<第208回国会 東日本大震災復興特別委員会 2022年5月13日>


東日本大震災以降、頻発する貝毒被害の現状と対策について/生活困窮者に対する災害援護資金の早期の償還免除について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  東日本大震災の被災地である岩手、宮城などで頻発している、今日は貝毒の問題についてお聞きします。  震災からの復興に向けて、漁業の再生というのは大きな課題なわけです。  震災以降、沿岸部では貝毒被害が広範囲に及んでいて、長期化しています。二〇一八年は、ホタテの生産が盛んな岩手県の釜石市から宮城県の石巻市の沿岸部約百二十キロと広い範囲で出荷停止になりました。岩手県では、三月から釜石湾で出荷規制が始まり、六月には十二海域のうち六海域で出荷規制が行われました。岩手県全域のホタテガイの出荷量で比較すると、二〇一七年四、五月期の約三百七十五トンから、一八年には約八十六トンまで落ち込みました。宮城県でも三月から出荷規制が行われて、ホタテを生産する七つの全海域で出荷ができない事態となりました。  初めに、これ貝毒というのが発生する仕組み、これどういうことなのかということを説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。  貝毒は、ホタテガイやアサリなどの貝類が体内に毒を蓄積する現象を申します。  このような現象は、例えば二枚貝ですと、毒素を持った渦鞭毛藻などの植物プランクトンを貝が餌として食べ、その結果、体内に毒が蓄積されることによって生じるものでございます。

○紙智子君 昨年の四月も、宮城県の唐桑半島の東部海域でホタテガイの出荷停止を皮切りにして、これ全海域で出荷停止が相次いでいるんですね。  震災以降、なぜこの貝毒の発生が増えているのかということについて、長官、いかがでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答え申し上げます。  宮城県が公表しました宮城県の貝毒対策、これは令和四年度版でございますが、これによりますと、震災以降、貝毒発生が増加傾向にあるものの、湾ごとに発生状況が異なり、津波によるシストの巻き上げ、海洋環境などが要因で貝毒発生動向に変化が生じたものではないかと推測されるとしております。  農林水産省といたしましても、この報告については承知しており、貝毒の発生の広域化、頻発化はこのような様々な要因が関係しているものと考えております。

○紙智子君 様々というんですけど、シストという今お話あって、つまり、殻の中に入って底の方にあったのが津波でこう巻き上げられて、表面に出てきて、その殻を破って発生しているということなのかなというふうに思っているんですが。  それで、岩手県の陸前高田市議会は三月議会で、海洋環境の変化によるいそ焼けとか、それから貝毒の発生、主力魚種の不漁への原因究明と対策に係る意見書を提出しています。  貝毒について、陸前高田市のこの海域でホタテガイ、ホヤ等の水産物に貝毒が発生をして、この発生に伴う出荷の自主規制においては、出荷時期をずらすとかいろいろ調整をやっていると。生産者が自主的に対策を行っているんだけれども、漁業経営に大きな影響が出ているというふうになっているわけですね。  それで、漁業者へのこの経営支援というのはどうなっているんでしょうか。これ、農水大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) お答えいたしますが、もう委員もよく御存じだと思いますが、貝毒により出荷停止となった漁業者に対する支援につきましては、一定の減収が生じた場合には、漁業共済及び漁業収入安定事業によりまして減収の補填を受けることができます。  また、漁業共済に加入していない漁業者に対しても、被害を受けた漁業者の当面のつなぎ資金といたしましては、低利の運転資金である農林漁業セーフティネット資金を設置して、資金繰り支援を行っているところでございます。  引き続き、貝類の安定生産に向けて漁業者の経営支援を行ってまいります。  参考までお答えしますが、岩手県で漁業共済に入っていますのが、特定養殖三百三十五件、積立ぷらす三百十四件、カキ二百六件、積立ぷらす百九十五件。宮城県で、ホタテガイ、エゾイシカゲカイ等の百七十六件、積立ぷらす百七十五件、カキ三百十九件、二百九十八件ということになっております。

○紙智子君 減収になっている部分を補填するという中身なんだと思うんですけれども、やっぱり融資という形が多いんだと思うんです。だけど、減収になっている人たちにすると、やっぱり本当に生活も含めて大変な状況にあるというふうに思うんです。  復興に向けて、漁業の再生というのは本当に、沿岸部は特に重要なわけです。そこで、復興庁としても、被災地の漁業者支援に対しては、是非水産庁と連携して応援していくべきではないかと思うんですけれども、復興大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 東日本大震災の被災地においては、養殖業を含め、水産業は重要な産業であると認識をしております。特に、宮城県や岩手県では、ホタテやカキといった貝類の養殖業が盛んであると承知をしております。  東日本大震災からの復興に当たっては、農林水産省と連携して、がんばる漁業復興支援事業や水産業復興販売加速化支援事業といった水産業に関する各種施策を講じているところであります。  岩手県、宮城県、福島県の三県にはそれぞれ復興局があります。漁業者や漁協といった関係者からの声も拝聴しております。私自身、現場に赴いて、車座対話や魚市場において漁業関係者の声を伺っているところであります。  今後とも、農林水産省と連携しつつ、被災地の水産業の再生を進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 是非、この漁業の再生に向けて、連携して漁業者を応援してほしいと思います。  それで、意見書では、貝毒が発生する原因究明と抜本的な対策の実施を求めているんですね。  漁業者の方から、岩手県の広田湾ってありますけれども、そこの状況をお聞きしました。広田湾では、震災前は貝毒は湾内に発生することが多かったんだけれども、震災後は外洋、つまり外の海ですね、外洋での発生が出てきていると。東日本大震災の津波の関係で湾内の堆積物が外海に流れているからなんじゃないのかなということを言われています。  この貝毒被害の多発というのは東日本大震災の津波による影響と指摘もされているわけですけれども、海洋環境の変化を調査や分析というのは、これ、水産庁、されているんでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。  貝毒に関する海域の環境調査、分析はそれぞれ関係する各県が行っており、例えば、委員御指摘の宮城県及び岩手県におきましては、貝毒プランクトンの種ごとの分布密度を定期的に調査し、結果を県のホームページで公表しております。また、国立研究開発法人水産研究・教育機構がこれらのモニタリング情報を集約し、調査、分析などに関する助言を行っております。

○紙智子君 頻発する貝毒の原因究明と対策ということでは、今各県がという話があったんですけど、国として是非全力を挙げて取り組んでいっていただきたいと求めたいと思います。  それから、東北大学大学院の研究グループが、この貝毒の発生に起因する有害プランクトンの、これアレキサンドリウムという名前なんですね、これに寄生をしてそれを死滅させるという新種の寄生生物アメーボフリアというのを発見したという報道がされています。  貝毒の被害に悩まされている漁業者にとってはこれ明るい兆しなんですけれども、研究を行っている西谷准教授はやっぱり現場での実用化に向けて今取り組んでいるんですけれども、そういう課題に、地元漁業者のやっぱり安全性の理解、それがほかにも悪さしていないかとかということも含めて、安全性を挙げています。  こういう課題も見据えながら、引き続いて研究に注目していくということが、国としても注目していくということ必要だと思うんですけれども、農水大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 今委員からもお話ありましたように、東北大学などの研究グループがホタテガイなどの二枚貝の貝毒の原因となる有毒プランクトンに寄生して死滅させる生物の発見に至った研究には、農林水産省も財政的支援をいたしております。有害プランクトンに寄生する生物に関する研究は従前から行われておりまして、農林水産省といたしましても、これに財政的支援をしてきているところであります。  当該生物が生態系へ与える影響にも留意すべきとの指摘もありますが、今後とも適切に支援をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 やっぱり研究によって新たに発見される科学的知見も活用しながら対策に当たってほしいと思います。  ここで、金子大臣、それから水産庁長官は退席していただいて結構です。

○委員長(那谷屋正義君) じゃ、御退席いただいて結構です。

○紙智子君 次に、災害援護資金についてお聞きします。  災害援護資金というのは、震災で負傷又は住居、それから家財、ここに被害を受けて、所得金額が一定以下の被災者が生活再建の資金として市町村から最大三百五十万円まで貸付けを受けることができる制度です。  私、三年前にこの本委員会で、被災者の実態を示しながら、自己破産した人とか、それから高齢者の人、病気の方はこれ返済を免除するべきではないかということを求めているんですけど、そのとき、当時の渡辺復興大臣は、検討するというふうに答弁をされていたわけです。  あれから三年経過したんですけれども、検討した結果、西銘大臣にお聞きしますけれども、この返済免除の要件というのは改善されているんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 紙議員からの御質問も踏まえ、災害援護資金に係る自治体からの御要望につきましては、これまで、その都度、制度を所管している内閣府に伝えております。内閣府におきましては、自治体の相談にしっかりと対応していただいているものと承知をしております。  当時の、三年前、当時の紙議員御指摘の点のうち、破産した方については、令和元年の議員立法で免除対象とする規定が置かれたと承知しております。また、高齢者、病気の方につきましては、重度障害の場合を除き、すぐに免除することとはなっておりませんが、支払猶予も可能となっているほか、内閣府においては、少額償還、月賦払といった被災者の生活実態に合った返済方法を認めているものと承知をしております。さらに、東日本大震災の特例としまして、最終的な支払期日から十年経過してもなお無資力、資力のない方である方につきましては免除可能となっております。  こうした一定の要件の下で自治体が猶予や免除を行った場合は国においても猶予や免除が可能になっているため、具体的な運用については内閣府において自治体の相談に丁寧に対応していただいているものと承知をしております。

○紙智子君 償還猶予、それから少額償還ですか、認めているということなんだけど、やっぱり引き続いて苦しいままの状態の被災者の状況があって、結局先送りという話なので、おもしなんですよね。  やっぱり全国市長会や弁護士会からは、運用改善や法改正を求める要望が繰り返し出されているんですよ、この間。全国市長会の東日本大震災からの復興に関する重点提言というのがありますけど、その中には、地方自治法による徴収停止や地方税法による滞納処分の執行停止に相当する場合についても自治体が償還免除とすることができるように免除要件を改めるように求めているんですね。自治体は明らかな支払能力がないというふうに判断をしているわけです。  宮城県のある自治体では、生活保護の受給者になっていても支払督促がずっと送り続けられ続けて、毎月ね、千円でもということで償還しているというんですけれども、やっぱり、生活保護を受給しなきゃならない人にまで返済を求めなきゃならないのかというふうに思うんですけれども、これ、どうでしょうか。これ内閣府副大臣ですね。

○副大臣(内閣府副大臣 大野敬太郎君) お答えを申し上げます。  先ほど西銘大臣から詳しくお答えがあったとおりでありますけれども、現在、災害援護資金の貸付けを受けた方で、災害あるいは盗難、疾病、負傷、あるいは経済的に困窮しているなどのやむを得ない事情により償還が著しく困難になった場合には支払の猶予が認められているということでございますが、その上で、猶予を認められた方につきましては、最終支払期日を迎えても、引き続き猶予の手続を取ることによって市町村の判断で猶予することが認められているということでございますので、必ずしもすぐに返せということを申し上げているところではございませんし、また、その上で、先ほど猶予の話もございましたけれども、猶予につきましては、これも先ほどお答えがあったとおりでありますけれども、経済的に困窮している場合というのは市町村の判断で猶予、支払を猶予することができるということにしておりまして、特に、その上で、東日本大震災につきましては特例法で、借受人が無資力又はこれに近い状態であるために支払の猶予を受け、かつ最終支払期日から十年を経過した後においてなお無資力の状態であって償還金を支払うことができる見込みがない者につきましては償還の免除というのが特例で認められているということでございますが、その上であえて申し上げれば、まあもちろんお困りである方でございますので、市町村と密接に連携しながら、相談しながら、寄り添う形でしっかりと対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 やっぱり、もう十年先にね、ずっとなれば免除されるのでやっていけるかもしれないけど、精神的にはとてもつらいわけですよね。  三月十一日付けの朝日新聞で、災害援護資金、被災地に重荷と、返済苦しむ人、自治体も回収が負担と報道していて、記事では、神戸の長田区の八十五歳の女性が、自宅が全焼して三百五十万円借りたんだけど、夫を亡くした後、六十万円のこの貸付金ですね、この返済ということでは、結局、もう返せない状況の中で、経済的な理由でこれ免除されていると。その人は、死ぬまでに何とかせなあかんと思っていたんだけど、ほっとしたということを言っているらしいですけれどもね。この神戸の担当者は、自治体の労力やコストというのは膨大で、その探してずうっとやり続けるというのは、低所得者が対象のため、返せない人が一定数出てくるのは明らかなんだと述べているんです。  こういうふうに見ても、災害援護資金というのは返済に苦しむ人が少なくなく、被災自治体にも債権回収が負担になっているため、阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災地である兵庫県弁護士会や仙台弁護士会から、返済見込みがない場合は早期の返済免除要件の見直しを行わないことによって自治体に過剰かつ無用な負担を強いてきた、改善を求めるべきだという声が上がっているわけなんです。  それで、大野内閣府副大臣、そして西銘大臣、この見解について一言ずつ求めたいと思います。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 災害援護資金につきましては、現在、償還期限内であり、まずは自治体において可能な限り債権回収に努めていただく必要があると承知をしております。最も早く支払期日が到来するのが令和六年と承知しております。  他方、債権回収に当たられる自治体の皆様には様々な御苦労があると思いますので、御指摘の点も含め、制度を所管する内閣府において、引き続き自治体からの相談にしっかり対応されるものと承知をしております。

○副大臣(内閣府副大臣 大野敬太郎君) 先ほども申し上げましたように、本当にお困りの方にはしっかりと市町村とともに寄り添ってまいりたいと思いますし、また、自治体の返済という事務的な手続について御苦労があるということは理解をしておりまして、今後ともきめ細かく相談に乗ってまいりたいと思っておりますが、その上で、一方で、なおもその猶予の、免除の要件のその緩和についてあえてお尋ねをいただきましたけれども……(発言する者あり)よろしいですか、はい。それでは、よろしくお願いします。

○紙智子君 時間になりましたので、やっぱり、被災者に寄り添う、現場主義を徹底するというのであればやっぱりこの声に応えてほしいと思うし、災害援護資金というのはやっぱり問題点浮き彫りになっていて、生活再建に向けて支援するというのは、貸付制度じゃなくて、やっぱり給付型の制度をつくったらどうかということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。