<第208回国会 農林水産委員会 2022年5月12日>


◇農業経営基盤強化促進法改正案 規模拡大路線を続ける農業経営基盤強化法の問題点について

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 農業経営基盤強化促進法改正案についてお聞きします。
 基盤法の目的は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立するために育成すべき農業経営の目標を明らかにし、その目標を達成するための経営改善計画を作成した農業者が農用地の利用をしやすくするという法律です。
 この基盤強化法の第四条、農業経営基盤強化促進事業を定義しているんですけども、今回、この定義が変わります。改正案では、農用地について利用権の設定若しくは移転又は所有権移転を促進する事業と書いてある前に、地域計画の達成に資するよう、農地中間管理事業及び第七条各号に掲げる事業を追加しているんですけれども、その理由について御説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 今後、高齢化、人口減少が加速して、それで地域の農地が適切に使われなくなることが懸念される中、農地が利用されやすくなるよう農地の集約化等に向けた取組を加速化することが重要でございます。
 このため、改正後の基盤法でございますが、第四条第三号第一号の事業といたしまして、人・農地プランを地域計画として法定化し、地域の話合いにより目指すべき将来の農地利用の姿を明確化し、それを実現すべく農地の集約化等を進めていくこととしております。
 この場合、農地バンクを経由することによりまして、分散している農地をまとめて借り受けて、農家負担ゼロの基盤整備や、集積のための協力金などを活用して一団の農地で転貸することにより、農地の集約化等を円滑に実現することが可能になると考えております。
 このため、今回の改正により基盤法第四条第三項第一号の事業として、地域計画の達成に資するよう、農用地についての利用権の設定等を促進するための手段として農地中間管理事業等を位置付けることとしたところでございます。

○紙智子君 確認をいたしますけれども、農業経営基盤強化促進事業は、効率的かつ安定的な農業経営者に対する事業であるので個人を対象にした事業なんですけれども、今回、地域計画の目標を達成するために農地中間管理事業を使えるようにするということですから、これ基盤強化促進事業というのは人を対象にした事業から地域を対象にした事業に変えるということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、基盤法の第四条第三号一号の事業として、プランを地域計画として法定化し、将来の農地利用の姿を明らかにした上で農地の集約化等を進めていくことにしています。
 これにより、まず一点としては、引き続き農用地、失礼しました、効率的かつ安定的な農業経営を育成していく観点から担い手への農地の集積を加速する、これとともに、経営規模の大小にかかわらず、また家族か法人かの別を問わず、将来にわたり農地の、地域の農地を適切に維持、活用する方々により農用地の効率的かつ総合的な利用が図られるよう取組を推進していくこととしております。

○紙智子君 聞いたことに端的に答えていただきたいんですよね。ちょっといろいろ回りくどく言われると何言っているか分からなくなっちゃうんで、端的に答えていただきたいと思います。
 それで、改正案は、農業経営基盤強化促進事業に農地中間管理事業を位置付けると、そのことによって、農地中間管理法の目的にありますように、農業経営の規模拡大、農用地の集団化、これを地域全体で進めることになるんだと思うんですね。
 人・農地プラン、これ法律上の名称は地域計画という言い方を使っているわけですけれども、地域計画を達成するために農地中間管理事業を活用するということだというふうに理解します。
 それで、改正案は、地域全体で農業経営の規模拡大、農用地の集団化を進めることになるわけですけれども、この生産者、そして担い手にも規模拡大を求める仕組みというのは変わっていないんですよね、今までと。
 経営改善計画について聞くんですけれども、基盤強化促進法の第十二条のところで担い手に農業経営改善計画の作成を求めていますけれども、計画には何を書く必要がありますか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 農業経営改善計画におきましては、農業経営の現状、農業経営の規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、農業従事の態様の改善等の農業経営の改善に関する目標、これらの目標を達成するためとるべき措置などについて記載を行うこととしております。

○紙智子君 つまり、担い手に対して、農業経営の規模の拡大、生産方式、経営管理の合理化のための目標であって、そのための具体策を書き込めるように求めているわけですよね。
 それで、改正案では、担い手に規模拡大を求めるとともに、農畜産物の生産施設、農畜産物を原料、原材料とする製造、加工施設、農業用施設も記載することができるというのを追加したわけですよね。これなぜ追加したんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) お答え申し上げます。
 この農業経営改善計画に農業用施設の整備に関する事項を記載できることといたしましたのは、農業経営改善計画の認定と農地転用許可の審査をワンストップで行うためのものでございます。
 この措置につきましては、公益社団法人日本農業法人協会からの政策提言等を踏まえまして、農業用施設を設置する際の手続負担を軽減し、認定農業者の経営改善を支援する観点から措置したものでございます。

○紙智子君 今お話にありましたように、手続の簡素化を求める要望が具体的には日本農業法人協会からあったと。その要望の内容について、簡潔に教えてください。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) お答え申し上げます。
 昨年四月の公益社団法人日本農業法人協会の提言におきましては、農業関係分野の規制緩和の推進といたしまして、生産コストを下げ、また経営を円滑に拡大していけるようにするため、農業用施設に関する建築規制などの各種規制を順次、抜本的に見直すことなどの提案がなされているところでございます。

○紙智子君 つまり、農業者の負担を軽減するために申請手続をワンストップ化するというふうに言っているんですけれども、要望の今おっしゃった中身でいうと、各種規制を順次抜本的に見直すと、農業用施設は原則農地転用を許可ではなくて届出で設置可能というふうになっていますよね。だから、手続の簡素化というよりもこれ規制緩和なんじゃないのかなと思うんですけど、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) 協会からの御要望はいろいろな点があったわけでございますけれども、今回のこの農業用施設の転用のワンストップ措置につきましては、認定農業者の認定と農地転用許可の審査を一体化するものでございまして、農地転用許可の基準自体を緩和するものではないところでございます。

○紙智子君 要望は、農業用施設は原則農地転用許可ではなく届出で設置可能というのがありますけれども、これは、じゃ、認めないということになるんですか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) その御要望に応える改正事項はないところでございます。

○紙智子君 それは認めないということになるということだと思います。
 それで、届出というのは事後チェックになるんですよね。やっぱり事前チェックの仕組みというのは堅持すべきだと思うんです。
 ただ、改正案は、経営規模を拡大する人にとっては、これ有り難いことだと思います。しかし、現状を維持したい生産者にとっては、これメリットには余りならないんじゃないかというふうに思います。
 次に、農地法の改正についてお聞きするんですが、まず利用権の延長についてなんですね。
 改正案は、農地バンクに対する遊休農地の貸付けに関わる裁定等における貸付期間の上限を二十年から四十年に延長するということなんですが、これはなぜ二十年だったんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 遊休農地に対する利用権の設定期間につきましては、委員御指摘のとおり、以前五年が上限であったところですが、遊休農地の解消には初期投資が必要で、その回収には五年では難しいことや、新規就農者が十分に元を取れるようにするために一定の期間の借入れを可能とする必要があることを踏まえ、平成三十年に上限の設定期間を五年から二十年に延長したところでございます。

○紙智子君 じゃ、利用権を二十年から四十年にするという根拠についてはどういうことなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) 今回の法案におきましては、遊休農地の利用権の設定期間の上限を二十年から四十年に変更しております。
 その考え方といたしましては、近年、二十年以上の利用権設定ニーズが増加をしており、平成二十七年から令和元年において、利用権設定件数のうち、二十年以上四十年未満が約三倍に増加をしております。また、二十年以上の利用権設定のうち、二十年以上四十年未満の割合は九割超を占めているところでございます。
 このような状況を踏まえまして今回上限を四十年に引き上げておりまして、これによりまして、長期にわたってバンクから受け手に対して転貸できるようにしたいと考えております。

○紙智子君 今のお話だと、実態がそうなっているからだということなのかなというふうにお聞きしたんですけど、この基盤強化促進法は、担い手への農地の集積を利用権の移転という形で進めてきたと思うんですね。利用権の移転を一層進めるために、この農地中間管理事業が活用されているわけですよね。
 しかし、元々は、さっきお話もあったけど、元々の期間は五年だったわけです。それを二〇一八年の改正で二十年にしたと。で、今回四十年だと。ニーズがあるからだということではなくて、なぜ当初五年にしたのか、それから、その根拠は何だったのか、その根拠をなぜ四十年まで認めるのかということについては、これちゃんと説明が必要なんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) 五年から二十年、そして二十年から四十年に引き上げる考え方につきましては先ほど申し上げました。
 まず、なぜ五年からスタートしたかというところですけれども、この遊休農地につきまして、先ほど委員から御指摘ありましたけれども、まずはこれ、都道府県の裁定で設定される権限ということから五年でスタートしたと思います。五年のそういう制度がある中で、先ほども申し上げたような事情を勘案して国会で御了解をいただいて引き上げてきたものと考えています。そして、今回は、先ほど申し上げた考え方に基づいて四十年に上げさせていただければということでございます。

○紙智子君 今回延ばしたのはどういう、もうちょっと詳しく、ちゃんと正式に言ってください。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答え申し上げます。
 先ほどは、実態として二十年以上の利用権設定ニーズが急増していると、増加をしているという状況を踏まえて引上げをさせていただきたいと申し上げました。これ、四十年に農地バンクへの権利設定期間を引き上げるということは、農地バンクが借りた後、その後、農業者、受け手の方にそれを転貸することになるので、四十年借りられるということは、四十年まで貸付けを受け手の方にすることができるというふうになります。
 これによりまして、受け手の方としては、長期間安定して営農することが可能になるということになります。例えば、鉄骨ハウスの設置などの高額な設備投資を行ったり、基盤整備に対する投資を行ったり、あるいは植栽を伴う果樹の栽培などについて安心してより取り組むことができるようなメリットがあると考えております。
 当然でございますけど、四十年というのはあくまで上限でございますので、具体的な設定期間については農地バンクが受け手と協議の上に個別に設定されることとなります。

○紙智子君 まあ五年の設定のときは都道府県がそういう実情に合わせてということで出発したという話もあったんですけど、この利用権の貸付期間が二十年が上限だったのが四十年に延長するということは、ちょっと考えてみると、一世代だなと。
 例えば、三十代で借りる、利用権を得た場合は、四十年たったらもう七十代になるわけですよね。だから、もうほとんどそういう、一世代でそういうことが可能になるということになるんじゃないかと思うんですけど、それでいいですかね。そういうことですよね。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) 四十年を一世代というふうに定義するかというのは判断あるかと思いますけれども、より、二十年を四十年にすることで、これを活用して営農を安定して受けることが可能な制度になるというふうに認識しております。

○紙智子君 利用権の移転を活用することでこれ農地の流動化を進めてきたということで農地バンクなんだと思うんですね。
 それで、二〇一三年の五月二十八日に、国家戦略特区ワーキンググループで、当時の奥原正明農林水産省の経営局長は、安倍当時の総理のプレゼン資料を使って、地域内農地の相当部分の利用権を農地バンクが持って、所有権ではないが、準公有状態を作り出すと。その上で、今の圃場の区画が非常に小さなものが多く、三十アール辺りの区画が結構多いのだが、それを三つ並べてあぜを取れば一ヘクタールの大きな区画になる、そういった大区画化のような整備を、所有者の負担は求めずに、個々の中間管理機構が所有者の負担を肩代わりする形で事業をやって、生産性の高い圃場に変えていく。そういった農地を担い手の法人経営とか企業経営とか、担い手ごとの農地の集約化に配慮して貸付けをするということだという発言を当時されています。
 つまり、法人経営とか企業経営にとって、これ、利用権を使って農地の大区画化をすることは大きなメリットにつながるということではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 当時の発言、手元にないので正確に承知をしておりませんけれども、それはあぜを取って大規模化してという発想の話を多分されたんだと思います、したんだと思いますけれども、今回の話も大規模化を否定しているわけでもございません。
 そして、農地の利用集積は八割を目標にしてこれを実現していこうと、それでやっていこうということなんですが、一方、今回、何回も御説明申し上げておりますけれども、単に規模を拡大しましょう、利用集積をしましょうというだけではなくて、このままでは無秩序に散発的に出物が出てくるというか、そういう状況の中で、規模拡大したい人、集積したい人も受けられない状態にあるし、そうじゃない方も、農地をじゃ面倒見てくれといっても、なかなか、そんな大規模じゃなくても受けにくいような状況が出てきてしまう。そうであるならば、できるだけ、畦畔を除去するというよりは、その利用調整なども中心にしながら農地バンクが一旦預かって、それを目標地図に従って実現できるように貸付けを、再貸付けをする、転貸をするという形でできるだけ使いやすい形にしていこうと。それが結果的に規模拡大になるときもあれば、とにかく耕作放棄にならないで引き継がれる形にもなると、そういう発想でおります。

○紙智子君 私も、やりにくいところをちゃんと固めてやりやすくしていくというのは全然反対じゃないですよ。やっぱり農地を農地としてあくまでも利用していくと、使っていけるように整備をすることについては全く反対はないんだけれども、ただ、このときの、見ていきますと、安倍元総理のプレゼン資料では農地の集約イメージも書かれているんですけれども、中小・家族経営の農地の利用権を農業法人や大規模農家経営の家族経営、企業に移転することで地図上からは小規模家族経営が消える形を想定されているんですよ。やっぱり法人経営とか企業経営にとっては大きなメリットになるかもしれないけれども、この農地の賃貸借、これは農地法の三条に定めているわけですけど、この利用権を二十年から四十年に延長していくということによって、この農地法を事実上、空洞化させるものにならないのかというふうに思うんですけれど、これについてはどうですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) お答えいたします。
 農地法における貸借の話と、それは民法の規定に従って五十年まで通常の形ではできるわけです。それは、中間管理機構も、当然民法の規定で、五十年以内の範囲で個別に貸借期間というのは設定して行うという世界です。
 今回のお話は、委員がおっしゃったように、都道府県、遊休農地について都道府県知事が裁定をして、その結果設定される期間の上限ということなので、農地の集約化をしましょう、集積をしましょう、それで今回はそれらを含めて地域の農地を効率的、総合的に使われるようにしていきましょうというときには、基本的な普通の貸借に、バンクを絡めてですね、それについては民法の五十年以内の中で個別具体的な当事者同士の相談の下に貸借期間が設定されてくるものと考えています。

○紙智子君 何か、やっぱりどうも、やっぱり農地法というものが元々あって、それがだんだんだんだん骨抜きになっていくような雰囲気があるなというのはちょっと感じて、結局、だから、本来やっぱり農地云々ということがあるけれども、そもそも農業を続けられるそういう条件、環境が今すごく厳しいわけじゃないですか、作っても米は下がるわね。農業経営そのものをどうやってやるかとみんなが悩んでいるときに、そこの一番大事なところがちゃんと手打たれないまんま農地だけどうこうしても、これ始まらないんじゃないかというのもちょっと思いとしてはあって、だからやっぱり農地法そのものをちゃんと原点に立ち返って考える必要があるんじゃないのかなと。
 農地バンクを活用してこの利用権四十年に延長するというのは、当時、元の安倍総理が説明していたように、小規模家族経営を農業生産から撤退をさせて大規模経営や企業経営が活用しやすい仕組みになるんじゃないのかというふうに率直に思うわけなんです。
 それで、農地の取得に係る、次に行くんですけど、もう一つ、下限面積ですね、これを撤廃することが今回なっているんですけど、その理由についても説明をお願いしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) 現在の、現行の農地法におきましては、農地取得のための下限面積について、都府県において五十アール、北海道で二ヘクタールと定められております。この要件につきましては、農業委員会の判断で現行の農地法に基づいてその面積を引き下げることが可能となっています。既に全国の約七割に当たる千二百四十八市町村において下限面積が引き下げられています。
 また、新規就農者の方の部門別の参入の状況を見ますと、一般的に小規模でも高い収益を上げることが可能な野菜、果樹、こういったものが全体の約七割を占めていますが、これらの部門の新規就農者の参入時の経営面積は約五割超が五十アール未満となっているところでございます。
 これらの状況を踏まえまして、農業者の高齢化などが加速化、今後していく中で、農業への新規参入者の増加などによって農地が適切に利用されるよう、今回廃止を法案に盛り込んでいるところでございます。

○紙智子君 これも、だから下限面積をつくったのは、なぜつくったのかという理由をちょっと教えてほしいんですけど。

○政府参考人(農林水産省経営局長 光吉一君) これは、農地について、やはり一定の収入を得て経営としてやっていくためには経営として成り立つようにそれなりの経営規模が必要だということで、意味がある規定だと考えられていたと思います。

○紙智子君 まあ、本当にやろうと思ったらそれなりの面積が必要だということで下限をつくったんだと思うんですけど、それで農地を効率的に使って農業生産を増大させるためには最低限の農地が必要だから下限面積があったんじゃないかと思うんですよね。地域の実情に応じて既に引き下げているというんですけれども、これ、農業をしやすくするために引き下げているのであって、撤廃を求めているわけではないと思うんですよ。
 下限面積を撤廃しても投機的な農地の取得にならないかという心配も出ているわけですけど、それはそういう心配はないというふうに言えるんでしょうか。これ、大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 農地の権利取得に当たりましては、改正後においても、下限面積要件以外の、農地の全てを効率的に利用して耕作を行うこと、必要な農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障はないことといった、農地法で定める要件を引き続き満たす必要があることから、投機的な農地取得はできないと考えております。

○紙智子君 撤廃を求めているわけじゃないと思うんですね、現地は。それで、今、そういう取得、投機的なことの心配はないというふうにお答えになっているんですけど、現地はやっぱり求めているわけではない、そこまでは求めていない、まあ引下げはあるかもしれないけれどもね、ということだと思うんです。
 それで、安倍政権以降、攻めの農政、あるいは農業の成長産業化というのがずっと進められてきたんですけれども、日本の生産基盤というのは、じゃ、どうなったかと、強化されたのかというと、強化されるどころか、農地も基幹的従事者も減少してきたわけですよね。地域のコミュニティーの崩壊も進んでいると。農業の規制緩和や規模拡大が私は限界値を超えてきているんじゃないかというふうに思うわけなんですよ。
 それなのに、引き続いてこの基盤法を改正をして規制緩和を進め、規模の拡大路線を続けるのかという思いが非常にふつふつとしてくるんですけれども、この点、大臣、最後にまたお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 地域の農業が持続的に発展していくためには、継続的な発展が期待される効率的かつ安定的な農業経営を、担い手として育成、確保していき、これらの者への農地の利用集積を進めていくことが重要であります。一方で、今後、高齢化、人口減少が本格化し、地域の農地が適切に利用されなくなることが懸念される中、農地が利用されるよう、地域の農業を担う人材を幅広く確保、育成することは近々の課題となっています。
 このため、今回、基盤法等の改正法案におきましては、地域計画における目標地図について、目指すべき将来の農地利用の姿として、農業を担う人ごとに利用する農用地等を定め、農地の集約化を進めることとしております。これにより、引き続き担い手への農地の集積を加速するとともに、経営規模の大小にかかわらず、また家族か法人かの別を問わず、将来にわたり地域の農地を適切に維持、活用する方々により農用地の効率的かつ総合的な利用が図られるよう取組を推進していくことといたしております。

○紙智子君 余りちょっとかみ合っていないんですけれども、やっぱり私は、いや、担い手に政策集中しよう、集中しようと来てこれまでいるんだけど、その路線は成功していないんじゃないかというように思うんです。やっぱり中小・家族経営を含めた多様な農業が大事だと。議論すると、いや、多様な農業だよねって、大事だよねってなるのに、実際上の進む方向としてはやっぱり規模拡大化ということをいつまでも続けても、やっぱり駄目なんじゃないかと思うんですよ。
 ですから、本当に多様な担い手を育てていくとか、地域においても経営においても、小規模も含めてきちんと応援していくような方向に切り替えるべきじゃないかということを最後に述べまして、質問を終わります。