<第208回国会 農林水産委員会 2022年5月19日>


◇国家戦略特区ワーキンググループでの安倍総理プレゼン資料について/法改正による農地の集約化、集積化について/農業を担い者の定義について/中小・家族経営への農家への支援の強化について/農山漁村活性化法改正案 農用地の保全事業について/人・農地プランの法定化について

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 前回の質問で、二〇一三年の五月二十八日の国家戦略ワーキンググループに提出された安倍総理のプレゼン資料を紹介しました。で、今日お配りをして今いるところであります。その一枚目の配付資料を見てください。当時の奥原経営局長が説明した資料です。

配布資料@2013年5月28日 国家戦略特区ワーキンググループ会議資料

それから、二枚目は農林水産省が提出した農業基盤強化法改正案の資料です。

配布資料A農業経営基盤強化法改正案資料

総理提出の資料では、今後十年間で担い手の農地利用が全農地の八割を占める農業構造を実現するためのスキームが農地集積バンクということです。
 農地集約がどのように進むのかということで、青色で囲ったところ、農地の集約、イメージのところを見てください。一枚の圃場三十アール区画には、A、農業法人、B、大規模家族経営、C、企業、D、その他の小規模家族経営が描かれているんですが、矢印で見て、じゃ一枚の圃場を一ヘクタール区画にするとどうなるか。これで見ると、農業法人、大規模家族経営、企業の農地が増えて、小規模家族経営がいなくなっています。この結果、赤字であるように、農地の集積・集約化でコストが削減するとあります。
 この資料を説明しているのは当時の奥原経営局長なんですよね。農林水産省も、これ同じ考え方だったんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 当時の担当局長から御説明したものだと思いますので、当時の農林水産省の資料として説明しているんだと思いますけれども。

○紙智子君 そうですよね。私、やっぱり小規模農家が離農する資料を農林水産省が説明したこと自体が本当驚きでした。
 二枚目のこの農林水産省の今回の資料を見てください。赤字で囲んでいるところ、目標地図のイメージというところを見てください。現状と目標地図が描かれていますが、経営体のイメージというのは書かれていないんですよね。それで、安倍総理のプレゼン資料のように、小規模家族経営がいなくなるということもあるのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今回の法案の中で、地域計画を市町村が作って、その中で目標地図を定めることとしています。その中では、農業を担う者ごとに、将来、十年後をイメージしておりますけれども、農地利用をきちんとやっていくという姿を描いていくことにしています。そのためには、分散錯圃している状況などを解消して集約化などを行って、効率的、総合的に使われるようにしていこうという内容でございます。
 したがいまして、何か、この場合、農業を担う者につきましては、経営体として、いわゆる担い手はもちろんございます、それ以外の多様な経営体ももちろん入る、全体の経営体を指し示すものというふうに担う者ということを御説明申し上げているとおり、経営規模の大小ですとか、家族か法人かの別を問わず位置付けられるものと考えております。

○紙智子君 ちょっと確認したいんですけど、小規模家族経営がいなくなる地域計画だってあり得るんじゃないのかと聞いたんですけど。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答え申し上げます。
 それぞれの地域でどのような姿になるかというのは地域の状況によって違うでしょうし、さらに、今回、協議の場を踏まえて地域計画を話し合う中で、それぞれの農地の出し手、受け手の情報を農業委員会が把握した上で目標地図を作成する過程の中で決まってくると思いますので、特定のケースを想定しているものではございません。

○紙智子君 余りはっきり答えていないんですよね。あり得るんじゃないか、全くないというふうに言えるのかというところなんですけれども。
 安倍総理のプレゼン資料に戻りますけれども、その資料の真ん中辺りに書いてあるんですが、農地バンクが地域内農地の相当部分の利用権を持つと。準公有状態と書いています。利用権が設定された農地は準公有地ということなんですけれども、これ考えてみると、個人の財産を準公有地にするというのは、何かよく分からないなというか、おかしくないかと思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 この総理プレゼン資料として今回お配りしていただいた資料の中心に農地中間管理機構(仮称)と書いて、言わば農地集積バンクと。農地集積バンクという言い方は今しておりません。農地バンクと俗称でも言っておるところでございます。このように、このプレゼンとか御説明は農地バンク法ができる前の話だと思います。
 したがいまして、あの当時の御説明としては、当時、農地バンクの仕組みを検討している状況でございまして、その中でいわゆるこの準公有状態をつくり出すという発言をしたものと思います。これ、農地バンク法ができる前でございますので、公的な性格を持つ農地バンクが広く地域の農地を借り受けることを分かりやすい形で表現しようとしてこの表現を使ったものと考えています。
 本件は、今申し上げましたように、バンク法ができる前の検討段階の御説明でございまして、バンク法ができた後は制度に即した説明を行っており、準公有状態という表現を使って説明するよりは、農地バンクはというふうに通常の説明しているのが基本だと思います。

○紙智子君 今はそういう言い方していないと言うんだけれども、今はそういう言い方していないということは、やっぱり間違っていたというか、そういうことではなかったということだというふうに理解していいんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) ただいま申し上げましたように、農地バンクというのは公的な色彩を持っている組織でございますので、その意味で、準公有状態として分かりやすく説明しようとして使ったということだと思います。

○紙智子君 ちょっといま一つ理解できないというか、大体、相対でやっていたときは個人の財産というか持ち物なわけだけど、これをそのバンクが入ってやったときに、この利用権が公有、公有状態だと。だから、公的に有するものになるんだということ自体が、それって何か変だなというふうに思うんですけど、それ自体は変じゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) 何回も繰り返して恐縮ですけど、準公有状態というのは、バンク法ができる前の制度が知られていない状況の中で、その農地バンクというのが公的な色彩、一旦借りて、それを受け手の農業者の方にお貸しすると、あるいは県公社がそれになったりするというような性格、公的な性格を持っているという意味でこのような表現を使ったものと考えています。

○紙智子君 やっぱり、ちょっとその辺が、何というか、はっきりしないまんま。
 それで、昔はそう言ったかもしれないけど今は違うということなんでしょうけど、バンク創設の当時、農業委員会排除する話もあったんですよね。利用権が設定されたら準公有地なんだというふうに言って、小規模家族経営の農地を農業法人と大規模家族経営、企業に農地を差し出す仕組みがバンクだったのかなというふうにも思うわけですよ。
 それで、担い手に農地の八割を集積する、この路線というのは実は今も変わっていないわけですよね。今回の基盤法の改正案もこの路線を推進するものになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今回の法案につきましては、今後、高齢化、人口減少が本格化して、地域の農地が使われなくなるおそれがあることから、利用されやすくなるよう集約化等を加速化していこうと、この課題は待ったなしという認識で法案を提出させていただいています。この中で人・農地プランを法定化して、将来の目標となる農地利用の姿を明確化して、集約化等を進めていくこととしています。
 今回のこの全体のスキーム、改正内容自身は、集約化目標を更に進めるということだけにターゲットをもちろん置いているわけではございません。集約化、例えば集約化などを進めることによって作業がしやすくなって生産コストや手間を減らすことができるようになる、その結果としてより農地を受けてもらいやすくなる、それで遊休農地の発生防止につながりやすくなる、それでスマート農業などに今後取り組んでいきたいという現場に対して取り組みやすくする効果もある、あるいは新規就農者や他地域の農家による利用にもつながりやすくなる、こういった効果を期待するものであり、そのうちの一つとして農地の集積にも、の向上にも寄与するものと考えております。

○紙智子君 農林水産省は、四月五日に、規制改革推進会議地域産業活性化ワーキング・グループに農業委員会の最適化活動についてという資料を出して、説明をしています。
 これ、二〇二一年の六月十八日に閣議決定した規制改革実施計画、ここには、農林水産省は、令和五年に全農地面積の八割を担い手へ集約するという目標と現状の乖離が著しいことから、農地の集約化に重点を置いて、地域が目指す将来の具体的な農地利用の姿を目標地図として明確化する、目標地図の実現に向けた農地中間管理機構を軸に強力に推進すること等を検討し、結論を得るというふうにあるわけですよね。
 この規制改革実施計画に応えて、今回、農林水産省は農業経営基盤強化促進法の改正案を閣議決定したというふうに答えているわけですよ。担い手に八割集積を進めるという改正案なんじゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答え申し上げます。
 担い手への集積、今回法案を提出させていただいて、そして国会でも御審議をお願いしている中で、担い手への集積が非常に重要であるということはこれまでも申し上げてきていると思います。これを横に置いて何か別のことをやるということではございません。
 ただ、担い手に集積していくということが重要であると同時に、今回、人口減少があったり高齢化が進んでいる中で農地が使われなくなるおそれがあると、それで分散錯圃の状況を集約化等をして地域において効率的、総合的にきちんと使われるようにしていく、そういう状況の中で集約化をすると効果の一つとして集積にもつながると、そういう御説明をしてきていると思います。

○紙智子君 農地を使われなくなったら困るから使えるようにしようと、それはよく分かるんですよ。
 農水省は、今回の改正に当たって、経営規模の大小を問わず、家族か法人かの別を問わず、将来にわたり地域の農地を適切に維持、活用するというように言っているわけです。農地の適切な維持という言い方をしているんですけれども、基盤法においても中間バンク法においても、この農地の維持という規定はないんですよね。これ、なぜ規定していないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今回の法案につきましては、農地がきちんと使われるように農地の集約化等に向けた取組を加速化するというものでございます。
 このため、今回の改正法案におきましては、例えば基盤法の第五条第二項第五号の基本方針の記載事項などにおきまして、農地が使われなくなることがないように、法令用語といたしましては、農用地の効率的かつ総合的な利用というのを明確に規定しております。これによりまして、個々の農地だけではなくて、地域全体で農地が適切に使われるようにしていくことを定めております。
 また、今回の改正により、農地バンク法のいわゆる農地中間管理事業につきましては地域計画の達成に資するよう実施するということを何か所かで規定しておりますが、この地域計画自身は、先ほど申し上げた基盤法の中でも、農用地の効率的かつ総合的な利用を図るためのものということを明らかにしているところでございます。

○紙智子君 私は、やっぱり農地の維持ということ自体が本当に大変な中で、きちんと農地の維持ということを入れる必要があるんじゃないかというふうに思うんです。
 農業を、基盤法にもバンク法でも、すっきりとやっぱり農地の維持というものを規定して位置付けるとより分かりやすくなると思うんですよね。これ、規定すべきじゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 法令用語の話になるかと思うんですけれども、法令用語としては、農地が、先生の御指摘ですと維持ということですけれども、法令用語としては、基盤法の中で、効率的そして総合的にちゃんと使われるんだという意味でその用語を利用ということで書いているという考えでございます。

○紙智子君 農地バンクの目的というのは、農業経営の規模拡大、農用地の集団化なんですよね。規模拡大がもちろん悪いと言うつもりは全然ありませんけれども、農地の維持ということが位置付かなかったら、幾ら農地の適切な維持というふうに言っても、これ実効性はないんじゃないかというふうに思うんです。
 それから次に、担い手についてお聞きします。
 これ午前中もちょっと議論になっていましたけれども、農業を担う者というのは、農水省の説明によりますと、認定農業者も入るし、それ以外の多様な農業経営者、それから農業に従事する雇用労働者、農作業の受託経営者、企業も入ります。半農半Xが脚光を今浴びていますから、イメージだけで先行している部分はあると思うんですけれども、余りにも範囲が広過ぎると思うんですよね。
 この農業を担う者の定義とか要件というのは必要じゃないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 農業を担う者ということを今回の法案の何か所で規定をしており、それの概要については先生お話をいただいたとおりでございます。
 経営体としては、担い手、そしてその他の多様な経営体、これも含まれるところでございます。そのほか、雇用されて農業に従事する者始め、農作業の受託サービスなどを行う人、農産物の生産活動などに直接関わっている人材、これを幅広く該当するという概念でございます。それで、家族か法人かにかかわらず、幅広く地域農業を支える方、人材を育成、確保していく観点から位置付けているものでございます。
 このため、今申し上げたように、また先生も御指摘いただいたように、農業を担う者というのは幅広い範囲の者が該当しているものであって、狭くこれを定義したり要件を何らか設けるということではなく、ものではございませんけれども、幅広く対象にしてそれぞれの現場現場で必要な人材が確保されるように各地域で取り組んでいただきたいと考えておりまして、幅広く対象になり得ることをしっかりと周知してまいりたいと考えております。

○紙智子君 だから、ちゃんと定義したらいいんじゃないですかということを繰り返し言いたいわけですよね。そうやっていろいろ、解説的にいろいろ言うけれども、ちゃんと規定したらいいじゃないですか。
 やっぱり、認定農業者が今高齢化していると、農地の継承が問題になっているということがあるわけです。企業が担う者として参入をして、認定農業者の農地を引き継いで経営を拡大するということも可能になるということだと思うんです。参考人質疑の中で、この企業の力を借りたいという農家もいると。しかし、コミュニティーにあつれきが生まれても困るという話も出されたわけであります。農業を担う者というふうに曖昧な言い方ではなくて、言うんだったらはっきり中小家族農業というふうに位置付けて書いたらいいんじゃないのかと思うんです。
 食料・農業・農村基本計画の中では、中小・家族経営など多様な経営体ということで表現しているわけですよね。ただ、位置付けは、担い手と違って、地域農業を支えるという役割なわけですよ。支援策も、担い手には、強い農業・担い手づくり総合交付金とかスーパーL資金とか手厚いものになっている。補助金で言えば規模拡大要件なんかもあるわけですよ。
 効率的かつ安定的な経営体とか認定農業者を優先するんじゃなくて、やっぱり中小・家族経営の支援も強化する仕組み、ここにしっかり位置付けて変えるべきじゃないかと思うんですけれども、これちょっと大臣にもお聞きしたいんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 地域計画における目標地図においては、目指すべき将来の農地利用の姿として、農業を担う人ごとに利用する農用地等を明らかにすることとしています。このため、目標地図には、経営規模の大小にかかわらず、また家族か法人かの別を問わず、将来にわたり地域の農地を適切に維持、活用する方々が位置付けられ、それらの方々による農地の効率的、総合的な利用を図ることといたしています。
 令和四年度予算では、機械等の導入支援を行う農地利用効率化等の支援交付金について、認定農業者等に加えまして、このような地域における継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者も支援対象といたしております。
 このように、中小・家族経営体も含め、地域の農業を担う者に対して、品目別対策や多面的機能支払、中山間地域等の直接支払等も含めまして支援策を実施するとともに、各地域で作成された地域計画の達成が図られるように必要な後押しを行ってまいります。

○紙智子君 結局、いろいろなことを議論するんだけれども、やっぱりどこに集中していくかといったら担い手のところに行くんですよね。だから、やっぱり私は、農地の維持の支援という問題と、それから中小家族農業、このことはきちっと位置付けて支援するということをきちっと書き込むということが必要だというふうに思います。
 それから、人・農地プランの法定化についてお聞きします。
 参考人質疑で、人・農地プランを作成しようと思っても、地域の合意形成に苦労しているという話が出ました。担い手になる人がいないとか、世代交代で相続された方が農地を手放したくないと、資産として持ちたいという人がいるのでプランをまとめるのは簡単じゃないという話も出たんですけれども、この地域計画、いわゆる人・農地プランの作成は法施行後二年以内ですけれども、十分な話合い、合意形成ができなければ、これ見切り発車することになりませんか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今後、高齢化、人口減少が本格化していく中で、農地が使いやすくなるように集約化等に向けた取組を加速化することは、どの地域にとっても待ったなしの課題だと認識しています。
 このため、今回の改正法案におきましては、基盤法に基づく基本構想を定めた市町村につきまして、農業者などの話合いを踏まえて農業の将来の在り方や農地利用の姿を明確化した地域計画をしっかりと定めていただくことが必要であり、周知期間と合わせて三年程度の策定期間を設けているところでございます。
 目標地図の作成時に受け手が直ちに見付からないなど最終的な合意が得られなかった農地につきましては、地図の作成後も随時調整しながら、その調整結果を目標地図に反映するため計画を変更できることとしており、地域の実情にも十分配慮した仕組みとしているところでございます。

○紙智子君 計画は変更することもできるという話があるんですけれども、やっぱりこの協議が調わないで先に行かれてしまうと、これはもう禍根を残すことになりかねないなというふうに思います。
 それから、農山漁村活性化法案についてもお聞きします。
 農用地の保全に関する事業が追加されるわけです。で、事例として放牧や鳥獣緩衝帯や林地化ということで掲げられていますけれども、この中山間地域で生産者は荒廃農地を出さないように懸命に生産活動をしているわけですけれども、農用地の保全事業ができたということで、これ耕作している農地を安易に保全地域に入れることにはならないかどうか、この点どうですか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) お答え申し上げます。
 農地につきましては、まず地域でしっかり話合いを行っていただいた上で、農地が利用されやすくなるように集約化などを進めて農業上の利用を行うということが基本でございます。
 一方、御指摘いただきました農用地保全事業でございますけれども、これは様々な努力を払ってもなお農業上の利用が困難であると判断される農地を対象とすることを考えておりまして、例えば、この遊休化が進み、農業生産を再開するよりも鳥獣緩衝帯として活用することが合理的な農地、あるいは、その周囲を森林に囲まれるなど、ほかの農地から地理的に切り離されておりまして集約化を図ることが困難な山際の農地、こういったものが対象として考えられるところでございます。
 しかしながら、この優良農地を守るということがまずもって基本でございますので、むやみにこういう林地化が行われることがないように、農用地保全事業の考え方につきましては、今後策定をされます基本方針等におきまして明記をいたしまして、地域においてその適切な運用が図られるよう周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 参考人からも義理人情も大切だと言われて、発言出ていましたけれども、今まで頑張ってきた生産者が意欲をそぐことがないような十分な話合いと合意形成が必要だと思います。
 それから、続けて、人・農地プランについてお聞きします。
 地域計画の達成に向けて、地域が連携して機構、農地バンクに働きかけをすることになっています。基盤法の二十一条では、農業委員会は地域計画の区域内の農用地等の所有者に機構への利用権の設定等を積極的に促す、所有者は機構に対する利用権の設定などを行うように努めるとあります。その上で、第二十二条の二で、市町村は、地域計画の区域内の農用地等について、機構への利用権の設置等が必要なときは所有者に機構と協議するように勧告するとあるんですね。
 この農地の所有者に促して、努力義務を課して、さらに勧告までするって、これ、なぜこんな行政指導が必要なんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今回の法律案の背景については、これまでも御説明申し上げましたけれども、今後、高齢化、人口減少が本格化していく中で、地域の農地がきちんと使われなくなるおそれがございます。このためには、農地が利用されやすくなりますように集約化等に向けた取組を加速化すること、これはどの地域においてももう待ったなしの状況だというふうに認識しております。このため、今回、農地の所有者等につきましても、農地バンクに対する利用権の設定等を行うよう努めるという規定を設けているところでございます。
 また、今回の措置については、最終的に利用権を強制的に設定するというような仕組みではなくて、基本的には働きかけ、こういったことを中心にして取組が地域計画の実現に向けて促進されるようにしていくということでございますので、農業委員会が農地バンクへの貸付け等を積極的に促進をしたり、あっ、失礼しました、農業委員会が積極的に促進をしたり、農地バンクが所有者等に対して取得に、中間管理権の取得等に関する協議を積極的に申し入れることとしているところでございます。

○紙智子君 強行的にすることではないんだと言うんですけど、やっぱり話合いとか協議とかいっても、決まってしまったらやっぱりそれを進めることになるんだと思うんです。
 提案に基づく地域計画の特例についても聞きます。
 第二十二条の三、農業委員会又は農地等の所有者が農地を貸し付けるときは、機構と提案をするときは農地所有者の三分の二以上の同意を得ること、二十二条の四は、提案を受けた市町村が特例の地域計画として策定する場合、対象区内の農用地等の所有者は機構以外の者に利用権の設定等を行ってはならない、そして三十五条で、機構以外の者に利用権の設定を行った者は五十万円以下の過料に処すと。
 なぜこんな圧力ともいうようなことをやる必要があるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今回の改正法案におきまして、市町村が地域計画を策定することとしておりますけれども、その特例として、委員御指摘のとおり、地域の農地所有者等が三分の二以上の同意を得て市町村に提案して地域の農地について貸付け等を行う際には、相手方を農地バンクに限定する旨を地域計画に盛り込むことができる規定を措置しております。
 この仕組みは、先ほども申し上げましたけれども、強制的に利用権を設定するというものではなくて、農業者等による協議を円満に継続できるように措置するものでございます。現行の基盤法におきましても、地域の農地所有者等が組織する団体が区域内の農地を担い手に集積するため、農用地区域の農用地の所有者の三分の二の同意などを得て、農地の貸付け等の相手を農地バンクなどに限定をし、これに違反した場合、五十万円以下の過料に処する仕組みがございます。今回はその仕組みを地域計画と関連させて同じ基盤法の中で移し替えたものでございます。
 農地の集約化等を円滑に進めていくことが重要であり、できるだけ丁寧に話合いを行って合意形成に努めていただけるようにしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 三分の二っていうんだけど、三分の一の人っていうと結構多いですよね。百人いたら三十人はいろいろ異論だということなんで、三分の一の同意がなくても集約化すると、これやっぱり少数を切り捨てることになるんじゃないかという思いがします。
 基盤法の利用集積計画がバンク法の利用配分計画に統合されて農地利用集積促進計画になります。今回の改正案が、全農地面積の八割を担い手に集約することを求めている規制改革実施計画の対応策ですから、やっぱり上からの押し付けになりやしないかなというふうにも思います。
 私は、人・農地プランが悪いと言っているわけではなくて、プランを作るにしても、勧告とか過料とか市町村の農地集積計画をこれ都道府県の農地利用計画に統合すると、これ農地所有者に協力を強いて、市町村の自主性じゃなくて上からの計画になりはしないかというふうに心配するわけです。
 そこで、農地バンクにも課題もあるんですけれども、農地を流動化する仕組みそのものは必要なんだけど、農地バンクはなぜ県に一つなんでしょうかね。これ、一つではなくて、市町村や農業委員会や現場に近いエリアもバンクが設定されれば現場目線に合った集約化になるんじゃないんだろうかと。規模拡大を求める目的も変えて、これ変える必要があるというふうに思うんですけれども。やっぱり生産者が今減っている中で、どこも足りないと言っている中で、農地の集約、集約というのは望まれてはいると思います。これは農地や地域農業を維持するために必要なんだと思うんですよ。
 現場に近くて、現場に足を運ぶバンクがあった方がいいんじゃないかというふうに思うんですけど、これ大臣にお聞きします。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 農地バンク事業は、農地バンクが農地の所有者から自ら農地を一旦借り入れまして、その上で受け手に一団の農地で転貸するものであります。
 この場合、同一都道府県内で複数の農地バンクが活動しますと、各農地バンクがそれぞれに農地を借り入れることとなり、まとまった形で転貸することが困難になると考えられることから、その数を都道府県に一つと限っています。
 また、農業者の高齢化、人口減少が本格化する一方で、受け手の営農区域は広域化していることから、市町村の区域を越えた広範囲で幅広く受け手を確保する必要があるため、都道府県段階の組織としているところであります。
 農地バンクについては現地コーディネーターを増員することとしており、現場での具体的な協議等の場において農地バンクが自らが農地バンクの役割、メリット等を地域の農業者に対して丁寧に説明するとともに、農業者からの相談を受けることといたしております。

○紙智子君 ちょっと時間がなくなってきたので、あと二点、併せて聞きます。
 待ったなしの課題として参考人の皆さんが言われていたんですけど、農業委員会の事務局体制の強化ということです。人・農地プラン地域計画が軌道に乗るかどうかというのは、農業委員会の力量や懐の深さや広さに懸かっていると言っても過言ではないと思うんですね。そうなると、やっぱりマンパワーと財政的な裏付けが必要じゃないかということが一点。
 もう一つ、改正案は人・農地プランを法定化するものなんですけれども、担い手に農地を集める、集積するということですから、農地政策だと思うんです。しかし、輸入自由化が進んで、今の日本農業が抱えている課題というのは、農地政策だけ変えても解決しない問題もあるわけです。参考人質疑では、農地だけではなく国のグランドデザインを示して農業で飯が食えれば担い手は生まれるんだという話もありました。こうした意見に大臣どうお答えになるのかという、二点、お答え願います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 農業委員会が作成、目標地図の素案については農業委員会が作成することとしてはおりまして、農業委員会の事務局体制の強化を図ることは重要と考えています。
 農林水産省におきましては、農業委員会に対して、農業委員会交付金で基礎的経費への支援を行うとともに、農地利用最適交付金によりまして農業委員会の農地集積等の最適化活動を支援していくことといたしております。この農地利用最適交付金につきましては、現場で使い勝手が良くなるよう、令和四年度予算におきまして、委員報酬に加えて、新たに事務費も活用できるように見直しを行いまして、この中で臨時職員の配置等も支援しております。
 さらに、都道府県農業会議に対しましては、農業委員会の業務を巡回サポートするための経費を支援しており、農業委員会の業務の円滑化を図ってまいりたいと考えております。
 なお、平成二十七年の農業委員会改正法において、農業委員会の事務局職員の確保及び資質の向上を図るよう努めている旨の努力規定を設けたところであり、農業委員会の事務局員数は、平成二十九年の七千七百人から令和三年には八千五十七人まで増加をいたしております。
 グランドデザインについてのお尋ねでございますが、食料、農業及び農村に関する国の総合的な指針につきましては、五年ごとに食料・農業・農村基本計画を定めまして、施策の基本的な方針、食料自給率の目標、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を示しているところであります。
 また、本計画と併せて、農業経営の展望を作成し、家族経営を含む多様な担い手が地域の農業を維持発展する参考となるよう、営農類型、地域別に経営規模、農業所得などを試算した農業経営モデルを示しているところであります。
 今後とも、国の総合的な指針といたしまして食料・農業・農村基本計画を適切に策定していくことで、農政全体像を示してまいりたいと考えております。

○委員長(長谷川岳君) 時間が来ていますので、よろしくお願いします。

○紙智子君 はい。
 時間になってしまいましたけど、やっぱり、私、人と環境に優しい農政をということをずっと言い続けていまして、中身はまた次回にしたいと思いますが、引き続き議論していきたいと思います。
 ありがとうございました。