<第208回国会 予算委員会 2022年3月4日>


◇農業の生産基盤の弱体化について/家族農業への支援・戸別所得補償制度の復活について/ロシアによるウクライナのザポリージャ原発への攻撃について/コロナ禍での生活困窮者への食料支援について/水田活用直接支払交付金の見直しについて

○令和四年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○令和四年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○令和四年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず冒頭、ロシアのウクライナ、ザポリージャ原発への攻撃に厳重に抗議をいたします。そして、即時攻撃を中止するように求めたいということを申し上げておきます。
 最初、一問目は官房長官にする予定だったんですけれども、今ちょっとまだ会見から戻られていないようですので、ちょっと順番を変えさせていただきたいと思います。
 最初に、農林水産省から伺いたいと思います。
 世界的に食料が高騰している中で、輸入に依存する日本の農業、食料の在り方も問われていると思います。食料自給率四五%を目標に掲げながら、直近では史上最低の三七%まで落ち込みました。生産基盤の弱体化も進んでいます。
 そこで、お聞きしますけれども、農林業センサスで、農業経営体、また基幹的従事者、常雇い経営体、常雇い人数が公表されていますけれども、最初にこの二〇〇五年から五年刻みで二〇二〇年までの説明をしていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省大臣官房統計部長 菅家秀人君) お答え申し上げます。
 農林業センサスの結果によりますと、農業経営体数でございますが、二〇〇五年が二百万九千経営体、二〇一〇年が百六十七万九千経営体、二〇一五年が百三十七万七千経営体、二〇二〇年が百七万六千経営体となっております。
 続きまして、基幹的農業従事者数でございますが、二〇〇五年が二百二十四万一千人、二〇一〇年が二百五万一千人、二〇一五年が百七十五万四千人、二〇二〇年が百三十六万三千人となっております。
 続きまして、常雇いの方を雇用した農業経営体数、それからそこで雇用された人数でございます。二〇〇五年が二万八千経営体で十二万九千人、二〇一〇年が四万一千経営体で十五万四千人、二〇一五年が五万四千経営体で二十二万人、二〇二〇年が三万七千経営体で十五万七千人となっているところでございます。

○紙智子君 今ちょっと数字を読み上げていただいたんですけれども、これをグラフにしたものを二枚目に付けてあります。

配布資料A農業の雇用型経営と農業経営の推移

それで、二〇〇五年を一〇〇とした場合に、この青色の線というのは農業経営体、それからオレンジの線は基幹的従事者なんですけれども、ずっとこれ下がり続けています。
 それで、注目するのが雇用経営、雇用型の経営の動向です。緑と赤ですね。棒線見てください。緑の線、これ常雇い経営体は二〇一五年まで増えているわけですよね。政府は常雇いの増加を期待したと思うんですね。ところが、二〇一五年から五年間で、五・四万経営体、一九一%をピークにして、三・六万経営体、一二八%に減少しています。それから、赤の線、常雇い人数も、二〇一五年二十二万人、一七〇%から、二〇二〇年十五・六万人、一二一%まで減っているんですよね。
 農水大臣、これはなぜなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) お答えいたします。
 二〇一五年と二〇二〇年を比べると、常雇いを雇い入れた経営体系は五万四千経営体から三万七千経営体に、常雇いの数は二十二万人から十五万七千人に減少しています。
 これを個人の経営体と法人などの経営体に分けてみますと、定義の変更等があり単純には比較できませんが、常雇いを雇い入れた個人の経営体系は、経営体数は四万経営体から二万二千経営体に減少しているのに対しまして、常雇いを雇い入れた法人などの経営体系は、体数は一万四千経営体から一万五千経営体となっています。また、個人の経営体に雇われた常雇いの数は十万人から四万八千に減少しているのに対しまして、法人などの経営体に雇われた常雇いの数は十二万一千人から十万九千人となっています。
 したがいまして、常雇いを雇い入れた経営体数や常雇い数の減少につきましては、個人の経営体における減少が大きく寄与しており、これは、個人の経営体において従事する基礎的な農業従事者の高齢化や経営体数自体の減少に加えまして、機械の導入等による省力化技術の進展等多様な要因があると考えております。

○紙智子君 ちょっと分かりづらいなと思いながら聞いていたんですけど、要するに、このグラフで見ると経営体ということで、これが伸びていて、期待したんだけれども下がったわけですよね。下がった要因の中には、高齢化で減少してきているということも要因に入っていて、そこに雇われていた人たちが農業に従事しなくなったということだと思うんですよ。つまり、新たな担い手がやっぱり生まれて育っていっていないという状況があると。
 私は、安倍、菅政権の攻めの農政、TPPなどの自由化でやっぱり競争力を強化しようということで、認定農業者に施策を集中してきたと、それによって多くの中小家族農業を離農に追いやってきたんじゃないかと、攻めの農政といって進めてきた新自由主義農政の弊害じゃないかと思うんですよ。
 岸田総理は、新自由主義からの転換あるいは新しい資本主義というふうに言うわけですけれども、そうであれば、この認定農家優先の選別政策というのはやめて、やっぱり国連がずっと継承している、提唱している家族農業への支援、戸別所得補償制度の復活をするべきではないかと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 二〇〇五年から二〇一五年までの間の常雇いを雇い入れた経営体数や常雇い数の増加の原因としては、要因といたしましては、一概に言えませんが、一経営当たりの規模拡大、法人経営体数の増加などが考えられるところであります。
 二〇一五年以降に減少に転じた理由としては、これらによる常雇いの数等の増加よりも基礎的な、基幹的な農業従事者の高齢化や経営体数自体の減少、機械の導入等による省力技術の、省力化技術の進展等に伴う常雇いの数の減少が大きかったのではないかと考えられます。

○紙智子君 大規模化すれば所得上がるよというふうにずっと言われてきたと思うんですけれども、必ずしもそうじゃないと。実際、規模拡大してきますと投資もしなきゃいけないとか、あるいは、経費が掛かるわけですから規模拡大がそのまま所得が向上することにならない、単純じゃないと思うんですね。農業関係者の間では、やっぱり適正規模というのあるよねということになっていて、それが常識に今なっているわけです。
 それで、新自由主義政策のやっぱり集中していくという、担い手に集中していくというその政策の限界を、私はこの農林業センサスなんかが示しているというふうに思うんですよ。
 それで、次に、まだ戻ってきませんから次の質問になりますけれども、あっ、戻られましたね、じゃ、官房長官に。
 それで、最初に、冒頭でロシアの、ウクライナのザポリージャ原発への攻撃の問題について抗議すると同時に、政府としてこの事態をどういうふうに把握しているのかということを官房長官にまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(内閣官房長官 松野博一君) お答えをいたします。
 本日、ウクライナへの侵略を拡大し続けるロシアが同国最大のザポリージャ原子力発電所を攻撃しました。このようなロシアの蛮行は認められず、最も強い言葉で非難をいたします。仮に原発事故が生じれば、ロシアを含む周辺国の広範な地域に深刻な影響を及ぼすことに警鐘を鳴らしたいと思います。
 ロシアに対して、消防の立入りを含め、ウクライナが原子力施設の安全な操業を確保できるよう、また、ウクライナ国内の原子力発電施設に対する攻撃を含め、全ての戦闘行為を即座に停止するよう強く要求します。
 政府として、ウクライナの在留邦人に対し遅滞なく注意喚起を行っています。現時点で邦人の生命、身体に影響が生じているとの情報には接していません。
 また、IAEAの発表によると、次のとおりです。
 IAEAは、同原発への攻撃についての報告を承知しており、状況についてウクライナ規制当局とコンタクトを取っている。ウクライナ当局はIAEAに対し、原発サイトにおいて放射線量の変化は確認されていない旨、また、原発での火災は主要な機器に影響を与えておらず、原発の人員が緩和措置を講じている旨述べました。IAEAは、今回の原発における深刻な事態を受けて、IAEAの事故緊急事態対応センターを二十四時間三百六十五日の対応体制に移行させた、であります。
 引き続き、高い関心を持って情報収集と分析に努めつつ、邦人保護に万全を期していく考えであります。

○紙智子君 本当に私も怒りでいっぱいなんですけれども、全世界が注目して見守っているわけでありまして、是非情報、逐一国民に対しても知らせていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それで、続いてなんですけれども、新型コロナ禍が続いて三年目になりました。それで、世界的に穀物、食料品などの価格が高騰しています。加えて、そのさなかにこの度のロシアのウクライナ侵攻によってエネルギーや食料が不安定な状態だと。で、ミートショックと言われるけれども、食肉も、それから小麦や冷凍食品などの値上げが進んでいます。
 一方で、派遣労働者やパートなどの非正規で働く方々の仕事と収入が大幅に減って、食べることに事欠く事態があります。しんぐるまざあず・ふぉーらむの食料支援アンケートによると、食事の回数を減らしてしのいでいるというのが四〇%ということで一番多いんですね。米を雑炊にして量をふやかして食べる、あるいは水を飲んで紛らわすなど、厳しい実情が報告されています。
 一人親家庭や生活困窮者がこの食事に事欠く状況について、官房長官、どのように思われるでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 松野博一君) お答えをいたします。
 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、一人親家庭や生活困窮家庭は特に厳しい状況にあるものと認識をしています。
 こうした方々に対する食事に関する支援として、政府においては、子供食堂等を運営する民間団体に対する支援、生活困窮者支援の窓口とフードバンク等が連携した食料提供への支援、食育の観点から行う子供食堂などに対する政府備蓄米の無償交付などを行っています。
 これらに加えて、緊急小口資金等の特例貸付けや住居確保給付金などの重層的なセーフティーネットにより、生活にお困りの方の支援を行っているところであります。

○紙智子君 ちょっと、もっとどう思うのかというところを言ってほしかったんですけどね。
 それで、この次は、実際食料支援がどういう取組をしているのかというのをこれから厚生労働省と農水省に聞こうとしていたんで、それぞれからお願いします。

○政府参考人(厚生労働省社会・援護局長 山本麻里君) お答えいたします。
 生活にお困りの方を支えていく上で、食料支援は重要だと考えております。
 厚生労働省における食料支援の取組としては、生活困窮者支援の窓口がフードバンク等と連携し、食料の提供と併せて相談支援を行う場合における食料の保管や送付に関わる経費、それから、食料支援を始め生活困窮者への支援を行う民間団体の活動、子供食堂等が行う食事の提供等に係る経費、これらに対する補助を行っているところでございます。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小川良介君) お答え申し上げます。
 農林水産省としましては、まず、食育の観点から行う子供食堂等に対する政府備蓄米の無償交付、また、生活困窮者への食品の提供を行っているフードバンクの食品の輸送、保管費への支援、さらに、新型コロナの影響を受けた国産農林水産物を食育活動を行う子供食堂等へ提供する際の食材の調達費、送料等への支援、このほか、コロナ影響緩和特別対策により子供食堂等へ米穀を提供する際の支援といった取組を行っているところでございます。

○紙智子君 食料を直接支援する仕組みなんでしょうか。これ、厚労大臣と農水大臣に聞きます。

○国務大臣(厚生労働大臣 後藤茂之君) 厚生労働省における食料支援につきましては先ほど政府参考人から答弁したとおりでございますけれども、今先生からお尋ねの、直接国が食料支援を行う仕組みであるかというお尋ねに対しましては、食料支援を行う団体への支援や生活困窮者支援の相談窓口などに対して補助を行う支援となっておりまして、御指摘の国が食料支援を直接行う仕組みとはなっておりません。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) お答えいたします。
 農林水産省といたしましては、食育の観点から行う子供食堂等に対する政府備蓄米の無償交付、福祉施設等に食品を提供するフードバンクへの支援などにより、対象者の方々に食料が届くような取組を行ってきているところであります。
 これらの取組につきましては、民間の力も活用し、機動的に実施できるよう、引き続き、NPOなどの民間団体や厚生労働省などと、関係各方面と連携をしながら今後対応してまいりたいと思います。

○紙智子君 今お話があったように、この制度を一覧にしてみました。

配布資料@コロナ禍における「ひとり親家庭や生活困窮者、学生等への食料支援対策」

一枚目の資料に戻ってください。こういうふうになるわけですね。国が直接食料を配る対策というのはなくて、赤い字のところを見てほしいんですけれども、あるのは、農水省が備蓄米を子供食堂などに無償提供する支援ぐらいで、あくまで食育という範囲なんですね。だから、僅か九十一トンなんですよ。
 厚生労働省は、生活困窮者の自立支援について自治体に調査をしていますよね。八割以上の自治体が緊急時の食料供給を求めているんですよ。国がやっぱり農産物などを買い取って直接食料支援すべきじゃないかと思いますけど、両大臣、いかがですか。

○国務大臣(厚生労働大臣 後藤茂之君) 生活にお困りの方に寄り添い支えていくためには、国、自治体、民間団体等が連携し取り組んでいくことは重要だというふうに思っております。
 御指摘の食料支援については、既にフードバンク等の民間団体が創意工夫しながら、言うならば高い意識の下に参加をしていただいております。生活にお困りの方々の状況に応じて、創意工夫しながらきめ細やかな支援に取り組まれていると承知しております。
 このため、政府としては、食料支援に関する民間団体の取組を後押しするとともに、一方で、緊急小口資金等の特例貸付けや住居確保給付金の支給などの支援策を講じることで、官と民が連携した重層的なセーフティーネットにより生活にお困りの方々を社会として支えていくと、そういう支援をしてまいりたいと思っております。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) お答えいたします。
 政府備蓄米は、委員も御承知のとおり、本来供給の不足に備えるためのものでありまして、その無償交付につきましては試験研究又は教育の用に供する場合にだけ実施が可能でありまして、そのため昨年度より子供食堂や子供宅食に対しまして行っているものであります。
 なお、先ほどもお話がありましたように、なお、十五万トンの特別枠において、全農等の集荷団体と卸売事業者が子供食堂等の生活弱者に対しまして米を提供する際の経費の全額を支援することとしています。本事業による子供への米の提供を通じて、生活困窮家庭への支援にも資するものと考えております。

○紙智子君 それで、全然足りないなと思うんですよ。
 アメリカは昨年、余剰になった農畜産物を買い上げて、生活困窮者に食料支援、SNAPというのをやっています。コロナ禍で食料配布などの支援策を強化しています。報道だと、フランスでも、これまでは民間が先行して学生に対する食料支援をやっていて、そこに政府も乗り出して学生食堂で昼と夕食を提供すると。でも、日本では食料を直接支援する制度ないわけですよね。で、ボランティアでやっている人たちに聞くと、どこも寄附とカンパを集めて、市民や企業などの善意で支えられてきたんですよ。でも、もう三年目なんですね、三年目なんですよ。いつまで続けられるか分からないと。
 官房長官、これ、共助任せでなくて、やっぱり公助というのが不十分だと思いませんか。コロナ禍で限定的、緊急的でも、政府が農産物などを買い上げて、命を支えるために、命支えるための直接の支援が必要じゃないんでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 松野博一君) お答えをいたします。
 先ほど厚生労働大臣からも御答弁させていただきましたけれども、生活にお困りの方に寄り添い支えていくためには、国、自治体、民間団体等が連携をして取り組んでいくことが重要と考えています。
 生活にお困りの方については、それぞれの状況に応じて食料や住まいなどの様々な支援が必要と考えています。このため、政府としては、食料支援に関する民間団体の取組を後押しするほか、緊急小口資金等の特例貸付けや住居確保給付金の支給等の支援策を講じることで、官と民が連携した重層的なセーフティーネットにより支援を行っています。
 令和三年度補正予算においては、例えば子供食堂等の活動への助成、緊急小口資金等の特例貸付けなどの予算を確保しているところであり、まずは現行の取組を着実に進めながら、引き続き必要な支援に取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 三年目に入ったわけで、やっぱり命支えるための、限定的でもいいからやるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 委員長、官房長官はここで退席してもらって結構です。

○委員長(山本順三君) 松野官房長官、退席されて結構でございます。

○紙智子君 次に、転作助成、いわゆる水田活用直接支払交付金についてお聞きします。
 これ、歴史的に転作助成金を導入した理由と、果たしてきた役割と成果を農水大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) お答えいたします。
 食糧管理制度の下で主食用米の生産量が需要量を恒常的に上回ってきたことから、昭和四十六年から米の生産調整を本格的に開始しまして、主食用米の生産調整面積を配分し、その達成者に対しまして転換作物への助成を開始しました。その後、平成三十年産におきまして行政による配分等を廃止いたしまして、現在は転換作物への水田活用の直接支払交付金の交付によりまして、主食用米、転換作物のいずれについても需要に応じた生産を推進しておりまして、水田において主食用米と転換作物を需要に応じてバランスよく生産することに寄与しているところであります。
 例えば令和三年産におきましても、主食用米の需要が大幅に減少した中、この交付金の活用によりまして主食用米から転換作物への作付け転換が進み、需給の安定のために必要なものとして国が定めた見通しをほぼ達成する、過去最大規模の六万三千ヘクタールの作付け転換を実現したところであります。

○紙智子君 転作が始まって五十年間たっているわけですけれども、初めは米生産に集中させて混乱もあったわけですけど、地域の生産基盤を強化をして、地域経済にとってもなくてはならない役割を果たしてきたんだと思うんです。

配布資料B水田活用の直接支払交付金の主な見直し内容と2020年度の支払件数・金額

 この助成金が突然今見直されようとしていて、資料の三枚目の上の方を見てください、青色のところ。今後五年間水張りをしなければ交付金の対象から除外する。その下のところは、牧草地については五年先ではなくて今年の四月からです、単価を三分の一にすると。これ、生産者にとっても地域にとっても衝撃的な内容なんですね。
 生産者に冷や水を浴びせるものじゃないですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 水田活用の直接支払金につきましては、平成二十九年度に交付の根拠となる実施要綱を改正いたしまして、あぜなど水をためる設備を有しない農地や用水路を有しない農地など、水稲の作付けが困難な農地は交付金の対象外であることを明確にしました。
 今回の見直しは、この現行のルールを再徹底した上で、畑作物の生産が定着している農地は畑地化を促す一方、水田機能を有しつつ、麦、大豆等の転換作物を生産する農地につきましては、水稲と転換作物とのブロックローテーションを促す観点から、現場の課題も検証しつつ、今後五年間に一度も水張りが、すなわち水稲の作付けが行われない農地は交付の対象としない方針としたところであります。
 また、牧草につきましては、収穫のみを行う年は生産に要するコストが低いため、令和四年度から、国が定める戦略作物助成の単価を十アール当たり現在の三万五千円から一万円とすることとしたところであります。
 今後とも、施策の実施状況を把握しつつ、必要な見直しを行いながら、需要のある作物の生産に取り組む生産者が前向きに農業を続けていけるように支援していく考えであります。

○紙智子君 既にあるルールを再徹底するんだという話なんだけど、水張り五年の話も、それから牧草でいえば今年四月から単価三分の一にするというのも、去年の十二月じゃないですか、言ったのは。現場は、突然こんなこと言われてもと言っていますよ。
 続けて聞きますけれども、水田活用交付金の支払件数、これ支払金額ですね、多い順から、上、上位十番まで都道府県を教えてください。これは参考人。

○政府参考人(農林水産省農産局長 平形雄策君) お答え申し上げます。
 令和二年度の水田活用の直接支払交付金の支払件数、支払金額上位十都道府県につきましては、まず支払件数ですが、順繰りに言います、北海道、熊本県、岩手県、宮崎県、山形県、兵庫県、秋田県、新潟県、栃木県、鹿児島県です。支払金額につきましては、北海道、栃木県、宮城県、熊本県、岩手県、茨城県、福岡県、青森県、秋田県、山形県となっております。

○紙智子君 それで、金額も含めてその一覧表に書いてありますよ、今のやつ。全国はちょっと多過ぎるので、上位十番だけ書いているんですけど。
 これ、その中で、今お話あったように、全国なんですね、だから、東北も多いけれども。その中で北海道は飛び抜けて多いんですよ。支払件数で一万八千二百二十五件、金額で五百三十五億八千万円。

配布資料C交付対象水田を有する地域農業再生協議会一覧

助成金なしに生産を維持するというのはできない状況になっていて、その四枚目のところで、もう一枚めくっていただいて、四枚目、黄色の地図があると思います、北海道地図ですね。これだけの黄色く塗った地域が対象になっているわけです。特に、牧草地の助成は今年の四月から削減と、十アール当たり三万五千円を一万円にすると。
 ある地域の話聞きますと、話合いによって、この地域、和牛の産地にしようと、そのためには水田活用交付金を使って牧草を作ろうということでやってきたわけです。今回の見直しで削減されたら、借りている土地の地代、土地改良区の賦課金が払えない、牛の餌を作って農畜連携でやってきたのに、今後一体どうしたらいいんだと困惑しているんですね。
 これ、一体どうするつもりですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 金子原二郎君) 水田活用の直接支払交付金につきましては、これまでも、生産者自らが経営判断による需要に応じた生産、販売を推進するため、毎年の作付け転換の実施状況を踏まえ、毎年度見直しを行ってきたところであります。
 こうした中で、品目ごとの支援水準を再検討し、牧草につきましては、収穫のみを行う年は播種、管理、収穫を行う年に比べて生産に要するコストが低いため、令和四年度から、国の定める戦略作物助成の単価を十アール当たり現在の三万五千円から一万円とすることとしたところであります。
 なお、都道府県や地域の判断で対象作物や単価を設定可能な産地交付金の仕組みもありまして、各産地においては、牧草を含めた産地形成に向け、この制度を効果的に活用していただきたいと考えております。

○紙智子君 それどこにも書いてないんですよね、産地交付金云々かんぬんというのは。白紙に戻せるのかということでもあるんですよ。
 それで、ちょっと時間がなくなりましたから、最後に鈴木財務大臣にお聞きしたいんです。
 これ、北海道だけじゃなくて、全国でこういう問題が起こっています。それで、鈴木大臣の地元の岩手なんかもそうなんですけど、今回の見直しは財政当局からの意見もあったと聞いています。大臣の地元の岩手でも、県議会で質問されて、突然の決定に驚いている、影響額もまだ出せないというふうに答えているんですね。農業法人の人は、今回の見直しで、二二年度だけでもう三百二十八万円減ると、五年後は六百万円減ると、経営計画が立てられないというように言っているわけですよ、法人の人が。
 こうやって全国各地で生産者や団体、地域を切り捨てるような見直しというのは、これ一旦立ち止まって撤回して再考するべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(財務大臣 鈴木俊一君) お米の生産につきましては、人口の高齢化ということがあると思いますが、主食用米の需要が年々歳々低下をしているという中で、収益性の高い品目などへの転換を図っていく必要があると思っております。そして、転作が定着した農地については、必要に応じて支援の見直しを図る必要があると考えております。
 五年間一度も水張りが行われない農地は交付の対象外とか、多年生牧草に対する補助の減額ということにつきましては金子農水大臣からお話があったので繰り返しませんけれども、今後とも、農林水産省から現場に対し、今般の見直しの趣旨や内容をよく説明していただくとともに、何といっても、現場で生じている課題、これをよく検証するということが大切でありますので、財務省といたしましても、農林水産省と連携しながら、こうした現場における課題についてよく検証してまいりたいと思います。

○委員長(山本順三君) 時間が来ております。

○紙智子君 水田活用の趣旨に合わないというんだったら、その枠を払ってもっと全面的に検討すべきだと思いますよ。我が党は、水田、畑地にかかわらず、農地が維持されて、多面的機能が発揮されて、生産の発展と食料自給率の向上が達成できるように、これ全体、国の農業予算も含めて見直すべきだというふうに思います。

○委員長(山本順三君) 紙さん、時間が来ておりますので、おまとめください。

○紙智子君 こんな生産者に冷たい農政ではなくて、人と環境に優しい農政に転換するように強く求めて、質問を終わります。