<第208回国会 農林水産委員会 2022年3月16日>


◇北海道の赤潮被害と支援策について/コロナ禍による生乳廃棄の危機について/生乳の廃棄を回避する対策(輸入と国産の置き換え)について

〇令和四年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算(農林水産省所管)について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 所信質疑に続いて、北海道の赤潮被害の問題で質問します。
 北海道で赤潮被害をもたらしたプランクトンがカレニア・セリフォルミスということで、これ二〇二〇年の九月から十月にカムチャツカ半島の沿岸で赤潮発生させたプランクトンです。プランクトンが親潮に乗って南下することが予想されていた中で、観測体制や初動の対応が遅かったんじゃないかと前回聞きました。そうしたら、沿岸海域は北海道がモニタリング調査を実施するという回答だったわけです。
 しかし、国が管理する沖合の海域の調査を水産庁として行ってはいないんですよね。国の研究機関が北海道に対して、海洋生物への被害が魚類だけでなくウニやヒトデ、カニ、アザラシなどかなり広範囲に及んでいると、赤潮監視の標的種として把握、標的種として把握するように求めたわけなんですけど、なぜ北海道任せにしたのかと思うんですね。
 改めて確認しますけれども、釧路の沖合、根室の納沙布岬の周辺、根室海峡、それからオホーツク海峡、この四つのエリアにおいて、標的種というものにふさわしくこの定期的なモニタリング調査はしたのでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答え申し上げます。
 北海道庁からの報告によりますと、二〇二〇年は、北海道立総合研究機構が過去に赤潮による漁業被害が発生した道南海域を中心にモニタリング調査を実施するとともに、道東やオホーツク海域においても調査船から得られる情報も含め状況を注視していたと承知しております。

○紙智子君 それだけですか。調査船を派遣してどういう調査していたんですか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) 今まで聞いておりますところによりますと、通常の定点観測で、水温、海洋の情報、さらにプランクトンの調査などもやっておるというふうに聞いておりますが、特に赤潮に特化して、それだけということでやったというふうには承知しておりません。

○紙智子君 何というのかな、やっぱり北海道にもう全部任せっきりという感じだったんでしょうかね。標的種というふうにね、それにふさわしい調査になっていたのかということが問われていると思うんですね。
 根室市に隣接している歯舞とか色丹、国後の沿岸まで行って調査するというのはちょっとできないですよ。だけど、北海道がモニタリング調査を強化するように国として支援するということが必要だったんじゃありませんか。そこで、あっ、答えますか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 あくまでも二〇二〇年当時の判断でございますが、二〇二〇年に赤潮がカムチャツカで発生いたしましたが、このとき北海道までの距離は約千六百キロ離れております。これは、日本国内で例えますと、鹿児島から北海道に相当する距離でございます。鹿児島、例えばですよ、鹿児島で赤潮が発生した場合に、対馬暖流が流れる先である北海道の日本海側でモニタリング調査を即座に実施しているかというと、日本の場合は今までそういうことはやっておりませんでした。
 したがいまして、あくまでも二〇二〇年時点での判断でございますが、この時点でモニタリング調査を実施しなかったという点に関しては、決して誤った判断ではなかったのではないかと認識しております。

○紙智子君 そうですかね。いや、私は、いきなりですよ、九月になってからもう赤潮で捕れなくなっているという背景でいえば、やっぱりもっとちゃんと調べることはできたんじゃないかというふうに思うんです。
 それで、二〇二〇年段階ではという話ありましたけど、心配されているのは今年の対策であります。調査をする海域というのは去年より広がると思うんですね。根室の納沙布岬の周辺、それから根室海峡はもちろんですけれども、どの海域でどのようなモニタリング調査を行っていますか。その調査をしているエリアと頻度、現状について教えてください。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 令和三年度の補正予算で措置いたしました北海道赤潮対策緊急支援事業を活用し、北海道では、昨年赤潮が発生した道東に加えまして、オホーツク海側など全道の海域に二月から赤潮プランクトンなどのモニタリング調査を拡大するとともに、その結果を公表し、漁協などにも情報提供することとしております。この調査は月一回の頻度で実施いたしまして、このうち被害のあった道東海域では、赤潮プランクトンの監視を強化し、七月から十二月までの間は月四回の頻度で調査を行う予定であると承知しております。
 水産庁といたしましては、このような施策を通じ、北海道庁とも緊密に連携しながら、関係漁業者などへのモニタリング調査の情報発信への支援に取り組んでまいります。

○紙智子君 それで、赤潮が発生した場合にこの被害を防止する対策というのはどういうものがあるのか、簡潔に説明お願いします。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答えいたします。
 赤潮は、西日本でいろいろ発生した経験から申しましても、発生そのものを止めることは困難でございます。対応といたしましては、赤潮プランクトンや水質環境のモニタリング及び発生予察、さらに、この結果の情報発信などによる漁業被害の防止、軽減対策に主体が置かれてまいります。
 水産庁といたしましては、先ほど申しました令和三年度補正予算で措置した事業によりまして、広域モニタリング技術の開発、赤潮の発生メカニズムの解明などによる発生予察手法の開発、新たな赤潮原因プランクトンの水生生物に対する毒性の影響などの調査を行い、被害の防止、軽減に努めてまいります。

○紙智子君 是非しっかり調査をしていただいて、赤潮被害が発生するおそれがあるときには迅速に対応できるように支援をお願いしたいと思います。
 次に、支援策についてなんですが、ウニ漁は稚ウニをまいて今年の漁の準備が始まっているわけですけれども、販売するまでには四年掛かるんですね。補正予算は四月以降も使えるのかどうかということと、次年度、二〇二三年度以降はどのように支援するのでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答え申し上げます。
 令和三年度補正予算で措置いたしました北海道赤潮対策緊急支援事業によりまして、原因究明の取組を支援するとともに、漁場環境の回復のために、漁業者などの皆さんが行う活動を支援し、経営継続を支援しているところでございます。
 今後の対応につきましては、現場の状況を丁寧に把握した上で、北海道庁とも連携しながら検討してまいります。

○紙智子君 漁業者は、予算が足りなくなるんじゃないんだろうかと、赤潮が収束して漁業が再開できるのかということで心配をしています。途切れない支援を求めたいと思います。
 それで、北海道庁が公表した被害額約八十億円には、実は日高の被害というのは入っていないんですね、日高、日高地方の被害が入っていないと。我が党の町議が日高の漁協から聞いたところ、例えばツブガイでいうと二十億円、タコで五億円、ウニで二億数千万円、ナマコで約一億円、トータルで三十億円超えるんじゃないかという報告がありました。
 これツブガイの被害が一番多いんですけどもね、これは水産庁長官は御存じだったでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 神谷崇君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、ツブガイの被害につきましては、現在公表されている被害額には含まれておりません。北海道庁において精査中と承知しております。
 現在、北海道庁におかれまして水中カメラによるツブガイを対象とした漁場調査を行っているところであり、調査結果の公表については北海道庁の分析の後に公表されるものと聞いております。ただし、現在まだ冬場でございますので、冬季の荒天の影響により予定どおりの調査は進んでいない、若干遅延しているというふうに聞いております。

○紙智子君 日高のツブは生で食べることができるんですね。非常においしいです。ただ、培養殖が非常に難しくて、成長するのに七年から十年掛かると言われているんですね。
 現在、道庁の被害額には入っていませんので、支援策もまだはっきりしていないと聞いているんですけれども、国がやっぱり現場に入って、道庁と相談しながら支援策を示すべきではないんでしょうか。これ、大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) ツブガイの被害につきましては、多くの漁業者が漁業共済及び漁業収入安定対策事業に加入していることから、これらによる支援が可能と考えております。
 現在、北海道庁がツブガイ、ツブ類等を対象とした沖合漁場の実態調査を行っています。今後の対応につきましては、こうした調査の結果を踏まえまして、現場の状況を丁寧に把握した上で、北海道庁とも連携しながら検討してまいりたいと思います。

○紙智子君 水産加工業の関係者も被害が出ていて、太平洋岸の市町村にとっては、これ町の根幹を揺るがすような被害でもあるということなんです。なので、継続的に支援を求めておきたいと思います。
 続きまして、生乳についてお聞きします。
 昨年の末に続いて、年度末を迎えた生乳廃棄の危機が再び起きているんですね。年末五千トンの生乳が破棄される危機に直面したんですけれども、今年もこの年度末の三月から五月連休にかけて危機に直面する生乳、これどのぐらいの量、何トンぐらいになるのかということ、把握しているでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 森健君) お答えいたします。
 本年は非常に生乳生産が好調に推移をしているということから、御指摘のとおり、今年年度末から五月頃にかけまして例年以上に需給が緩和する可能性があります。何も取組を行わなければ生乳が廃棄される事態も懸念されている状況にあるということでございます。
 この廃棄が懸念される数量につきましては、業界団体の方からは、年末年始よりも期間が長く、さらに、その気候、天候などにより日々変動する飲用牛乳の需要の動向など、前提条件の置き方次第では結果が変わるということから、試算は行っていないというふうに伺っております。

○紙智子君 試算は行っていないということなんですけど、Jミルクのホームページ見ますと、生乳生産量は前年同期と比べても増えており、三月から五月の合計でいうと二・五%増が見込まれるとなっているんですね。一日当たりにすると四百から六百トン、牛乳一リットルで六十万本ということなんですね。一方、需要は、三―五月というのは前年と比較しても一%マイナスになるというふうに書いているわけです。
 それから、釧路新聞では、今回廃棄となったら一万トン以上になる可能性があると、年末年始より、五千トンよりも厳しいというふうに書いているんですけど、こういう認識は政府としてはあるでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 森健君) お答えいたします。
 先ほど御答弁申し上げましたとおり、この年末年始よりも期間が長く、さらに、この時期、非常に気温、天候も変わりやすいということで、非常に飲用牛乳の需要自身が変動しやすい季節ということでございます。こういった点から、業界団体におきましては、この前提条件の置き方次第で結果が変わるということで試算はしていないということで、私どもとしても具体的な数量については把握をしていない状況でございます。
 ただ、業界を含めまして、この状況を踏まえて年末年始以上に気を引き締めて、乳業工場の処理能力の向上、一時的な出荷の抑制、消費拡大などに取り組むと承知しております。
 農水省といたしましても、こうした業界団体の取組を後押しすべく、消費拡大等に向けた様々な情報発信等をしていく考えでございます。

○紙智子君 今、年末年始以上の危機感を持ってという話がありました。是非、そういうことで対策、緊張感を持って進めていただきたいと思います。
 それで、どう対応するかということでいいますと、前回もちょっと触れたんですけれども、輸入をやっぱり国産に置き換える対策を強化してほしいと思うんです。例えば、缶コーヒーや粉ミルク、それからアイスクリームの原料などに輸入の粉乳調製品が使われているんですよね。結構使われているんですね。二一年は若干減ったようなんですけれども、それでも自由化で増えているんだと思うんです。
 輸入から国産への置き換え対策、これ必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 森健君) 粉乳調製品につきましては、なかなか貿易統計上の厳密な定義はありませんが、一般に粉乳調製品、脱脂粉乳に砂糖ですとか植物油脂等を加えたものでございますが、この粉乳調製品と呼ばれる商品を含む主要なラインの輸入量を見ますと、近年減少傾向で推移をしているところでございます。
 このコロナ、新型コロナの影響によります生乳の需給緩和への対応といたしましては、令和二年以降、この脱脂粉乳を飼料用あるいは食品用等の需要がある分野で活用する取組を支援をしてきているところでございます。
 また、来年度、令和四年度につきましては、この業界の自主的な取組として、全国の生産者と乳業メーカーが協調して在庫低減の取組を実施することとしており、この中で、国が支援を行います飼料用への転用のほか、食品等の分野での利用促進、この中には輸入調製品を利用している食品企業等への販売促進というのも含まれるわけでございますが、こうしたものに取り組む方針と承知しております。

○紙智子君 大臣、今ちょっといろいろやり取りしたのでお聞きになっていたと思うんですけど、TPP11でこれ脱脂粉乳とバターのTPP枠というのができたわけですよね。例えば、脱脂粉乳の輸入でいうと、二〇一六年度は六千十六トン、これが二〇一九年度には二倍の一万二千三百八十五トンに増えています。バターでいうと、一万二千八百六十トンから二万四千五十七トンですから、これも二倍化になってきているんですよね。日EU・EPAでもEU枠ができて、これ輸入は全体として増えてきているわけですよ。
 だから、国内では生乳生産を増やして、まあ増えつつあるということなんだけど、輸入も増やしていると。需要が増えればいいんですけれども、需要の方は減っていると。そうすると、被害を受けるのは結局は酪農家とか生産者のところになるんじゃないかと思うんですね。
 これ、大臣、どのように思われますか。

○政府参考人(農林水産省畜産局長 森健君) 例えば、先ほどの粉乳調製品につきましては、その乳成分の含有率の高いものと低いものに大別をされておりまして、高いものにつきましては一定数量まで低関税で輸入できる関税割当てを措置した上で、この数量を超えるものは高関税を課しているという状況でございます。また、乳成分が低いものについては、砂糖や植物油脂などが多く含まれているということで、非常に用途が、乳飲料、アイスクリームなどに用途が限られているということで、国産脱脂粉乳はむしろヨーグルト等に使用されるといった傾向がございます。
 ある意味、すみ分けが行われているということで、必ずしも国産の脱脂粉乳の需要が輸入品によって奪われているという状況とは認識しておりません。

○紙智子君 今大臣にお聞きしていて、大臣の答弁をお聞きしたいんですけれども。
 結局、こうやって影響を受けて、生産者のところにそのしわ寄せが行って、もう既に生産者自身も出しているわけですよ、その出口対策でね。そういう負担が結局はそこに行ってしまうんじゃないかということなんですけど、大臣もお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) TPP対策については、一応、国内対策もやっておりますし、それから、こういった状況にあるということを、私も今御指摘でよく分かりましたので、どういう対策があるのかどうか、これから省内でよく検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 よく検討していただきたいということなんですけれども、やっぱり輸入と置き換えも含めて、年末年始以上のやっぱり危機感を持って対応してくださいますように、そのことを改めてお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。