<第208回国会 農林水産委員会 2022年5月19日>


◇農業経営基盤強化促進法等一部改正案に対する反対討論

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 私は、日本共産党を代表して、農業経営基盤強化促進法一部改正案に反対、農山漁村活性化等一部改正案に賛成の討論を行います。
 農業経営基盤強化促進法一部改正案に反対する第一の理由は、農業の規模拡大路線を変えるものではないからです。
 基盤法は、農地の集積を、所有権ではなく利用権を移転し、農業の担い手に農地を集めるとともに、担い手には経営規模拡大、合理化を求めています。農地バンク法は、農地の流動化を加速させ、経営規模の拡大、農用地の集団化、高度化を進めるものです。
 安倍政権は、農産物の自由化を進め、攻めの農政、農業の成長産業化を掲げ、生産コストを削減するために規模拡大を加速させましたが、二〇二〇年の農林業センサスでは、経営耕地面積も農業経営体も基幹的農業従事者もこれまで以上に悪化し、地域コミュニティーの崩壊も進んでいます。規模拡大、効率化だけを求める政策は破綻しているんじゃないでしょうか。
 参考人からは、地域の担い手は大規模だけではないと言われましたが、規模拡大を優遇する担い手政策だけでなく、農地を維持し、持続的な生産を続ける中小・家族経営も担い手に位置付けるよう求めるものです。
 第二の理由は、農地の所有者に農地バンクに協力して農地の差し出しを強いる仕組みがあるからです。
 人・農地プランは、規模拡大を目指す地域の中心的な経営体に農地の集約化を進め、農地利用の将来像を示す計画です。改正案は、農地の所有者に農地バンクに利用権を移すように義務付け、そのために市町村に勧告まで求めています。
 また、農地所有者の三分の二の同意があれば、農地の利用権を農地バンクに差し出し、農地バンク以外に利用権を設定した者には五十万円の過料を科しています。人・農地プランは、地域で徹底的に話合いを進め作成すると言いながら、農地所有者に圧力が掛かるのは明らかです。しかも、これまで市町村で決めていた農地集積計画が農地バンクの農地利用計画に統合されれば、全農地の八割を担い手に集積する政府の方針がある以上、上からの計画化になる危険性があります。
 今の農業、日本の農業が抱えている生産基盤の弱体化は、農地政策を変えただけでは解決しません。農産物価格が低下する中で、農家の生活を支え、食料自給率を向上させる農政こそが求められています。
 なお、農山漁村活性化等一部改正案は、活性化計画に農用地の保全事業を追加することで荒廃農地の発生を抑制することにつながるため、賛成します。
 以上述べて、討論とします。

○委員長(長谷川岳君) 他に御意見もないようですから、両案に対する討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 まず、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。