<第204回国会 農林水産委員会 2021年6月10日>


◇日本への輸入木材の減少と国産材への切り替えについて/ウッドショックと法案の関係について/木材利用の範囲の拡大について/木造建築物を施工する職人、設計者の人材育成について/樹木の伐採後の再造林と山元の利益の確保について

○公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 木材利用の促進改正法案についてお聞きします。
 法案は、公共建築物から民間建築物へと木材の利用を促進するものです。我が党は国産材の需要拡大は賛成です。第三条の基本理念で、木材の利用の促進は、造林、保育、伐採、木材利用伐採後の造林という循環が持続的に行われるように事業者は尊重するんだということになっていますよね。
 今、現場で起きている問題として、アメリカや中国での木材需要の増加とコンテナ不足による輸送費の値上がりなどで主要な木材がアメリカや中国に流れて、カナダや欧州から日本に輸入木材が減少しています。ハウスメーカーなど、価格の高騰などで外国産材が手に入らないと、住宅の建築現場が停滞をしているということがあります。
 今回の事態を受けて、輸入木材から国産に切り替えるという動きも出てきています。原木の取り扱っている業者の方で言われていたんですけれども、輸入木材から国産に切り替える、業者が国産に変えてきている中で、国産材を売ってほしいと、木を出せというふうに言われるんだけれども、いつも日頃の取引先のそういう扱いが、提供なんかがあるし、信頼を失っても困るので、出せ出せと言われてもそう簡単ではないんだと、そんなに、量も限られているんだということも言われています。
 今まで輸入木材に頼ってきたハウスメーカーなどが今は国産材にかじを切っているけれども、輸入木材の価格が元に戻ったらまた依存するというふうになるんじゃないのかと。そうなったら国産材の需要が減退するし、そのことを危惧されるわけで、過去にもそういう繰り返しがあるわけなので、是非、これはやっぱり持続的な国産材の安定供給ができないし、そういうことでいいのかというところがちょっと一つ大臣にお聞きしておきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今般の輸入木材の不足に対しまして、御指摘のとおり、需要側から国産材の更なる供給量の増加を求める声がある一方で、国産材の供給側からは、今後の安定的な需要が確保されないと増産のための設備投資や労働力確保が難しいとの声も聞かれております。
 このため、現在、地域ごとに、川上から川下までの関係者による意見交換会、きめ細かく実施をしておりまして、やはり共通認識の醸成を図った上で、関係者間で一定の信頼関係の下にこの輸入材からの転換も含めた国産材の需要を定着させていくこと、そして更なる国産材の安定供給体制を構築することが重要であると考えております。

○紙智子君 新型コロナを経験して、改めて輸入木材依存から国産材の利用に切り替えて定着させていく必要があるんじゃないかと。そういう政策的な転換という点では、ポイントというか、必要だと思うんですけど、どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今回の事態を受けまして、今申し上げましたとおり、関係者で一定の信頼関係の下に輸入材からの転換も含めた国産材の需要を定着をさせまして、川上、川中、川下の相互利益の拡大を図りつつ、更なる国産材の安定供給体制を構築することが重要と考えております。
 具体的には、川上では路網整備等による森林施業の効率化、川中では製材工場等の生産性向上、川下では輸入材を国産材で代替するための技術開発や普及等を推進をして、川上から川下までの関係者をつなぐサプライチェーンの構築を進めつつ、やはり国産材が適正に評価をされて安定的に供給をされる、そういう取組を進めていくことが重要であると考えております。

○紙智子君 では、立法提案者にお聞きします。
 今回のウッドショックに対して国産材の置き換えを進め定着させる上で、この法案が役立つものになるのか、どんな役割を果たすのかということについてお答えください。

○衆議院議員(鈴木憲和君) 御質問ありがとうございます。
 外材の価格が高騰している現下の状況におきましては、やはり国産材の安定供給を確保し、国内の木材需要にしっかりと応えていくということは私も必要不可欠であるというふうに認識をしています。
 その中において、本法案でありますが、建築用木材の供給に関しましては、建築用木材等の適切かつ安定的な供給に関する国の責務、そして林業、木材産業の事業者の努力を定めまして、基本方針等においても、建築用木材の適切かつ安定的な供給の確保に関する基本的事項を定めることとしております。そして、具体的な施策といたしまして、強度又は耐火性に優れた建築用木材の製造技術及び製造コスト低廉化技術の開発、普及の促進等を行うといった内容を盛り込んでおります。
 また、本法案は、国、地方公共団体と事業者等による建築物における木材利用促進のための協定制度を創設をしまして、そこに対して支援をするということになっております。この協定制度を活用いたしまして、建築主となる事業者だけではなく、供給側である林業、木材産業の事業者も当事者となる三者協定を締結することもできます。これによって安定的な国産材の供給を確保していくということも可能となるというふうに考えております。

○紙智子君 もう一点、立法提案者にお聞きします。
 木材の利用の範囲がどこまで拡大されるのかということなんですけど、木材の利用に当たってやっぱり国民の暮らしやなりわいに密着したものになること、望ましいと思います。例えば、空き家対策で地方創生などで進められているような農泊とか古民家農泊とか、それから、都会から農業や林業を行うために地方に移住した人がこの空き家を借りて居住するというケースもあるんですけど、その場合の住宅のリフォームとか、そういう取組も含めて幅広く活用できるものになるんでしょうか。

○衆議院議員(鈴木憲和君) 御質問ありがとうございます。
 まず、現行法におきまして、木材の利用の定義には、建築物の主要構造部のほかに、天井、床、また壁などの内装部分に木材を使用することも元々広く含まれているものであります。
 本法案は、木材の利用のこのような幅広い定義を維持した上で、対象となる建築物を公共建築物から建築物一般に拡大しようとするものであります。したがいまして、本法案で念頭に置いている建築物における木材利用の在り方は幅広く、木造建築物を建築する場合はもちろん、鉄骨などほかの資材と木材を併用する場合や、また御指摘のように、既存の建築物のリフォームにより内装、外壁等に木材を利用する場合も当然に含んでおりまして、まさしく建築物における木材利用に関し幅広く活用できる法案となっております。
 また、先ほど申し上げました協定制度も、うまく今先生御指摘のようなことも盛り込んでいただいて、工夫する余地もあるというふうに考えております。

○紙智子君 地域にもやっぱり広く還元できるようにすることが大事だと思います。
 建築物の木造化を促進するために、木造建築の設計者、施工者の育成が求められていると思うんです。施工者である大工さんなんかも国勢調査を見るとすごく減っているわけですよね。一九九五年で七十六万人いたのが、二〇一五年、三十五万人まで減っていると。
 職人さんをどう確保するかというのも大きな課題ですけど、これ国土交通省なので、木造建築物のやっぱり良さ、木のぬくもりとか香りとかですね、そういう木材特有の良さがあって、今後、そういう木造建築に関わる設計者をどんなふうに育成し、増やしていくんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 本郷浩二君) お答えを申し上げます。
 木造建築物について、お施主さんに提案して、こういう建築物を設計できる技術者等の確保、育成が大変重要であると考えており、農林水産省では、木造建築物に携わる設計者等に対する建築用木材に関する研修の実施、企画から設計段階に至る課題を解決するための指導、助言を行う専門家の派遣などの取組を支援しているところでございます。
 引き続き、これらの取組により、木造建築物に携わる設計者等の育成を進めてまいります。

○紙智子君 最後、第六条で、森林及び木材産業の事業者は、建築用木材など、安定的な供給に努めるということで、この木材供給するに当たっては伐採後の再造林を確実に行うことが重要だということで、木材価格を下げることなく山元に利益をどう確保するかってすごく大事なんですよね。
 この点、最後にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(林野庁長官 本郷浩二君) お答えを申し上げます。
 木材の利用に当たっては、できるだけ高い価値での木材利用を促進することで山元により多くの利益が還元され、それが再造林を進める上での原資となることから、燃料材と比べて高値で取引される建築用木材の利用を促進するとともに、素材生産や原木流通コストの縮減を図り、安定供給体制を整備する中で、川上から川中、川下までの相互利益を拡大するなどの取組を推進していくことが重要であると考えております。
 引き続き、山元の利益を確保し、再造林の促進や持続的な林業の推進につながるよう、木材利用の促進に取り組んでまいりたいと考えております。

○委員長(上月良祐君) おまとめください。

○紙智子君 時間になりました。終わります。
 ありがとうございました。

○委員長(上月良祐君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部さんから発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代さん。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  木材の利用を促進することが森林の有する多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献すること等に鑑み、建築物における木材の利用の促進及び建築用木材の適切かつ安定的な供給の確保に関する措置を講ずること等により、林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、もって森林の適正な整備及び木材の自給率の向上に寄与するとともに、脱炭素社会の実現に資することは極めて重要である。
  よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 木材の利用の促進による森林資源の循環利用の確立に向けて、確実な再造林をはじめ、森林の適正な整備が図られるよう、森林整備事業に係る予算の確保及び支援措置を拡充すること。また、木材の利用の促進・確保を通じた山元への一層の利益還元を推進するとともに、内外における木材の需給状況を踏まえ、建築用木材の安定的な供給体制の構築に努めること。
 二 木材の適切な供給及び林業の持続的かつ健全な発展を図るためには、人材の育成・確保が喫緊の課題となっていることに鑑み、林業就業者の所得の向上、労働安全対策をはじめとする就業条件改善に向けた対策の更なる強化を図ること。
 三 持続可能な社会の実現に向けて、木材の利用の拡大による炭素貯蔵、二酸化炭素の排出削減効果の最大化により二千五十年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、循環型社会の形成、自然との共生等を統合的に推進するため、本法の措置に加え、建築物等における木材の利用の促進のみならず、公共土木分野での木材の利用の促進、熱利用など高効率な木質バイオマスエネルギーの活用を推進すること。その際、森林の有する多面的機能が十分に発揮されるよう、森林の適正な整備を図るとともに、森林の適正な保全に支障を及ぼすような伐採及び開発行為を防止すること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(上月良祐君) ただいま田名部さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 全会一致と認めます。よって、田名部さん提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。