<第208回国会 農林水産委員会 2022年4月21日>


◇みどり戦略における技術開発と食料自給率の向上について/みどり法案での基本計画と地方自治体の食料自給率目標の設定について/基本計画の作成と関係者、住民の参加について/植物防疫法改正案について/総合防除計画における有機農業者の参加について/北海道でのジャガイモシロシストセンチュウの発生について/有機米の生産割合について/学校給食での有機米の利用について/みどり戦略と温暖化防止対策について

○環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 みどり食料システム戦略は、カーボンニュートラルや生物多様性の保全、再生を促進し、災害や気候変動に強い持続的な食料システムを構築することが急務であって、そのことは食料・農業・農村基本計画に示された食料自給率の向上と食料安全保障の確立を確かなものにすることにつながるというふうに書いています。
 そこで、私は本会議の質問で、農政の基本は食料・農業・農村基本法であって、みどり戦略が基本計画で定めた食料自給率の向上にどう関与するのか定かでないというふうに聞きましたら、大臣は、食料・農業・農村基本法と矛盾するものではないというふうに答弁されたんですけれども、どのように関与するのかというのははっきりしませんでした。
 それで、みどり戦略の副題が生産力の向上と持続性の両立をイノベーションで実現するという形になっていますので、この技術開発、技術開発が進まないと食料自給率の向上も食料安全保障も確かなものにならないのではないかと。で、技術開発頼みになっているんじゃないかというふうに思うわけなんです。
 そこで、技術開発が想定どおり進まなかったらこれ食料自給率の向上は達成できないということになるんでしょうか、お聞きします。

○政府参考人(農林水産省大臣官房技術総括審議官 青山豊久君) お答えいたします。
 みどりの食料システム戦略は、食料自給率の向上にも寄与するものでございますけれども、その実現のためにはイノベーションの創出が不可欠でございます。ただし、イノベーションにつきましては一定の時間を要するものもございますので、中長期的な時間軸を持ちまして、二〇四〇年までに革新的な技術、生産体系を順次開発して、二〇五〇年までにこれらの技術、生産体系の社会実装を図っていくということにしております。
 一方で、目標の実現に向けまして前に進める必要がある中、今までも優れた技術はございますので、二〇三〇年までこれらを横展開していきたいというふうに考えております。具体的には、化学農薬や肥料の使用削減に向けまして、土壌診断を踏まえた土づくりや栽培暦の見直し、水田用除草機を用いました作業の省力化などの技術を想定しておりまして、先端技術の開発と併せてこれらの既存技術の活用、普及も図っていきたいと考えております。
 食料自給率は、その向上を図ることを旨といたしまして、国産農産物の消費の拡大、生産基盤の強化等の施策を講じているところでございまして、これらの施策に併せて本法律案に基づく施策を推進することで持続的な農林漁業の発展、ひいては食料の安定供給の確保に寄与していきたいというふうに考えております。

○紙智子君 イノベーションには一定の時間の掛かるものもあるという話もあって、やっぱり、言ってほしかったのは、イノベーション頼みにしないで、総力を挙げて頑張ると言ってほしかったんですけど。
 食料自給率の目標は四五%なわけですけれども、現在の食料自給率は戦後最低の三七%ということで、むしろ下がっているわけですよね。食料自給率目標の達成がまだ今できていないのに、技術開発が予想どおりにこれ進まなかったらどうするんだろうかというふうに思うわけなんです。
 そこで、提案しますけれども、みどりの法では国が基本方針を定めて地方自治体が基本計画を定めることになっていると、それで、国の基本法では食料自給率の目標を四五%にするというふうになっているわけですけれども、これをしっかりと位置付けて、そして地方自治体は基本計画で食料自給率目標を書き込むようにしていったらいいんじゃないかと。
 例えば、今でいっても、今、北海道でいうと食料自給率が二一六%なんですよね。東京はというと、東京はゼロ%、一%から下がったんです、またね。それで、水田地帯が多いと言われている埼玉でも一〇%なんですよ。関西でいうと大阪が一%ということで、これ都市部というのは本当に少ないわけなんですけど、やっぱり、小さいところは小さいなり、大きいところは大きいところなりに、各県がそれぞれ目標を持ってその達成に向けて頑張るということが必要なんじゃないかと思うんです。そのことがやっぱり持続的な食料システムをつくる上でも重要じゃないかと思うんですけれども、大臣、これ、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 食料自給率につきましては、その向上を図ることを旨といたしまして、国産農産物の消費の拡大、生産基盤の確保と、食料・農業・農村基本計画に掲げる施策を講じているところであります。また、本法律案に基づく環境負荷低減の取組は、健全な作物を育てる土づくり、化学肥料や燃油等の輸入依存からの脱却など、持続的な農業の発展、ひいては食料・農業・農村基本計画に掲げる政策の推進にも寄与するものであり、基本計画と一体となって実施していきたいと考えております。
 委員御指摘の、本法律案に基づく国の方針、それに基づく地方公共団体の基本計画につきましては、他の当省所管の法制度でもあるように、計画認定制度の実務的な運用のために策定するものであります。本法律案に基づく基本方針及び基本計画に食料自給率目標を定める考えはありませんが、食料自給率目標については既に食料・農業・農村基本計画に定められておりますので、これを目標にその向上を図ってまいりたいと思います。

○紙智子君 やっぱり、それぞれの都道府県で目標を持ってやる方が絶対いいと思うんですけどね。是非それも検討してほしいんですけれども。
 それで、基本方針は、経済情勢の変動とその他の情勢の推移によって必要が生じたときは基本方針を変更するものというふうに書いています。リーマン・ショックの際にも食料危機もあれば、今回のようにロシアのウクライナ侵略に伴う食料危機が現実味を帯びていると。この経済情勢の変動に備えるためにも、食料自給率の向上を位置付けるべきではないかというふうに思っています。
 そこで、食料自給率の達成と併せて、この地方自治体の基本計画の作成に関係者、住民が参加する仕組みが必要ではないかと。やっぱり、議論があってそれぞれの自治体なんかもそういうことに向かっていくわけですから、そういう参加する仕組みが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 本法律案では、各地方自治体において、農林漁業における環境負荷低減を促進するための基本計画を作成できることとしています。この作成に当たりましては、地方自治体の負担に配慮することが大前提となりますが、地域の実情に応じた取組が促進されるよう、地域の関係者との合意形成を図ることを国の基本方針の中で明記していきたいと考えています。これらを通じて、地方自治体の検討過程でも幅広く関係者の意見を聞くことになると考えています。

○紙智子君 やっぱり、みどり戦略ということですから、食料自給率の向上とか食料安全保障の確立のためにはこの課題解決に向けた行動変容が不可欠であるというふうに言っているわけですから、やっぱり行動変容を促すためにも関係者の参加というのは私は不可欠ではないかなというふうに思っております。
 それで、次に、ちょっと植物防疫法について、改正案について質問します。
 先ほどもちょっと出ていましたけれども、総合的な防除の仕組みを構築するというふうにあるんですけど、この仕組みについて、ちょっと確認の意味でもう一度お願いします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 近年、温暖化等により病害虫の蔓延リスクが増加していることや、過度に農薬に依存した防除により薬剤耐性を持つ病害虫が発生している事例が見られることから、病害虫の発生予防を含めた総合的な防除の推進が急務となっております。
 このため、今般の植物防疫法改正法案では、農薬だけに頼らない病害虫の発生予防を含めた総合防除を推進するため、国が指針を定めるとともに、これに基づき都道府県が地域の実情に即した総合防除の実施に関する計画を策定し、必要に応じて農業者が最低限遵守すべき事項を定めるなどの仕組みを創設することとしております。

○紙智子君 国は基本指針を、都道府県知事は総合防除計画を策定するとあります。
 第二十二条の三において、都道府県知事は、総合防除計画において農業者が遵守すべき事項を定めるというふうに書いています。で、有害病害虫が発生した場合に、例えば有機農業であれば、これ農薬は使わないので、これまでは独自の防除技術で対応してきたと思うんですね。ですから、遵守事項の策定には有機農家の参加というのは欠かせないんだと思うんですけれども、そこはどういう仕組みにするんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 改正法案では、都道府県が総合防除計画を定める際には市町村長や農業に関する団体の意見を聴くよう努めることとしております。国としても、意見聴取を求める規定を踏まえ、都道府県においては、有機農業者を含めまして関係者と丁寧に議論をした上で、地域の実情を踏まえた総合防除計画が定められるものと考えております。

○紙智子君 有機農家は、経験をこれまで重ねながら地域に合った防除技術を築いてきたんだと思うんですね。農業者が遵守する事項が行政の介入にならないように、合意ということを大切にしてほしいと思います。
 さて、北海道では、二〇一五年にジャガイモのシロシストセンチュウが発生して、ジャガイモの生産に大きな打撃を与えました。この侵入経路というのは解明できているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 二〇一五年に北海道網走市で、二〇一九年に斜里町で確認されたジャガイモシロシストセンチュウの遺伝子解析を行ったところ、これらは同一系統であり、南米が起源で、現在、欧州、米国等で発生しているものと遺伝的に近い関係にあることは確認しております。
 一方で、本線虫の侵入原因につきましては、専門家による対策検討会議の下、侵入原因調査チームを設置いたしまして、海外からの中古農機や、あるいは肥料、堆肥の輸入状況、さらにはバレイショの不正持込みの有無等につきまして調査し、検討したところでございますが、本線虫の発生国からの中古農機や肥料等の輸入や不正持込みは確認されておらず、現在のところ侵入原因の特定には至っていない状況でございます。

○紙智子君 ちょっとその原因がなかなか分からないまんまなんですけど、既にジャガイモシロシストセンチュウが発見されて六年経過しているわけなんですね。
 それで、防除対策の現状って、今ちょっと一部話されたんですけど、その検出限界以下の農地が増えているということだとか、それから、ジャガイモを植えるその対抗性の植物なんかも含めて、ちょっと簡潔に、あと、その今の進んでいる状況を話をしていただきたいんですけど。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 ジャガイモシロシストセンチュウの緊急防除におきましては、発生圃場におきまして、これまで、寄主植物であるバレイショなどナス科の植物の栽培を禁止しつつ、線虫の密度を低下させる効果がある対抗植物でございます、トマトの野生種でございますポテモンの植栽等による防除対策を徹底するとともに、さらにはバレイショや土が付着しているニンジン等の移動制限を行ってきたところです。
 これまでに本線虫の発生が確認された三百二十八圃場につきまして緊急防除を進めた結果、七割以上の圃場におきまして、調査の結果、本線虫が検出されない水準になったことが確認されております。地域内の全ての発生圃場において本線虫が検出されない水準となった場合、緊急防除の防除区域から除外しており、直近では本年四月十五日に網走市実豊地区等が防除区域から除外されたところでございます。
 今後とも、地元の関係者と連携しながら防除対策を進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 植物防疫法の改正案がこういう問題を解決することになるのでしょうか。これ、簡潔にお答えください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 今回の植物防疫法の改正法案におきまして、輸入検疫措置への農機具等の追加や携帯品検査の強化により水際での侵入防止を強化するとともに、侵入調査事業を法律に位置付け、同じ条件で全国で調査を実施することにより侵入した病害虫の早期発見を可能とし、また、緊急防除のうち告示を省略して実施することができる措置を拡充することにより栽培規制等の措置を緊急に講じることが可能となるなどの措置を講じることとしております。こうした措置によりまして、病害虫の侵入防止、侵入時の早期発見、早期防除に寄与できると考えております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 なぜやっぱり外国由来の有害病害虫が増えてきているのかということで考える必要があると思うんですけれども、やっぱりグローバル化、自由化で農産物の輸入が増えているということと関係あるんじゃないかと思うんですね。植物防疫体制を強化するというのはもちろん必要なんだけれども、同時に生態系を壊さない対策も必要になるんじゃないかということもちょっと申し上げておきたいと思います。
 次に、有機農業についてお聞きします。
 みどり戦略は、有機農業を全農地の二五%、百万ヘクタールにする目標を掲げています。そこで、二〇〇六年に有機農業推進法ができたわけですけど、なぜこの有機農業が増えなかったのかと。参考人の方からも、検証ができていないという意見が出ました。私も全く同感なんですけれどもね。
 それで、有機農産物は増えているのかというと、これ本会議でも紹介したんですけど、総生産量に占める有機農産物の割合、これ二〇〇六年当時と二〇一九年の比較で見てみたら、いわゆる有機JASの格付されている数字ですけど、野菜が〇・一九%から〇・四六%に増えているけれども、米は〇・一三%から〇・一%に下がっていたんですよね。有機米は広がっているというふうに思っていたものですから驚いたわけですけど、なぜこれ有機米の割合が減っているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 有機農産物のJASの格付の実績につきまして、登録認証機関からの報告によりますと、委員おっしゃるとおり、野菜ではこの間に格付八%増加、それに対して米では格付数量が二二%の減少、米全体に占める有機米の割合も減少しております。
 この要因について、登録認証機関ですとか認証業者に聞き取ったところ、主な原因として挙げられたのは、米は元々年齢構成が高い中で、有機米の生産に取り組んでこられた農業者が高齢化して、除草作業等が困難になり、労働負荷の小さい慣行栽培に移行しているということが多く挙げられました。
 有機水稲は土地利用型の作物の中では拡大の可能性が高いものと認識しておりますので、農林水産省におきましては、有機水稲の栽培における労働負荷の軽減、これを図るために除草ロボットなどの省力化技術の開発が重要と考えておりまして、技術開発と生産現場への導入、これをしっかりしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 なかなか農作業が大変だということの中で、高齢になってきて続かない人がいる、実際上は離農者が出ているということなんだと思うんです。
 それで、参考人質疑では、有機の拡大に向けて、米での取扱いは外せないという発言もありました。それから、稲作をどうつくり直すかが今回の法案の大きなポイントだという発言もされたと思うんですね。それで、やっぱり有機が広がるかどうかの鍵というのは、これ水田農業にあるんじゃないかなと思うんです。
 そこで、具体的に有機農業をどのように広げるかということなんですけど、これも本会議のときに質問したときに、農水大臣は、有機農業の指導員の育成や技術習得支援による担い手の育成、環境保全型直接支払交付金による生産者支援に加えて、令和三年、二〇二一年度の補正予算に予算を組んだというふうに答弁をされましたよね。学校給食に有機食品を活用することは有意義で、市町村の取組を支援するというお答えもされました。それからまた、文部科学大臣は、学校給食での活用について、学校設置者の判断であるとしつつも、農林水産省と連携しつつ必要な取組を行うというふうに答弁をされました。
 そこで、具体的な課題は何かと。農林水産省とどのように連携していくのか、それについて教えてほしいんですけれども、文部科学省、お願いします。

○政府参考人(文部科学省大臣官房審議官 淵上孝君) お答え申し上げます。
 有機農産物の活用につきましては、一部の地域において、学校給食で有機栽培米等の農産物を使用したり、有機農産物を活用した食育の取組が行われていると承知をしております。他方、学校給食における有機農産物の使用に当たりましては、例えば、域内で必要な有機農産物の数量の確保ですとか、あるいはコスト等の課題があるというふうに承知をしてございます。
 学校給食に用いられる食品の選定につきましては、有機農産物の生産状況や、栄養教諭、保護者など関係者の意見、地域の実情などを踏まえて、学校給食の実施者であります学校設置者において御判断いただくべきものと考えておりますけれども、お尋ねの、文部科学省といたしましても、農林水産省と連携しながら、私どもが主催をいたします担当者会議などがございますので、そういった場を通じまして、有機農産物を活用した学校給食や食育の事例の発信、共有など、必要な取組に努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 今のお話の中でも、やっぱりその限られた食材費の中で取り組むので、大量調理にふさわしい食材の価格という問題と、それから量の確保という話が今されたと思うんですね。それで、農水省と連携しながらという話もありました。
 そこで、農林水産省にお聞きします。
 千葉県のいすみ市は学校給食に有機食材を活用されていますよね。有機食材の活用を通じて、食の安全や農薬の害とか食料主権とか環境の劣化ということを学んだということを担当者の方言われています。食育としてこの有機、地場の農産物の活用を呼びかけていると。それで、今、文部科学省は、農林水産省と連携しつつ必要な取組を行うという答弁をされているんですけれども、では、農林水産省としてはどう連携するのかということをお話しいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 委員御紹介のとおり、三年度の補正から、新たに市町村が主体となって、生産から消費まで一貫した有機農業の拡大、その中で学校給食、これを支援するというふうにしております。
 我々としましては、このような取組を勉強会やシンポジウムで他の市町村に周知することで横展開というふうに図っています。その際、文部科学省とは連携をいたしまして、取組事例を紹介するとともに幅広い地域の学校関係者にも本事業の活用を促していきたいと、この会を通じてやっていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 有機農業の産地づくり推進という中で、二〇二五年までに百市町村でオーガニックビレッジ宣言をするという目標を掲げていますよね。
 それで、学校給食は大量調理にふさわしい食材の価格帯であることと量の確保が課題ということですから、特にこの食材の価格というのはどのように解決をするんでしょうか。これについてお答えをお願いします。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) 委員御指摘のとおり、学校給食に有機農産物を導入するときは、量に加えて、食材の大きさ、形、納入場所、時間など、大変調整することが多くなってございます。このため、先ほど御紹介していただいた事業を令和三年度補正から始めるんですけれども、この事業においては、その成果として有機農業の産地計画を策定することを求めており、実現性の高い計画となるように、本事業実施期間中に産地づくりに必要となる取組を試行し、課題と解決策を地域で検討するというふうにしております。
 この際、様々な取組に挑戦できるように、例えば学校給食につきましては、関係者の会議費はもちろんのこと、食材費、給食メニューの試作など、試行に必要となる費用についても支援対象とするように考えております。

○紙智子君 試行的に、一遍に全部すぐにはできないということで試行的に取組を支援すると。お試し期間ですか、それを設けて、聞いたら、一か所当たり一千万とか、ソフトでいうと国が全額支援するとか機械リースは半額とかいうことで、地方自治体とも協力しながら、食材は市町村が買い取るという形になっているようですけれども、そういう形でやるということで考えているということでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) そのとおりです。

○紙智子君 学校の周辺に生産者がいる地域は、これ、千葉もそうですけど、活用しやすいと思うんですよ。しかし、本格的にこの学校給食で有機食材を広げようと思ったら、例えば東京二十三区のような都市部、ここは有機米を作っている生産者がいない地域なわけですよね。
 そこで、有機米をいかに広げるかというのが課題になってくると思うんですけれども、これはどのように支援するんでしょうか。これは大臣にお聞きしましょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 大都市を、中心部や有機農業者がいない地域におきまして学校給食で有機農産物の活用をしようといたしましても、現状では一定量の有機農産物を安定的に確保できないため難しい面があると考えております。
 このため、将来的には、有機農業の生産を大きく拡大し、通常の流通、販売ルートを通じて購入できる供給体制を確立することを目指していますが、それまでの間は、都市部の自治体と有機農産物の生産地とのマッチングや協定といった取組の後押しや、都市部においても、野菜など地場で生産される品目について学校給食への活用の検討などを促していきたいと考えております。

○紙智子君 今、学校給食に有機食材を求める要望や運動が広がっていて、この国会中にも要請の方がお見えになったりしています。
 それで、二〇〇六年に有機農業推進法ができて、有機がなかなか増えない現実がありました。一方では、学校給食に有機食材を求める要望や運動が広がっている現実もあると。
 それで、みどり戦略は、この有機農業を全農地の二五%、百万ヘクタールにする目標を掲げていますから、是非実効ある支援策を具体化するように求めておきたいと思います。
 あともうちょっとあるので、あと温暖化防止対策についてもお聞きします。
 法案の第二条で、食料システムとはということで、農林水産物等の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することによって、全体として機能を発揮する一連の活動として、この環境負荷低減事業活動とは温室効果ガスの排出量を削減する事業活動と定めているわけですよね。
 それで、これも本会議の質問のときに、輸出入事業者に温室効果ガス、CO2を抑制するための目標を求めるのかと聞きましたら、大臣は、温室効果ガスを抑制するための目標を定めることは現時点では考えておりませんというふうに答弁をされましたよね。
 環境への負荷を示すフードマイレージという言葉がありますよね。食品を運ぶ距離と重量を掛けた指標なわけですけれども、この温暖化防止策としてフードマイレージを減らすというのは、これ必要なんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房技術総括審議官 青山豊久君) お答えいたします。
 本法律案では、農林水産物・食品の生産から流通までの過程において環境負荷の低減を図ることを目指しており、農林水産物等の輸出入に伴う温室効果ガスの排出抑制の観点からフードマイレージも重要な取組の一つだと考えております。

○紙智子君 重要な中身であるという認識を述べられました。
 日本は食料自給率が今三七%ということで低いこともあって、輸入に依存した食料システムになっているわけですよね。フードマイレージというのは、食料自給率が高い欧米諸国に比べても二倍から三倍になっているという指摘もあります。そういう食料システムもやっぱり検証すべきではないのかなというふうに思うんですけど、最後に大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 食料の安定供給のためには、食料の輸入の必要性、それ自体を否定することは適当でないと考えています。
 そのような中でも、流通等における環境負荷の低減を図るため、国が講ずる施策として、御指摘のような消費段階における地産地消の取組の促進のほか、流通段階における省エネ化も含め、総合的に環境と調和の取れた食料システムの確立を図っていくことが重要と考えております。

○委員長(長谷川岳君) 時間来ております。

○紙智子君 みどりの食料システム法がやっぱり日本の食料自給率を高めるし、世界的な温暖化の防止やSDGsに貢献できる法律に発展させていけるようにということを求めまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○委員長(長谷川岳君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会、日本維新の会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  近年、気候変動や生物の多様性の低下等、農林水産物及び食品の生産から消費に至る食料システムを取り巻く環境が大きく変化しており、農林漁業及び食品産業における環境への負荷を低減していくことが重要となっている。また、世界情勢の変化により国民の食料安全保障への関心が高まる中、将来にわたる農林漁業及び食品産業の持続的な発展と食料の安定供給を確保するため、農林水産物等の生産から販売に至る各段階で環境への負荷を低減し、こうした農林水産物等の流通及び消費が広く行われる環境と調和のとれた食料システムを確立することが喫緊の課題となっている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 環境と調和のとれた食料システムについては、農林漁業者、食品事業者、消費者等の幅広い関係者の理解の下、これらの者が連携することにより、その確立が図られるものであることに鑑み、国が必要な施策の検討及び実施を行うに当たっては、農林漁業者等、特定の者のみに過度な負担をもたらすことがないよう配慮するとともに、農林水産物・食品の付加価値を高め、農林漁業者をはじめとする関係者の経営の発展、農山漁村の活性化に資するよう努めること。
 二 環境と調和のとれた食料システムの確立に当たっては、環境分野や教育分野など、幅広い分野との連携が必要なことから、省庁横断的に取り組むこと。
 三 農林漁業における環境への負荷の低減の取組が正当に評価されるよう、消費者及び食品事業者の理解の醸成に取り組むこと。特に、販売面における対策の強化として、消費者の選択に資する効果的な販売環境の整備が図られるよう、販路開拓に向けた支援の在り方、消費者等に分かりやすい表示・広報、環境への負荷の低減の状況を把握する手法等について検討し、その結果に基づき所要の措置を講ずること。
 四 環境への負荷の低減に向けて、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とした有機農業の実践を生産現場で容易にする栽培技術の確立や、当該技術を普及する人材の育成・確保に努めること。
 五 環境と調和のとれた食料システムの確立に向けた先進的な取組の実践等に寄与した農林漁業者並びに食品製造・加工業、卸売・小売等の流通業、飲食業その他の食品事業者等の顕彰に努めること。
 六 基本方針の作成に当たっては、食料システムを構成する生産から消費に至る各段階の関係者の意見を丁寧に聴取し反映させること。
 七 市町村及び都道府県の基本計画の作成等に当たっては、地域の合意形成に配慮して行われるよう国としても必要な助言等を行うとともに、これらの事務を担う市町村及び都道府県に過度な負担をもたらすことがないよう、市町村及び都道府県の実情に応じた適切な配慮を行うこと。
 八 農林漁業において、規模の大小を問わず多様な経営体が重要な役割を果たしていることに鑑み、これらの経営体が持続的に意欲を持って環境負荷低減事業活動等に携わることができるよう必要な支援を行うこと。
 九 有機農業等に取り組む生産者は慣行農業に取り組む生産者とともに地域農業を担う主体であることを十分に踏まえ、これらの生産者の交流・連携が一層進展するよう環境整備を図ること。
 十 次代を担う子どもたちに環境と調和のとれた食料システムの重要性を伝え、また当該システムの担い手としての意識を促すため、学校教育等の場を通じた食育の推進に取り組むこと。
 十一 農林漁業において、多面的機能の発揮の一層の促進を図るため、生態系ネットワークの形成に向けて、農林水産省はもとより関係府省の密接な連携を図るとともに、既存の交付金制度等を通じた農林漁業者等への十分な支援に努めること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(長谷川岳君) ただいま田名部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって、田名部君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金子農林水産大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) ただいま法案を可決いただき、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえまして、適切に対処してまいりたいと存じます。

○委員長(長谷川岳君) 次に、植物防疫法の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(長谷川岳君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。