<第208回国会 農林水産委員会 2022年5月17日>


◇人・農地プランの作成での苦労について/生産基盤の弱体化について/農業の担い手の確保について/農業経営基盤強化法改正案における目標地図の作成について

参考人
阿賀野市農業委員会会長職務代理 笠原 尚美君
全国農業会議所事務局長     稲垣 照哉君
浜松市農業委員会委員      森島 倫生君

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○委員長(長谷川岳君) 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、阿賀野市農業委員会会長職務代理笠原尚美君、全国農業会議所事務局長稲垣照哉君及び浜松市農業委員会委員森島倫生君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、笠原参考人、稲垣参考人、森島参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず笠原参考人からお願いいたします。笠原参考人。

○参考人(阿賀野市農業委員会会長職務代理 笠原尚美君) ありがとうございます。笠原尚美と申します。ただいま御紹介いただきましたように、新潟県阿賀野市農業委員会会長職務代理を務めております。
 本日は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案と農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案に関する参考人質疑の場にお呼びいただき、誠にありがとうございます。このような場でお役に立てることは大変光栄なことでございますが、大変緊張もしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、市町村合併の平成十四年七月から二十年間農業委員を務めております。委員を拝命したのは、一番下の息子が一歳になるかならないかのときでした。家族の理解もあり、委員活動の際には子供の世話の必要はありませんでしたが、一度だけ家族の都合が付かず欠席の連絡をしたところ、合併前の旧京ケ瀬村村長から、預かり保育ができるように手配するので気にせずに職務に就いてください、あなたの仕事は公職なのですと言っていただいたことが私の農業委員としての原動力の一つとなっております。
 農業委員を拝命した当初は農地の権利移動は多くなかったのですが、七年ほど前から私が担当する地域でもあっせんの申出が年々増加し、現在は、人・農地プランの実質化も相まって、まさに農地を動かしていると日々実感しております。
 お手元にお配りしております資料は、全国農業新聞に隔月掲載されているもので、私の日々の農地あっせん活動を構成、作画されたものです。農地あっせんの際、どんなふうに農業者と向き合い、思いを受け止めて農地を動かしているかを知っていただきたく、今回の資料とさせていただきました。御覧いただければ幸いです。
 私自身が農地のあっせんで権利移動した面積は二百ヘクタールを超えたと思います。昨年度一年間だけでも、隣接市町村を越えて行ったあっせんも含めると十五ヘクタールほどとなっており、近年どれだけ農地が動いているかを御想像いただけるのではないかと思っております。
 こうした長年の農業委員会活動の中で行ってきた現場での活動や、各種の農業施策に取り組んできた現場経験を踏まえ、私の考えを申し上げたいと思います。
 まず、新潟県阿賀野市の農業について御説明いたします。
 阿賀野市は、越後平野の北東に位置し、新潟市内まで車で三十分程度の距離にあります。耕地面積は六千四百五十七ヘクタール、そのうち約六千百ヘクタールが水田となっております。農業はイコール稲作と誰もが思っているような水田地帯で、土地利用型の営農がほとんどを占めております。令和三年四月現在の数字ではありますが、これまでの担い手への集積面積は四千百七十三ヘクタール、集積率は六四・六三%です。
 続いて、当市の農業委員、農地利用最適化推進委員についてです。現在の農業委員数は十九名、農地利用最適化推進委員数は十五名ですが、本年七月に改選があり、農業委員十五名、農地利用最適化推進委員十一名と、それぞれ四名ずつが減員されることになっています。事務局は専任職員六名と臨時職員二名の八名で、県内でもかなり恵まれた事務局体制となっております。
 当委員会の特徴を幾つか挙げさせていただきます。
 一点目は、農業委員会として、経営状況等の証明事務、並びに市全体の農地、農家の最新情報を整理し、現況との乖離を防ぐことを目的に、毎年一月一日現在の経営状況調査を行っております。既に七年分の調査の蓄積があり、あっせん活動や相談業務などの個別資料として活用しています。
 二点目は、誰にどんなふうに農地を動かすのかを明確にし、あっせん担当委員のばらつきを減らすため、昨年十二月に阿賀野市あっせんマニュアルを委員が作成し、そのマニュアルを基にあっせん活動を行っております。
 三点目は、市町村境のスムーズなあっせんや農地価格の情報を得るため、隣接する新潟市北区、新発田市の市町村境を担当する農業委員、農地利用最適化推進委員同士での情報交換を改選のたびに行っていることで、こちらについても委員からの提言から行っているものです。
 以上三点は、いずれも農地利用の最適化を目的としており、円滑な農地の権利移動の一助となっております。
 それでは、まず、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の内容について、私の意見を述べさせていただきます。
 今回の改正法律案では、これまで地域で進めてきた人・農地プランを法定化し、農地の集約化を図るため、地域での話合いで十年後の農地利用の姿を目標地図として明確にすることだと理解しています。
 私は、以前から、人・農地プランの話合いや規模の大きなあっせん等の際には、委員としてその地域の将来を見据えた青写真を持って地域に入るべきだと考えてきました。実際に私が地域に入る際は、対象となる地域の担い手は誰なのか、どの程度の規模拡大が可能なのか、自分が把握していない隠れた担い手はいるか、地域の担い手に集約まで見据えた権利移動を行うにはどういった手法を取るといいかなど、先ほどお話しした経営状況調査や周辺の情報収集を行った上で地域に入るようにしています。ただ目の前の農地を動かすことに注力するのではなく、地域にある農地や農業者の十年先、二十年先を想像するわけですが、もちろん私が描いていた青写真は正しいものでもなく、完成したものでもありません。地域の中で話合いをするたびに描き直しをし、地域の皆さんと共有し、一緒に考え、作り上げていくものだと思っています。今回の農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の要の一つである目標地図は、私の考える青写真を見える化することではないかと思います。
 ただ、農地は個人資産であり、一筆一筆に農業者それぞれの思い入れがあるものです。所有者の合意や地域の賛同が必要であり、地域での丁寧な説明は必須と考えます。
 これまで、人・農地プランがどういったものなのかの説明をし理解を得るまで、それぞれの地域で何度も説明を重ねてまいりました。それは決して単純なものではなく、かなりのマンパワーと時間を要します。また、人・農地プランが実質化したことで満足し、その先に進んでいない地域が多数あるのも現実です。こうした状況を打開するためにも、丁寧な説明を重ねることが必要だと考えます。先ほど当市の農業委員会事務局の体制は恵まれていると申し上げましたが、それでも十分ではありません。他の市町村も同様ですので、マンパワー不足への手当てについては特段の御配慮をお願いしたいところです。
 また、一口に集約と言っても、基盤整備が進んでいる地域と進んでいない地域、基盤整備事業を希望しない地域では集約の在り方も違います。地図上では一見集約されていないように見える場合であっても、水利状況などによっては担い手の作業性が良いケースもありますので、現場に即した目標地図の作成が必要であり、図面の上だけで集積、集約を判断することはできないと考えております。
 地域計画、目標地図の作成は、受け手である地域の担い手を現在よりも更に明確にし、出し手となる農業者が今後自分の農地を誰が担ってくれるのかを見える化するものと考えます。受け手である担い手は将来の経営計画を描きやすくなりますし、出し手の農業者は自分の農地を将来誰が担ってくれるのか明確になる安心感を得ることができます。双方が制度をしっかりと理解して定期的に見直していくことで農地を通して地域の将来を考えることができるものであり、この後に意見を述べさせていただく農山漁村活性化法にもつながるため、本改正案の成立に大きな期待を持っております。
 続いて、農地バンク運用の抜本見直しについて申し述べさせていただきます。
 農地バンクの運用が始まった当初は、農地バンク経由での農地の貸し借りを促してもちゅうちょする農業者が大変多くいましたが、近年は、賃借料支払の簡便性などを理由にバンク利用が大変増加しております。
 これから先、集積、集約が進めば、新規受付の増加に加え、農地利用集積円滑化事業からの移行や利用権の再契約手続が大幅に増えるとともに、移転手続や賃借料の変更等が増加すると考えられます。農地バンクが滞りなく事務手続ができるよう配慮が必要と感じております。
 さらに、現状の農地中間管理権の設定には、配分には都道府県知事の認可が必要なため、利用権設定の倍の時間が掛かることを嫌がる農業者もいます。
 こうした懸念を払拭するため、農地中間管理権の設定等に係る都道府県知事の認可は市町村長に権限を移譲していただき、農用地利用集積計画と同様に遅滞なく権利移動ができるよう御配慮いただくことで、バンク一本化にスムーズに移行できると感じております。
 農地中間管理事業への一本化は、貸し借りを促進するルートが農地バンクに集中されることにより手続の煩雑さが緩和され、地域が一体となった貸し借りの手続が可能となるなど、担い手への一層の集積、集約や目標地図の実現につながるものと期待しています。
 続いて、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案について述べさせていただきます。
 私は、農林水産省において開催された長期的な土地利用の在り方に関する検討会の委員として、土地利用の観点から検討に参加させていただきました。
 既に人口減少社会が到来し農業の担い手も減少する中、特に中山間地を中心に農地の集積や集約、新規就農支援やスマート農業の普及など、様々な政策努力が払われてきましたが、それでもなお耕作困難な農地が発生しています。また、今後も増加することが予想されています。このため、検討会では、地域の将来像について話合いを促しながら、放牧や蜜源等に活用する農地の粗放的利用など、人口減少や高齢化にも対応できる多様な土地利用とその実施の仕組みについて検討を進めてきました。
 検討会における議論の基本的な考え方は、地域の土地利用に関して地域で徹底した話合いをすること、様々な政策努力の下、放牧や景観作物などの粗放的利用も含め、農地を農地として利用することを基本としつつ、それでもなお農地として利用が困難な土地については、鳥獣害被害軽減のための緩衝帯など、農業生産の再開が容易な用途として利用することです。
 しかし、そうした用途を検討してもなお農地として維持することが極めて困難であり、将来にわたって農地として利用される見込みがない土地があるのも現実です。そうした農地ではあるものの林地として利用することが有望な土地については森林として利用することも検討し、貴重な地域資源である農地を極力保全することに重きを置いた検討が進められました。
 その検討結果が現在御審議いただいている農山漁村活性化法の改正であり、農用地保全事業として結実しています。
 地域の土地利用の在り方については、人・農地プランの話合いと一体的に話し合っていくことが何よりも大切だと思います。基盤強化法と活性化法の両方を一体的に話し合うことで、現場における話合いの手戻りや競合を防ぐことができると考えるからです。
 また、粗放的利用や管理については面的集約が必要ですが、既に非農地となっている元農地が虫食い状態で存在している中山間地もかなりあると思われますので、そういった元農地なども一元的に管理、活用ができるようにする必要があると思います。農山漁村活性化法案の改正は、そうした取組を行う際にも役立つものだと思っております。
 農業委員会は、農地パトロールを行い、遊休化した農地を農地に戻すよう指導してきました。しかし、特に中山間地域の多くの現場を見るたびに心苦しく思っていた農業委員、農地利用最適化推進委員がたくさんいます。
 中山間地の農地の荒廃は、水利などで平野部にも大きく影響を及ぼします。是非、今回の農山漁村活性化法の改正で現場での農地保全の選択肢を増やしていただきますようお願い申し上げます。
 以上、今回の改正法案について、私自身が感じている課題等も併せて所見を述べさせていただきました。いずれの法案についても賛成であり、早期の成立をお願いしたいと考えております。また、法律の周知や施行、運用については、でき得る限り無理のない方法の検討をお願いいたします。
 農業委員会は、活動の見える化を強く進めております。今回の両法案の改正によって、まさに活動の見える化が体現でき、地域農業の将来あるべき姿を地域とともに考え、農地という観点から携わっていけることは大きな喜びであり、誇りでもあります。今後も、農業委員として、地域の農業者と信頼関係を深めながら活動してまいりたいと思います。
 本日は、拙い御意見を御清聴いただき、大変ありがとうございました。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございます。
 次に、稲垣参考人、お願いいたします。稲垣参考人。

○参考人(全国農業会議所事務局長 稲垣照哉君) 全国農業会議所の稲垣でございます。
 本日は、このような機会を頂戴し、本当に深く感謝申し上げます。
 全国の農業委員会、現在、千六百九十七委員会ございます。そこに、約二万三千人の農業委員さん、さらに約一万七千人の農地利用最適化推進委員さん、両委員合わせると約四万人の委員さんとそれを支える約八千人を超える事務局の職員の皆さん、そういう声を踏まえ、法案審議に少しでも参考になるようなお話ができればと思い、お話をさせていただきます。具体的には、今回の法律改正の意義と課題を中心に意見を申し述べさせていただきます。
 御案内のように、農業委員会は、平成二十七年の農業委員会法の改正を踏まえ新たな必須業務となった農地利用の最適化の活動に、農業経営基盤強化促進法などをフル活用して、組織を挙げて取り組んでまいりました。そして、毎年、その成果と課題を踏まえて、政策提案を国会、政府へ取りまとめてお届けしてまいりました。
 今申し上げました詳細は、別添の資料の最終ページに、昨年の政策提案のうち今般の法律改正の条文に反映された部分だけを抜いてまいりました。こんなにも多くの条文に、この間の農業委員会の政策提案、農業委員会の思いが受け止めていただいていると認識している次第でございます。
 以上を踏まえて、本日は、この法案の四つの点について意義と課題を申し述べさせていただきます。
 一つは人・農地プランの法定化について、二つは農地バンクの運用の抜本見直しについて、三つ目は多様な農地利用について、そして最後に農地法の下限面積の撤廃の問題についてでございます。
 まず、人・農地プランの法定化の意義でございますが、やはり、地域における話合いの結果が地域の農業の将来の在り方、農地利用などについて法律にしっかりと根拠を持つものとなり、その意義は大変大きいものがあると思っております。
 その際、基盤法の中に、効率的かつ安定的な農業経営に加えて、農業を担う者を新たに明記いただいたことは、従来、ややもすると、現場でプランの話合いをする際に、中心経営体のためにやるのかとか、また農家の方から、俺に農業をやめるのかみたいな感情的なやり取りがあることも事実だったわけでありますが、今般、この一文を入れていただいたことによって、地域一丸となって取り組める契機ができたものと考えております。
 そして、基盤法の二十一条に、地域計画の実現に向け、我々農業委員会が農家の皆さんに積極的に働きかけることを法律に明記いただきました。現在、農業委員会は、農家の皆さんからあっせんなどの申出があってから農地の利用関係の調整、売買、貸借に動くという受動的な立場にあるわけですが、今回の改正で、能動的に地域のために働きかけてまいるように位置付けていただいたものと考えております。
 課題でございますが、この法定化の取組に当たっては、今回の基盤法の十八条、農業者などによる協議の場の設定、ここが決定的に重要だと思っております。これは、市町村のリーダーシップの下、JAさんの農業生産であるとか販売、また土地改良区さんの農地整備などの知見を持ち寄って地域のグランドデザインを描く、これで今後の成否が決まると認識しております。
 それを踏まえて、我々農業委員会が目標地図の素案を作るとされておりますが、現場の委員会では、やはり令和七年までに農業委員会だけで作り上げることができるのかという不安があることは事実です。
 地域の農業の実態や農業委員会の体制など、様々な市町村の実態を踏まえると、農業者の今後の営農意向や農地の貸借意向を地図に落としたあらあらの素案を作る農業委員会から、地域の農業を担う者ごとに利用する農地が明確になったほぼほぼ完成版、聞くところによりますと、今日御参集の先生方は、先日、埼玉県の東松山市の方に調査に行かれたと思いますが、あれがほぼほぼ完成版という理解だと思っているんですが、かなり幅広くその地図ができてくるということを強調させていただきたいと思います。
 また、農業委員会によっては、事務局に職員が一人しかいないところ、又は専任職員が一人もいないような、そういうところも少なくございません。目標地図の作成に当たっては、市町村の農政部局など関係機関と一体となった体制を築けるかが成否を握っていると認識しております。
 したがって、人・農地プランの法定化とは、従来以上に農業委員会が地域の農業者の皆さんの意向把握を徹底し、それを地図に落とし込んで、その取組を踏まえて現在各地で進められている人・農地プランの実質化の取組を更に発展させ、地図化、図示することについて地域の皆さんで合意、公表していくことだと思っております。
 実質化が既に済んだところ、現在実質化に取り組んでいるところは話合いがなされているわけですので、そのような地区では地域計画の作成にさほど抵抗感なく取り組めるんだろうと思っております。ただ、法律の施行当初は、担い手が不在、そこへ農地を集積することを地図化することが困難なケースが少なくないと思います。その場合でも、JAさんの農作業受委託などを活用して、順次目標地図の完成に向けて練り上げていくことになると思っております。息の長い地域の話合いに取り組める手だてが重要であろうかと思っております。
 次に、農地バンクの運用の抜本見直しの意義について申し述べます。
 基盤法の二十二条に、農地バンクの事業推進に当たっては、地域計画の達成に資すると明記されたことについて、個人的にも非常にうれしく思っております。地域計画の達成に資するということになれば、バンクさんは、バンクは、農業委員会、市町村など現場の関係者とともに計画の実現を目指す同志的な、より身近な存在になってくださると期待をしております。
 また、バンク法の第十八条で、農地バンクさんがバンク計画を策定するに当たって、我々農業委員会の意見を漏れなく聞くということも明記いただきました。これによって、現在、農業委員会は、バンク計画の設定に当たって、極めて限定的な関与から全面的に関与できるようになり、農業委員会と農地バンクの一体的な運用が進むものと期待しております。
 一方、課題としては、市町村の利用集積計画を新たなバンク計画である農用地利用集積等促進計画に統合、一体化することについて、現場の農業委員会には不安と戸惑いがあることは事実でございます。二つございます。
 一点は、農地バンクさんが本当に農地法第三条以外の農地の権利移動に遺漏なく対応できるのかということであります。農地バンクさんが間に入ることにより、農地の権利設定の手続について全て都道府県知事さんが扱うこととなり、これに伴う時間と手間の発生、小作料などの受取の問題、これに対して農水省さんは事務の抜本的な簡素化ということをうたっていらっしゃいますが、一刻も早くその姿をつまびらかにしていただきたいと思っているところであります。
 一本化の二つ目の課題は、市町村の利用集積計画による利用権設定がなくなることへの不安です。一九八〇年、基盤法の前身法であります農用地利用増進法制定以来、耕作権の強い農地法三条に基づき、一旦農地を貸したら返ってこないという不安を払拭するため、期間の定めのある賃借権を設定することにより、期間が終了すれば農地が確実に戻り、安心して再設定ができるという制度が現場に果たしてきた役割は非常に大きかったわけでございます。これがなくなることについて、えっと懸念があるわけでございます。
 しかし、今般の改正で、バンク法の第十八条第十一項に、農業委員会がバンクさんに対して農用地利用集積促進計画を策定することを要請できるという条文を明記いただきました。これと農用地利用集積促進計画に関する都道府県知事さんの認可権限を市町村に移譲することをセットで運用すれば、毎月、市町村で利用集積計画を決定、公告しているのと同等、むしろ現行の利用権設定にバンク特約が付いたと認識、運用すれば、農地バンクへの農地集積が促進され、地域計画への取組と一石二鳥の効果をもたらすと思っております。何とぞ、政府におかれましては、このような取組について前広に御指導をいただけたらと思うわけであります。
 三点目の多様な農地利用については、農地利用の最適化に取り組む農業委員会の多くは、担い手に直ちには集積できない条件の悪い農地、また遊休農地でも直ちに非農地判断できないような農地がたくさんある中で、すぐに圃場整備などができるわけではなく、暫時遊休化したり、遊休化の度合いが増していることに、その対応に苦慮しているわけであります。
 今回、活性化法で、農用地保全として放牧、鳥獣害緩衝帯、林地化など多様な取組が明らかにされ、事業にもつながるため、地域計画の取組とうまく活用して地域全体の効率的かつ総合的な取組と持続的な土地利用の実現に資するものと思っております。このような、圃場整備のように多額なコストと時間を要する手だてに代わり、コストを掛けずに農地保全ができる手だてが講じられたその意義は大変大きいのではないかと思っております。
 私ども農業委員会は、農地法や基盤法に比べて活性化法について余りまだ周知が徹底されておりませんので、その徹底と御指導の強化が必要かと思っております。
 課題としては、基盤法で進める地域計画とこの活性化法の活性化計画が、現場で取り組む際に調和して取り組めることが大事であり、競合したり、二度手間になったり、手戻りのないような運用が重要かと思っております。
 最後に、農地法三条の下限面積の撤廃についてでございます。
 意義としては、農業者の減少、高齢化が進行する中で、農村の定住、活性化のため、野菜、果樹など多様な新規参入を受け入れたり、さらには半農半Xを推進することは、農村、特に中山間地域などの振興を図る上では意義があると思っております。
 課題としては、下限面積要件は農地法三条による権利移動を判断する際の有力な根拠条文でございます。下限面積がなくなった場合、投機的な農地取得が行われるのではないかとの不安が現場にはございます。一方で、下限面積要件を廃止しても、農地を全て効率利用する、常時農業に従事する、周辺の農業に悪影響を与えないといった他の要件は引き続き存置されるわけであります。
 今後、目標地図に基づいて農地の集約化などを進めていくことになります。こうした動きと半農半Xなどの農地利用についていかに調和させていくのか、そういうことを地域計画の中で、農地権利取得に当たってのルール作りなりその運用を明らかにしたガイドラインなどの提示が重要であろうかと思っているところであります。
 以上、今回の法案についての意義と課題を申し述べさせていただきました。
 参考資料にも記載いたしましたように、農業委員会系統組織は、市町村、農業委員会、農地バンクなど関係機関が一丸となって人・農地プランの作成に取り組めるよう、その法定化を要望してまいりました。また、これを見越して、我々は本年度の事業推進も計画しております。
 そういう意味では、今国会での審議について、全国の農業委員会の委員さんは固唾をのんで見守っていらっしゃるのだろうと思います。どうか枝ぶりの良い法律となりますよう、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。そして、今後とも、地域の実態に即した農業委員会の活動を尊重いただき、御支援、御指導を賜りたくお願い申し上げまして、話を閉じさせていただきます。
 どうも本日はありがとうございました。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございました。
 次に、森島参考人、お願いいたします。森島参考人。

○参考人(浜松市農業委員会委員 森島倫生君) 浜松から参りました森島です。
 豚を飼っております。私は飼っておりませんが、息子が主にやっておりまして、私は加工の方を主にやっているということです。だから、六次産業というふうに言われたところを割と早くから取り組んできて、現状、今があるということでございます。
 今日は、お二人もおっしゃいましたけれども、この場にお呼びいただきまして本当に有り難いことだというふうに思っておりますし、是非先生方に申し上げたいのは、御苦労をいただいてこうやって農業振興、農業政策の立案に当たっていただいている、同時に、農業経営基盤強化促進法の一部改正する法律案が今日議論がされているわけでございますが、私、率直に申し上げまして、申し訳ないけど、まともにこれを議論している人たちの神経がよく分からないと、私が言っているわけじゃないですよ、今日私がここに来るに当たっていろんな方々の御意見を伺ってきた。
 例えば、私どもとは政治的な立場も違う、考え方も違う方々、農協の職員であったり、あるいは保守の議員と言われる皆さん方の後援会の方々だったり、そういう方々のお話を伺ってきた。それで、おまえ本当に、行って、まともにそういうことを言ったとして事が変わると思うかというふうにも言われた。いや、変わるとは思わないけども、だけど、一農家として、一農業委員としてお伝えすべきことはやっぱり言わんならぬという思いで来ております。
 残念ながら、皆さん方、先生方の御尽力にもかかわらず、恐らく、日本の全国のどこでも、生産力の低下というのはもう見る影もないというふうに私思うんです。それは浜松も同じでして、今、前段の方々がるるおっしゃいましたけれども、担い手がないと、ないに等しいという地域もある。そこで、ビジョンを作れ、集落で議論をやって、やるべき人を探してこいというわけですよ。
 それで、私、私の地元選出の自民党の国会議員に言った、おまえがやれって、おまえ、もう。おまえ何やってるだという話をしましたよ。そうしたら、彼は答えた、私も入りますよって。入ってもらおうじゃないかということです。そういうことが、国の今の現状やっている仕事。私どもも、もうこの二、三年ぐらいかな、現場で集落、この人・農地プランについての議論やっているんですよ。
 去年の七月です。暑いさなかだ。集落営農の議論を始める、やるから来てくれと言って来てもらった。そうしたら、お茶一本予算がないだ。それで、泡食って農業委員の担当者が、担当者って俺みたいな百姓の一人だけど、泡食ってペットボトル買い行ってるんだよ。それで、県の職員も市の職員もそのペットボトルは飲まない、口付けない。そういうことが一方で行われている中でのこういう議案審議があって、それで、仲間の連中に、ちょっと今夜集まりやるから来いや、言ったときに、何をやるだ、何をやれというだ、何を植えろというだ、何をまけというだという話から始まる。
 やっぱりこの国の実情というのは、農業を守るということを、あるいは農業生産性、生産者を守っていく、次の世代もきちっと背負っていくという責任を国がきちっと果たせますというメッセージが全く出ていない、届いていない。ここの中でこういう事業をやるって、私やりますよ、やりますけど、農村に対するインパクトというのは極めて弱いものになっている中で、我々農業委員が義理と人情で、頼むわと言って来てもらって、これから集落営農についての、人・農地プランについてのビジョンを作っていくということだと私は思っています。
 その意味で、先ほど農業会議所の方言われましたけれども、地域グランドデザインというんだよね、地域グランドデザイン、国が持っているのかと思うのよ。国が持っているんだったらそれ出せや、それ出したらそのデザインに合わせて俺らも村のこと、地域のこと重ね合わせて考えるから出せや、出てこないじゃないですか。ここのところで、我々農業委員が頑張って苦労してこれからやっていくという意味、農業委員の個々の人格というか人柄というか、義理人情で農村を立ち上がらせていく、そういう努力は私どもやっていきますよ。これは国がどうあれ、やらんならぬと思っています。だけど、もうちょっと本気になって、てんだってもらいたい。このことだけは申し上げたいと思います。
 ですから、結論的に言うと、この一部改正する法案は反対、意味がない、そういうことで、二番目の方は、まあまあ我々の地域を支えていく今後の助けになるなというふうに思っています。細かい条文等については専門家のお話先ほどありましたので、私、余りそういうことについて得意じゃないのでこの辺でやめますが、時間はちょっとまだあるようですけど、これだけ言えば十分ですから、この辺で終わります。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 三人の参考人の皆さん、今日は本当に貴重な御意見ありがとうございます。大変味のある話も含めて、感心して聞いております。
 先日、実はこの参議院の農水委員会として、委員派遣で埼玉県の東松山などに行って、いろいろ見たり勉強したりということをやって、大体農水委員会で行くときというのはうまくいっている例が多いんですよね。それでもやっぱり現地でいろいろ話聞きますと、市の担当者の方が、政令や省令で決めることが多くなるわけで、具体的なことがなかなか見えていない中で不安もあるということで、率直な意見も出されていたんですね。
 それで、今日やっぱり、これまで現場で実際当事者としていろいろ取り組んでこられて、人・農地プランと、これ具体的にしていくときにぶつかっている課題とか、それからやっぱり、苦労している、一番、そういう意味ではどこに一番苦労されているかなというところを三人の方からそれぞれお聞きしたいと思います。

○委員長(長谷川岳君) まずは笠原参考人。笠原参考人から順番にお願いします。

○参考人(阿賀野市農業委員会会長職務代理 笠原尚美君) 御質問ありがとうございます。
 人・農地プランの話合いに入るときに一番私が苦労しているなというのは、世代間のギャップのところです。話合いに出てくるのは、どちらかというと農地所有者であるお父さん世代、おじいちゃん世代の方々が多くて、実際に農業を担っている方々は、まあおやじが行って話聞いてくれば済む話だろう程度に最初思われるケースがとても多いです。御自宅に戻られたときにその経営者、農地所有者の方から御家族に話がないというのが一番困るところで、おやじが聞いてきたんだけれども、お配りした資料の中にもそういった部分があるんですけれども、もう一回説明をしてくれないかと息子さん世代若しくは奥様から連絡をいただくケースもあります。
 人・農地プラン、それからこれから始まるであろう目標地図の策定に関しては、その経営体全ての方がきちんと把握していただく必要があると思っておりますので、そこのギャップをも埋めるために、可能であれば若い世代の方々をもう一度集めた上で人・農地プランの話合いをしてきたケースもあります。
 以上です。

○参考人(全国農業会議所事務局長 稲垣照哉君) 御質問ありがとうございます。
 苦労はいっぱいあって、どれからしゃべっていいか分からないんですが、一つに絞ってお話しさせていただきます。
 陳述の中でも申し上げた、どなたかの御質問の中でも申し上げたかと思いますが、これから地域計画、地図作り、要するに、農業を担う者をその地図に落とし込んでいくという作業にみんなが取り組む中で一番の課題は、担い手がいないということですよね。その地域に担い手がいないとすれば、どうやって外からそれを入れてくるのかということに、これもみんなが挙げて苦労しなければならないことだと思います。
 口では地域外の担い手を呼ぶというのが、それだけの話ですけれども、実際それを入れることというのはいかに大変だし、また、その情報が、どこにそういう人がいるのか。また、入ってくる人に対して、逆に地域の方がうちはこういう地域だという情報発信も当然必要でしょうし、そういうことがなければ外からも人が入ってこない。そういう相互の、外から人に入っていただくことについての取組をどういうふうにやるのか。
 今、今年度の農水省の予算の中でもそういうデータベース化の取組もあって、そういうものをどんどん太くしていくということも必要ですが、そういう装置的な対応も必要ですし、また、その地域の皆さんが外から人を入れるということについて、それはかなりの大きな決心だと思うんですね。
 ある意味、よそ者を入れるということについてどういうふうに合意を取り付けていくのかということも含めて、そういうメンタル的なそういう合意形成と同時に、そういう情報として、うちの地域はこういう地域だと一々自ら発信して、それを受けて外から外部の人が入ってくる、そういうチャンネルをどうつくっていくかということが、この法律ができた後、運用していく段階で最大の課題になってくると思っております。

○参考人(浜松市農業委員会委員 森島倫生君) お二人が前段おっしゃったとおりだと思います。
 加えて、先ほど梅村委員からお話のあった私どもとぴあ浜松農協のファーマーズマーケットなどに出荷して、頑張って余り大きくない農業経営としても成り立たせようということで頑張るわけだけど、そのファーマーズマーケットに出店、出荷している程度では息子一人恐らく大学にやれないだろうなというようなレベルの仕事になっちゃっているわけですね。
 だから、これを集落営農というか、集落できちっと農業をやって取り組めば息子や娘二人ぐらいは大学にやれるよというような展望をやっぱり若い人たちに示すことだというふうに思います。このことができれば村は盛り上がる、絶対に盛り上がるというふうに思っています。ここのところも是非先生方と共有したいということです。
 以上です。

○紙智子君 それで、ちょっと続けて森島参考人にお聞きするんですけれども、この資料でもってJAとぴあ浜松という写真が載っていて、めちゃめちゃいい写真だなと思いながら見ていたんですけれども。
 それで、先ほども、ほとんど舟山さんが質問されたこととかぶるんですけれども、私もお聞きしていて、現場の偽らざる本音の部分というか、いや、作れ作れと言うけど国はプランあるのかということというのはずしんと響くことで、やっぱり国としては、これから先、日本の農業をどうしようとしているのか、どういうふうな農地を確保しようとしているのかということがやっぱり問われているということを先ほどのお言葉から感じたわけなんですね。
 それで、人・農地プランというのは、集落や地域でよく話し合って、現状に即して計画をみんなで取り組んでいくんだということで取り組まれてきたんだけれども、それでも実態は耕作面積も減り続けてきたし、販売農家や基幹的従事者も減り続けてきたわけですよね。これってなぜなんだろうかという思いは現場には本当にあると思うんです、なぜなのかと。どうしたら減少傾向に歯止めを掛けて農地を有効に活用していけるのか、国というのは農業の担い手をどうすれば励ませるというふうに、ちょっと今答え的なことを言っていましたけど、そこについてお答え願いたいと思います。

○参考人(浜松市農業委員会委員 森島倫生君) ありがとうございます。
 私ども農協の養豚協議会、養豚部会などで活動しておりますと、法人として成功して、立派に全国を代表するような養豚事業者になった方もおいでになります。
 ところが、この間、国は規模拡大を求めた、全ての作目について規模拡大を求めた。それから、法人化を求めた。それからもう一つは、輸出を求めた。輸出事業として成功させていこうじゃないかというようなことを言った。
 基本的に、私は全部失敗したと思っています。大規模にすればするほどどえらい思いをすることになっちゃったことの責任は一体誰が持っているの。私なんかは、もうこの方向駄目だなと思ったから大規模化しなかった。ちっちゃな規模でやっていける農業を、農業の道を歩もうというふうにもう三十年、四十年前に決意したのでその方向で来たんだけど、大規模にやった人ほど大変な思いをしているというのは、やっぱり農政の私、失敗とは言わないけれども、誰か責任持ってよというふうに彼らを見ていて思うんです。
 そのことを、今、紙委員のお尋ねからすれば、もう先生方、十分こんなことは分かっていることでして、やっぱりG7の国々の、ここら辺の所得補償と価格保障についての組立て、アメリカの価格維持の政策、こんなことはもう先生方みんな分かっていることなんだけど、ここに全くこの国は手が着かないわけです。ここのところをちょっとでも触ると我々は元気になるし、若い子たちにも希望の光が見えてくるということではないかと思っています。ここに手を着けるのは先生方にとっては命懸けなんだろうけど、是非頑張ってもらいたいなというふうに思います。
 以上です。

○紙智子君 それでは、笠原参考人にもお聞きします、ちょっとだんだん時間がなくなってきたんで。
 私もこの資料を読ませていただいて、農山漁村文化協会の「季刊地域」、この中に書かれている笠原さんの考えというのを読んで、とても共感を実は覚えているんです。担い手というと、農水省が念頭に置いているのは大規模な専業農家や法人経営ですよね、人・農地プランでも、地域での話合いの結果、農地を担う中心経営体を決めるように言ってきたけど、私はこの言葉嫌いなんですと言われて、耕作面積が少なくても、米を作り続ける農家はみんな担い手です、経営の規模で農家を中心とそれ以外の分別して考えるのは間違っていますと言われているんですよね。担い手は絞るのではなくて増やすんだと、育てるんだというスタンス、ここにもとても共感を覚えます。
 それで、やっぱり、これまで丁寧なその農業委員としての仕事をされてきているということで感心するわけですけど、この言われていることが、やっぱり法案の中にその言葉というか趣旨がきちっと書き込まれるべきではないかというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(阿賀野市農業委員会会長職務代理 笠原尚美君) 御質問ありがとうございます。
 まさに個人的にはという言い方になってしまいますけれども、私たち地域を回る際に、担い手を、今いる担い手をきちんと担い手として存続していただくことが一つ、それから、担い手を探し出していくことがもう一つの仕事だと私個人的には思っております。
 そうなったときに、大きな中心経営体だけではなくて、その中心経営体とともに地域と農地を共に支えていく方々もやはり担い手であるべきだというふうに個人的には思っておりますので、法案に書くべきかどうかというところについては私からの発言は控えさせていただきますが、決して地域の中の担い手は大小ではないと思っているところです。
 以上です。

○紙智子君 最後、ちょっと時間がなくなってきたんですけど、稲垣参考人にお聞きします。
 確かに、農業委員会としていろんな要求してきている内容が今回大分反映されているというお話があって、私も一時期から見ると大分押し返しているなという感は実はあります。
 農業経営基盤法の改正で、農業委員会の役割が非常に大きくなっていると。市町村の農政部局の職員が減っていて、実は農業の現場よく分からないとか、それから、バンクの職員も農業の現場を知らないという話も聞く中で、農業委員会に頼るしかない状況が生まれていると思うんです。でも、目標地図の素案を作るとか目標地図の達成にも農業委員会が中心になっていかざるを得ないと。そういう意味で、今のその体制で対応できるかどうかというのはとても心配でもあるんですけれども、その辺、最後にお聞きします。

○参考人(全国農業会議所事務局長 稲垣照哉君) 御質問ありがとうございます。
 陳述の中でも申し上げましたし、いろんな方、先生の御質問の中でも申し上げましたが、この間、農地利用の最適化に平成二十七年の法律改正を踏まえて二十八年から農業委員会取り組んでいる中で、いろいろ課題等をおつなぎしてきた中で、今回条文でいろんなものを反映していただいたということ、本当にそういう意味では現場の取組がこちらの方に届いたのかなと思っております。大事なことは、このできた法律が現場でしっかりと四万人の委員さんが使いこなせるように、運用の段階でそういうものを整備していただくということに尽きるのだろうと思っております。それがマンパワーの話でもあるでしょうし、また、タブレットとかそういう物的な支援なりも含めて総合的に手だてを講じていく。
 それからまた、地域の実情、要するに、地域の実情というか現場というのは、千六百九十五の農業委員会の現場もございますし、四万人の委員さんそれぞれが現場を持っているわけでありますので、それぞれの委員さんが伸び伸びと仕事ができるように、この法律を突破口にして運用の方でも手当てをお願いしたいということを申し上げたいと思います。

○紙智子君 ありがとうございました。