<第208回国会 政府間発援助等及び沖縄北方問題に関する特別委員会 2022年3月25日>


◇参考人質疑/沖縄振興一括交付金について/沖縄の農業、水産業について/離島における子どもたちへの教育機会の確保について

〇沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
参考人 H2L株式会社代表取締役 
    国立大学法人琉球大学工学部教授 玉城絵美君
    国立大学法人琉球大学学長 西田睦君

〇沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○参考人(玉城絵美君) ありがとうございます。
 それでは、私から、沖縄県の観光産業、人材育成、ICT活用による経済効率化、移住と定住について、今回の特別委員会に際しまして御説明させていただきます。
 横長の資料を手元に置いていただければと思います。
 一ページめくりまして、表紙をめくりまして一ページ目、現在の沖縄県の観光産業の課題について御覧いただければと思います。
 観光は沖縄経済を牽引する産業として雇用の創出にも大きく貢献してきました。入域観光客数も平成三十年には初の年間一千万人を突破しております。
 左下の図を御覧ください。県外の受入れの図なんですけれども、観光収益は全体の一八・五%、現在では更にパーセンテージは上がっております。沖縄の産業における観光産業の割合の大きさを御覧いただけるかと思います。
 次のページを御覧ください。二ページ目です。
 しかしながら、その後の世界的な新型コロナウイルスの感染症拡大により、入域観光客数は過去最大の落ち込みを見せております。個人消費や雇用情勢も、沖縄県、大きく変化しております。現在に至るまで、沖縄県の社会経済全般に大きな影響を及ぼしております。
 下の図を御覧ください。この図は沖縄県の入域観光客数及び観光収入の推移を示しております。今までも、平成十四年前後、あっ、平成十三年の九・一一テロ事件、それから平成二十一年の景気低迷、新型インフルエンザの流行であったりだとか平成二十三年の東日本大震災など、様々な外的要因、外的変化によって観光産業というのは揺さぶられております。特に二〇二〇年からの新型コロナウイルスの流行、こちらに関しては、伸び率、今まで徐々に徐々に上がっていた入域観光客数というのが一気に下がりまして、三分の一以下というふうになっております。沖縄経済を牽引する観光産業は、このように外的な変化に大変脆弱な面がございます。
 次のページを御覧ください。
 今回、この外的な変化に対応できる体験型観光を始めとする新たな観光の形も広がりつつあります。今回の改正法の部分で、沖縄県特定免税店制度について新たにオンライン購入に対応できるようになっていたりだとか、あとはデジタル化、デジタル社会の形成に関する条文が追加されております。
 例えば、これから十年において観光産業というのがどのように変化するのか、今現在行われている実証実験について下の図で、三ページ下の図でちょっと説明させてください。
 例えばですけれども、遠隔地で観光を体験する、沖縄県にある観光資源をたとえ沖縄にいなくても体験できるような実証実験が今進んでおります。左の図はユーザー側、観光客側です。真ん中の図は沖縄県内に置かれたロボットです。この際は、名護市や嘉手納町の比謝川というマングローブにカヤックを置いて実証実験しております。観光客、県外にいる若しくは海外にいる観光客がパドルを動かすと遠隔地に置かれたカヤックロボットが動いて、それでカヤックロボットがさらに、感じた水の重さであったりとか揺れであったりとか景色であったりとか、そういったものを県外にいる観光客に体験してもらうと。こちらの技術、ボディーシェアリングと呼ばれる技術ですけれども、今まで通信技術が発達してこなかったせいもあり導入が進められておりませんでしたが、5Gの沖縄県の導入により、今現在、体験がより臨場感を持って、没入感を持って実施できるようになりました。
 このように、観光産業にIT技術を導入することによって、たとえ外的変化によって沖縄県に入れなくても観光資源を活用できるというような形態をつくれると考えております。こちら、もう既に実証実験が、二〇二〇年に実証実験完了しておりまして、徐々に導入が進んでくるかと思います。
 そのほかにも、三ページの右下の図、これはロボットなんですけれども、観光農園での摘み取り作業に関する遠隔農業体験のシステムです。こちら、更に簡便に、スマートフォンを使って観光資源を遠隔地でも体験できるというような実証実験が行われています。
 このように、多数、観光の形が変わりつつある、5Gの導入であったり新しい技術の導入であったり、様々な環境変化が起こってくる中でも対応できるDX、ICT活用というのが進んでおります。こちらの法案がこのような外的変化に対応できる体験型観光、沖縄県の産業構成に強く推奨される事項となることを願っております。
 次のページ、御覧ください。四ページ目です。
 次は、人材育成、ICT活用による経済効率化、移住と定住についてです。
 現在、沖縄は平均年収が全国的に見ても特に低く、産業発展に必須であるDX化、ICT活用のための、そもそも人材、IT人材の育成が急務でございます。一方で、離島、北部、離島と北部地域の人口減少や担い手不足の問題もあり、移住と定住の対策も求められています。
 左下を御覧ください。左下の図は、各都道府県の平均年収です。一位はもちろん首都の東京でございますが、沖縄県は最下位となっております。そこの金額差にも御注目いただければと思います。また、沖縄県のこの年収の低さからなかなか子供たちが高校や大学に進学しづらい、結果として経済発展に必要であるIT人材が育たないといった、そういった問題がございます。
 沖縄県だけではなく、右の図を御覧いただけると分かりますとおり、日本国内全般でもIT人材というのは需要と供給のバランスが取れていない状態になっています。そんな中、特に年収が低く進学率も低い沖縄県でIT人材が不足するのは当たり前のことかと思います。
 次のページ、御覧ください。五ページ目です。
 そこで、IT人材の育成を図るとともに、AIプログラミングなどソフトウエア業や情報セキュリティー業など、今後の成長可能性が見込める業種の重点的強化を図ることも重要であると。
 今回なんですけれども、先ほどお話ししたとおり、新たなIT技術によって経済の効率化を図ると。先ほど御覧いただいた、観光産業もITを導入することで外的変化に強くなると。そういったところでシステムをつくったとしても、そのIT技術を更に新しくアップデートしていく、管理運用していく人材が必要となります。また、人材育成だけではなくて、移住と定住の問題、この両方がございます。これらを支援していくことで、沖縄県だけではなくて、ほかの日本国内の地域に対してもロールモデルを示せるのではないかと思います。
 今回、これから十年にわたって、じゃ、それでは、大学であったりだとか、あと大学の周りのコミュニティー、そして沖縄県の人材育成、そのほかにもどうやってアプローチしていくのかということで、取組の事例を一つ紹介させてください。
 こちらは琉球大学の取組で、観光型リカレント教育というものです。中段から下の部分に書かれている図、全てがそのとおりになります。北部のリゾートホテルに長期滞在していただき、ワーケーションに加えて、ITに関するリカレント教育を受けていただくと。
 具体的にどのようなリカレント教育を受けているのかというと、AIに関するプログラミング、それから統計学、さらにはメタバースであったりだとかバーチャルリアリティーとか、最新のIT技術から基礎的な統計学、そういったところまで、幅広く業務に関わるところ、一般教養のところ、リゾートホテルに滞在しながら学んでいただくというもの、プロジェクトを推進しております。
 こちらは、リカレント教育であるとともに、ワーケーション、スタディケーションというものがふんだんに含まれております。それによって、北部の地域の良さであったり、今後は離島の良さであったり、県外の方ですと、魅力に気付いていただいて、すばらしい人材が移住と定住していただけるのではないかと考えております。
 ワーケーションに関しては、ワークとバケーションの組合せで、働きながら観光を楽しむ、お休みを楽しむ、余暇を楽しむという意味です。スタディケーションとは、先ほどと同様のモデルで、スタディーとバケーション、学習と余暇を楽しむと、両方を両立させたシステムというふうになります。また、リカレント教育に関しましては、職業上必要な知識と技術を習得するためにフルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返すことです。
 今回のリカレント、観光型リカレント教育では、県外の研修生、あるいは県内の研修生に参加していただくことで、大学、研究機関を中心としてICT活用ができるIT人材を育てる、かつ沖縄県に定住してもらう、県内の方であればIT人材を育て、県外の方であれば移住、定住も御検討していただけるというような取組も進めております。
 このように、積極的な、研究機関、大学、例えば琉球大学であったりだとか、県内のほかの研究機関、OISTであったりだとか、その周辺によって経済効率化を図れるような人材を育成するコミュニティーを形成していくというのが今後重要になるかと思われます。
 そのほかにも、大学発スタートアップというのも、沖縄県では徐々にですが、増え始めております。今後、大学発スタートアップ、それから新規事業の増大によって、今、現時点の年収最下位であったりとか都道府県で見ても進学率が大変低い状況というのを改善していきながら、それで加速的にIT人材により経済効率化を図っていければ、そして、その魅力について、県外の方々、北部、離島に移住と定住していただければというふうに考えております。
 また、これらのコミュニティーづくり、人材づくりによって、今後、日本国内の地方におけるIT人材育成、大学周辺、研究機関周辺のコミュニティーづくりのロールモデルになれるのではないかというふうに考えております。
 私からの説明は以上となります。ありがとうございました。

○委員長(青木一彦君) ありがとうございました。
 次に、西田参考人にお願いいたします。西田参考人。

○参考人(西田睦君) ありがとうございます。
 琉球大学学長の西田でございます。
 本日は、このような意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。
 私の生まれは京都でありますが、沖縄が復帰して八年後の一九八〇年に琉球大学理学部の助手として採用され、途中、福井県立大学あるいは東京大学での勤務もありましたけれども、合計二十二年琉球大学で過ごしてまいりました。
 琉球大学は、一九五〇年五月二十二日、戦火で灰じんに帰した首里城の跡地に、沖縄県民や海外の県系人の大学設立に対する熱い思いと関係者の尽力により開学いたしました。そのような大学の学長に就任して三年になりますが、地域に貢献する大学として沖縄振興に貢献できるよう、大学運営に努めてまいりました。また、沖縄県振興審議会の会長を務めてまいりました。
 本日は、お手元の資料の一ページ目に示したような内容でお話をいたします。まず、沖縄県振興審議会会長として取りまとめた答申、新たな振興計画について説明させていただきます。その後、それに関連する琉球大学などでの取組、あるいは西田個人としての思いをお話しさせていただければと思います。
 一ページをめくった、A3判ですね、A3判の資料一を御覧ください。
 これは、本年一月、沖縄県振興審議会会長として玉城デニー沖縄県知事に答申した新たな振興計画の概要です。資料左上の第一章、総説に、一、計画策定の意義といたしまして、(1)沖縄振興策の推進とあります。これは、特別措置法の根拠となる沖縄の特殊事情を示したものでございます。加えて、(2)日本経済発展への貢献、(3)海洋島嶼圏の特性を生かした海洋立国への貢献と、これら合わせて三つに意義を整理しております。
 なお、資料には記しておりませんけれども、計画策定の意義についてもう少し説明させていただきたいと思います。
 これまでの振興策の推進により社会資本の整備が進められ、この新型コロナウイルス感染症拡大前の令和元年ですけれども、この年には入域観光客数が、これは玉城さんも述べていただきましたけれども、一千万人を超える、そして完全失業率は復帰後初の二%台まで低下する、そして経済成長率は全国を上回る高い伸びを示すなど、多くの成果を上げてまいりました。
 しかしながら、一人当たりの県民所得は依然として全国最低水準、子供の貧困率は全国値の約二倍の水準である、そして非正規雇用率は全国一高い水準にあることなど、なお多くの課題が残っております。
 加えて、離島の条件不利性、それから基幹的公共交通システムですね、これの不備等による深刻な交通渋滞、私も毎日通勤で痛感しているところですけれども、そして米軍基地問題など、沖縄県が抱える特殊事情から派生する固有課題も残されており、沖縄振興特別措置法が最終目的とする沖縄県の自立的発展と豊かな住民生活の実現は十分とは言えない現状にあります。
 このため、引き続き沖縄振興策を総合的、積極的に推進することが重要であると考えます。すなわち、沖縄県が有する我が国の南の玄関口に位置するという地理的特性、それから広大な海域を確保する海洋島嶼性、アジア諸国と交易、交流の中で培ってきた歴史的、文化的特性、これらを十分に生かし発展可能性を引き出すということ、これが沖縄県振興、発展にとどまらず、我が国全体の発展につながるものというふうに考えます。
 さて、お手元の資料ですけれども、A3広げていただいておりますが、その第二章では基本的課題を、そして第三章では基本方向を整理しております。第四章、これはこの資料の右半分の中段に記載しておりますけれども、基本施策では、平成二十二年三月に県民の意見を基に策定した基本構想、すなわち沖縄二十一世紀ビジョンにおける県民が望む五つの将来像ですね、一、沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島、二が心豊かで安全、安心に暮らせる島、三、希望と活力にあふれる豊かな島、四、世界に開かれた交流と共生の島、五、多様な能力を発揮し、未来を開く島のそれぞれに施策を設定しております。
 このような答申を出させていただいたところでございますが、私が学長を務める琉球大学でもこれらに沿った取組を既に行っているところです。残りの時間で、人材育成という面が中心になりますけれども、幾つかの事例を御紹介させていただきます。
 まず、心豊かで安全、安心に暮らせる島を目指した施策として、子供の貧困の解消に向けた総合的支援の推進があります。これに関連して、子供の貧困の負の連鎖を断ち切るための取組として、子どもの居場所学生ボランティアセンターというものがございます。詳しくは別添の資料二ですね、を御覧いただければと思いますが、このセンター、県内の子供の居場所と、それからボランティアを希望する学生とのマッチングを行っております。子供の自己肯定感の向上、子供に寄り添ったサポートを行うことで、子供の居場所への安心感が高まり、子供の自己肯定感の向上につながっております。
 なお、この取組は、琉球大学だけではなくて、沖縄県内の十一の高等教育機関を構成員とする大学コンソーシアム沖縄として行っているものでありまして、私はその代表理事としてこの取組にも関わっております。
 次に紹介したいのは、ICT人材を育成する取組として、数理、データサイエンス、AI教育の推進であります。詳しくは次の資料ですね、三を御覧ください。
 二枚目に、受講した学生からの声がございます。データ解析の手法を学び、論理的思考力や課題発見力を身に付けた学生がこれからの沖縄で活躍してくれることを期待させてくれるコメントが出ております。元々文科系の学生なんですけれども、もうデータサイエンティストとして育ったという自覚を持ってくれております。
 この取組も、琉球大学が中心ですけれども、先ほど申した大学コンソーシアム沖縄のつながりを活用して、沖縄県内の高等教育機関とも連携をして実施しております。
 なお、この取組ですけれども、希望と活力あふれる豊かな島を目指した施策として、デジタル社会を支える情報通信関連産業の高度化、高付加価値化というものに関連するものであります。先ほどの子供の貧困問題も、その抜本的な解決策としては生産性向上による県民所得の改善が必要でありまして、そのような意味からも重要な取組であると認識しております。
 ここからは、私個人として今後十年の沖縄振興に期待するところとして、あと二つほど事例をお話ししたいと思います。
 沖縄が直面する特殊事情として、地理的事情、自然的事情などがございますが、これらは克服すべき条件不利性であると同時に、優位性へと転化する可能性も秘めたものであると考えております。今回の答申の基本施策でも、沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島を目指してとありますけれども、そのような観点から、これからの沖縄振興策は沖縄の特色を生かした取組がより重要ではないかと感じています。
 その一つの事例として、琉球大学での研究プロジェクト、資源循環型共生社会実現に向けた農水一体型サステーナブル陸上養殖のグローバル拠点を御紹介いたします。詳細は別添資料四を御覧ください。
 これは、科学技術振興機構の共創の場形成プログラムに採択されたものでもあります。他大学や民間企業、地元自治体も参画するプロジェクトです。沖縄をベースに食とエネルギーの循環社会モデルの形成を目指す取組であり、閉鎖循環型陸上養殖、再生可能エネルギー、廃棄食料の資源化等をデジタル技術でうまく連携させて、最適な循環社会を実現することを目標としています。これにより、沖縄だけではなく、亜熱帯海洋性の島嶼モデルとして、東南アジアの循環社会モデルとなるのではないかと期待しております。
 もう一つの事例として、世界トップクラスの豊かな自然、これを活用する事例を御紹介します。
 昨年七月、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の世界自然遺産への登録が決定されました。この地域の生物多様性等については別添の資料五を御覧いただければと思いますが、琉球大学では、この地域内に教育研究施設を有しております。そして、長年にわたってこの地域の自然の研究と教育に深く携わってまいりました。これらは、地域にある貴重な自然の価値を科学的な観点から正確に把握し、それを後世に伝えていくための大切な基礎づくりだと考えています。
 一方、この地域では、観光客の増加に伴うオーバーツーリズムに対応する適正な観光管理の実現、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコ等の希少種のロードキルの防止、包括的な河川再生、さらに緩衝地帯における森林伐採の適切な管理等、多くの課題も指摘されており、これらを総合的に把握し、解決していくことが不可欠です。琉球大学としても、地域社会や国際社会と協力し、教育研究を通じて、周辺地域を含む世界自然遺産登録地域の生態系や生物多様性を将来世代に引き継ぐための努力を惜しまぬ所存であります。
 また、これは琉球大学の取組ということではございませんけれども、今申し上げたような取組の延長線上にあるものとして、国立自然史博物館構想がございます。詳細は別添の資料六を御覧いただければと思います。
 自然史博物館を沖縄につくることは、自然史研究の観点のみならず、沖縄観光等の産業振興面、それから人材育成面、さらにはアジア地域、さらに全世界への貢献という面からも重要な取組になると確信しております。
 以上、沖縄振興に関連する取組事例を幾つか御紹介してまいりました。本委員会で審議されている沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案が成立し、来年度以降も引き続き国からの支援の下で県の施策が実施され、沖縄振興策が総合的、積極的に推進されることを期待しております。また、沖縄県内唯一の国立大学の長として、微力ながらその実現に貢献したいというふうに考えております。
 これにて私からの説明を終わります。
 御清聴ありがとうございました。

○委員長(青木一彦君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、玉城絵美参考人、そして西田睦参考人、ありがとうございます。
 五十年たって、復帰してからですね、非常に、こういう沖縄の振興についてこういう形で協議できるというのは非常に大事なことだというふうに思っております。
 それで、十年前は国会において、この沖縄振興特別措置法、これ全会一致で成立をしたわけですよね。法律の目的に沖縄の自主性の尊重ということを追加をして、沖縄の振興計画の策定の策定主体を国から県に移行したというのは県民自治の観点からも非常に大事だったと思うし、計画の実施に伴う財源は政府が保障するんだと、これも我々としても必要だというふうに考えてきたわけです。
 それで、玉城デニー沖縄県知事に提出をされた沖縄県の振興審議会の新たな振興計画、これに対しての答申で、この推進策について、沖縄県が有する四つの特殊事情に鑑みてというのは、先ほどもちょっと紹介ありましたよね、つまり四つの特殊事情、一つは歴史的事情、それから地理的事情、自然的事情、社会的事情と。こういうことの影響は、沖縄振興計画が進んで着実な成果が見られているとしつつも、一人当たりの県民所得は依然として最下位の水準と、それから自立型経済の構築はなお道半ばと、加えて非正規雇用の割合や子供の貧困の高さなど全国に比べて厳しい状況にあるということで、振興法が目指している方向でいうと、まだ十分というふうには言えない、まだいろいろ課題もあるということだと思うんです。
 そこでちょっと御質問で西田睦参考人からお聞きしたいんですけれども、一括交付金の問題についてお聞きしたいと思うんですね。
 この一括交付金というのは、振興予算の中でも県や市町村の発展に寄与する大切な交付金だというふうに思っています。近年、これ減額が続いているわけで、国から市町村に渡る事業推進費、直接じかに渡るものも導入をされてきていると。個別事業への対応に個々に予算を増額する切り張りということになると、結局は、減額された分は他の事業の予算で削って調整しなきゃいけないと、そういう問題もあるというふうに思うんですね。
 西田学長は新聞報道のインタビューで、一括交付金については、地方自治体の主体性が最大限に発揮できる一括交付金制度の戦略的活用が必要不可欠だというふうに答えられています。
 沖縄振興が進むためには、やはりこの一括交付金の増額というのは県も求めてきているんですけれども、国会での議論の中で、私も何回も、減らすなということで質問もしてきたんですけれども、この一括交付金のあるべき性質を考えると、やっぱり審議会の会長さんとして審議を御覧になってきた立場で、今後、一括交付金を県が戦略的に活用できるものとして交付していくということのためにどういうところが重要なのかというところをちょっとお聞きをしたいと思います。

○参考人(西田睦君) 御質問ありがとうございます。
 県の振興審議会としては、法が改正され、基本計画、方針ですね、が政府によって出され、それに基づいた計画をしっかりと県が立てることのその基礎を委員の皆さんと審議をしたということでございます。
 どんなふうな、何というんでしょうかね、予算の使い方というところはまさに先生方がしっかり議論をしてお決めいただくことかなというふうに思っておりまして、それが決まったところを、しっかりとこういう方向でということを我々としては一生懸命議論してまとめたということになります。
 以上です。

○紙智子君 結構、子供の対策とか、それから医療の対策とか、結構苦労してやっているんですよね。だから、その辺をもっと充実させた方がいいんじゃないかというふうに思っております。
 それからもう一点、西田参考人にお聞きしたいんですけれども、沖縄の農業、水産業というのは、日本で唯一の亜熱帯地域の特性があるというふうに思うんですよね。だから、非常に国内外からも人気もあると思うし、琉球大学の農学部の研究も独自性が発揮されていて、未来の農業を考えると楽しみな部分も多いと思うんですよね。
 それで、沖縄振興で考えたときに、とりわけ離島でなくてはならないというのは、サトウキビの生産というのはやっぱり大事で、ずっと長い歴史もあるんですけれども、黒糖の問題なんかも国内のシェアが九割と、基幹産業として非常に大事だし、やっぱり台風が多いところで、これは本当になくなったら困ると思うんですけれども、近年でいうと、その台風とか害虫に脅かされることなく豊作が続いていると。本来だったら喜ぶはずなんですけど、これが今、コロナ危機で観光産業が減少してきているという中で打撃を受けていて、再建に向けて非常に悩みが大きいという話も聞いています。
 それで、この危機を打開するために、今回の振興法の改正の中でも、離島地域の振興としては農林水産業の産業の振興って入っている、盛り込んではあるんですけれども、このやっぱり黒糖ということでいうと、やっぱり振興にとっても役割があると思うので、今日に合ったその繁栄のために必要なことは何かなということをお聞きしたいと思います。

○参考人(西田睦君) ありがとうございます。
 農業、そして琉大の農学研究、いろいろユニークにやっているというふうに言っていただきまして、ありがとうございます。まさに熱帯、亜熱帯の農業をしっかり学び、研究できる場所として学生にも一定の人気があって、熱心な学生来てくれて、教員も頑張って研究しております。
 農業、県の経済全体の、あるいは日本全体で見ても、経済に占める一次産業の割合というのはそうもう高くなくなってきていますけれども、しかし、国民の食料を支える、そして、むしろ国土、県土、あるいは島嶼を支える役割というのはすごく大きなものがあります、農業にはですね。そういう視点から見たときに、単に直接お金が動く経済だけでなくて、価値が大きいと考えます。ですから、そういう視点で総合的に見たときの農業の支援というのは大事、おっしゃるように大事だというふうに思っております。
 それから、離島の場合、大きな二次産業、なかなか難しいです。そうすると、やはり一次産業というのは大事になりますので、特に離島の場合、その島に応じて、黒糖だけというわけにはいかない、やっぱり島によって全然違いますので、それぞれの島に応じてしっかりと農業を支えるということがすごく大事かなというふうに私思っております。その中で黒糖の問題もあろうかなというふうに思っております。
 是非そこはしっかり先生方お考えいただいて、しっかりサポートいただければというふうに思っております。
 ありがとうございます。(発言する者あり)

○委員長(青木一彦君) 紙智子君、挙手の上、質疑をお願いいたします。

○紙智子君 はい。
 最後になりますけれども、玉城参考人にお聞きします。
 ちょっとこれ、先ほど榛葉議員の質問ともちょっと重なるところあるんですけれども、有人の離島の中でも、さっきも紹介あったように、石垣と宮古と久米島の三校ということで高校があるわけで、高校のない島の子供たちは船で通うとか、それから引っ越ししたりということで、大変な努力というか苦労をされていると思うんですけれども、玉城参考人は、第十三回の沖縄振興審議会の総合部会専門委員会の意見発表の中で、教育に関して、学力、基礎的な知識とか技術は向上傾向にあり、思考力、判断力、表現力などのことについて課題が残っていると。教員不足や専門人材不足で対応し切れないところで、そこが現在の教育現場の課題だと。教鞭を握られる、そういう立場から具体的な指摘をされているわけです。
 やっぱり不利な条件を抱えた中で、その沖縄県の世帯の子供たち、生徒たちが均等に、均等に教育を受けられるためにはどのような手当てが重視する必要があるのかということを最後にお聞きしたいと思います。

○参考人(玉城絵美君) おっしゃるとおり、向上傾向にはございますが、表現力といった細かなところの教育が行き届いていないというのが離島の現状です。
 そういったところで必要なところは、まずIT技術を導入するためのインフラ部分を継続的に実施、更新していくところが必要だというふうに考えられます。現在は4Gから5Gに基地局の通信方法も変わってきたところ、さらに通信方法が今後6Gに変わってくるかと思います。その中で、離島、本島、日本国内全体と、首都圏と平等な教育を受けられるシステムをつくるためには、まずITインフラ自体を強固に設置していく。
 と同時に、教員自体の質も高める必要があると思います。そのためには、県内外、場合によっては海外の教員を誘致、離島に来ていただくための補助というのも必要になってくるかと考えております。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございました。