なかったものの、一部については操業ができたというふうに承知をしているところでございます。
 それから、北方四島周辺水域枠組み協定でございますけれども、昨年末に本年の操業条件について妥結していたものの、本年六月ですね、ロシア政府、サハリン州との協力事業を理由に一方的に協定の履行の停止を発表しましたが、その後の調整によりまして九月から操業開始、現在も操業が継続しているということでございます。
 以上でございます。

○紙智子君 かなり影響を受けたと思うんですよね。
 それで、ちょっと農水省にもお聞きしますけど、ロシアの二百海里水域でのサンマやサケ・マス漁というのは見送られたと。で、三月八日の農水委員会のときに私、質問しまして、金子当時の農水大臣は、仮に我が国の漁業者及び水産加工業者への影響が生じる場合は、その状況を丁寧に把握し、しっかりと対応してまいると答弁されているんですけれども、この安全操業が確保できているのか、そして水揚げの状況、また影響が出た場合の対策ということを、水産庁、説明お願いします。

○政府参考人(水産庁資源管理部長 藤田仁司君) お答えいたします。
 まず安全操業のお話でございますけれども、日本漁船の操業の安全確保につきましては、水産庁から関係漁業団体等に対しまして、ロシア水域やその近辺で航行、操業等を行う場合は安全及び関連法令の遵守に一層留意するよう注意喚起を行っておりまして、本年は拿捕事案は生じてございません。
 既に漁期が終了しております日本二百海里水域内のサケ・マス流し網漁業及び貝殻島昆布漁業のその水揚げに関して申し上げますと、おおむね昨年漁期と同程度という状況でございます。
 なお、サンマ漁業につきましては、ウクライナ情勢や漁場形成等によりましてロシア二百海里水域での操業を断念せざるを得なかったことから、公海を含めたほかの水域での操業転換を実施をする取組への支援を行っていると、そういう状況でございます。

○紙智子君 やはり影響が出ていて、十二月七日付けの北海道新聞によると、サンマ水揚げについては前年の同時期と比べて八・九%減と。やっぱりいつも入れていたところに入れていないというのが、もし入れていたらもっと変わっていたということも言っているわけですから、影響があるわけですよね。それで、是非しっかりと対応をこれ行っていただきたいと思います。
 それから、林外務大臣にお聞きしますけれども、先ほどもちょっと質問あったんですけれども、ロシアによる臨検が非常に増えてきていて四倍になっているということと、それから、本年はなかったと言うんだけれども、昨年は稚内沖で漁船の拿捕もあって、これ安全な操業に向けては不安が拭えない状況が続いているわけですよね。
 今後の交渉にどういう構えで臨むのかということについて、大臣の考えいただきたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) このロシアによるウクライナ侵略によりまして日ロ関係大変厳しい状況にあるわけですが、やはり日本政府としては、我が国の漁業活動に関する権益を維持確保すると、そして、漁業者が、今、紙委員からもございましたように、安全に操業できるように引き続き水産庁と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 これも是非しっかりとやっていただきたいと思います。漁業関係者は、やはり継続的に安全操業を確保して漁業者の負担を軽減するように願っていますので、引き続き努力をしていただきたいと思います。
 次に、元島民への支援についてなんです。
 それで、コロナ禍で見送られてきた北方領土返還アピール行動が、先週の十二月一日に三年ぶりに都内で開催されました。元島民代表の河田弘登志さんが述べていましたけど、近くて遠いふるさと、見えていても帰ることができない、七十七年が過ぎた、しかし、ふるさとを取り戻す行動を自分は続けるんだということを決意表明されていて、ちょっと胸が熱くなりながら聞いていたんですね。
 今年の五月に、私、根室に行ったときに、元島民の方々と懇談しました。テレビで隣国に避難を続けるウクライナの人々や幼い子供を見ていると、あの子供の姿というのはそのまま昔の自分自身と重なるんだと。で、振り返って、七十七年前に着のみ着のままで逃げて北海道に着いたんだけれども、知り合いもなく、もう必死にこれまで生きてきたんだという話がされました。
 こういう元島民の方々の思いを、ちょっと両大臣、岡田大臣と林大臣に、どのように受け止められるかということを一言ずつお願いします。

○国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣 岡田直樹君) ただいま紙委員がおっしゃった中央アピール行進、私も担当大臣として是非参加をしたかったんですが、参議院予算委員会と重なりまして、かないませんでした。
 しかし、先ほどお話のありました千島歯舞諸島居住者連盟の河田副理事長の言葉の中で私が本当に胸を打たれたのは、返還要求運動の火を消すことなく邁進し、北方領土問題の早期解決に向け力強く行進すると、このような宣言をされたことを伺いまして、本当に身の引き締まる思いでありました。
 また、私、その夕方には、岸田総理と同席して、根室市長を始め近隣の一市四町の代表者の方々と面会いたしましたけれども、その際にも、北方領土問題の解決に向けた平和条約締結交渉、この早期再開に最大限努めることという思いと、それから四島交流事業、とりわけ北方墓参、墓参りはさせてほしいという強いお訴えをいただきまして、こうした島民の思いに寄り添った取組というものを、今後私も、返還運動の先頭に立って御尽力いただいた皆様方の強い思いを受けて進めてまいらなければならないと思います。
 本当に、九月に私も根室に行きまして、せめて墓参だけでもという思いをお訴えいただいて、しかし、それに対して、今、申し訳ありません、現状、具体的な見通しを示すことができなくてということで、断腸の思いでございますということを申し上げてきたんですが、引き続き粘り強く頑張ってまいりたいと存じます。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 三年ぶりとなりました、今、紙委員から御指摘のあったこのアピール行進、開始をされました。出発式は私も国会の審議で出席できませんでしたが、私の代わりということで山田副大臣が出席して御挨拶をしたところでございます。
 御高齢となった元島民の方々の思い、これはアピール行進でも伺える機会があったということですが、今、紙委員から、ウクライナに避難している人がダブって見えるということを聞きまして、私もポーランドに行ってまいりまして、ウクライナから避難をされている皆様、今の状況ですから余り成人男子といいますか、高齢者と女性と子供と、こういうことではありましたけれども、まさにあそこに行ってそこの皆さんといろいろ交流をさせていただきましたけれども、なるほど、御高齢となられた元島民の皆様が最初ああいう状況にあったのだなということを改めて今痛感をさせていただきました。
 そうした思いに何とか応えられるように、引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、両大臣からお聞きしましたけれども、結果的には今回来た方々と首相会いましたけど、当初は、これ、国会日程を理由にして総理も会わない方針だったんだけれども、しかし、結果的には会うことになったと。で、報道機関が、やっぱり関心の低さの表れじゃないかというように指摘もしていたという中では、やっぱりこの領土問題って国の主権に関わる問題であって、国の問題で解決できないまんま来ているのを、元島民の人たち含めて後押ししようということで長い間運動してきているので、やっぱり、いろいろ忙しくてもちゃんと時間取って思いを受け取るということはやっていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。
 それで、元島民の皆さんは高齢化していきますから、ふるさとに対する思いというのは本当に強いものがあると思うんです。同時に、やっぱり次の世代にも引き継いでいくというのが必要で、そこで二つばかりお聞きするんですけど、ビザなし交流のこの対象者ですね、これ、三世まで今なっているんですかね、四世まで拡大してほしいという声も出ています。それから、返還運動を支える若い人たちを支援する体制づくりをどうつくるかと、学ぶ機会も必要だと思います。
 それから、北方領土問題対策協会というのは東京と札幌の二か所なんですよね。やっぱり、活動のほとんどをやっぱり千島連盟だとかいうところに依存しているということで、語り部の支援とか啓発対策はあるんだけれども、その高齢化してきている中で、事務所の体制づくりとか拠点づくりってもっと強める必要があるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(内閣府北方対策本部審議官 伊藤信君) お答えいたします。
 まず、交流事業の参加者の話でございますけれども、今委員御指摘がありましたとおり、その北方領土に居住していた方、それからこれに準ずる方を含むというふうな中では、その御本人、それからその子、孫並びにそれらの方の配偶者というところでございます。四世まで拡大につきましては、現時点では交流事業を行うという状況にもないところでありまして、今後の具体的な展望について申し上げられる状況にもありませんけれども、今後関係者と連携して検討してまいりたいと考えてございます。
 また、次世代の話でございますけれども、この運動を継続的に持続的に実施してまいりますためには、元島民の皆様がもう既に御高齢になられているという現状を踏まえて、今後担い手となる後継者の育成を図るということが大変重要であるというふうに考えてございます。今、体制の話はございましたけれども、私どもとしましては、その後継者の育成というふうな観点から、北方基金あるいは北対協から補助を行っているところでございます。
 関係団体と緊密に連携しながら、後継者の活動の促進ということについてはしっかり図ってまいりたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 平均年齢でもう元島民の方たち八十代後半になってきてますから、やっぱり次世代をどうやって続けていくということかって物すごく真剣に考えてほしいということを何度も言われておりますので、そこは是非検討いただきたいと思います。
 次に、隣接地域の振興費についてお聞きします。
 北特法で、北方領土問題が未解決である特殊な事情があるために、五年ごとに振興計画を策定し、計画的な推進を図るとされています。で、現在、八期振興計画の検証作業が終わって、第九期の計画策定が進んでいると。
 それで、前回の法改正で基金の取崩しが可能になりました。で、基金の取崩し状況が今どうなっているか、どれだけ取り崩して残金はどれだけあるのかを簡潔に説明してください。

○政府参考人(内閣府北方対策本部審議官 伊藤信君) 基金取崩し前は百億あったわけでございますけれども、今年度、令和四年度の事業計画を踏まえた残金見込額としましては、八十六億七千五百万円というふうになってございます。ですから、十三億円余りを取り崩しておるということ、あるいは今年度中には取り崩す予定であるということでございます。

○紙智子君 八十六億円まで減っていると。
 多少時期外れるんですけど、我が党の根室の市議が、第八期の北方隣接地域の振興と住民の生活の安定に関する中間報告書を基にしていろいろ計算してみたところ、三年間で見て事業費が百六十五億千九百四十四万円だと。うち、北方基金の補助金が充当されたのが七億四千六百九万円だったと。だから、事業費全体の僅か五%程度なんですね。
 それで、基金は各省庁あるんだけども、先日、十一月二十二日に朝日新聞で出されたのは、第二次補正予算案で一度の補正予算で八兆九千十三億円の基金になったと報じていて、やっぱり紹介したように、たった三年間でこの振興の事業費が百六十五億円ということで、元々の北方基金が百億ですから、それを大きく超える事業費なんだけども、もう全然足りないと。北方基金というのは、国の領土返還の運動を支える隣接地域に対してつくられた枠組みなのにどんどん今減らしている、取り崩して減らしているんですけど、それでいいのかということを思うわけですね。
 これ、思い切った積み増しが必要じゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(内閣府北方対策本部審議官 伊藤信君) まず、御指摘いただいた百億円を超える事業費につきましては、道庁に確認をしましたけれども、北方基金からの補助事業も含まれてございますが、他の国土交通省ですとか北海道庁からの補助を行っている事業も含まれているというふうに承知をいたしてございます。
 もう御案内のとおり、この基金事業につきましては今八期が終わって九期が始まろうとしている振興計画に基づいて行われておりまして、現時点では最初の、法改正後最初の振興期間中と、計画期間中ということで、その進捗状況を注視はしておるというふうな段階でございます。
 各年度の今後の基金の使用につきましては、年間ある一定の額に抑えるということではなくて、そこは道庁を通じてお申出があれば必要額についてしっかり相談に乗ってまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 ちょっと時間になっちゃったんですけど、北特法の附則の中で検討事項というところで、必要な財政上の措置について検討を加えてちゃんと講ずるんだということが書いてあるわけですよ。ですから、やっぱり今、北方隣接地域の人口減少とか経済の低迷が続いている中では、やっぱりその領土返還の拠点の地の振興のためにもっと力を入れてほしいということを申し上げまして、質問を終わります。