<第210回国会 農林水産委員会 2022年11月8日>


◇水田活用交付金の見直し問題について/農業集落調査の廃止問題について

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 農林水産省は、昨年の十二月に水田活用交付金の厳格化、見直しを公表しました。しかし、現場からは唐突過ぎるなどの意見が出されました。今年に入って、参議院に百八十二件の意見書が出されております。その中には、慎重な対応という表題もあるんですけれども、見直しの撤回や中止を求めるものもかなりあります。
 北海道農協中央会を始めとする農業関係五団体に道庁と市長会と市町村でつくる北海道の関係機関連絡会議、ここが九月に提案書を提出しています。この提案書では、全国的な米の需給安定のため、生産の目安を踏まえた作付けを推進して、多様なニーズに対応した米の生産、販売や経営の効率化を図るなど、それぞれの地域で将来を見据えた活力ある産地づくりを進めてきたと、ところが、見直しは本道の水田農業経営を始め農業、農村に様々な影響を及ぼす可能性があるということで、危機感を表しているわけです。
 こうやって関係団体がまとまって提案書を出したということについて、やっぱり重く受け止めてほしいと思うんです。同時に、こういう経過を見ますと、水田活用交付金の厳格化、見直しは、これ、現場に混乱と不安を与えたんじゃないかと思うんですけど、大臣の認識を伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 我々の、自民党のときもいろいろこの見直しについての御意見はいただいてまいりましたし、そしてまた、農水省としては、これまで産地ごとの意見交換会を四千三百回実施していろんな意見をお伺いしたところでございます。意見交換の個別事例の把握なり、あるいは全国調査を通じて現場の課題の把握に努めてきたところでございます。
 したがいまして、令和五年産以降も、引き続き、米、麦、大豆等の需要に応じた生産が行われるように、現場の課題を踏まえて、畑作目の産地形成を促進するための支援、それから水田の汎用化、畑地化等のための基盤整備や施設整備など、今後の補正予算において必要な対策が措置されるように現在検討を進めているところでございます。

○紙智子君 現場に混乱を与えたんじゃないでしょうかという認識聞いたんですけど、それはお答えになっていないんですけど、それだけ四千三百回をね、話合いしなきゃいけなくなったというのは、やっぱりそのとおりいかなかったからだというふうに思うんですよ。
 転作で牧草を生産している地域というのは混乱していて、これ今年からやっていますからね。今年度からいきなり三万五千円出ていた補助金が一万円に削減されたら、農地を引き受けた農家に地代が払えない、土地改良区の賦課金も払えないなどの混乱を極めたわけです。
 私、三月に質問したときに、当時は金子農水大臣だったんですけど、助成金は削減するけれども産地交付金で上乗せできるんだと答えたんですね。それで、じゃ、どのぐらいのところがそれ使っているんだろうと思って東日本の各県に聞いたんですけど、北海道が五千円出しただけで、あとはどこもやっていないですよ。で、北海道では、水活交付金が出なければ水利代や地代が払えないという意見が出ています。
 産地交付金だけでは対応できないんじゃないかというふうに思うんですけど、その認識はありますでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答えいたします。
 牧草につきましては、今年度から、生産に要するコスト差ということなので、収穫のみを行う年は一万円、播種、管理、収穫まで行う年は三万五千円というふうにしたところでございます。
 これに関しまして、紙先生おっしゃるとおり、北海道では産地交付金を活用して十アール当たり五千円の支援ということにしたんですが、ほかの都道府県につきましては、産地交付金、作物、それから単価決められることになっておるんですが、上乗せのものが東北等の米の主産地において、それぞれの判断でそれぞれの品目に乗せられているということで、北海道の場合、特に牧草に対しての関心が特に強く、その道内のあれを踏まえて設定されたものというふうに考えております。

○紙智子君 ということは、ほかのところもやっているということですか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) ほかのところはほかのところで、牧草以外の、例えば野菜ですとか、例えば飼料用米ですとか麦ですとか、それぞれにそれぞれの戦略として、産地の中で考えている品目に上乗せをしているという、そういう状態でございます。

○紙智子君 本年度の対策も必要なんだけれども、来年度もこれ支援策必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 紙先生おっしゃるとおり、今回の経済対策でも、大臣申し上げたとおり、特に畑地化ですとか汎用化ですとか、そういった対策も今回の補正予算の中で検討はしておりますし、来年の当初予算に向けて、これからしっかりした予算は活用して、獲得をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 今回の見直しによって、いきなりやっぱり補助金削減されて先が見えないという訴えがあるわけですから、そのことを踏まえて考えるべきだと思います。
 それから、水田活用交付金を活用して中山間地でソバの生産も行われているんですけれども、農業新聞の九月二十四日付けで、水田見直し影響、秋田県調査、ソバ六割やめるという見出しで記事が出ていました。面積ベースでソバは六〇%、大豆は三四%が作付けをやめるか借地を返すというふうに回答していると。ソバにとって影響は大きいんじゃないかというふうに思うんですけど、これはいかがですか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答えいたします。
 全国のソバ生産の約六割は水田を活用して行われておりますが、水田においても需要に応じた生産を進めていくことが必要と考えています。このため、畑作物の生産が定着する水田は畑地化を促すようなことを今後進めていきたいというふうに思っております。
 このため、これまで把握に努めてきた現場の課題も含めて、一つは、畑地化後に麦、大豆のほか、ソバも含めて生産が定着するまでの一定期間の継続的な支援ですとか、畑作物の産地化に向けた基盤整備への支援等を今般の補正予算に盛り込み、需要に応じた生産に取り組む生産者に対しての支援策を検討しているところでございます。

○紙智子君 ということは、今言われたように、一定期間支援することを検討しているということですね。はい、分かりました。
 それから、水活見直しで農水省が水張り一か月提起という記事が出ていました。それで、五年で一度も水張りしない場合は水活の助成金の対象外とする方針なんだけれども、水張り期間を確認する必要があるので、水張り期間は一か月以上をめどにするというふうに言うわけですよね。そこで、だけども、一か月以上水張りということで問題が解消するかどうかというふうに思うんです。
 北海道の石狩川から大型の揚水機を使って水を使っている地域では、土地改良区は河川管理者である国から使用期間、使用量の許可を得て水を使っているんですね。七月から八月にかけて小麦を収穫した後に水を張るというふうになったとしても、夏場に大量の水が確保できるのかということや、河川管理者がそれを認めるのかとか、それから揚水機の電気代や人件費の経費はどうするのかとか、水を張ったんだけども、再び水を抜いて、次は秋まき小麦の種まきに果たして間に合うのかとかですね、多くの課題があるんですよね。
 この水張り一か月という提起が実現可能かどうか、可能だと考えているかどうかということについてお聞きします。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答えいたします。
 水田機能の確認につきましては、畦畔や用水路の有無で確認しようとすると現場において判断が困難なケースがあることから、水稲作付けを基本といたしますが、水稲作付け以外の方法で水張りをする場合は、用水による湛水状態が持続する期間として一か月以上水を張ることにより水田機能を有していると判断することとしたところでございます。
 北海道におかれましては、小麦の収穫後に、八月に水張りをしていただく、あるいは八月の中下旬に用水により湛水をして、止め水を行うことにより一か月間の湛水を実施していただくことは可能だというふうに考えております。
 農林水産省としては、地域における輪作体系を踏まえて適切なタイミングで水張りを実施していただくよう周知に努めますが、現場において水を張る順番ですとか期間について十分検討していただきたいというふうに考えております。

○紙智子君 やっぱりまだ不安なんですよね。ですから、実際それでやれるのかということはいっぱい不安持っているので、そこはしっかり、丁寧に話に乗っていただきたいと思うんです。
 それと、畑地化にしていく方向というふうに言われたんだけど、畑地化にするというのであれば、麦や大豆で本作ができる方向を示す必要があると思うんです。水田活用交付金の厳格化、見直しというのが、これ土地改良、土地利用型の農業を農政の中にどう位置付けるかということでもあるわけですよね。牧草にしても、水張り一か月にしても、これ地域が抱える課題というのはそれぞれ違うわけですよ。本当にいろいろ、多種多様だというふうに思うんです。
 ですから、やっぱり、見直ししたんだけども、一旦はこれ白紙に戻して、土地利用型の農業の在り方をもっとしっかりと検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、次のテーマなんですけど、これ先週舟山さんもやったんですけど、農業集落調査の廃止についてです。農林水産省が農業集落調査を廃止する方針を出したと。この方針に対して、反対声明などが多くの学会から出されているんですね。ちょっといろいろ調べてみたら、現在分かる範囲でいうと、農村計画学会、日本農業経済学会、林業経済学会理事会、農村問題研究学会幹事会、日本村落研究学会理事会、経済地理学会、日本地理学会理事会、人文地理学会常任理事会、歴史学研究会、日本史研究会、中山間地フォーラムなどです。
 それで、ネット署名が短い期間の中に千人超えて集まってきていると。短期間の間にどうしてこれだけの声明が次々出されているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房統計部長 菅家秀人君) お答えいたします。
 今委員より御指摘ございましたとおり、農業集落調査につきましては、学会等から調査の継続を求める多数の御意見をいただいております。これは、学会の研究者の方々などが本調査を学術研究上重視をされているということによるものであると考えております。

○紙智子君 そうなんですよね。非常に貴重な統計としていろんな研究に使われてきているので、これがなくなっちゃったらいろんな障害出てくるということを訴えているわけですよ。その中身一つ一つは紹介はしませんけれども、やっぱり非常に大事なんだと思うんです。
 それで、調査票の項目についても聞きたいんですけれども、例えば寄り合いの開催と地域活動の実施状況、それから地域資源の保全、それから実行組合についても聞いているわけですね。その中には、農業集落の行事とか、福祉厚生とか、集落共有財産、共有施設の管理とか、定住の促進などが入っているんですけれども、なぜこういう項目を聞いているのかについて説明いただきたいんですけど。

○政府参考人(農林水産省大臣官房統計部長 菅家秀人君) お答えいたします。
 農業集落調査は、御指摘今ございましたように、寄り合いの開催状況、地域の活動の実施状況などなどを調査するものでございます。
 この調査は、農業が営まれる現場でございます農業集落におきまして、農業に関連して地域でどのような活動が営まれているか、こういったことを把握をいたしまして、農業集落、農村の振興の観点から関係行政部局や学術研究に携わる方々に利活用いただくというものでございます。

○紙智子君 やっぱり地域の集落の持っている意味だとか、そういうことも含めていろいろ幅広く分かるものになっていると思うんですね。
 ちょっと総務省にお聞きするんですけれども、この調査というのは農業に直接関係しない項目も含めていろいろ聞いているわけなんですけど、これ、農業集落調査がもし廃止となったら、それに代わるような調査や統計というのはほかにあるんでしょうか。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 北原久君) お答えいたします。
 委員お尋ねの農業項目以外の調査項目というのは今お話がございました農業集落の寄り合い等についての調査事項ということと理解してございますけれども、国が実施している他の統計調査においてこれらを調査事項とするものは承知しておりません。

○紙智子君 そうなんですよね。なくなっちゃうわけですよね。
 それで、声明を幾つか紹介したいんですけれども、中山間地フォーラムの書いてある文言の中では、農村振興のための実態把握として特に重要なものが地域コミュニティー機能の状況であり、きめ細かな施策推進を図るためには、全ての個別集落について数字だけでは表せない活動状況などを把握することが極めて重要になると、農業集落調査は農業振興の重要な基盤となるものであるというふうに述べています。
 それから、林業経済学会の理事会の意見の中では、農林水産省、あっ、二〇二五年農林センサスにおいて農業集落調査を廃止するという方針を提案してきているけれども、これが確定、もししたならば、これまで蓄積されてきたデータの継続性が失われ、農業集落調査が保持してきた通時的な資料としての、また統計的な資料としての価値が大きく損なわれます。ちょっと中飛んで、特に中山間地域の研究を旨とする林業経済学において、農林水産省提案は学術的に看過できない重大な問題だということを書いているんですね。
 それから、ちょっともう一つぐらい紹介すると、これは人文地理学会が書いているものですけど、今回廃止候補に挙がっている項目は、集落の寄り合いや地域活動の実施状況、地域資源の有無、実行組合の有無など定性データが中心だと。前回二〇二〇年の調査でも、行政情報や民間データを利用した代替把握で省力化、合理化が図られたが、その検証もなしに今回の廃止案は時期早尚だと考えますということで、大体どの意見も見直しを求めているものが多いわけなんですよね。
 それで、集落のこの持続性というのは、日本農業の持続性と言っても過言じゃないと思うんです。食料・農業・農村基本計画は、都道府県や市町村、関係省庁や民間とともに現場に出向いて直接把握し、把握した内容を調査、分析の上で課題の解決を図る取組を継続的に実施する。現場に出向いてこれ直接把握するというふうに言ってるわけですね。
 大臣に伺いたいんですけれども、この農業の担い手不足とか限界集落などが今言われているときに、農村振興や農村政策をつくる上でも、この統計の連続性を担保する上でも、廃止方針というのはこれ取り下げるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野村哲郎君) 紙委員の御指摘、そしていろんな方々からもこういった御指摘をいただきました。
 実は、何でその廃止を今回するかといった原因は、全国の十四万集落のうちの五万集落からこれに答えていただけなかったと。それで、農林の、農林事務所、農政局の組織の方で全部聞き取り調査をせざるを得なかったという大変苦労を掛けた面がございました。
 これは、個人情報との関連だということで協力いただけなかったわけですが、しかしながら、今のやり方と同じ方法でもうやることは非常に難しいなということから、農林業センサスの農林業経営体調査の中で、今、先ほど来お話がありました寄り合いの開催状況だとか今まであったような回答をしてもらうことによって、引き続き同様のデータを収集することができるのではないかという見直しを今やっておりまして、実は本日、この農林業センサス研究会というのが開催されますが、この中で御議論をいただいてこれを変えていこうという考え方で、完全に廃止するということにはならないというふうに思います。

○紙智子君 見直しを今検討している途中ということなので、どういう見直しなのかというのはもちろん注目するんですけど、やっぱり、実際に出向いて調べていくというのは人手が要るというか、職員が減らされているということもあると思うんですけど、やっぱり重要な貴重な統計は、そこは確保してでもやるということでなければいけないと思うし、今、やり方を変えて今までのようなことを把握できるように考えているということでもあるので、是非ちょっとその方向で取り組んでいただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。