<第208回国会 農林水産委員会 2022年4月26日>


◇水産基本計画 沿岸漁業における魚種転換について/水産業の改良指導員の体制強化について/ロシアによる木材輸出禁止が木材市場に与える影響について/木材価格の高騰が中小工務店に与える影響について/林業従事者の育成・確保について/林業従事者の労働環境の改善 月給制の導入について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 四月五日に水産基本計画について質問をしたんですけど、その続きをちょっと今日最初にやります。
 水産基本計画は、海洋環境の変化への適応として、複合的な漁業等への新たな操業形態への転換を推進するというふうに書いています。言わば一そうの、一隻の船で複数の魚種を捕るマルチ漁業を促進するということなんです。
 このマルチ漁業について、四月五日の質問のときに、北海道では、大臣許可の沖合大型船向けの不漁対策という印象が強いと、小規模な沿岸漁業の装備では採算性が低い、沿岸漁業より大臣許可の大型船を優先する政策ではないかという意見が出ていることを紹介しました。こういう問題があるということは指摘しておきたいと思うんですね。
 水産資源が減少する中で、この魚種転換、これは沿岸漁業にとっても課題になっているんじゃないだろうかというふうに思うんですけど、まず見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 近年の海洋環境の変化などに対する順応性を高める観点から、資源変動に適応できる漁業経営体の育成と資源の有効利用を行っていくことが必要であると考えております。
 このため、農林水産省としましては、本年三月に決定した水産基本計画において、対象魚種や漁法の複数化、協業化など状況に応じた操業形態への転換などを推進することとしており、これを踏まえて必要な施策の検討を行ってまいります。

○紙智子君 基本計画では、沿岸漁業について、海洋環境の変化を踏まえ、未利用の魚の活用も含めて提起をしていると思うんですね。北海道では、今まで来なかったブリが捕れるようになって、対応が課題になっているんです。
 ただ、資源が減ったからといってほかの漁師が捕っている魚種に変えるということになると、今度、漁業者同士が対立することも出てくると思うんですね。関係者の話合いが必要になるんだと思うんです。同時に、この魚種転換するにしても、沿岸漁師は資金がないので、簡単に経営判断はできないんだと思うんですね。水産加工業にも影響してくるものだと思います。
 そこで、経営を支援する水産業の改良指導員の役割というのは大きい役割があるんだと思うんですが、この事業というのは三位一体改革で都道府県に税源移譲されて、国の予算は二〇〇一年のときは七億一千七百万円だったんですけど、二〇〇六年、平成十八年ですね、このときはもう九千百万円に一気に減っていると。その後も減り続けて、現在は六千九百万円まで減っています。普及員の数は四百八十四人だったんですけど、四百三十三人ということで五十人減っているわけです。
 そこで、やっぱり魚種転換が望まれる場合には、この経営転換を判断するサポート、サポートする体制とか支援が必要なんじゃないかと思うんですけれども、これ農水大臣にお聞きします。どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 漁獲状況に合わせた魚種転換などにつきましては、一義的に経営者である漁業者が判断すべきものですが、漁業の対象種の資源動向や支援制度等の情報を含め、現場の事情をよく知る水産業普及指導員を始めとする行政が支援することは有効と考えています。
 全国の水産業普及指導員の人数は近年は横ばい傾向にあると認識しており、農林水産省としても、水産業普及指導員は国の政策の漁業技術の普及に当たって重要であり、その活動への支援に適切に対応していきたいと思います。
 これに加え、近年の海洋環境など漁業をめぐる状況の変化に対応していくには、水産業普及指導員だけではなく、地方自治体や国の行政が浜プランなど各種施策を適切に措置していくことも経営支援に重要と認識いたしております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 魚種転換が必要な場合、沖合の漁業と沿岸漁業の調整というのがやっぱり必要になると思うんですね。やっぱり浜が元気になっていかなきゃいけないと、それでこそ漁村も活気付いていくということでもあると思いますので、国として沿岸を軸に置いて沖合と調整を進めるように求めておきたいと思います。
 それから、林業の話に今度入りますけれども、ロシアが、このウクライナ侵略という無法な行為をやっている中で、各国が科した制裁に対してけしからぬということで、三月九日に対抗手段として、対抗手段を打ったと。日本を含む非友好国に対して、丸太やチップ、合板の材料となる単板というんですね、単板というものの輸出を禁止するというものです。
 林野庁は、これ、木材市場の影響をどういうふうに見ているのか、説明いただきたいと思います。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 木材市場の状況について御質問いただきました。
 まず、令和三年の三月頃から、世界的な木材需要の高まり、コンテナ不足などによる国際的な需給の逼迫により、木材の日本への輸入量が減少し、輸入木材や国産材の製品価格が高騰するいわゆるウッドショックと呼ばれる状況が発生し、今年に入ってからも木材価格は高止まり傾向が継続しているところであります。
 こうした中、ただいま先生からお話ありましたとおり、令和四年の三月九日から、ロシアが非友好国に対しまして一部の木材の輸出禁止を実施してございます。これがチップ、丸太、単板でございます。
 ということでございまして、今後の国内の木材需給に影響が出ることが想定されるところでございます。

○紙智子君 何か、状況を言っていただいただけなので、その影響がどうなのかなということを聞いたんですけど。
 それで、ロシア材の輸出禁止というのは、昨年から木材価格の高騰、いわゆる、今もお話あったウッドショックの影響に輪を掛ける事態になっているという報道もあるわけですよね。で、輸出禁止の品目にはアカマツやカラマツの単板が含まれていると。で、合板メーカーはこれ、杉やヒノキなどの国産材への切替えを進めています。国産の針葉樹の合板の流通価格というのは最高値を更新し続けています。それから、ロシア産材に代わる他産地の材料ですね、ここに活路を見出そうということをやろうとしても、欧州各国との争奪戦になってしまうと。そういうことも迫られる中で、輸入、国産、共にこれ、合板の値上がりが続くという見方も言われているわけですよね。
 この価格の高騰が続いた場合に、中小の工務店の影響というのは避けられないんじゃないのかというふうに心配しているわけなんですけど、これは国土交通省に来ていただいているんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(国土交通省大臣官房審議官 塩見英之君) お答えを申し上げます。
 先生御指摘のように、ロシアによる輸出禁止等の措置が講じられたことを受けまして、今後木材需給や価格への影響が懸念をされているところでございます。
 昨年、木材の需給が逼迫しました際には、特に中小工務店におきまして木材の調達のめどが立たずに工期が延びるといったような影響も生じましたことから、今後の木材市場の動向あるいは需給の状況等、関係省庁とも連携してしっかり注視していく必要があるというふうに考えてございます。

○紙智子君 今、お二方の話聞いても、すぐに今どうこうというふうにはなっている雰囲気ではないんですけど、でも、いずれじわじわと必ずやっぱりやってくるんだろうと思うんです。
 ロシア産材の輸出禁止によって住宅の価格への影響も懸念されています。木材価格の高騰対策の検討を求めたいと思うんですね。ウッドショックによって外材依存によるリスクが大きく表面化しているわけです。輸入依存はやっぱり輸出先の国の影響に左右されますから、これやっぱり国産材への切替えというのが必要だというふうに思うわけです。輸入材を国産材に置き換える上で、やっぱり林業従事者の果たす役割というのは本当に大事だと思うんです。
 国勢調査によると、この林業従事者の数は一九八〇年のときには十四万六千人だったんですけど、二〇一五年、このときになりますともう四万五千人まで減少しています。それで今、気候変動によって頻発する豪雨災害とかカーボンニュートラルに向けて、持続可能な山づくりというのが求められているわけです。
 気候危機に対応した山づくりを進めるためにやっぱりそれやっていくとなると、一番求められるのはマンパワーの確保じゃないかと思うんですけれども、林野庁長官、いかがでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 林業従事者の確保について御質問をいただきました。
 先ほど来お話にありますとおり、いわゆるウッドショックやロシア、ウクライナ情勢の変化も踏まえた国産材への切替えに向けましては、国産材の生産量を増やすことが必要でございます。そのためには、御指摘のとおり、木材生産を担う林業従事者の確保が重要と認識しております。
 このため、農林水産省といたしましては、緑の雇用事業により、新規就業者に対して林業に必要な資格取得も含めた三年間の体系的な研修を支援するとともに、緑の青年就業準備給付金事業によりまして、林業大学校等で林業への就業を目指して学ぶ学生への給付金の支給などを行っているところでございます。

○紙智子君 あれですよね、緑の雇用を開始して、毎年三千人程度の人は新たに担い手になっているんですよね。一言で。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 平成十五年に緑の雇用事業を開始をいたしましたが、新規就業者はそれまで年間二千人強であったものが三千人まで増加をしてございます。若年者率や平均年齢は、若返り傾向が持続しているところでございます。

○紙智子君 やっぱり、今全国で、林業従事者を育成する、今お話もありましたけど、林業大学校が創設をされています。山梨県では、林業の担い手を育成しようということで、県立農業大学校に林業を学ぶ森林学科が創設をされたと。そして、農林大学校となって今いるわけですよね。林業を学ぶ機会が増えて、林業に携わろうという人も増えているというのは大変希望のある話だと思うんです。
 北海道の道立北の森づくり専門学院というのがあるんですけれども、ここは三月に、開校して初めてとなる卒業生が森林組合や林業の関連会社に就職したというふうに報道されました。卒業生は新たに林業従事者の仲間入りを果たすわけですけれども、林業の労働環境はどうなっているのかということになると、これが、林業から離職する人の理由の一つというのが、給与体系が天候に左右される日給制なんですね、雨が降ったら出れないと、収入の不安定さというのがその理由に挙げられているわけです。
 私は、この間、聞き取りした中で、四十代の方が日給と出来高払制度でもって加えた給与で月二十万円以下で働いているという話があって、やっぱり林業の就業者の定着化を図っていこうと思うとこの労働環境の改善が必要じゃないかと思うんですけれども、農水大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 林業労働の担い手を確保するには、新規就業者の確保、育成とともに、その定着を図るため、給与等の処遇面や安全面の改善を図ることが重要と認識いたしております。
 このため、農林水産省といたしましては、緑の雇用事業や緑の青年就業準備給付金事業によりまして従事者の育成、確保を図るとともに、高性能林業機械の導入等によりまして、作業の安全性の向上や軽労化を通じて、女性や若者の就業の促進を図っているところであります。
 さらに、全産業の十倍を超える労働災害発生率の半減に向けて、労働災害の多くを占める伐倒作業を安全に行うための研修や、労働災害を防止するための装備、装置の導入などによりまして、労働安全対策の強化に取り組んでいるところであります。
 引き続き、これらの取組を進めまして、林業労働の担い手の育成、確保、定着を図ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 今、処遇改善と労働安全という話もありました。
 それで、森林・林業基本計画で、労働環境の改善として、通年雇用化とともに月給制の導入の促進も挙げられていますよね。月給制の導入を実現させるために、じゃ、林野庁としてはどういうふうに推進していくんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 先生御指摘のとおり、林業は、気象条件により事業の実施が左右される屋外作業であるほか、小規模な経営体では年間を通じた安定的な事業量の確保が難しいこと、また、植栽や下刈りなど、作業種に、作業の種類によっては作業時期が限定されることなどから、日雇や季節雇用が多く、通年雇用化や月給制の導入が遅れているのが現状でございます。
 農林水産省といたしましても、従事者の所得の安定などを図る観点から通年雇用化や月給制の導入は重要と考えておりまして、林業施業の集約化などによる事業量の確保、緑の雇用事業による一年を通じた複数の作業を行える人材の育成、マルチワーカーと呼んでおりますけれども、このような人材の育成に取り組んでいるところであります。
 また、高性能林業機械の導入等を支援する補助事業や、国有林の事業発注において月給制の導入を採択時の優先ポイントとするなど、月給制の導入の促進に取り組んでいるところでございます。

○紙智子君 支援事業で優先選択というのがあります。それについてちょっと一言説明してください。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 高性能林業機械の導入などを支援する補助事業、それから国有林の事業発注において月給制の導入を採択時の優先ポイントとするということで、月給制の導入の促進に取り組んでいるところでございます。

○紙智子君 結局、多くはまだ日給制がほとんどというか、まだ月給制が本当に少ないんですけど、日給制でやると、結果的には過重労働になるんじゃないかという指摘もあります。
 それで、月給制の導入に当たっては、やっぱりカーボンニュートラルなどのこの気候危機に対応した山づくりを進めながら行っていくということが重要だと思います。だから、皆伐した後、再造林がされないで造林未済地が増えるという、こういうことがないように進める必要があると思うんですけれども、長官、いかがでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 天羽隆君) 先生御指摘のとおり、森林施業を安定的、円滑に進めていくためにも、このような林業従事者を育成し、確保して定着を図っていくということが極めて重要でありまして、カーボンニュートラルの達成のためにも必要だというふうに考えております。

○紙智子君 月給制の導入を実現するためには、やっぱり建設業界においても国産材の利用を、定着を図る必要があるんですけれども、この点、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 昨年秋の木材利用促進法の改正によりまして、民間建築物を含む建築物一般で木材利用を促進することとされました。
 農林水産省では、まちの木造化推進法、公共建築物の木造化、木質化への支援や建築用木材の開発、CLTを用いた建築の実証、木材利用を普及する木づかい運動の展開などに取り組んでいるところであります。さらに、都市間の民間建築物における木材利用を促進するために、ウッド・チェンジ協議会という官民協議会におきまして、分野ごとの課題解決に向けた議論を進めております。
 総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、環境省といった関係省庁も連携を取りましてこれらの取組を進めることにより、国産材利用の普及、促進、定着を図ってまいりたいと思います。

○紙智子君 やっぱり、今大変だから国産材にとなるんだけど、また元に戻ってしまわないように、きちっと定着するということが大事だと思います。
 林業従事者の労働環境の改善を図って、やっぱり持続可能な山づくりを進めるということを求めて、質問を終わりたいと思います。