<第208回国会 東日本大震災復興特別委員会 2022年3月25日>


◇福島・宮城県地震 激甚災害の指定について/中小企業グループ補助金の活用について/災害支援に対する線引きについて/災害公営住宅の割増家賃問題について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 質問に先立って、今月十六日深夜に発生いたしました福島県沖を震源とする大地震によって被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 東日本大震災、福島第一原発事故から被災地が復興に向かう中で、二〇一九年には東日本を襲った台風、そして長期化するコロナ禍に加えて、昨年、そして今回二度目となる福島沖地震と、様々な困難を強いられています。
 今回の大地震を受けて、まず、二之湯大臣は、国としてできる限りのことをしたいと言われました。激甚災害に指定することが今一番求められていることではないのでしょうか。お答えください。

○国務大臣(防災担当大臣 二之湯智君) お答えいたします。
 私もせんだって、地震の後、十九日の日に新幹線とマイクロバス乗り継いで、片道三時間半ぐらい掛かるんですが、相馬市と、そして福島市を訪問いたしました。そして、市長、知事ともお話をさせていただきました。
 今回の地震による被害状況につきましては、ただいま関係省庁を通じまして調査を行っているところでございますけれども、これまでのところ激甚災害に指定する基準に達するまでの被害は確認はできておりません。今後の自治体や関係省庁による被害状況の把握の進展を踏まえて、指定基準に照らし適切に対応してまいりたいと思います。
 引き続き、被害状況の把握に努めるとともに、政府一体となって自治体や関係機関と緊密に連携し、被災された方々が一日も早く元の生活を取り戻せるように、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 今把握されている途中ということなんですけど、行ってみて改めてやっぱり被害が大きいなということを分かるわけでもありまして、是非、防災担当大臣として、この被災自治体からの要望に応えて激甚災害の指定をするように求めておきたいと思います。
 福島県沖を震源とする大地震は、昨年二月に発生して以降、一年間、後という短い期間で同じ地域が二度被害を受けているわけですね。昨年の地震の際は、被災した中小事業者への支援として、政府は中小企業グループ補助金が措置をされたと。活用を認めたわけです。昨年の地震から復旧を進めている中でまた再度この大地震の被害に遭ったと。
 福島県や宮城県など被災自治体は、今回の地震でも、被災した中小企業・小規模事業者の施設の復旧復興を後押しするために、中小企業グループ補助金の支援を求めているんですね。被災した中小企業や小規模事業所の、事業者の心が折れないように、今回も是非中小企業グループ補助金を活用できるようにするべきではないんでしょうか。

○副大臣(経済産業副大臣 石井正弘君) 議員御指摘をいただきましたけれども、宮城県、そして福島県の中小・小規模事業者の皆様の中には、東日本大震災やあるいは新型コロナ、昨年の福島沖、福島県沖の地震、特にこれに加えて今回の地震ということで、被災された方もおられるところでございます。連続する災害によって厳しい経営環境にあると、このように承知をいたしております。
 経済産業省といたしましては、発災翌日に中小企業支援策といたしまして、災害救助法が適用された宮城県及び福島県内の全市町村に対しまして、特別相談窓口の開設、災害復旧貸付けの実施、セーフティーネット保証の適用などの措置をそれぞれ講じてきているところであります。
 また、昨日、直接福島県知事さんとオンラインで面談をさせていただきました。議員御指摘のグループ補助金を含む支援策に関する御要望も頂戴いたしました。その際には、まさに今回の地震によっての被害の状況であるとか、あるいは度重なる被災を受けた方々の心苦しい心情、これをお伺いをしたところでございます。
 経済産業省といたしましても、改めて現地の声を十分に受け止めさせていただきまして、被災者の方々の心が折れることがないように、しっかりと被災地に寄り添った支援策を考えてまいりたいと、このように存じます。

○紙智子君 激甚指定をされないと、これ、グループ補助金というのは認めないんでしょうかね。

○副大臣(経済産業副大臣 石井正弘君) 御指摘のとおり、原則のルールは激甚災害の指定というのが今まではあったわけでございますけれども、昨年のその例は、福島県沖地震に関するその被災の例は、特別の考え方、特別の措置ということで位置付けたというふうに承知をしているところでございます。

○紙智子君 被災自治体が強く要望していることなので、是非速やかに検討していただきたいし、実現していただきたいというふうに思います。
 石井副大臣、ありがとうございました。御退席いただいて結構です。

○委員長(那谷屋正義君) 石井副大臣におかれましては御退席して結構です。

○紙智子君 近年、地震や気候変動による豪雨災害などの自然災害の発生が相次いでいます。
 被災者支援で必ず問題になるのは線引きなんですね。国の支援制度の線引きによって支援の対象の外に置かれる被災者が出て、救済されないケースが生まれているということなんです。
 災害救助法に基づく住宅の応急修理制度の支援対象というのは徐々に拡充されつつありますけれども、それでもなおこの損壊割合が一〇%未満の一部損壊の被災家屋というのは支援の対象外とされています。そのために、今回の地震でも国の支援制度で救済されない被災者が出るんじゃないかと心配をしているんですね。そうなると、実際には被災自治体が独自の支援策を行って支援、被災者の救済をせざるを得なくなるわけです。
 被災者支援に当たっては、やっぱり国が責任を持って全ての被災者を対象にする支援をする必要があると思うんです。住宅の応急修理制度や被災者生活再建支援制度の適用条件の緩和を検討すべきではないかと思いますけれども、二之湯大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(防災担当大臣 二之湯智君) 今回の地震によりまして、宮城県及び福島県の全九十四市町村に災害救助法が適用されたことから、国庫負担による住宅の応急修理などが可能となっております。
 この応急修理は、応急的な修理により元の住宅に引き続き住むことを目的として、その破損箇所を修理する制度でございます。対象の拡大につきましては、令和元年八月より準半壊の住宅についても支援の対象としたところでございます。
 ただ、先生御指摘の準半壊に満たない一部損壊の住宅については応急修理の対象とすることは困難であると考えておりますけれども、住宅金融支援機構による融資や自治体における独自の支援制度なども行われているところでございます。
 もっとも、これらの公的支援には限界があり、個人的に損害保険に加入するなど、事前の備えも必要だと思います。このため、関係省庁や全国知事会とも連携し、保険の加入促進にも取り組んできておるところでございます。
 内閣府といたしましても、自治体等とも連携し、被災者の生活再建等が進むようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 重複してもう何回も来ているということがあるので、ですから、従来の枠を超えた支援を拡大していくように検討をお願いしておきたいと思います。
 それで、二之湯大臣はここまでで結構です。ありがとうございました。

○委員長(那谷屋正義君) 二之湯国務大臣、御退席して結構です。

○紙智子君 次に、災害公営住宅についてお聞きします。
 国は、東日本大震災で住まいを失った被災者は、収入にかかわらず災害公営住宅への入居を認めました。このときの国の考え方について、まず御説明をお願いいたします。

○政府参考人(復興庁審議官 岡本裕豪君) 東日本の大震災の被害は甚大であり、短期的に震災被害による住宅不足から、一定の収入がある方など、本来の入居者資格を有しない方まで住宅に困窮することが想定されたため、住宅に困窮する方に広く災害公営住宅への入居が認められるよう配慮したものと承知しております。

○紙智子君 そうですよね。震災で住まいを失った被災者に対しては、居住の確保に特別な配慮をする必要があったので、この収入基準を課さなかったということだと思うんですね。ところが、この入居後は公営住宅法を根拠法として、入居後三年が経過して入居収入基準を超える収入のある者の家賃は段階的に高額な近傍同種家賃というふうに引き上げることになりました。
 このことでどうなっているかというと、仙台市の災害公営住宅に入居する八十代の女性は五十代の息子さんと二人で暮らしていたんですけれども、今年の春から家賃が三万円以上上がるということで、約八万三千円となると通知が届いたそうです。市に確認をすると、最終的に家賃は十九万二千七百円まで上がるんだと説明をされたんですね。それで、息子さんと別居を余儀なくされたと。割増し家賃の仕組みによって事実上被災者が追い出されて、八十代の女性が独り暮らしを強いられるというふうになっているわけですよ。
 これ、西銘大臣、この実態というのはどういうふうに思いますか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 東日本大震災の災害公営住宅では、入居時には収入要件を満たさなくても入居可能な仕組みとなっておりますが、紙委員御指摘のように、入居後三年が経過し、入居収入基準を超える場合には、以後、家賃が上昇する場合があることは承知しております。
 他方で、基本的に公営住宅は住宅に困窮する低額所得者の方に低廉な家賃で入居いただくことを目的としております。その上で、各自治体において、民間賃貸住宅など地域の住宅事情や公営住宅の応募状況等を踏まえ、入居者資格や家賃について適切に判断されているものと認識をしております。
 なお、自治体においては、退去される方について個別に相談に応じ、住宅のあっせんを行うなど、継続して居住の安定が図られるよう努めているものと承知をしております。

○紙智子君 まあ、いろいろ努力されているんじゃないかというふうに思っていると思うんですけど、この割増し家賃によって働き盛りの世帯は退去を余儀なくされ、災害公営住宅に高齢者だけが残ると。災害公営住宅の高齢化が進んでいるわけですね。コミュニティー活動が停滞するだけではなくて、このコミュニティーの維持も困難になっています。
 こういう実態について、大臣の考え、どんどん高齢者が増えてきて、そういう実態をどう思いますか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 災害公営住宅の入居者資格や家賃については、地域の実情に応じて各自治体が一定の範囲内で条例で柔軟に設定することにより、若い世代の入居等を促進できる仕組みとなっているところであります。例えば、自治体によっては、災害公営住宅に空きが生じた際に子育て世帯を優先的な対象とした募集を行い、若い世代の入居を促進するなど、多様な世代によるコミュニティー形成に配慮した取組も行っております。
 復興庁としましては、災害公営住宅のコミュニティー維持が図られるよう、引き続き必要な助言等に努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 ちょっとそのこと、また後でやりたいんですけどね。
 宮城県の民主医療機関連合会が二〇一六年から毎年、災害公営住宅を訪問しているんですね。住民の暮らしや健康に関する調査をやっているんですが、今月公表した昨年度の調査の結果では、初めて独り暮らしの人が回答者の半数を超えていて、そのうち七十代以上の方が五五%となっているんです。災害公営住宅で高齢者の独り暮らし世帯が増えている実態がこの調査からも明らかになったんですね。
 大きな課題となっているのが、この災害公営住宅での孤独死が増えているということです。報道によれば、震災以降、この十年間で、岩手、宮城、福島、この被災三県の仮設住宅や災害公営住宅で誰にもみとられることなく亡くなられた方が六百八十三人だとなっています。その多くが孤独死と見られていると。
 近年は、コロナ禍が長期化する中で人と人とのつながりが絶たれていて、孤立化、孤独化が深刻な問題となっているんですけれども、この孤独死が増えているということについて大臣の認識を伺います。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 災害公営住宅等にお住まいの方の中には独り暮らしとなった高齢者が少なくなく、孤独死を防止するためにも日頃からの孤立防止やコミュニティーづくりが重要だと考えております。
 このため、復興庁では、被災者支援総合交付金を通じて自治会の形成支援や交流会の開催などのコミュニティーづくりに対する支援、生きがいづくりのための心の復興、生活支援相談員による高齢者等の見守りの実施など、自治体の取組を幅広く支援をしております。
 引き続き、自治体と連携をし、丁寧に状況を伺いながら、被災者に寄り添った取組を推進してまいりたいと考えております。

○紙智子君 いろいろ今やって試みているってことなんだけれども、いや、この状態のままで孤独死本当に防げるのかなということなんです。
 災害公営住宅の入居者の高齢化、高齢の入居者の孤独死をどう防ぐのかということで、私は、今取り上げた割増し家賃の問題とコミュニティーの維持ということをこれ一体で考えていく必要があるんじゃないかと思うんです。収入超過者の多くは働き盛りの世帯であります。若い世代が退去することによってコミュニティーの維持というのは困難になっているわけです。
 じゃ、この一連の問題をどうやって解決していくのかということでいうと、岩手県なんですけど、ここは、災害公営住宅では収入基準の超過によって働き盛りの世代を中心に家賃が急激に高騰したために退去するケースが相次いだということで、どうしたかというと、岩手県は、災害公営住宅のコミュニティーの維持を図るために、収入を理由とした退去はできる限り避ける対策に乗り出していると。昨年の十二月議会で、今年の四月から被災者の入居収入基準を二十五万九千円に引き上げたと。明渡し義務も果たさないことを決めたということなんですね。
 大臣、この災害公営住宅のコミュニティーの維持を図ろうとする取組、これ重要だと思いませんか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 紙委員御指摘のように、岩手県におきましては、東日本大震災の被災者について入居収入基準を十五万八千円から二十五万九千円に引き上げることなどを内容とする条例改正を行い、今年四月一日から施行されるものと承知をしております。
 災害公営住宅の入居者資格などについては、地域のそれぞれの住宅事情を踏まえ、各自治体の条例で柔軟に設定することができる仕組みとなっております。岩手県において適切に判断されたものと認識をしております。
 コミュニティー維持の必要性は、現場に出向いていろんな方のお話を聞くたびに、しっかりコミュニティー形成は応援していかないといけぬという思いでおります。

○紙智子君 コミュニティーの形成大事という話なんですけれども、この収入基準の超過が被災者にコミュニティーの崩壊や孤独死などの新たな困難を持ち込んだということであれば、解決への一歩としてですね、解決への一歩として国も岩手県がやられているような考え方を取り入れるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 災害公営住宅に係る事務は地方の主体性を重視すべきとの地方からの声を踏まえ、順次、地方分権が進められてきたところであります。基本的に自治事務として整理されているところであります。
 このため、入居収入基準の引上げなど、災害公営住宅の入居者資格についても、災害公営住宅を含む地域の住宅事情等を踏まえてそれぞれの自治体が判断すべきものであり、国が一律に入居収入基準の引上げなどを求めていくことは適当ではないと考えております。

○紙智子君 国は、この震災で住まいを失った被災者は、収入にかかわらず、初めね、かかわらず災害公営住宅への入居を認めたわけですよ。それはやっぱり震災被害から立ち上がる上で大きな希望になったと思うんです。高齢者も働き盛りの世帯も子供もいてやっぱり震災前の生活に戻るんだと思うんですね。
 今、地方分権だと、だから地方の裁量でという話をされたんだけれども、やっぱりこの災害公営住宅に入居する被災者が入居の継続を希望する場合に安心して住み続けられるように、これ地方にというんだけど、やれるところ、やれないところもあるわけですよ。だから、国が救済策を明示して被災自治体に通知を出すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 災害公営住宅の入居者資格などにつきましては、自治事務として自治体により適切に判断されるべきものであるという考えであります。
 一方で、被災地におけるコミュニティーの形成や高齢者の孤立化を防止していくということは大変重要であると認識をしております。
 復興庁としましては、今後とも、被災自治体と連携をし、交付金等使えるものがあれば使って、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 それぞれのところで努力するというのはもちろん大事なんだけれども、だけど、できないところもあるわけですよ。みんながやれるかといったら、実態はそうじゃないんですよ。
 実際にこれ、割増し家賃によって退去を余儀なくされて泣いている被災者たくさんいるわけですよ、現実に。被災者に寄り添うというのであれば、やっぱり直ちにこの救済に乗り出すべきだと。
 復興庁は、二〇一七年の十一月の自治体への事務連絡で、収入超過者の家賃に対する対応について、条例による収入基準の引上げや自治体による減免措置など負担軽減策を明示したわけですよね。ですから、現実にやっぱりどうなっているかというところをしっかり目を向けて、この救済策を明示して通知を出すべきではないかというふうに思うんです。
 東日本大震災から十年超えて、今十一年目に入っているわけですけれども、やはりこの災害公営住宅、それからインフラ整備、これは進んできたとは思いますよ。だけれども、やっぱり今本当に求められていることというのは、人間の復興であり、そして震災前の生活を取り戻すと。だから、お年寄りだけがそこに住んでいるんじゃなくて、やっぱり家族も一緒にいると、そういう状況をちゃんと確保できるようにしていくということ、そのために力を尽くすべきじゃないのかというふうに思うんですけれども、もう一言お願いします。

○国務大臣(復興大臣 西銘恒三郎君) 去る十六日の深夜の地震の後に福島県の知事さんや宮城県の知事さんにも電話をいたしましたが、委員御指摘のように、台風の豪雨災害や昨年二月の地震、そして三月十六日の地震と、本当にその下で、コロナという状況の下で、知事さんの言葉で、心が本当に折れそうだという言葉を聞いて、激励をしてお見舞いもしたんですが。
 今のお話でございますが、基本的に公営住宅は住宅に困窮する低額所得者の方に低廉な家賃で入居いただくことを目的としております。各自治体において、地域の住宅事情や公営住宅の応募状況等を踏まえ、入居者資格や家賃について自治体がそれぞれ適切に条例等で判断をしているものと承知をしております。
 復興庁としましては、地域のコミュニティーをしっかり支援をしていくという基本がありますし、復興行政の基本としましても、とにかく被災自治体に寄り添ってという基本方針もありますので、被災者支援交付金等を使いながら、コミュニティーの形成等、できるところをしっかり支援してまいりたいと考えております。

○紙智子君 昨日、私も、とんぼ返りでしたけれども、仙台に行って、やっぱり山元町なんかは地盤が悪いんですよね。二回、三回と今まで被害に遭って、本当に大変な思いをしています。
 是非、この震災復興のために全力を尽くすということで、寄り添うというのであれば、やっぱり今出されている声にもう応えていただけるように心からお願いをいたしまして、私の質問といたします。
 ありがとうございました。