<第204回国会 農林水産委員会 2021年6月3日>


◇参考人質疑/この10年間の農地政策について/農村政策と農地の減少について/農地を担い手に集積することについて

○農地の利用等に関する件

○参考人(一般社団法人全国農業会議所専務理事 柚木茂夫君) 皆さん御苦労さまでございます。ただいま御紹介いただきました全国農業会議所の柚木と申します。よろしくどうぞお願い申し上げます。
 参議院の農林水産委員会の先生方には、日頃から農業、農村の振興に多大な御尽力を賜っております。また、私ども農業委員会組織の運営等につきましても格別の御高配を賜っております。心から感謝を申し上げたいと思います。また、本日は大変こういう貴重な発言の機会をいただきましたこと、改めて感謝を申し上げたいと思っております。
 私ども、全国農業会議所でございますけど、先月の二十五日に全国の千七百二の農業委員会の会長大会をウエブ形式で行わさせていただきました。その折に、新たな時代の農業、農村に向けた政策提案を取りまとめさせていただいたところでございます。
 今日、その要旨を皆さんのお手元に資料配付をさせていただいております。本日は、これを中心に御意見を述べさせていただけたらというふうに思っております。
 表紙をめくっていただきまして、まず農地利用最適化の取組と課題ということでございます。一ページ、二ページでございますけど、御案内のように、平成二十八年に農業委員会法の改正が行われました。それから五年を経過するわけでございますけど、この間、ここにありますように、私どもとして、農地利用の最適化の取組、大きくこの三つでございます。担い手への農地の利用集積、集約化、そして遊休農地の発生防止、解消、三点目が新規参入の促進ということで、この取組に集中して取り組んできたということでございますが、右下にございますように、令和元年にバンク法の五年の見直しがございまして、その折に、農業委員会のバンク法における役割も明記をしていただいたということで、とりわけ農地所有者の農地の利用意向の把握の徹底ということと、それから、人・農地プランの地域での話合いをリードしていくということで、この取組を集中的に強化をしてまいったということでございます。
 同時に、この新しい制度になって五年を経過する中で、現場の農業委員会の取組について、昨年の秋でございますけど、全委員会からの調査を行わさせていただきました。特に、その折に、この二ページにございますように、農地の集積、集約化、それから遊休農地対策の課題ということで、約八割の農業委員会の方から担い手の不足ということを一番の課題に挙げられているということでございます。
 このことが、二ページの右の方にございますけど、貸付け意向の面積把握はかなり出てきているわけでございますけど、借受けの意向の方の面積がなかなか出てこないということでございます。その結果として、具体的にマッチングといいますか成約に至る面積も少なくなってきていると、余り上がらないというふうな状況が見受けられるということでございます。
 この担い手不足の課題を地域のそれぞれの事情に即した形でしっかりと解決をしていかないと、今後の更なる農地集積が難しくなってまいりますし、また、その後の農地の集約化ということにもなかなかつながっていかないのではないかというふうに思っています。
 今回取りまとめた提案の中では、特にこうした現場の実態を踏まえて、農業委員会とそれから農業者の意見交換とか、それから会議所の地方、中央の会員の皆さん、さらには会議所の方で事務局の運営をしております農業経営者の方々との意見交換等を通じまして今回の提案を取りまとめたということでございます。
 それでは具体的に、今回の提案、大きく農地政策、それから経営人材政策、そして農村政策ということで、この三点につきまして具体的な御意見を述べさせていただければというふうに思っております。
 まず、三ページの農地政策の関係でございます。
 一つは、今この農地をめぐっていろんな事項、それからまたいろんな方面で議論が行われております。具体的にそういう議論が詰まった段階で現場の方でいろんな施策が展開されることになろうかと思うわけでございますけど、市町村、地方の方でそういう施策を推進するに当たって、いろんなところからの声で現場が混乱しないように、できるだけ省庁間の連携も含めまして各種施策の整合性を是非確保していただければというふうに思っております。私どもが知る範囲でも、下の四ページにあるように、いろんな方面での議論がなされておりますので、このことを踏まえて現場段階での新たな取組がこれから始まると思いますけど、できるだけ現場が混乱しないような対応を一つはお願いをしたいということでございます。
 それから二点目は、人・農地プランでございます。このことにつきましては、我々農業委員会の組織としてもこの徹底を図っているところでございますけど、とりわけ、このプランを地域のこれからの農業振興、また農地の利用の基本に位置付ける必要があるんではないかというふうに思います。
 そのためにも、制度的にこの位置付けをしていくことが大事だというふうに思っております。その場合でございますけど、現行のこのプランにつきましては、担い手への集積、集約化というのがメーンになっているわけでございますけど、現場段階ではこの担い手がなかなか利用しづらい、いわゆる担い手利用外の農地も多々あるわけでございまして、これの利用管理の計画も含めた形の、多様な農地利用も含まった人・農地プランということが今後必要になってくるんではないかというふうに考えているところでございます。
 また、これを進めていくに当たっては、具体的にこのプラン実行のためのいろんな施策、それから、プランも一回作れば終わりということではなくて、日々見直しも必要になってまいりますので、そのための農地所有者の意向の把握とか、それから地域での話合いというものを進めていくための支援措置といいますか、予算的な措置も重要だというふうに考えておりますので、そのことを申し上げさせていただければというふうに思っております。
 次に、地域の農地を具体的に集積、集約を進めていく方策ということでございます。
 先ほど申し上げましたように、なかなか担い手が不足している地域が多いということの中で、今後どのような形でこの集積、集約化を進めていくかということで我々もいろいろ検討を進めてまいっておりますが、その一つの方策ということで、ここに書かせていただいておりますように、集落の農地を一括して農地中間管理機構の方に貸出しをして、その上で地域全体で改めて借り受けて利用を管理する取組を推進していく必要があるのではないかというふうに考えております。
 また、担い手間の利用権交換によって農地の集約化を図ることも大変重要になってくると思っております。これは、八割とか九割近く担い手の集積が進んだところで、担い手の方々がより効率的な作業を進めていくためには農地の集団化は欠かせないわけでございますので、そのためには、一定程度、中間管理権として農地の利用権をプールする、その機能が中間管理機構にございますので、それをしっかりと活用していくことが大事ではないかというふうに思っております。
 それからもう一点は、農地所有適格法人の要件緩和の議論がされているわけでございますけど、これは国家戦略特区等の議論とも相まってということになろうかと思いますけど、大変現場の方で懸念なりどうなんだろうかというふうな不安の声が多々寄せられているところでございます。
 私どもも、農業委員会の組織としては、農業経営の法人化ということにつきましては、もう昭和三十年代に、まだ農地制度上そういうものが認められていないときに、現場段階の経営の確立という観点から農業経営の法人化を推進してまいった立場にあるわけでございますけど、やはり現場の方の、新しいことをしようとするといろんな懸念も出てまいりますので、我々は基本として、一つは、投機的な農地取得にならないようにやはり考えていく必要があるのではないかと、それからもう一つは、農業者以外の方々によって農業法人の経営が支配されるようなことになってはならないのではないかと、やはり農業に携わっている方が経営の主宰権を持つということが大事だというふうに思っております。
 そして、一番大事なのは、やはり地域農業との調和を図るということが大事ではないかと。経済的な観点だけで農地を捉えるのではなくて、やはり地域の貴重な資源としての農地をみんなで維持して、また活用していくという観点が必要ではないかというふうに思っております。この点を是非今後の議論の中でも御検討いただければ有り難いというふうに思っております。
 次に、先ほどちょっと触れました農地の集積、集約の推進の事例を二つほど資料の中に入れさせていただいております。
 一つは、先ほど申し上げました、地域の全体の農地を一旦機構にプールした上で、また地域でそれを活用していくという事例でございます。愛知県の豊川市の農業委員会で今取り組んでいる事例を掲載させていただいております。
 これは後でまたお読みをいただければいいんですけど、中山間でなかなか担い手がいらっしゃらないようなところで、しかも高齢化しているというところ、ただ元気なうちは頑張るんだというところを、個々でそのまま進めているとぽつんぽつんと欠けてきますので、一旦全体を集めて、そしてそれを受皿として、その農地を貸し出した方が改めて、社団法人でございますけど、法人をつくって、それを受皿としてやっていくと。ただ、元気な人は、自分でまだやりたいんだと、農業機械もあるんだという方もいらっしゃいますので、そういう場合は特定農作業受託という形で対応して、できなくなったときは今度は法人が受けるというふうな対応で、かなり弾力的に取り組むことによって皆さんが参加しやすいという方法を、これは愛知県の農地中間管理機構の前理事長の方が発案をされ、また農業委員会の皆さん方ともお話をしてこういう取組を進めていると。我々としても、全国的にこういうものを展開することが大事ではないかというふうに思っております。
 もう一つは、佐賀県の江北町農業委員会でございます。ここはもう既に農地の集積が担い手に九割以上進んでいるところでございまして、ただ、担い手の方々にとっては、面積は増えているんですけどやや圃場が分散しているということで、これをできるだけ集約をしていく、集団化していくということが課題になっています。
 そういうステップを踏むということで、農業委員会の方で現況の農用地の利用地図を作って、そして担い手の方々に話合いをしていただいて集約に結び付けていくという取組を進めているところでございます。平場地域で流動化が進んでいるところはこういうものをしっかりと進めていくことが大事だと思っています。
 次、八ページでございますけど、多様な農地利用の位置付けの明確化ということを申し上げております。
 当然、利用集積は大事なわけでございますけど、それになかなかそぐわない農地について、全体の食料の安定供給という観点からは、そういう農地もやはり維持をする必要があろうかというふうに思っています。
 その場合に、この農地の使い方といいますか、用途の区分を少し詳細に設定することによっていろんな使い方を誘導していくということが大事ではないかというふうに思っております。真ん中にございますように、そういう区域のイメージということで幾つか挙げさせていただいております。高生産な農業地域とか、区域とかですね、それから、昨今、有機農業についても新しい方向が示されましたので、そういうものをしっかりと進めていくための区域といったようなことも必要ではないかと思っております。
 あと、再生可能エネルギーのことにつきましても、これは計画的に是非進めていただきたいということをお願いしたいと思います。
 あと、経営・人材対策でございます。
 ここも、我々も新規就農対策を進めておりますけど、今担い手の方々、特に認定農業者の方々の年齢もかなり、六十五歳以上四割というふうなことでございまして、円滑な経営の継承が求められているということでございまして、これをきちっと進めていくためには経営の継承者とそれから新規就農者、ここのマッチングと、それから、ある程度同時並行的に経営を進めていって独り立ちしていただくというふうな姿が望ましいのではないかということで、ちょっとイメージ図が十ページの方に掲げておりますけど、両者が並走するような期間、それを応援するような取組も必要ではないかと思っています。
 また同時に、そういう経営の継承を望む経営体をある程度登録しておくことも今後のマッチングをスムーズに進める上で非常に効果的だと思っております。北海道の浜頓別の、これはお疲れ様登録銀行というふうに呼んでいるわけでございますけど、こういうものを登録した上で、新規の就農者とのマッチングを図っていくということを進められております。
 それから、あと、集落営農組織も特に都府県では重要な位置付けになっておりますけど、こういう方々の人材の育成、確保ということも大きな課題になっております。一方で、企業等で定年年齢が延びてきておりますので、従来ですと六十歳ぐらいで定年されて、田舎に帰って集落営農の方も頑張るんだという方、その年齢がどんどん上がっているというふうなことも踏まえてこの辺の対策を講じていく必要があるんではないかというふうに考えております。
 あと、三つ目は農村政策でございます。これにつきましては、一つは、特に条件不利の中山間地域と、中山間地以外でも条件不利地域多々ございますので、そういうものを含めた総合的な人を呼び込む対策が重要だということを申し上げておりますし、また、昨年の基本計画で提起をされています半農半Xにつきましても、これを地域がスムーズに迎え入れることができるような対応が制度的にも求められているということを申し上げております。
 最後になりますけど、こういった担い手への農地の集積、集約、それから持続的な農地利用を実現するためには、一つはやはり農業所得の確保が欠かせないと思っておりますし、また、農業経営の安定化に向けた対策が不可欠だというふうに考えております。
 地域の担い手を始めとする農業者の方々が自信と誇りを持って農業に取り組めるように、引き続きの先生方の御指導、御支援をお願いを申し上げまして、私の方の意見とさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございました。

○委員長(上月良祐君) ありがとうございました。
 次に、光多参考人、お願いいたします。光多参考人。

○参考人(公益財団法人都市化研究公室理事長 光多長温君) 光多でございます。よろしくお願いいたします。
 私は全く農業の専門家ではございませんので、今お話をお伺いして、かなりやっておられて、これは期待が持てるなという感じがいたしましたが、ちょっと視点を変えまして、私は今日はむしろ中山間地域の農地利用についてという視点でお話をさせていただきたいと思います。
 まず、一番最初のフェーズですが、農地の現状で、最近のニュースとして、一つは増田委員会の報告がございました。
 これは、所有者不明土地、現在、九州と同じぐらいの面積があると。宅地、農地、林地でこのくらいのことがあると。それから、二〇四〇年までに更に四国を上回るような面積が、所有者不明土地が出てくると。それから、荒廃農地も、そこに書いてありますような割合、また耕作放棄地もかなりの面積があると。
 こういう形でいくと、日本列島は随分空いてきているなという感じがいたします。これをどうするかというのは非常に大きな問題だと思います。
 なお、最近のニュースとして、農業従業者が五年間で二割減ったというニュースもございます。そういう点でいくと、何かもう少し日本の農業に関して、農業を含めまして、いろんなことについてもう少しきちっと腰を入れて考える必要があるかなという感じがいたします。
 その中で、特に中山間地域の事例として、兵庫県の養父市について、いろんな形で関わっておりますので御説明したいと思っております。
 特に地図にございますようなところで、但馬地域の真ん中にあります。面積は広いんですが、人口が二万三千人に減ってしまったと。それから、高齢化率が四〇%で、基幹的農業従事者の平均年齢が七十歳という形で、非常に厳しい状況であります。
 次ですが、農業環境として、これ、日本海側の地域は大体こうなんですが、右の上に見ていただきますと、大体山合いから川が流れて、そこで、その間に土地ができ、人が住み、農業をやるという形の、こういうところが非常に多いわけでございます。この養父はその典型でございます。山間の川沿いに農地と住宅が展開すると。したがって、そこでいきますと、農地が細切れ、かつ傾斜であります。
 右の下にありますように、真ん中に川が、大きな川が流れていて、その間に土地があって、その左から支流が流れておりまして、まあこういう形で人と農地が点在するというところ、なかなか厳しいわけでございます。
 それから、獣害、ここは鹿とそれからイノシシ、鹿の方が人間より多いようでございますが。それから、耕作放棄地がもうかなり多いわけでございます。そういうことでいくと、山崩れ、災害につながる。
 そういうことで、真ん中の写真は、この鹿、この養父全域がこういう状況でございまして、鹿は三メーターぐらい飛びますので、大体三メーター以上の網が全域に張ってあると。ところが、イノシシは下から潜ってくるということでございます。
 それから、山崩れですが、左側のところが、棚田が耕作放棄地になりますと、こういう形で山崩れが起こってくると。その経営耕地面積が一ヘクタール以下の農家が八五%という大変厳しい状況でございます。
 この農家の現況について、神戸大学で学生さんと先生とで調べたわけでございます。ちょっとアンケートをやったわけでございますが、これを見るとなかなか厳しい状況で、まず後継者ですが、これは、いない、それから不明だということを合わせますと、八〇%以上が後継者がいない。農家の方にお伺いすると、大変寂しい話だという形で、特に一緒に住んでいるけれども後継してくれるかどうか分からぬと、そういう人もいるわけですね。
 それから、農家を、農業をあと何年続けられるかという形でいくと、すぐやめたいという人から三、四年まで含めて半分近くと。
 で、右の下でありますが、じゃ、現在の規模を維持したい理由は何かと。例えば、やめればやめてもいいんだけれども、農地を荒らすわけにはいかないと。先祖伝来の農地を何とか保全したい。したがって、農地の保全という目的も含めて農業をやっているんだという方も結構おられるわけです。まあ過半ですね。
 それから、農業をやめたい人はどうしたい、どうするかというのは、やっぱり誰かに貸したい、売りたいという人が非常に多いわけですね。
 こういう形でいきますと、大変厳しい環境にあるわけです。
 では、次のページでございますが、その中で、現在の市長さんが二〇一一年に、こういう中で、やっぱりもう一遍農業と正面から向き合ってもう一遍考えてみたいという形で始められたのが今から十年近く前であります。
 しかし、この全国の平地を含めた全国画一的な規制でかなり限界がありまして、その中で、この(1)からたくさん書いてありますが、これは全国画一的な規制なんですが、これをこういう厳しい条件の中に適用していくともうこれはにっちもさっちもいかないという形で、国家戦略特区に持ち込んできて、これ現場からいろんな形で出てくる規制をこの中山間地域に限定して緩和をお願いしたという形でやってきたわけでございます。この中の鳥獣のわなは、これは県の条例でありましたが、わなも何メーターごとというのは決まりがあるんですが、それを緩めていただいたということであります。
 こういう、これを考えるときに、どうするかという形で、これ二〇一六年頃にフランスの農業を参考までに調査をしたわけであります。この内容についてはちょっと時間の関係で省略させていただきますが、大きくいくと二つの政策が大きいと思います。
 一つは、やっぱり何といってもフランスは農業大国であります。これはカエサルの「ガリア戦記」を改めて読んでも、やっぱりフランス、ガリア人というのは余り動かずに畑を耕している、それに比べるとゲルマニア人はやたらと動いて肉ばかり食うと書いてあるわけですね。やっぱりその歴史的なものがあって、フランスというのはやっぱり何といっても農業がよって立つところの一番大きなところだというのは改めて感じます。
 ちなみに、右の上の写真はバルビゾンで、これはミレーの「晩鐘」が、この描いたところがそのままこれは残っているわけですね。
 大きな、いろいろありますが、二つございますが、一つは、やはりまず、フランスは農業大国でありまして、農地の売買とか、それから価格、最小の耕地面積等に含めて、国が農業に積極的に関与している。フランスは、御存じのように、日本と比べ、日本に匹敵するぐらいの世界で所有権が強い国でありますが、その中で、農業については政府が積極的に関与して、農地の売買、価格まで含めて政府の国家管理の中に置くという、置くというぐらいの表現をしていましたが、非常にそういう点でいくと政府が国是として農業をやっているということでございます。
 二番目ですが、フランスの場合に、その新規就農者、要するに、国で農業を国是とするからには、新しく農業に入ってくる人がいるというのが、これが大前提でありますので、新規就農者の確保について物すごいこれは力を入れているわけですね。で、農業商工会がいろんな形で新しく農業をやりたいという人を指導したり、それから、あらゆる補助金を、これはもしあれでしたら後ほど資料は事務局通じてお渡ししますが、物すごい補助金をして、一人当たり、あっ、一家当たり大体五十ヘクタールぐらいの単位まで耕作面積を持ってきて、それでやってくるという形で、やはり農業大国として農地についてはきちっとした形で国家が関与してこれを確保していく。それから、就農者については、これはうまくいっているかどうかは別として、とにかく国の政策としてかなりの補助金を入れながらこの中で確保してきているということであります。
 次のグラフにありますように、それが各国の、これは農水省の資料ですが、農業従事者の年齢構成ですが、どうも日本だけがちょっといびつな形になっていますが、この中のやはりその年齢別のこの真ん中の緑とか赤の辺り、この辺のところを何とか人を入れたいというところでやっているわけでございます。
 そういう形も含めて、なかなか別世界かもしれませんが、最後のページで、じゃ、これからその条件不利地域の中山間地域の農地利用について、私、先ほど申し上げましたように専門家ではございませんが、こういう中で二つ三つ、思うところを述べさせていただきたいと思います。
 一つは、まず、トゥルーな現場把握と条件整備であります。日本の場合、中山間地域、中間地域と山間地、このくらいの分け方でありますが、先ほど申しましたように、日本海側のこの急峻な条件とほかの地域とは随分違うわけですね。したがって、その中間地域についてもそれぞれ異なった環境があるわけでございます。
 先ほどのように、神戸大学の先生と生徒ですから本音をおっしゃっていただいたと思いますが、それぞれの地域ごとにトゥルーな状況把握、それから、それに対してどういう条件整備をしたらいいかということを真摯に考えていただくことが必要かと思います。できましたら、国会議員の先生方もこういう厳しいところに、選挙区をお持ちの方もおられる、おありかもしれませんが、是非足を運んでいただき、本当に現場を見て農地の方々と話し合っていただいて、トゥルーな状況把握が必要かと思います。
 それから、二番目は、先ほどもございましたが、やはりその農地の集約統合、整備というのは非常に重要でございます。先ほどバルビゾンで見ましたように、フランスの農地というのはもうよだれが出るほど羨ましい農業条件でありますが、日本の場合、先ほど申し上げましたようになかなか条件厳しい。
 農地中間管理機構でやっておられますが、例えば、一つは、日本で非常に耕作放棄地の一つの原因だと言われています土地持ち非農家の方々は、私の周辺にもたくさんおられますが、できればどこかに渡したい、でも渡す相手がいない。そういう点でいくと、例えばこういう都道府県単位の組織がいいと思いますが、信託という形をお使いになったらいかがかと思います。
 例えば、私の場合だと、地域の田舎のお寺さんに私がこの土地持ち非農家の農地を信託させていただければこれは非常にいいわけでございますが、そういう形で、例えば、そうはいきませんが、どこかにやっぱり信託をさせるという、していただくと。それで、そこを含めて農地の整備をしていただく。さらには、そこが新規就業者支援主体との一体的運営をしていくという形になれば面白いかなと思います。
 それから、最後でございますが、農業、農地への横断的対策、これは先ほどもございましたし、フランスでは、例えばその農地の環境によって、例えばその山合い地だと補助金が多くなるという形で、農地環境による補助金が随分違っているわけですね。そういう点でいくと、先ほどのその条件が厳しいところほど、農業を続けるためには補助金をかさ上げしていくという形も必要かと思います。
 それから、都道府県単位で、やっぱり農業というのは農業だけの問題、農地だけの問題、農地と農業だけの問題じゃなくて、最近多い洪水の一つの原因にもなっているわけです。下河辺さんがおっしゃったんですが、農業の衰退は経済問題であるが、農地の荒廃となると国土問題であるとおっしゃっているわけですね。したがって、先ほど写真にありましたように、棚田が崩壊して丸坊主になって、災害が引き起こしていくということもあるわけでございますから、農業、農地というのをもっと横断的な、例えば国交省の河川局とか、そういうところの横断的な形で整備していくという形も必要かと思います。
 最後に、先ほど私申し上げましたフランスの農業、農業大国でありますが、これはフランスの農業大国の指標、KPIというのは、やはり一つは食料自給率ですね、もう一つは新規就業者。やっぱりそこで国民に開かれているということでありますから、日本は農業国なんでしょうか。もし農業国とすれば、その代表的な指標として何がKPIなんでしょうかということを最後にちょっと、むしろこれは教えていただきたいと思います。
 以上でございます。

○委員長(上月良祐君) ありがとうございました。以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 お二人の参考人の皆さん、本当に発言ありがとうございます。
 それで、私の方からは、まず最初に、この十年間の農地の政策、農政について伺いたいなというふうに思っていて、それで、農林業センサスが四月二十七日に発表されたんですよね。それで、そのセンサスの中で、この十年間の農地の状況で、二〇二〇年の経営耕地の面積が三百二十三万ヘクタールと、二〇一五年、この五年間で見ると二十二万ヘクタール減少していて、更にそのもっと前の五年間、二〇一〇年から二〇一五年の減少面積が十八万ヘクタールですから、直近の五年の方が減り方が早いというか、そういうことが分かる中身なんですよね。
 それで、ちょっと振り返りますと、安倍政権の下で、前政権の下で、二〇一三年のときに日本再興戦略というのが出されていました。それで、その中でいうと、今後十年間で、二〇一三年からですから、十年間で全農地面積の八割が担い手によって利用されるんだと、米の生産コストは現状全国平均比で四割削減をし、法人の経営数は五万法人にするということなどが掲げられていました。
 その年の十二月に農林水産業・地域の活力創造プランというのが決定をされていて、日本再興戦略を具体化をして、農地中間管理機構による担い手への農地集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消、そして日本型直接支払制度の創設などが掲げられていたと思います。同時に、当時の安倍総理は、今後十年間で農業、農村全体の所得を倍増しますという話もおっしゃっていました。
 それで、農林漁業のセンサスで、この経営耕地面積の減少が、減少幅が増えているわけなんですけど、この十年間の農地政策が実際どうだったのかなと、政策的にやっぱりこういうところがもっと足りなかったんじゃないかとかというところがあったとすればそれは何なのかなということを、ちょっとお二人にお聞きしたいと思います。

○参考人(一般社団法人全国農業会議所専務理事 柚木茂夫君) 先生からさっき、農林業センサスでの耕地面積がかなり減少していると。この要因なんですけど、農地政策なのかどうかということも含めてなんですけど、一つ、センサスの数字は、これは御案内のように属人の調査になっていますので、実際の農林省の耕地面積統計の面積よりもぐっと低く出てきています。これは、農家の調査でやって、農家が所有している面積で積み上げたらこういうことだということなんですけど、私ちょっと心配しておりますのは、要は、いわゆるこの数字に表れないところがどんどん増えているという、それは何かというと、いわゆる不在村の農地所有者が増加しているのが、これは二〇一〇年のときと一五年でも明らかになっているんですけど、そのことが更に増えてきているんではないかなということをちょっと、もう少しきちっと分析しないといけないんですけど、土地持ち非農家というのはそこにいらっしゃって農地を貸したりしている方々のデータになるんですけど、不在村の数字がここに出てこないということになると、先ほど来、この農地の利用のありようとかを集落段階で話合いをしようとしても、農地はそこにあるんだけどその所有者の方は外へ出ていらっしゃるということになると、なかなかその全体を含めて地権者の話合いができないというようなことも出てきますので。
 そういう、田舎に農地を持っていらっしゃる方々が増える中で、その地域の農地の利用をこれからどうしていくかの話合いをどういう姿で進めていくのか、そういう方々の意見をどう集約していくのか、それから、本来であれば、そういう方々が全部中間管理機構の方へ預けていただいて、もう地域のためにちゃんと活用してくださいよということになれば一番いいんですけど、その辺のところが、これまでそういう状況が増えてきているということを踏まえた今後の課題としてはあるんじゃないかなというふうに思っています。

○参考人(公益財団法人都市化研究公室理事長 光多長温君) 私、農業専門家じゃありませんのでよく分かりませんが、やっぱりこの十年間というのは、経済自体も何となくこう、何というか、張りがないといいますかね、やっぱり、私が大学を卒業したもう五十年近く前は何かこうみんなで上昇志向だったんですけど、何かやっぱり社会に対する張りがない。だから、それが、先ほどの空き地、空き家、耕作放棄、それから就業者減、何となくこう、そうですね、これ言葉が過ぎるかもしれませんが、ちょっと世の中のこの張りがないような感じの一環かなという感じがします。
 ちょっとお答えになっていなくて済みませんが。

○紙智子君 ありがとうございます。
 やっぱり私も、農地は農地として活用するというか、利用していくということが大事だというふうに思うんですよね。それで、今十年間という話だったんですけど、私、国会に来たのが二〇〇一年なんですけど、そのときからでいうと、大体二十年ぐらいの間に全体で五十万ヘクタール減っているんですよね。それで、どうして農地があるのに農地として利用できないのか、しないのかというふうに思うと、ちょっといろいろ出ていましたけれども、やっぱり端的に言うと、農業で生活できないという事態があるんだと思うんです。それで、やっぱり生活できればね、農業で頑張ってやろうという人はいるんだと思うんだけど、例えば米価が生産費よりも下回っているという状況だとやっぱり続かないわけで、そうすると、やりたいと思っていたけど離れざるを得なくなるという事態もあるんだというふうに思うんですよね。
 だから、やっぱりそういう状況が、一つは、ちゃんと見なきゃいけないというのと、今、柚木さんから話があった問題も非常に大事な課題なんだと思うんですよ。やっぱり、今後、話ししていかなきゃいけない、詰めていかなきゃいけない話なんだと思うんですけど、やっぱりそういう基本となる、その所得という話もありましたけど、そこのところというのが本当にこう大事なポイントになるのかなというふうに思います。
 そこで、農林水産省の方向としては、これまででいうと産業政策と地域政策、これが車の両輪なんだという形でやってきたと思うんですけど、その地域政策の中心的な政策でいうと、やっぱり中山間地域の直接支払制度というのがあって、まあほかにもありますけど、日本型の直接支払制度と。でも、現状を見ると、これ交付する面積も予算額も横ばいというか減少傾向にあるわけです。
 それで、農林水産省の農村政策がこの農地の保全を軸にした政策ということになっているんだけれども、それだけで農地の減少というのは防げるんだろうかというのがすごい問題意識で。それで、やっぱり集落そのものをどうするのかということがないと、やっぱり農地をあっちからこっちへとか、こういうふうに集約してとかという話だけではちょっと大変じゃないのかなと、やっぱり集落そのものをどうするのかということもあるんじゃないかというふうに思うんですけど、この点で、またお二方に意見を伺いたいと思います。

○参考人(一般社団法人全国農業会議所専務理事 柚木茂夫君) 冒頭の意見でもちょっと事例で御紹介させていただいた愛知県の豊川の事例でございますけど、やはり、先生おっしゃるように、農地の維持管理、利用の話と、それから集落の体制整備といいますか、これは表裏一体だというふうに思っています。したがって、ここでも御紹介したように、地域全体の農地をどう、その地域の、今いる地域の人で守り、また活用していくのかということで、ただ、これ年がたつと、そういう方々も、次の世代がそこに住んでいらっしゃれば別ですけど、いらっしゃらないとなると、じゃ、外から入ってきてもらうのか、そういうふうなことも検討していかなきゃいけないんですけど、いずれにしても、地域集落としてこの農地をどうするんだというような共通認識を持つ、持っていただくということがまず必要ではないかというふうに思います。その上で、いろんな管理の仕方、利用の仕方についてどういう手法を取っていくのかということを、いろんな事業なんかも活用しながら考えていくことになるのではないかなというようにも思っております。
 あと、中山間地域については、とりわけやはり我々が主張させていただいているのは、中山間地域ということで一定のエリアが規定されているわけでありますけど、それに入らない条件不利の地域がかなり全国的にあるわけで、その辺にも目配りをもう少しして、基本的には、知事特認という制度はあるんですけど、なかなかそれが活用されていない県もありますものですから、もう少しそこはきめ細かくやる必要があるんじゃないかということを主張させていただいております。
 以上です。

○参考人(公益財団法人都市化研究公室理事長 光多長温君) 私は余り詳しくないので、済みません、ピント外れかもしれません。
 今おっしゃった五十万ヘクタールぐらい減少しているというのは、実際にヨーロッパ、これはドイツもフランスもそうなんですが、農地と都市との区別がしっかりしていますね。ですから、多分、五十万ヘクタール減ったという非常に大きい部分は、都市との境、隣接地辺りで多分都市的利用に移ったんじゃないかなという感じがしますが、特にそういう点でいくと、先ほどバルビゾンの写真がありましたが、もう農地は農地で、これを百年以上絶対変えない。
 日本の場合にはやっぱりそこを、まあ都市計画法の問題かもしれませんが、用途規制の、用地規制のところが非常に緩いんじゃないでしょうか。だから、土地の所有権だけやたらと強くて、その土地の用途規制のところは非常に緩い。そうすると、結局これはどんどん利益が出る方に移っていっちゃうみたいな話が出てきて、今度のカーボンニュートラルでもまた農地とか林地が減っちゃうかもしれないと。やっぱりそういうところの国土の管理の在り方を少し考えていただいた方がいいと思います。
 少なくとも、だから、先ほどのフランスのあれで見ますと、オードセーヌとかずっといろいろ見て回ったんですが、少なくとも農地を都市的利用にどんどん移すというやり方は、形で農地が減るという、そういうシチュエーションがないものですから、日本はやっぱりそこの国土管理の在り方自体を考えていただかないと、だんだん農地がやっぱり追いやられていくという感じがいたします。

○紙智子君 ありがとうございます。
 都市計画法との関係で、例えば東京なんかも空洞化している地域が、元はもう住宅いっぱい、人が増えるものだから増やしたんだけど、高齢化していなくなってマンションも空いているというところもあって、そういうところの都市計画の見直しなんかもなったときに、やっぱりそういう都市計画法の中でもそういうところは例えば農地にするだとか、そういうことなんかも含めて積極的に考えた方がいいんじゃないかというふうに前に質問したことがあるんですけれども、そういったことも非常に求められているんだろうと思います。
 それで、ちょっと今後の問題で、あと時間がなくなっているので、一点だけなんですけど、五月の二十五日に全国農業会議会長大会があって、今日もちょっと提起いただいているんですけど、資料を拝見したんですけど、農地政策について、農地について、令和五年、二〇二三年までに農地の八割担い手に集積することに加えて、人口減少下における農地の確保と利用の在り方について、各種制度の整合性を確立するというふうに書いてあるわけですよね。
 それで、認定農業者が高齢化をして離農した場合に誰が農地を維持するのかということが間近に迫った課題になっていると思うんですけど、これはどうするのかということと、それから、政府の政策でいうと、農地の八割を担い手に集積するということなんですけれども、残り二割ですね、八割の話は出るんだけど、残り二割の位置付けはどうするのかということについて、ちょっとこれは柚木さんに伺いたいと思います。

○参考人(一般社団法人全国農業会議所専務理事 柚木茂夫君) 先ほども申し上げたんですけど、一つは、認定農業者が今経営をされている農地について、これを次の世代に継承していくための対策、それは間断なくやっていかなきゃいけない。ただ、それは親子間の継承だけではなかなか進まないところがありますので、そこは第三者経営継承という観点を取り入れてやっていく必要があると思いますし、もう一つは、法人経営として、これ規模拡大も含めて、そういうリタイアをされるところの農地を集積をしながら対応していくというやり方、ここの部分がいわゆる産業政策としての経営の発展という意味では必要だというふうに思っています。
 それからもう一つ、私どもも、もう三年前ぐらいからですけど、このいわゆる二割農地を、担い手利用外の二割の農地をどういうふうに維持をしていくのかということについていろいろ研究、検討もしてきたわけでありますし、昨年の政府の基本計画でもそういう視点で多様な農地の利用の在り方等が、これは地域政策の観点を入れて取り込まれたというふうに思っておりますので、そういう視点から、やや粗放的な農地管理の手法を取り込んだ形の、何かあったときにはちゃんとそこで食料の生産ができるというような維持をしていく。それからまた、周りに迷惑を掛けない、荒廃化して周辺の農地に迷惑掛からないような維持の管理の在り方というようなことを全体として考えていく必要があるんだというふうに思っています。

○紙智子君 時間になりましたので、これで終わります。
 やっぱり農地、大事な問題ですし、それから在り方をめぐっての議論が必要だということも全くそのとおりだと思いますので、引き続きまた議論していきたいということで、終わりたいと思います。