<第208回国会 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 2022年4月27日>


◇沖縄本土復帰50年 琉球政府による本土復帰に関する建議書について/基地のない平和な島としての復帰について/米軍の軍人・軍属による性被害について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 五月十五日で沖縄の本土復帰から五十年を迎えます。一九七二年の五月十五日が沖縄の本土復帰の日ですが、そこに至るまでの経緯について調べてみました。その前年、一九七一年十一月に国会で議論されていた沖縄返還協定は、復帰前の軍事基地を安保条約の下でそのまま存続させるというものでした。

   〔委員長退席、理事北村経夫君着席〕

 当時、琉球政府の屋良朝苗主席が、このままでは米軍の統治下と何も変わらなくなるという思いから、建議書を作って政府に提出しようと十七日に上京しました。ところが、羽田空港に到着する直前、当時衆議院の沖縄特別委員会で、沖縄返還協定は、瀬長亀次郎、当時沖縄人民党、そして安里積千代、沖縄の社大党の両議員の質問の直前に、自民党が緊急動議を出して強行採決をされています。屋良主席は、到着するなりそのことを報道陣から知らされて、愕然としたといいます。しかし、屋良主席は、桜内義雄、当時の特別委員長にこの建議書を提出して強行採決に抗議をし、その後、記者会見で全国民に向けての抗議の意思を表明しています。
 西銘大臣は、この経過については御存じですよね。

○国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣 西銘恒三郎君) 昭和四十六年十一月十七日に琉球政府の屋良主席が復帰措置に関する建議書を持ち上京したこと、建議書を提出する前に衆議院沖縄返還協定特別委員会にて採決が行われたことは承知しております。

○紙智子君 琉球政府の屋良主席が要望に来る前に強行採決をされた。基地のない平和な島を願う沖縄の思いは国会に届きませんでした。
 沖縄の思いと強行採決というこのねじれを修復するのが私たちに掛けられた責務ではないかと思うんですけれども、これ、西銘大臣と林大臣、両大臣にお聞きします。

○国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣 西銘恒三郎君) 沖縄復帰に当たり、政府においては、琉球政府との間で累次にわたり調整を行い、その結果を三次にわたる要綱、復帰対策要綱として取りまとめ、この要綱に沿って復帰関連法案の提出等を行ったものと承知をしております。
 私の所管である沖縄振興に関して、復帰時に委員が指摘されるようなねじれが生じたとは考えておりません。また、復帰以降、政府においては、様々に意を用いながら、各種社会資本整備や産業振興など沖縄振興に取り組んできたところ、県民のたゆまぬ努力もあり、県内総生産や就業者数が全国を上回る伸びを示すなど、沖縄経済は着実に成長したものと考えております。
 私としましては、引き続き、沖縄振興を所管する立場で、沖縄の発展のため、残された課題の解決のため、各種振興策に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 戦後二十数年間、米国の施政下にあった沖縄の祖国への復帰、これは我が国国民の悲願であり、平和条約発効以来、歴代内閣にとり最も重要な政治的課題であったと認識をしております。
 政府といたしましては、今御指摘のあった建議書に示された沖縄の思い、これは十分に認識しており、こうした歴史を振り返りながら、沖縄の在日米軍施設・区域の整理縮小に向けたものを含めた様々な取組、これを進めてきたところでございます。しかしながら、いまだに沖縄の皆様には大きな負担を負っていただいており、これからも丁寧な説明、対話による信頼、これを地元の皆様との間で築きながら、沖縄の負担軽減に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 建議書は百三十ページに及ぶものなんですけれども、ここで全部は紹介できませんが、一部抜粋すると、県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからにほかなりません、経済面から見ても、中略ですけれども、沖縄の県民所得も本土の約六割です、このように基地あるがゆえに起こる様々な被害公害や、取り返しの付かない多くの悲劇等を経験している県民は、復帰に当たっては、やはり従来どおりの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおりますと書かれています。建議書の最大の柱はこの平和の希求です。沖縄戦で多くの県民が犠牲になった後も二十六年に及ぶ米軍の支配下に置かれて、基地や核兵器や毒ガスに囲まれて生活してきた、異民族による軍事優先政策の下で、政治的諸権利が著しく制限され、基本的人権すら侵害されてきたと指摘しています。
 この従来どおりの基地の島ではなくて、基地のない平和の島としての復帰を強く求めているわけです。西銘大臣、この願い、五十年たってどれだけ実ったと思われますか。

   〔理事北村経夫君退席、委員長着席〕

○国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣 西銘恒三郎君) 米軍基地の問題については所管外ではありますが、あえてお答えをするとすれば、沖縄の米軍専用施設・区域が、復帰時の二万七千八百五十ヘクタールから、データを見ますと約一万八千四百八十三ヘクタール、令和四年一月ですけれども、縮小しております。基地負担の軽減はまだ課題としては残ってきておりますが、着実に進んできていると考えております。
 政府としましては、沖縄に今なお多くの米軍基地が集中し、県民にとって大きな負担となっていることから、引き続き、これを軽減することを重要な課題と考えており、基地負担の軽減に全力で取り組んでいるところであります。
 私としましては、引き続き、基地の跡地利用の推進を始め、沖縄振興策に全力で邁進していく所存であります。

○紙智子君 私たち国会議員に求められているのは、この建議書を実現するために力を尽くすことではないでしょうか。
 ところが、全国の米軍の専用基地の面積に占める基地の割合は七〇・三%ということで、今なお基地の島のままだと。それどころか、オスプレイの配備とか新しい強化が進んで、県民は爆音や墜落や、あるいは米軍の犯罪、環境汚染に苦しんでいます。名護市の辺野古の米軍の新基地建設は、県民が何度も反対を意思表示してきたにもかかわらず、政府によって否定をされています。復帰前は米国に否定されてきた自治が、今度は日本政府によって形骸化されている。
 林大臣、沖縄には日本国憲法で保障される自治権はないのかという問いもありますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 戦後七十五年以上経た今もなお、今、紙委員からお話がありましたように、国土面積の約〇・六%の沖縄県内に全国の約七〇%の在日米軍専用施設・区域、これが依然として集中しておりまして、沖縄の基地負担の軽減、これは重要な課題でございます。
 私自身も、防衛大臣に在任中の二〇〇八年八月でございましたが、普天間飛行場周辺の土地、実際に歩いて視察をいたしまして、米軍機による騒音、また悪臭等が周辺地域住民の皆様にとって大変深刻な問題であるという認識を強めたところでございます。地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、沖縄の負担軽減、そして普天間飛行場の一日も早い全面返還に向け、全力で取り組まなければならないと感じたところでございます。
 外務省といたしまして、普天間飛行場の辺野古移設等を始めとする在日米軍再編、また今御指摘のあった米軍の運用等、一つ一つの課題についてアメリカと連携して前に進めてきておるところでございまして、沖縄返還五十周年の節目の年に当たっても、引き続き地元の負担軽減に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 建議書は、新生沖縄像として、一つは地方自治、そして二つは反戦平和、三つは基本的人権の確立、四つは県民本意の経済開発を掲げています。復帰五十年の年にやっぱりこの原点に立ち返るべきだと思います。
 さて、いまだ解決していない問題ですが、米軍による犯罪、性犯罪など、繰り返される問題についてです。
 琉球新報の四月二十一日付けで、沖縄県警によると、七二年の復帰以降でも沖縄で起きている女性への犯罪は、本土復帰の一九七二年から二〇二〇年までに、米軍人軍属との家族の検挙数は六千六十八件となっています。殺人、強盗、放火、強制性交等の凶悪事件が五百八十二件、そのうち強制性交等罪は百三十二件発生していると報道しています。
 これ、なぜ繰り返されるんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) この米軍関係者による性犯罪の理由につきまして一概に申し上げるのは困難ではありますけれども、性犯罪も含め、米軍人等による事件、事故、これは地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものであると考えております。
 米軍人等による事件、事故への対応については、平素から日米間のあらゆるレベルで様々な機会を通じて米側とやり取りをしており、私からも、本年一月の日米2プラス2の機会に、ブリンケン国務長官及びオースティン国防長官に対しまして、米軍人等による事件・事故防止の徹底について申入れをしたところでございます。
 米側に対しては、隊員の教育や綱紀粛正について更なる努力を求めていくとともに、地域の皆様に不安を与えることがないよう、日米間で協力して事件、事故の防止に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 日米地位協定の十七条に刑事裁判権の規定があります。被疑者の逮捕とか裁判権を行使すべき場合の被疑者の身柄を拘束する規定が入っているんですが、日本側が公訴を提起するまでは米軍が身柄の拘束を続けるとなっているんですね。
 それで、一九九五年に発生した米軍人による少女暴行事件、これを受けて運用改善がされていると思うんですが、どのようにされているでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 米軍人等による事件、事故に際しては、日米地位協定等の規定に基づきまして日米間で協力して取り組んできております。具体的には、日米地位協定は、日米の当局が犯罪の捜査において相互に援助すること、日米間で裁判権が競合する場合の裁判権の分配等について規定をしております。
 その上で、今、紙委員から御指摘のありました一九九五年の刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意によりまして、殺人、強姦等の犯罪で我が国として重大な関心を有するものにつき、起訴前の拘禁移転を可能にする道が開かれ、実際に移転が行われるなど、運用上の改善が図られてきておるところでございます。

○紙智子君 今、運用改善がされていると言ったんですけど、そう言っても、その後も繰り返されてきているわけですよね。二〇一六年の四月には沖縄県で女性が行方不明になって、五月になって、その女性の死体遺棄容疑で沖縄県警が元海兵隊員、米軍属を逮捕しました。この事件を契機に、改めて沖縄県で日米地位協定の見直しを求める声が高まりました。
 しかし、同年五月の首脳会談ではこの日米地位協定の改定に言及されなかったんですね。これに対して、当時、翁長県知事は、大変残念だと、日米地位協定について政府は今まで運用改善により対応してきているが、それでは限界があることは明らかだというふうに言っているわけです。
 これ、運用改善も限界があるんじゃないですか、大臣。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) 日米地位協定は大きな法的枠組みでありまして、政府としては、事案に応じて効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきております。
 これまで、累次の日米合同委員会合意を通じて日米地位協定の運用の改善を図ってきたことに加えまして、二〇一七年には国際約束である軍属補足協定を締結いたしました。また、日本側に第一次裁判権がある犯罪の被疑者たる米軍人軍属の拘禁についても、日米合意に基づきまして、先ほど申し上げましたように、実際に起訴前に日本側への移転が行われてきております。
 政府として日米地位協定の見直しは考えておりませんが、このような取組を積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。

○紙智子君 先日の衆議院の沖縄北方の関する特別委員会の答弁でも、そして、今も言われましたけど、日米地位協定の改定は考えていないと。でも、遡ってみても、二〇〇三年、これ平成十五年の七月に、衆参両方の沖縄北方特別委員会で、沖縄県民に対する米軍人等の犯罪の防止等に関する決議というのが上げられているわけですよ。その委員会では、米軍は事件が発生するたびに再発防止、綱紀粛正、軍人等の教育などの対策を講じているとしているけれども、十分な効果があるとは言い難い、よって、政府は、沖縄県民の生活と安全を守るために、米軍軍属等の犯罪根絶に全力で取り組むとともに、日米地位協定の見直しを早急に検討し、事態の抜本的改善に取り組むべきである。これ、衆参で上がっている決議文ですよ。
 外務大臣、これ、衆参で上がっているこの決議の重みをどう思うのかということと、ちょっと時間の関係でもう一つつなげて言いますけれども、やっぱり、今おっしゃった協定改定は考えてないというこの答弁は、やっぱり取り下げたらいかがなんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 林芳正君) この、先ほども申し上げましたように、性犯罪も含めまして、米軍人等による事件、事故、これは地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものであると考えております。
 今委員からお話のありましたこの二〇〇三年七月の衆参両院の沖縄及び北方問題に関する特別委員会における決議に対しまして、当時の川口外務大臣からは、米側に対して犯罪の防止に関して一層の努力を促していくとともに、政府としても、米軍人等による事件、事故の防止のため、地元関係者や米側と緊密に協力しながら努力していく旨を述べたと承知をしております。
 私としても御指摘の決議を重く受け止めておりまして、この決議の趣旨も踏まえて、米側に対しては、隊員の教育や綱紀粛正について更なる努力、これを求めていくとともに、沖縄を始めとした地域の皆様に不安を与えることがないように、日米間で協力して、事件、事故の防止に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 これ、やっぱりヨーロッパなんかと比べても、この立入り権を、ヨーロッパの場合は立入り権を明記しているわけですよ。ところが、日本では三条によってこれは立入りできないようになっているんですね。極めて不平等なんです。基地内に逃げ込んだら、そこから先、日本は捜査に入れないと、まさに治外法権だと思うんですね。

○委員長(青木一彦君) 時間が参りましたのでおまとめください。

○紙智子君 やはり三条とか十七条ぐらいは見直すべきだということを強く求めて、質問を終わります。