<第204回国会 農林水産委員会 2021年6月8日>


◇4月に発生した農作物の凍霜害の被害状況について/被害後の生産者への技術的支援について/被害を受け減収を余儀なくされた農家の営農継続に向けた支援の検討について/養鶏・鶏卵行政に関する検証会の報告書について/OIEの第2次案に対する西川元大臣の果たした役割について/検証委員会は内閣官房への調査をおこなったか/養鶏疑惑の集中審議を求めた

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 養鶏疑惑の前に、一点、霜の被害、凍霜害についてまずお聞きします。
 今年は果樹の開花が早かったために、四月十日から二十七日までの数日間の急速な冷え込みで、花の雌しべが枯れる凍霜害が発生しました。
 福島県の桃の産地である桑折町の桃農家の方から話を聞きました。阿武隈川沿いの低くなだらかな土地というのは、冷気が停滞しやすくて、六割以上の桃が凍霜害で駄目になったと聞きました。これだけ広範囲で大きな被害は五十年前に経験して以来だと。福島のピーマン農家の方も、霜の被害で、対策をしたんだけれども、それでも四割の被害が出たと。福島県の農作物への被害額は二十七億六千七百万円以上に上っているわけです。
 全国の被害状況がこれどうなっているのか、まずお聞きします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 全国で三月の気温が高温傾向で、高い傾向で推移したことによりまして、例年より開花や生育が早まったことも影響いたしました。四月十日から二十七日までに東北、関東、北陸地方などで発生した霜や低温によりまして、果樹につきましてはこれまで被害のあった十県から約三千三百六十ヘクタールの被害が発生したと、また、野菜については四県から約百四十ヘクタールの被害が発生したとの報告を受けているところでございます。
 なお、特に果樹の栽培におきましては、一般的に多くの実から一部の実を残してほかを取り除く摘果という作業が今後行われることになりますので、その中で具体的な被害が明らかになってくると考えられるため、引き続き状況を注視してまいりたいと考えております。

○紙智子君 それで、被害について言えば、北関東、東北、北陸というふうに非常に広範囲にわたっていると、非常に深刻な状況です。被害を受けた農家は、収穫するまでとても不安だと、残った花が結実した場合もきずものが多くなって出荷できないんじゃないかという声も聞かれます。
 農家は、品質の維持を図りながら、収量をいかに確保するか、被害を受けた樹体の管理なんかも難しい対応が求められます。今後、生産者に対する技術的な支援をどう進めていくのか、短く、ちょっと答えてください。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 農林水産省におきましては、自然災害の発生が懸念される場合に、農作物等の被害防止に向けました技術指導通知というのも出しております。凍霜害につきましては、今年の三月二日、そして四月二十日付けで、各地域の状況に応じて適切な対応が行われるよう、各都道府県に対しまして、果樹を含めました作物別の技術指導の徹底を呼びかけてまいりました。
 具体的には、つぼみや花に被害が生じた場合、低温や霜による被害が発生した場合でございますけど、これは、残された花を人工授粉していただくことによりまして実がなるようにしていただく、結実を確保するということでございます。それから、まだ小さな果実が、果実になったものが霜による被害を受けた場合でございますが、その後の摘果の作業におきまして、状況を十分観察した上でできるだけ良いものを見極めて残すようにするということを呼びかけておりまして、各県の普及指導センターなどによりまして地域の実情に応じた技術的対策が行われているものと承知しております。

○紙智子君 山形県の天童市の農家の方は、サクランボの佐藤錦で七割、それから紅秀峰の九割が凍霜害の被害に遭っています。リンゴは中心部の花や周りの花も駄目になったそうなんですね。例年、冷え込む日はあるので対策はしていたんだけれども、今回は長時間に及んで冷え込んでいたと、これだけ全体的に果実が駄目というのは今まで余りなかったんじゃないかと話しています。今回の被害で果樹の栽培をあきらめる人も出てきています。
 農水省は、被害を受けた農家に対して収入保険などで対応すると言っているんですけど、この収入保険の加入者というのは圧倒的に少ないんですよね。福島でいえば、大幅な減収が想定されるということで、補正予算で、被害を受けた農家の減収補填の意味合いも含めて、今後の収量の確保や品質の維持に向けて、追加で必要となる枝の剪定などに対して十アール当たり三万六千円の支援を行うと言っています。
 福島県の農家は、これ、震災と原発事故と、それから一昨年来の台風被害と、それから桃のせん孔細菌病というんですかね、それから梨の黒星病とか、こういう被害に見舞われていると。福島県知事は、補正予算を組むに当たって、農家の皆さんの心が折れることなく希望を持って営農を続けてもらえるようにということで検討してきたそうなんです。
 今回の被害は十県と、四県もプラスになっていますけれども、広範囲に及ぶことから、農水省として、減収を余儀なくされた農家が営農を続けていけるように特段の対策が必要だと思うんですが、これ検討すべきではないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今般の低温や霜による果樹などの被害に対しましては、今ほど来御答弁いたしました様々な技術的な対策ですとか資材費の支援などが各県それぞれの状況に応じて適切に実施をされているところであります。
 このような中で、お話のあった福島県では他県に比べて大きな被害が発生していることから、国とも相談の上で、既存の国の予算措置も活用しながら可能な限りの支援を検討し公表されたものと承知をいたしております。
 農林水産省といたしましても、その霜の被害の軽減に効果があります防霜ファンやかん水設備等の設備に対して支援を行っておりますので、これは福島県に限らず御活用いただければと考えておりますが、いずれにいたしましても、果実が実る秋に向けましてこれ明らかになってくる被害もあろうかと思いますので、引き続き状況を注視して対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 福島県や山形県など、補正予算や凍霜害のこの緊急対策パッケージを組んでいます。JA福島中央会も圃場管理や次期作の管理のための費用を支援するように国に求めていると思うんですね。国としても、これ農家や産地を守るために支援をして乗り出していただきたいと。
 要望にとどめますけれども、凍霜害の対策として、今話があった防霜ファンの導入支援とありますけれども、これは補助率を引き上げるなど是非手厚い支援を求めておきたいと思います。これ、答弁は要りません。
 次に、六月三日に公表された養鶏・鶏卵行政に関する検証会の報告書についてお聞きします。
 それで、報告書は、養鶏生産大手のアキタフーズの秋田善祺元代表から吉川元農水大臣、そして西川元農水大臣が裏金を受け取って行政をゆがめたんじゃないかという贈収賄事件に切り込むものにはなっておりません。多くの国民が抱いているこの疑惑を解明するものにもなっていないと。それは報告書の二ページで、贈収賄事件に関する事実関係の解明を行うことを目的としたものではないと書いてあるわけですよね。それから見ても明らかなんだと思うんです。
 西川元農水大臣の関わりについて、先ほど来ありましたけれども、私も聞きたいと思うんですが、報告書で、秋田元代表は、十月二十五日に西川元大臣を訪問し、吉川大臣に会いたいと要請し、西川元大臣は農林水産省に伝えると返答したと、これ十五ページに書いてありますけれども。なぜ秋田元代表は農林水産省に直接依頼するのではなくて、西川元大臣に依頼したんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 秋田元代表が吉川大臣に直接要請の申込みをせず西川元大臣を経由した理由については承知しておりませんが、養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会の検証調査は、吉川大臣、秋田元代表等の関係者からの指示又は働きかけによりまして当省における鶏卵、養鶏・鶏卵行政の公正性がゆがめられたかどうかを明らかにすることを目的としております。
 この点に鑑みますと、今回、職員等への聴取などによって吉川元大臣等からの農林水産省の担当部局への指示や働きかけを特定するとともに、政策の決定プロセスなどの行政側の対応に関する検証を行うことによって、養鶏・鶏卵行政の公正性がゆがめられたかどうかについて十分な検証を行っていただいたと考えております。

○紙智子君 ちょっと聞いていることに全然答えるものになっていないと思うんですけど。
 結局、何かあったらこれ秋田元代表は西川元大臣に依頼すると、何かあったらそういうふうにするというような親密な関係にあったんじゃないかというふうに思うんですね。
 それで、西川元大臣が秋田氏からの要請を農林水産省に伝えた結果、十一月十二日に要請が実現することになりました。西川元大臣は農林水産省の誰に、いつ伝えたのか、これ定かではないんですね、報告書見ても。
 畜産振興課は吉川農水相にこの要請内容を伝えようとしたんだけれども、そのときに、これも書いてありますけど、実現することなく十一月十二日を迎えたと。で、その要請の当日に何とか吉川農水相に伝えようとしたら、吉川大臣は西川元大臣から聞いているとして詳細な説明を求めなかったと書いてありますよね。
 このことから、農林水産省は日程調整を行っただけで、これ西川元大臣が実は主導的に動いているんじゃないかということが推測できるわけなんです。その西川元大臣は、内閣官房参与として参加したと言っているわけですよね。また、西川元大臣は、この吉川大臣の指示で開催された十二月二十日のOIEへの対応方針を検討する会に国会議員でもないのに参加をして、農林水産省に対して二次案は受け入れられないと主張してほしいというふうに発言しているわけですよ。
 西川元大臣がこの秋田元代表の意向を踏まえて二次案に反対する主導的な役割を果たしたんじゃないかと思うんですけど、大臣、これいかがですか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 青山豊久君) 今回の検証委員会においては、原則として吉川大臣在任期間中に養鶏・鶏卵行政を担当した農林水産省の職員を対象として聴取を行ってきました。これは、内閣官房の職員への聴取を行いませんでしたけれども、今回の調査は当省における養鶏・鶏卵行政の公正性がゆがめられたかどうかを明らかにすることを目的にしていることから、当省の担当部局への働きかけ等を特定するとともに、政策決定プロセスの行政側の対応に関する検証を行うことにより、十分な検証を行っていただいたと考えております。

○紙智子君 全然聞いていることに答えていないじゃないですか。
 これ、西川元農水大臣が秋田代表の意向を踏まえて、実質的には、これ二次案については反対してほしいということでやっていたんじゃないですか、それ分かっていたんじゃないですか。どうですか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 青山豊久君) その働きかけは認められたということについては、この報告書にも確認をして載せているところでございます。

○紙智子君 一月十六日の朝日新聞が、秋田元代表が西川氏に大臣在任中も含めて一千五百万円を渡した、で、一七年、二〇一七年に就任した内閣官房参与の時代の分が約五百万円あったというふうに報じているわけですよ。
 秋田氏から事実上これ賄賂という形でもらって行政を動かしたんじゃないかと疑わざるを得ないんですけれども、これ検証委員会は内閣官房の調査というのをやったんですか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 青山豊久君) 済みません、先ほどお答えしてしまいましたけれども、今回の調査は農林水産省における行政の公正性がゆがめられたかということでございますので、内閣官房の調査は行っておりません。

○紙智子君 ゆがめたかもしれないかどうかって、関係あるでしょう、これ。関係あるでしょう。おかしいですよ。

○政府参考人(農林水産省大臣官房総括審議官 青山豊久君) 今回のその検証は農林水産行政の養鶏・鶏卵行政の公正性を検証するためのものでございまして、農林水産省に対してどのような働きかけがあったかということを検証していただいたということでございます。
 外部はともかくとして、農林水産省側にどういう働きかけがあって、それに対して農林水産省がどういうふうな政策決定を行ったかということを検証していただいておりますので、内閣官房の検証は今回の調査では行っておりませんし、十分だと思っております。

○紙智子君 ちょっと同じこと繰り返さないでほしいんですよ。
 それで、大臣、大臣の責任においてこれおかしいと思いませんか。やっぱり関係あるんじゃないかと。内閣官房のところまで含めて、これ聞く必要あるんじゃないですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今ほど来御答弁させていただいたとおり、この第三者委員会の調査の結果、この養鶏・鶏卵行政に関する西川元大臣から農林水産省への働きかけについては確認をされたということでありますが、これらの働きかけが行われたもののアニマルウエルフェアにつきましては、先ほど来申し上げたような経緯で政策がゆがめられたと疑われる事実は確認されなかった。また、公庫融資についても、要求や要望を受けた政策方針の変更はなく、政策決定における公正性に関する問題は認められなかったとの見解が示されているわけであります。
 この委員会は、やはり当省における養鶏・鶏卵行政の公正性がゆがめられたかどうかを明らかにする目的としてやっていただいていますので、この当省の担当部局への働きかけ等を特定するとともに、政策の決定プロセスなどの行政側の対応に関する検証を行っておりまして、十分な検証を行っていただいたと考えております。

○紙智子君 大臣の考えはこれでいいという考えですね、今の話でいくと。全然これ納得できないですよ。
 検証会の調査というのは、これ疑惑解明するものになっていないわけです。秋田元代表、西川元農水大臣から直接話を聞かないとやっぱり分からないとずっと言ってきましたけど、参考人として招致することを含めて、この養鶏疑惑の集中審議を求めたいと、委員長にお願いします。

○委員長(上月良祐君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。

○紙智子君 終わります。