<第208回国会 農林水産委員会 2022年4月19日>


◇みどり法案と食料自給率について/有機農業における土づくりと国の支援について/担い手を増やすための政策的支援について

☆参考人
株式会社ファーマン代表取締役  井上 能孝君
立教大学経済学部経済政策学科准教授
全国有機農業推進協議会理事   大山 利男君
農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ 瀬川 守君

○環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○委員長(長谷川岳君) 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及び植物防疫法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、株式会社ファーマン代表取締役井上能孝君、立教大学経済学部経済政策学科准教授・全国有機農業推進協議会理事大山利男君及び農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ瀬川守君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、井上参考人、大山参考人、瀬川参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず井上参考人からお願いいたします。井上参考人。

○参考人(株式会社ファーマン代表取締役 井上能孝君) 山梨県北杜市より参りました、株式会社ファーマン代表の井上能孝と申します。
 農林水産委員会参考人としてのお声掛けをいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料の一ページ目を御覧ください。
 初めに、自己紹介をさせていただきます。私は、埼玉県の一般家庭で生まれ育ちました。高校生時代に出会った有機農家との生き方と行動力に衝撃を受け、以来、興味と憧れを持ちました。高校卒業後、有機農業に取り組むべく有機農家の下で研修を受け、二〇〇〇年に現北杜市へ新規就農者として参入をいたしました。当初は資金もつながりも社会経験もなく、生活や食を自分の手でつくり上げる農業という道に入ったことで満足感を得ていました。しかし、農業経営は独り善がりの思いだけでは成り立たない、自然や消費者との向き合いの連続だと感じました。
 実際の生活はというと厳しく、ようやく農家としての先行きが見えてきたのは就農してから六年後のことでした。この六年間、土木業、建築業、飲食業、そういったアルバイトをして何とか生計を立てておりました。先行きがうっすら明るく見えた要因は、家族、友人、先輩農家、取引先様、お客様、自然環境のおかげさまだと実感しています。
 現在、二〇一七年にファーマンという会社を立ち上げ、農業を憧れの職業にをスローガンに活動しております。弊社のファーマンという社名には、ウルトラマンやスーパーマンなど、農業界におけるヒーローでありたいという思いが込められています。
 弊社は、中山間地域に属し、生産性という観点では厳しくありますが、一見この弱点と思われる部分を強みに変えて農業を営んでおります。具体的には、農業掛けるXに見られる領域の拡張です。例えば、農業掛ける観光、農業掛ける福祉、農業掛ける教育、農業掛ける加工品などです。
 生きる上では食は欠かせず、食は農がつくり、その農を実践するのが農家であります。農家を百姓と言うように、多くの技術や知見を持つ農家は可能性にあふれているとも感じています。また、私たちが営む農業は一万年以上前に起源を持つと言われ、その多様性や包括性は計り知れないと感じています。好きなことや熱中できることで人生を全うしたいと感じた私は、うってつけの職業だと感謝をしています。
 次ページをお願いします。
 みどりの食料システム戦略についてです。
 結論からですが、数値目標やその手法について賛否が問われていますが、この法案の推進に対しておおむね賛成です。
 持続性が世界の新しいルールとなるのであれば、農業者、有機農業者としては追い風にしたいと考えています。追い風への可能性を感じる一因としては、この法案は、農の根幹を見詰め、かつ業種を超えなければ成り立たないと考えるからです。
 農業は、生産活動以外にも、環境保全や景観維持、防災などの多面的機能、食育や体験を基にした教育的要素、固有の食文化やセラピー効果などでの健康増進効果を含むと考えています。生産活動における食の安全保障はもちろんのこと、その多面的で包括的な懐の広さは多くの産業の懸け橋にもなり得ると感じています。また、豊かな自然環境や先人の礎を次世代へ受け継ぐのは私たち大人の責務であり、食文化などによって分かりやすく継承できるのは農林水産業だからこそできることだと考えています。
 同じページの@番からE番を御覧ください。周辺の有機農業者からの意見です。
 @番、世界的潮流の中ではとありますが、冒頭に申し上げたとおりです。グローバルスタンダードになるのであれば、むしろ率先して日本独自の強みを打ち出せればと考えています。
 A番、有機・自然農法だけでなく農業界全体をとありますが、このみどり戦略によって、慣行、低農薬、有機も関係なく、農業者という枠組みで手を結びたいという意味合いです。農法に違いはあれど、自然と向き合うことは共通しています。
 B番、社会情勢、自然環境によってとありますが、昨今の気候変動や環境変化は人新世によるものなのか、また網の目のようにつながった経済活動はどのような影響を及ぼすのかなど、現場に立つ私たちでも不確定で分からないことが多くあるということです。この戦略を実践すれば絶対に思わしい成果が上げられるということは確約できないということです。
 C番、商売としての有機農業が広まりとあります。数値目標の達成を目指す余り、有機・自然農法の意義や感情的な側面が矮小化するのではないかとの意見です。
 D、前向きな意味合いで捉えています。消費者へみどり戦略が知れ渡ることで、生産者への理解が深まり、好循環が生まれるのではという考え方です。
 E番、PR力のある農家とありますが、有機農業は生き方としての選択でもありますし、人との関わりや交渉が苦手な生産者もおります。そんな職人気質な仲間の生産者を置き去りにはしたくないという考え方です。
 次ページを御覧ください。二〇五〇年までに目指す姿についてです。
 数値はあくまで目標であり、社会全体で行動を起こすことが重要と考えています。目標に向けての進捗共有などの見える化も大切だと感じています。目標は高いと感じていますが、実現は不可能でないと考えています。
 CO2のゼロミッション化については、農林水産業で排出量を低減することに反対はありません。排出の低減を念頭に、吸収源としての可能性を模索し実現することが他の数値目標へ良い影響を与えると考えています。吸収源の可能性の模索として、山梨県では四パーミルイニシアチブという農法に見られる炭素貯留の実践を行っております。ほか、一般廃棄物や産業廃棄物の堆肥化による有効活用は有機農業界では古くからある手法です。
 化学農薬使用量の五〇%低減と化学肥料の三〇%低減についてです。
 健康被害との因果関係は各所で発表されていますが、その因果関係を分かりやすく伝えることが重要と考えます。農薬や化学肥料は人体や環境、経済にどんな影響を及ぼし、減らすことによりどんな効果が期待できるのかを示すことが低減につながると感じています。また、高温多湿な日本の気候では、今すぐの農薬や化学肥料の完全なる不使用は、大規模栽培地と果樹栽培地では難しいと感じています。
 次に、有機農業の取組面積割合を二五%へ拡大することについてです。
 拡大に向けては、米穀での取組は外せないと考えます。新規参入の有機農業者は野菜栽培へ取り組むことが多くありますが、それのみでの達成は難しいと考えています。さきに申し上げた米穀での取組を普及させるのであれば、特区の設立や地域、産地背景によった認証の一部見直しを図ることも有効な手段だと考えています。また、法規制や生産者の技術向上だけでなく、消費者への普及活動が何より重要だと感じています。
 次ページを御覧ください。産地からの声です。
 大規模平野部産地と小規模中山間産地で戦略は変わると考えています。中山間地で有機農業を取り組む僕ら生産者からの意見と思って聞いていただければと思います。
 前提として、大規模平野部、中小規模の山間地で戦略は変わりますが、この違いにより、機械や人材の導入はもちろん、販売やPRの仕方も変わります。三つほど具体的なアイデアを申し上げます。
 一つ目は、ベテラン有機農家と新規参入の有機農家が混在するエリアゾーニングです。小中規模の圃場整備区画において、五〇%ずつの割合でベテラン農家と新米農家を混在させ、栽培技術だけでなく、営業方法や販路の確保、農機具や資材の取得に関する情報共有、そして地域との結び付きを交流の中で学びます。区画化された場所で栽培を行うことにより、有機JAS認証の取得もしやすくなると考えています。
 また、圃場整備された農地は投資を行った農地であり、保全と有用性を持続させることは重要だと考えます。耕作放棄地の増加を防ぐことはもちろんですが、優良農地を何としても守らなければならないと考えています。この共有を中心としたゾーニングは、みどり戦略の目標に向けてと担い手不足の改善に向けてと、両方でアプローチできる手法ではと考えています。
 二つ目は、教育現場での農業の普及についてです。
 私の営農する北杜市では、学校給食の有機農産物の取扱いを増やす動きがあり、一定の実績を出しております。理由は、市内には有機農業者が多いことと、行政と農業者と栄養士での関係性構築に多くの時間を費やしたからです。しかし、全国的にその取組を強いることは、同じような環境にない産地を苦しめることになるのではとも考えています。まずは、作る楽しさや食べる喜び、それらを体感できる食育教育を普及し、その中で循環や持続性のある農業についての学びを提供することが大切だと考えます。農家が中心となる食育教育の実施は、農家自身の営業活動でもあります。
 三つ目は、消費から始まる流通拡大と社会全体での取組とすることです。
 生産者への直接的な所得戸別補償は、短期的には効果が見込めるかもしれません。しかし、中長期的な視点と農業者の成長、そういった意味合いでは効果が薄いと考えます。一方、消費に対しての補助であれば、有機農産物を求める声が強まり、農業者自身の技術や経営の向上へとつながります。
 また、消費者はイコール総人口であり、認知を広める絶好のチャンスだと考えています。具体的な手法としては、消費者が有機農産物を購入した際にポイントの付与をするであったり、税制優遇を行うであったりです。SNSを活用して産地情報を共有することや、産地に訪れた場合にも同じような特典があると若い世代をも巻き込めると考えています。
 次ページを御覧ください。
 終わりにとあります。持続可能な食料システムの確立を目指すのであれば、消費流通の拡大と段階に合わせたルール作りが必要と考えます。
 消費の拡大については、前のページでも申し上げたとおりです。私たちは、食べてくださる皆様がいなければ農業を営むことができません。作りたいものだけをお届けすることは難しく、求められるものを作ることは取組をしやすいと感じています。商品だけでなく、生産者にフォーカスをすることで興味、関心を深めることができるとも考えています。食べて知っていただくことが、農業者だけでなく、持続性や多様性を考えるきっかけとなり、社会全体での流れをつくると考えています。
 ルール作りに関してですが、この効果や影響は非常に大きいと感じています。有機農業には生き方などの概念的な要素も含まれており、生産者によって様々な価値観が存在します。全ての生産者で今すぐの合意を取ることは難しいかもしれません。段階や地域、品目や品種、複合性や包括性によってルールを定めることにより、目標に向けて前向きに取り組むことができると考えています。
 最後となりますが、私自身は農業という産業に未知の可能性を感じています。また、有機農業という熱中できるすばらしい産業との出会いに感謝をしています。次世代へ豊かな自然と文化の継承を行うため、みどりの食料システム戦略を多くの方々と考え、そして行動します。
 発言は以上となります。ありがとうございました。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございました。次に、大山参考人、お願いいたします。大山参考人。

○参考人(立教大学経済学部経済政策学科准教授・全国有機農業推進協議会理事 大山利男君) 立教大学の大山です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、肩書としてもう一つ、全国有機農業推進協議会の理事という肩書もいただいているんですけれども、この団体は、ちょうど有機農業推進基本法が制定されたときに有機農業に取り組んでおられた方々が中心となって組織して全国的に普及、展開したいという、そういう思いで活動が始まった団体でございます。ですから、今回のこのいわゆるみどり法案ですけれども、これについても非常に前向きに捉えて活動を進めているところです。
 それで、私の自己紹介を少しさせていただきたいんですけれども、私、大学院を卒業してから農政調査委員会という農業団体に研究員として就職をいたしました。そのときに、国内調査中心で、有機農業だけではなく、ほかのいろんな調査テーマを担当しておりましたけれども、九〇年代の終わりですね、平成の時期の割と始まりの頃ですけれども、有機農業の、有機農業をテーマにした調査事業、研究事業はなかったんですけれども、ちょうどいろんないきさつ、経緯がございまして、その事業を担当することになります。ちょうどこの時期は、有機農産物の表示ガイドライン、多分今日お集まりの先生方は皆さん御存じかと思いますけれども、要するに有機ないしは減農薬といったその表示がまだ何のルールもなかったときに、このルールを作っていく、ガイドラインを作っていくというちょうどそういう時期だったんですけれども、その時期から農水省の検討委員会で、私は委員ではありませんけれども、末席で資料を準備する、情報を提供するということでお手伝いをさせていただいていたという、そういう経緯がございます。
 ですから、ちょうど有機JASの有機基準、それから有機の畜産の基準なども相当勉強させていただいたということがございます。そのこともあって、元々国内調査部というところにおりましたけれども、海外調査も随分することになりまして、その縁があって、どこか略歴に書いてあったかと思うんですけれども、スイスのFiBLという有機農業の研究所の方にもしばらく滞在させていただく機会がありました。このときに、多くの知己に恵まれてということなんですけれども、文字情報以外の彼らのいろんな温度感とかですね、そういったことにも随分触れることができて、今日までずっと長くお付き合いいただけているので、今回のみどり戦略については、ある程度、そのEUのファーム・ツー・フォーク戦略も全く影響がないわけではないと思いますけれども、こういった国際的な潮流の中で、研究者、それから様々なステークホルダーの人たちの温度感なんかについてもある程度は感じ取ることができていたかなというふうに思います。
 したがって、そういったことも含めて今日は意見を述べさせていただきたいと思います。当然ですけれども、研究者という位置付けでいくと、大局的、少々僣越ではありますけれども、大局的な観点から少し意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 それで、まず、みどりの食料システム戦略ですね。今回の法案の意義というのは、もう私が述べるまでもなく、様々な方がもう御発言もされていますし、農林水産省の資料にも書かれているとおりだと思います。国際的な、例えばSDGsであるとか、様々な国際的な潮流の中で今回のこの農業部門についても大きくかじを切っているというのがあると思います。したがって、日本の中でも、当然農業だけではなく他産業においても、全てではありませんけれども、SDGsに向けた取組というのが様々な企業で始まっていると思います。そういう意味では農業も例外ではないんだと思います。
 そのような中で、総論としては多分多くの方、賛同されていると思うんですけれども、多少批判的な意見も聞かれるような気がします。多くの場合は、例えばこの数値目標の実現可能性を問うような意見とかあると思うんです。それ以外にも、日本の国内の農業を取り巻く生産状況、自然状況と、そういったことからもなかなか難しいのではないかという意見もあるんですけれども、私個人としては、総論はもちろん賛成ですけれども、各論についても相当やれるはずだろうというふうに見ております。そのときに、かなり発想の転換も必要ではないかというふうに感じております。
 これは、例えばヨーロッパの有機農業に関わっている、ないしは農業者の例えば農場に行ったときの受ける印象と日本で生産者のところで受ける印象の違いとして、幾つかその経営であったり技術とかの発想の違いを感じることが多いんです。なかなかちょっと私、論文とか文章で書けていないので口頭で御説明したいと思うんですが、一つ大事なのは、経営は、技術は相当多様であるというのが一つもう絶対的にあると思うんです。これは、ヨーロッパの中でももちろん地中海諸国からアルプスの北、北欧まで全然違いますので、その中でEUとして同一のというんですかね、一つの政策体系をつくると、これ大変、容易なことではないと思うんですけれども、でも、これをつくっていくという方針を示した、これはすごいことだと思うんです。日本も、北は北海道から南は沖縄まで非常に気候条件違うわけですけれども、じゃ、日本で本当になぜやれないんだということに当然なるんだと思います。したがって、もう少し議論を詰めていけばいろんなところで突破できるような気がしております。
 それで、今日お配りしている資料の中で図の入っているものがあると思うんですが、こういうものですね。何を説明したかったかといいますと、今回の、まあ一般的にもそうですけれども、有機農業に対して多少消極的、否定的な見方をするときに、有機農業の生産性の低さということがよく指摘されると思います。このことについては、例えばヨーロッパでも同じようなことはあるんですけれども、よく見ていくと、ちょっと違う、誤解も生じているような気がしています。
 この図はあくまでも多様な経営がある中での模式図として示しているので絶対このとおりだとは言いませんが、一つの考え方として見ていただきたいんですが、左側が慣行生産の単収です。右側の薄い黄色の方が有機生産の単収になります。それで、一般的に生産性というのは投入と産出のこの関数ですよね。
 したがって、一般的な方が受け止めるのは、例えばこの土地面積当たりで生産量が有機は減ってしまうのではないか、これをもって生産性が落ちるというふうに言っていると思うんです。この図でいくと、産出量がその生産量に当たりますので、例えば慣行生産の単収と有機生産の単収を比べると、有機の方が低いので土地生産性低いわけです。
 ところが、ヨーロッパの有機農業、まあアメリカでもそうでしたけれども、一部の農家は非常に投入量が低いんですね。そうしますと、産出量の低下よりも投入量の低下をもっと大きくするような、まあ言ってみれば低コスト生産を徹底しているケースがしばしばあります。そうすると、土地生産性は下がるんだけれども、実は一般的なほかの生産性、つまり労働生産性であったり資本生産性ですね、要するに経済性という観点でいくとそんなに不利になっていないという現実が結構有機農家回るとあります。したがって、生産性が下がる、まあ確かに土地生産性下がるんですけれども、それ以外の指標についてもう一度点検をしてみる必要があるだろうというふうに思います。
 ですから、今回、これから経営と技術も見直しが進むと思うんですけれども、こういった、ある意味非常にシンプルなものなんですけれども、発想を少し変えると実は有機はかなり経済性もあるということになるんではないかと思います。ですから、例えばアメリカの比較的規模の大きな有機農業経営なんかですと、むしろ有機農業の方に有利なんだという言い方をする経営者もおります。なので、まさにこの生産性ということを見ていく必要があるんではないかと思います。
 そうしますと、今回、このみどり法案ではというか、この今回のこの一つの政策の方向性でいきますと、環境負荷の軽減ということが言われています。環境負荷の軽減というのは、まさに土地に対する投入量を減らしていくということになりますよね。ですから、有機農業はある意味で土地生産性を下げていく農業になる。しかし、ほかの指標を上げていくような、経済性を持たせるような農業の技術、それから経営をつくっていくということになると思うんです。当然ですけれども、環境に寄り添った農業、農業技術ということになりますので、いわゆる植物工場であったり家畜工場のような、そういう技術を追求するということではないだろうと思います。
 それから、この技術や経営の多様性ということを言いましたけれども、これは非常に地域性ということになるかなというふうに思います。したがって、例えばアグロエコロジーといった言葉がありますけれども、こういった発想で農業を少しつくり直していくということも技術の方向性、経営の方向性としては出てくるのではないかなと思います。
 それから、次の準備した資料は、もう時間がありませんので簡単に言いますが、環境保全型農業推進農家の経営の概要ということで数字を並べている表があります。ポイントは何かといいますと、見ていくと、今言いましたように、土地の生産性は、環境保全型農業は、慣行農業、慣行農法に比べて土地生産性は低いんですね。単収が低いんです。それ以外の数字を見るとそんなに悪くないということなんです。したがって、有機農業は経済的に有利ではないかということになるかと思います。
 何が問題かというと、多分この一番下の十アール当たり労働時間ですよね。ここは長いんですよね。つまり、労働多投型の農業経営になっているわけです。もしかすると、農業者は、これは慣行の農業者もそうですけれども、直感的に、感覚的に有機農業が大変だというふうに見えるのは、経済的な意味よりもこの労働の大変さというところにもしかするとあるかもしれません。
 したがって、ここを突破できるような技術、労働生産性を上げていく、若しくは省力化していくような、当然、土地生産性、単収を下げますので、それ以上に省力化もするということになるんだと思いますが、そういったことが、これ三十年前の数字なので非常に古過ぎるんですけれども、アップデートされていないので仕方がないんですが、こういった、随分古いんですけれども、以前の数字とかを見てもそういったことが言えるかと思います。
 それから、次、話、もう一つなんですけど、今回、この有機JAS、有機農産物の確かな数字ということでいうと、やっぱりJASの格付数量、格付面積で見ていくしかないんですが、改めて数字を経年、推移を見てみると、あと割合を見てみると、圧倒的に野菜生産が中心になっています。日本の有機農業は、野菜生産、特に葉物野菜を中心としてこれまで展開してきたということがはっきりと分かります。これは、もう個々の生産者は個々のいろいろやっているわけですけれども、全体として見るとそうなっているということになります。
 私、ちょっと意外に思ったんですけれども、水田、稲作ですね、お米の有機の割合が、実は面積も少ないんですけれども割合も少ないんですね。そうしますと、日本の、今回の有機農業、まあ有機農業だけではないですけれども、やっぱり水田、稲作をどうつくり直していくかというのは、多分今回のこの法案の中でも大きなポイントになってくるのではないかなというふうに思います。これはもう有機農業だけではなくて、ほかの全体の慣行農業も含めてですけれども、そういったことが言えるかというふうに思います。
 それからあと、もう時間もありませんので最後にしたいと思うんですが、所属している全有協ですね、全国有機農業推進協議会は、生産者、消費者、それから様々なステークホルダーの人たちで構成されています。やはりその共通の問題意識としては、やっぱり生産と消費が均衡ある発展をしていくことが大事だというふうに思っています。そうしますと、やっぱり流通の部分というんでしょうか、途中のフードシステムの部分が大きな鍵を握っているというふうに思います。
 ですから、単純に生鮮の野菜であれば、これは生産者と消費者が直接的に提携という形でこれまで展開してきたわけですけれども、それ以外の部分、例えば加工用の根菜類であったり、それから今回ちょっと存在感が薄いですけれども畜産の世界ですね、畜産物、乳製品に至っては、これはやはりその途中のメーカー、流通業者含めて、全体としてのシステムが必要だということになるかと思います。
 したがって、今回の法案を成功させていくという意味では、まさに買ってくれる、食べてくれる人まで含めてつくり直していく、そういうものになるのではないかというふうに思います。
 ちょっと時間が来ましたので、これで一旦終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございました。
 次に、瀬川参考人、お願いいたします。瀬川参考人。

○参考人(農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ 瀬川守君) 皆さん、こんにちは。北海道当麻町、当麻グリーンライフの代表をやっております瀬川と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。
 みどりの食料システム戦略ということで、総論では非常に大賛成でございまして、もっと早く立ち上げていただければもっともっと変わっていたのかなというふうに思っておりますが。
 私が今日お話ししたいのは、日本の有機農業の歴史的な問題という部分と、これからやはり農薬を減らしていかなきゃいけない理由だとか、そういった部分が、この度、厚い本を送っていただいた中にはどこにも書いていなかったということなんでございますけれども。歴史的には、私の資料を見ていただければ、まあ一枚目は、身元確認の資料は皆さんに渡っておりますので自己紹介等々はさほどしなくていいかなと思いますが、こんな会社でやっております。
 今、いきなり農薬の話しましたけれども、今日お話ししたいのは、この日本の有機農業の歩み、それから今の現状、それからみどりの政策のこれからについてということで、意見を八つほど挙げさせていただいております。そんな観点から、下手な年表を若干作ってみたので、それと照らし合わしながらちょっとお話を聞いていただければと思います。
 公害ということで、我々の、有機農業者、今までのバイブルの中では、足尾銅山の公害が問題になって、我々、田中正造というのは、天皇直訴されて、一生を村民のため、県のため、農民のためにということで、一生をささげた人が我々のモデルに若干なっていると思いますけれども、その後、やはり近代化ということで、緑の革命、まあ今のみどりとは全く真逆な緑の言い方なんですが、化学肥料と農薬がどんどんどんどん使われるようになって、やはり戦後日本も世界一、単位当たりですね、今もそうかもしれませんけれども、どんどんどんどん投入されているというのが現状だと思います。
 したがって、自然環境の汚染、それから破壊、人への健康被害、そういったことを、何とかまともな農業に変えていこうというのが日本の有機農業の歩みだったと思います。
 一九七一年、ですからちょうど昨年で五十年前になりますけれども、徳島県の一楽照雄氏がこの日本有機農業研究会というのを立ち上げたわけなんですが、この日本有機農業という、有機と農業が用語としてつながったのは、実はこの日本有機農業研究会が結成された名前を冠にしたところから始まっているというのが世の中の、まあ我々としては、認識としては持っているわけです。
 したがって、有機農業の歩み方というものについては、まともな有機農業、五十年前から今の農業を何とか善き方にしていこうという考えで苦難の道を歩んできたわけなんですが、我々の諸先輩も一生懸命、学者、それからお医者さん、生産者が一体となって全国で展開を今でもしているわけですが、有機農業を、やはり善きことをしている割には世間から評価されないというのがついこの間までの現状だったわけなんですけれども、現状、高度成長とともに、やはりそれを手間の掛かることにするとなかなか、先ほどの先生が言われましたけれども、異端児扱いということで非常につらい面を持った時期もありました。
 しかし、そういうことを言うことではなく、これから、やはり現状は、現状でもやはり農薬と化学肥料の投入量というのが圧倒的に世界的に多いということを直視しなければならぬと思うんですね。それも、今盛んに言われているように、ラウンドアップという、私も四代目の農家なんですけれども、有機をやる前は、二十代前後のときは使った経験があります。そういったことをやはり直視をして、あるいはネオニコチノイドについては、子供たちに、あるいは赤ちゃんの尿からもう既に検出されるというようなことになってしまっているわけなんですね。
 ですから、これは、このみどりの法案もどんどんどんどん右肩上がりで伸びていくのは結構だと思いますし、そうならなければいかぬと思いますけれども、できることなら皆さんのお力で、この農薬の基準が、一七年、二〇一七年に日本だけが緩和されたということをいま一度御検討いただいて、我々の孫やひ孫、それからこれから親になろうとする人たちの健康を守っていかなきゃいけないというふうに私の年齢になるとつくづく思っておるところです。
 どうかその辺を、みどりの法案そのものもどんどん進めていただくのは当たり前のことですけれども、そういったことを今直近で、喫緊課題としてこの規制を作っていただきたいというふうにお願いいたします。
 そういうことで、現状、やっぱり圧倒的に輸入が多くて、国産は輸出しろという構図が根本的に変えていかなければ、まあ意見一の方になりますけれども、国産というか、農家がいなくなるんじゃないかなというふうに心配しております。
 意見二は、有機農業では、化学肥料と農薬の資材を有機資材に変えたというだけでは、この持続性というか、そういった多様性といったところで成り立たない状況になっていくんじゃないかなというふうに危惧しております。
 それから、意見三としては、もう今百万経営体だったと思いますけれども、それだけ減ってしまった、さらに、この米価が下がったいろいろなことで、タイミング的に今年からまた農家が全国でどんどんどんどん減少していくだろうというふうに思います。したがって、このみどりの政策も誰がやるんだというようなことで少し危惧をしているところです。
 それから、意見四ですが、直接支払ということで、欧米、欧州並みの単価になっているというふうにどこかの会議で答弁されておりましたけれども、これはスケールの問題であって、百ヘクタールと十ヘクタールあるいは一ヘクタール、小さな規模での同額であれば、全く日本の農家というのは、それだけのボリュームというか、有機の環境保全型の直接支払としてもまだまだ足りない状況ではないかというふうに思います。
 それから、意見五です。特区をつくろうという方向ですけれども、有機農業そのものは、やはり画一的な栽培や画一的な考え方で進めていくとなかなか大変なことになっていくんじゃないかなというふうに思います。したがって、それぞれの地域で合意形成ができればいいんですが、ここにも書いてありますけれども、やはり地方分権が一括法になったということで、やはりそれぞれの町村の首長あるいは単協の農協の組合長辺りの考え方がセンスがないとなかなか進んでいかないんじゃないかなというふうに思います。
 意見六として、農薬の使用量は減ってきているというグラフもあるんですけれども、私の解釈では、以前は千倍、あるいは粉だとか、そういう農薬を、重量では確かに多かったわけですが、今、三十倍だとか濃縮された農薬が使われている。したがって、重量計算でいけば、グラフに表すと少なくなっていっているのではないかというふうに思います。
 意見七。実は、北海道は種子条例というのができまして、この登録品種についても自家採種ができるようになりましたけれども、今のところですね、これからどうなるか分からないという影響があると思いますが、遺伝子の操作、編集というのは日本は安全だというふうになっているようですけれども、実は私のところはシシリアンルージュというトマトを十三年ほど作っておりまして、見た目は編集したものと全く変わりはないわけですね。
 これを、若しくは、有機でも有機でなくても、同じハウスに、違いの確認ができないということを政府は言っているわけなので、これは誰でも高く売れる方を作るわけですが、交雑の問題だとか、見た目が全く分からないということの、表示義務がないということに非常に恐ろしさを感じております。農家側としては、お金になる方をどうしても作るというふうに思います。
 それから、一番問題なのは、この意見八です。JAS法と、それから二〇〇六年の有機農業推進法、これがなぜ有機が増えなかったのかということの検証ができていないんではないかなというふうに思っております。
 もう時間がなくなりましたけれども、提案として、高い有機農産物、普通の農産物、だけれども、高い有機農産物を買っても得をしたぞという消費者に思っていただけるような方法論として、ポイント制というのを私は三十代後半から考えておりまして、これは各省庁が、有機あるいは国産、いろいろなジャンル分けをして、あるいは春と秋の連休に農村に皆、手伝いに行くと、で、農村との交流ができる。あるいは、健康、医療費等々が巨額にどんどんどんどん上がっていくわけですから、そういった農村との交流が非常に幸福度につながって医療費も下がっていくんじゃないかと、そんな甘い話をしているわけなんですけれども、どうかそういった前向きな新しい発想を皆さん是非とも考えていただければ日本は少し変わるんじゃないかなというふうに思っております。
 以上で終わります。

○委員長(長谷川岳君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。

            (略)                 

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さんの、本当に示唆に富んで、これからの役に立つ発言をいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、三人の方に共通の質問をいたします。
 今現在、ロシアのウクライナ侵略で、世界的に見ても食料危機ということが非常に現実味を帯びてきていると思うんです。
 みどりシステム法案の目的に、持続的に発展することができる社会の構築に寄与するというように書かれています。食料をやっぱり国内で供給していくということがますます大事になっているということを痛感するんですけれども、食料自給率の向上をやはり農政の軸に据えていくということが必要だと日頃から思っていまして、そこで、やっぱりみどり法案でもこの食料自給率をきちっと触れるべきではないのかなと。まあ触れていないというのもありまして、触れるべきじゃないのかなというように思っているんですけれども、これについて、井上参考人から順番に御意見を伺いたいと思います。

○参考人(株式会社ファーマン代表取締役 井上能孝君) 食料自給率についてです。
 私が感じていることは、もっとお米を食べようということです。野菜の自給率は八割近く、お米の自給率は一〇〇パー。肉と油、小麦類を食生活の中から少しずつ日本古来のものにできるのであれば、この自給率というのは僕は簡単に上がるのではないかなというふうに感じています。
 緊急時に国内のものを買いあさり、平時には海外産の安いものを買うというのは、僕ら生産者からすると非常にさみしい話です。この平時と緊急時の使い分けというところは大切なところなんですが、じゃ、その根幹を支えているのは農林水産漁業者であり、食料自給率についても、数字の見え方であったりとか見せ方によって変わってしまうことがあるということを消費していただく皆さんにも知っていただきたいというふうに思っています。
 僕は、野菜や米においては八割以上の自給率を誇るこの豊かな日本がすばらしいと思っていますし、ここに、まさに皆さんに食料自給率が低いということをあおるのではなく、じゃ、どうしたら食料自給率が高く、そして日本を誇ることができるのかということを消費する方々と一緒に考えていきたいというふうに考えています。
 以上です。

○参考人(立教大学経済学部経済政策学科准教授・全国有機農業推進協議会理事 大山利男君) 重要な御質問、ありがとうございます。
 私も、今回の食料危機、かなり顕在化するという気がしていますけれども、問題は、食料そのものと、あと生産材の輸入も多かったということが顕在化しているかと思うんですよね。そういった意味では、かなり、生産資材、購入資材に依存する農業からの脱却、要するに、農業生産そのものもですけれども、体質改善も必要なんだと思います。
 先ほど申し上げましたけれども、やっぱり土地に依存した農業こそが多分一番強い農業で、その土地に依存するときに、例えば、先ほど粗放的なイメージの話をしましたけれども、比較的広い農地が確保できるのは多分低投入で、そういうやっぱり生産システムだと思うんです。で、有事のときに例えばそれを高投入とかいろんな形でチェンジしていくことができるような、そういう余力を持った、余裕を持った形にしていく。それは、やっぱり比較的低コストで土地を管理するのがある意味で農業だったりする部分もあると思うんです。ですから、そういう意味でのやっぱりなるべく広い農地を確保できるような政策が大切かなというふうに思います。
 あと一つ加えると、先ほどスイスの御質問がありましたけれども、スイスのその食料安全保障の鍵は、やっぱり人ですよね。多くの国民が、まあ兵役もあるんですけれども、農作業も結構やっているんですよね。この経験はいざというときに、プロのようにはできないかもしれませんけれども、やっぱり人的なストックが有事の際には大切かなと思います。
 そういう意味では、例えば農業体験、体験といったら何か本当に軽く見る人もいますけれども、でも、そういったこともある程度の積み重ねができていると、いざというときの貴重な人的な資源として有効ではないかというふうに思います。
 ありがとうございます。

○参考人(農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ 瀬川守君) ありがとうございます。
 自給率、率だけ考えれば、輸入飼料をやめればかなり上がるというふうに思うんですけれども、何が言いたいかとすると、規模のスケールメリットを追求しても日本の農業は成り立たないというのが私の考え方だと思うんですよね。それにしてはちょっと有機で大きな面積でと言いますけれども、社員だとか家族を含めると全くそんな大きなやり方をしているわけではなく、紙一重で、毎年潰れるかどうかというふうに恐怖感をあおりながら、あおられながら経営しているんですが。
 五十年前、五十というのがキーであって、五十年前の日本の農業がどうだったかというと、やっぱり動物が一、二頭いたり、鶏がいたり、あるいは羊がいたりというような中で、私のおばも結婚式、あるいは祖父の葬式は地域で、あるいは自宅でというふうな景色が浮かび上がってくるんですが、そういうふうに、悪い方向へバックしていくという思いではなく、それが幸福感のある国に再建できるというふうに、まあ古き良き方向へ進めることがいいんではないかなというふうに思います。
 だから、経営も、家族経営が、世界中の食料を担っているのは七割ぐらいが家族経営で成り立っているというのが現状なわけで、日本も、先ほど法人がオーケーと言いましたけれども、現状、空いた土地が荒れていくよりは意のある法人が支えていくというのも一つだと思うんですが、まあそんなことで、終わります。

○紙智子君 ありがとうございました。
 次に、食料・農業・農村基本法というのが、これ私、やっぱり基本だと思っているんですけど、その第四条のところに、農業の自然循環機能が維持増進させることにより、その持続的な展開が図られなきゃいけないというふうになっているんですよね。言わば、これを具体化している形でいえば、二〇〇六年に有機農業推進法ができたんだというふうに思っているんですけれども、しかし、現実には、さっきもちょっと話ありましたけど、十分に広がっているとは言えないと。有機JASでその認定の換算ということが言われて、私もこの間農水省に聞いて、米が、そうはいっても増えているんだろうと思ったら逆に減っていたりしてちょっとびっくりしたんですけれども、ちょっとそういう、現実にはなかなか進んでいないということなんですけど。
 そこでなんですけど、瀬川参考人にお聞きしたいのは、私、当麻町の有機のトマト農家のところに勉強しに行っていろいろお話聞いたときに、化学肥料を一切使わないと、有機でもってやって、初めは全然取れなかったと、もう惨たんたるものだったんだけど、ところが、イチゴの、あっ、トマトだ、トマトのからだとかをすき込んでずっとやっていたら次第次第に地力が付いてきたという話があって、大体五年ぐらいしたらおいしいトマトが取れるようになって、それでこの地力という言葉に物すごく関心が行ったんですね、地力という話ですね。
 それで、参考人のこの資料の中に瀬川参考人の記事も載っていまして、そこに、連作しても連作障害を起こさない土づくりということで書いてありましたけれども、この土つくりということをもう少し話してほしいのと、これに国が支援できるとしたらどういう形があるのかなということをお話をお聞きしたいんですけれども。

○参考人(農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ 瀬川守君) ありがとうございます。
 有機JASと推進法というのが六年の差があって、取締法が日本の場合、先にできてしまった、そして理念法が六年後にできたという、このねじれ現象が先ほどの増えない一つの理屈なのかもしれません。
 それと、地力の問題ですけれども、これこそ有機農業のだいご味といいますか、やはり多様性のある生き物と共生できる形になるということがこの有機農業のだいご味だというふうに、これは、したがって、三年、物が取れないからやめちゃうというようなことでは長続きしていかないし、それを突破してこそ有機農業が継続できるんじゃないかなと思います。
 連作については、やはりトマト辺りも、普及センター辺りの話を聞くと、枝一本残してはいかぬというのがセオリーだったんですが、最近、全量をすき込んでいくぞということで、地力が間違いなく上がっていくし病気も出てこないというふうになっているのが当麻町のトマト農家にあります。
 そういったことで、有機のだいご味というのは、そういった共生、低投入、循環というこの三つのキーワードがうまく回っていくことが大切じゃないかなというふうに思いますが。

○紙智子君 もし国がそれを支援するとしたらどんな形かって。

○参考人(農業生産法人有限会社当麻グリーンライフ 瀬川守君) 農研機構の研究員もかなり進んできて、有機の方へかなり傾注していただいて、その辺のこの現状、何というかな、連作しても大丈夫だというようなことも検討課題に挙げて発表されております。そういったことをどんどんどんどん研究機関がフォローしていただければ、更に良くなるんではないかなというふうに思います。

○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃ、井上参考人にお聞きしたいんですけれども、この有機農業の担い手を、御本人が、違う、農外からやってきたということなんだけれども、担い手を増やすためにどのような政策的な支援が必要だと思うかというのをお聞かせいただきたいんですけど。

○参考人(株式会社ファーマン代表取締役 井上能孝君) まずは、この担い手の確保というところで、担い手をどう定義するのかというところですね。専業農家若しくは兼業農家、どちらでもオーケーなのかというところなんですけれども、私が考えているのは、専業も兼業もどちらも可としたいと考えています。
 じゃ、この専業、兼業の方にどういうふうに参入していただくかというところなんですけれども、私たち有機農業者の中では大体この目標とするロールモデルというものがありまして、そこに師弟関係を結んで研修生として研修を付けていただき、そして就農という流れがセオリーというふうになっています。例えば、僕が瀬川参考人に憧れて農業を始め、そして当麻さんのところで働かせていただき、三年後に独立就農をするというのがセオリーとなっているんですけれども、研修を、研修や修行をせずとも、このロールモデルを魅力的につくり上げていくというところが大切だと感じています。
 例えば、有機農業者の選手名鑑みたいなものを作って、作っている農産物よりも、その人の個性であったりとかパーソナルな部分に焦点を当てて面白おかしく紹介をしていく。就農歴が何年で、できれば売上金額が幾らでどれぐらいの収入が得られているかというところもオープンにできるような、そんな、本当、選手名鑑のようなものがあり、そこを面白おかしく見ていただいて、気軽にこういう人になりたいというようなロールモデルをつくれること、ロールモデルをつくることが担い手の確保につながるのではないかなと感じています。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 時間ですね、済みません。本当はもう一つあるんですけど、これで終わります。
 ありがとうございました。