<第204回国会 決算委員会 2021年4月19日>


◇アイヌ民族について/アイヌ語の話者の育成について/アイヌ施策推進地域計画について/木材の活用とサケの採捕について/日本テレビによるアイヌ民族を傷つける報道について

○令和元年度一般会計歳入歳出決算、令和元年度特別会計歳入歳出決算、令和元年度国税収納金整理資金受払計算書、令和元年度政府関係機関決算書(第二百三回国会内閣提出)(継続案件)
○令和元年度国有財産増減及び現在額総計算書(第二百三回国会内閣提出)(継続案件)
○令和元年度国有財産無償貸付状況総計算書(第二百三回国会内閣提出)(継続案件)
(皇室費、内閣、内閣府本府、警察庁、消費者庁及び沖縄振興開発金融公庫の部)
○国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査
(国会法第百五条の規定に基づく本委員会からの会計検査の要請に対する結果報告に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 加藤官房長官、イランカラプテって分かりますか。アイヌという、今日、アイヌのことを聞こうと思うんですけど、アイヌという言葉の意味が御存じかどうか、最初にお聞きします。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) まず、アイヌという言葉でありますけれども、人間という意味でありまして、カムイという言葉はよく使われますが、それに対比するものとして使われているものと承知をしております。
 また、イランカラプテということでありますけれども、これ一般的にこんにちはを意味する言葉であるというふうに思っておりますが、イはそれ、ランは心、カラプは触れる、テはさせるということ、それを総称してこんにちはという意味で使われているというふうに承知しています。

○紙智子君 アイヌって人間ということで、アイヌモシリというと人間の大地ということなんですよね。
 それで、官房長官はアイヌ政策の責任者ということもありますので、是非、アイヌの方とお会いするときにはちょっと知っておいてもらって、口に出してもらうといいかなということもあり、お聞きをいたしました。
 そこで、アイヌ語の問題で、このアイヌ語をどう継承するかというのが一つ課題になっております。
 文化庁にお聞きするんですけれども、ユネスコはアイヌ語を消滅の危機にある言語に位置付けていますけれども、その定義を教えてください。

○政府参考人(文化庁審議官 出倉功一君) お答えいたします。
 平成二十一年にユネスコから発表されました世界消滅危機言語地図におきまして消滅の危機にあるとされた言語については、平成十五年にユネスコ消滅危機言語に関する専門家グループが発表した危険度判定の尺度であります言語の体力測定による評価結果を踏まえ、ユネスコにおいて総合的に消滅危機の度合いを判断し、消滅の危機にある言語との認定が下されたものがこの世界消滅危機言語地図に掲載されているものと承知をしております。
 アイヌ語はここで消滅の危機にある言語と定義され、その危機の度合いは、話す最も若い世代が祖父母以上の世代で、極めて限られた場面でまれに話すのみに相当する、極めて深刻という評価に該当するとされております。

○紙智子君 官房長官は、今ちょっと説明ありましたけれども、アイヌ語は消滅の危機にある言語だと、こういう御認識でおられるでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) アイヌの歴史、あるいは、例えばアイヌ協会という言葉、今アイヌ協会ですけれども、いっときはアイヌという言葉を使えずにウタリ協会という、そうした本当に厳しい状況の中で、そのアイヌの皆さん方が自分たちの文化あるいは伝統というものを一生懸命継承されてきたと。逆に言えば、それだけの努力を払っていかなければなかなか継承できない、そういう状況にあるというふうに認識をしております。

○紙智子君 北海道が二〇一七年に実施した北海道アイヌ生活実態調査によりますと、アイヌ語を語れる方は五、六人という話です。
 それで、アイヌ語で生活する、母語、母の言葉と書いて母語、母語の話者、話す人、話者は何人おられるでしょうか。つかんでおられますか。

○政府参考人(文化庁審議官 出倉功一君) お答えいたします。
 この母語の意味するところは様々でありますけれども、一般的な定義で示されている、母語を幼児期に最初に習得される言語とした場合、政府としてこれまでそうした調査は実施しておらず、このアイヌ語を母語とするアイヌの人々がいるかについては把握はしてございません。
 なお、先生からもお話がありましたが、このアイヌ語の話者の人数につきましては、北海道庁が実施したこの二〇一七年度の北海道アイヌ生活実態調査によれば、アイヌ語についてどの程度できますかとの設問に対し、アイヌ語の会話ができると回答した方は、この調査対象六百七十一人のうち五人、約〇・七%というふうになってございます。
 これらのことも踏まえまして、令和元年九月六日に閣議決定されましたアイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針におきまして、このアイヌ語が存続の危機にあると位置付けられたものと認識をしてございます。

○紙智子君 アイヌの方に聞いても、やっぱり母語の話者というのは数名程度しかいないんじゃないかと、非常に危機感を持っておられます。
 それで、現在、アドバイザー事業などでアイヌ語を広げる取組が行われています。アイヌ語を学校教育に取り入れている学校数、またアドバイザーの人数について教えていただきたいと思います。

○政府参考人(文化庁審議官 出倉功一君) お答えいたします。
 文化庁では、アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針に基づいて、存続の危機にあるアイヌ語の復興に向けた取組を進めているところでございまして、具体的には、市町村等への支援を通じた伝統的なアイヌ語に触れて学習できる環境を整備するアイヌ語アーカイブ、これの作成や、公益財団法人アイヌ民族文化財団を通じたアイヌ語の指導者や話者の育成につながるアイヌ語教育事業、それからラジオ講座や弁論大会など一般を対象にいたしましたアイヌ語普及事業や、民族共生象徴空間におけますアイヌ語体験プログラムの実施等に取り組んでいるところでございます。
 また、先生からも御指摘のありました、アイヌ文化等に関する専門知識や経験を有する方二百八十六名をアイヌ文化活動アドバイザーとして財団から委嘱をいたしまして、アイヌ文化の保存、振興を図っている団体や学校等からの要請に基づき派遣し、指導及び助言を行うアドバイザー派遣を実施しているところでございます。令和二年度は百九十八団体ですが、このうち学校関係で百五十件に対して延べ四百十名の方をアドバイザーとして派遣をしてございます。

○紙智子君 アイヌ語の教育基盤整備事業を始めたということも聞いているんですけれども、これについてちょっと説明をしてください。

○政府参考人(文化庁審議官 出倉功一君) 先生今御指摘のありました事業でございますが、今年度、令和三年度から、先ほど申しました財団におきまして新たに五百二十八万円を計上いたしまして、アイヌ語の効果的、効率的な教育方法とか学習法の確立を目指すアイヌ語教育基盤整備事業、これに取り組むことにしてございまして、文化庁としても支援をしておるところでございます。
 これらの取組の支援を通じまして、アイヌ語話者の育成、これをしっかり進めてまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 今、実際に検討会をしてやってきているということなんですけれども、非常に急がれていると思います。予算は今五百万程度ということなんですけれども。
 それで、官房長官にお聞きするんですが、例えば英語なんかの場合も、学校教育で学んだとしても日常生活の中ですぐ生かせるかというと、そう簡単ではないのが実態だと思うんですね。アイヌの方は、このアイヌ語を日常会話で身に付けるために、話者の家に住み込んで一緒に生活して身に付けようということで、そうやってアイヌ語を伝承しようということで、継承しようということで努力をされているんですよね。こういう取組にもやっぱり支援が必要じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) ちょっと一つ一つの具体的な話を必ずしも承知しているわけではありませんけれども、国としては、アイヌ政策推進交付金をつくらさせていただいて、令和三年度予算では二十億円を確保し、文化振興事業、地域・産業振興事業、コミュニティー活動支援事業と、こういった施策を、これは市町村が計画を国に申請し、国が認定し、認定を受けた計画に基づき事業に対して交付金を交付する、こういったことを実施をさせていただいているところであります。

○紙智子君 ちょっと今全体の話だったんですけど、かなり具体的で、やっぱり住み込んでやるんだけど、身に付ける人がいなくなってしまうからやっぱりつなごうということでの努力なので、こういうところにちゃんとピンポイントでというか、そういう計画を作って、そういう支援も踏み込んでやる必要あるんじゃないのかなというふうに思うんですよ。
 テレビで今、例えば英語だとか韓国語だとか、テレビで語学の講座なんかがやられていますけれども、アイヌの場合はまだそういうこともやられていないわけなんですけど、やっぱり消滅の危機にあるということであるわけですから、そういう危機感を持って、更にちょっと踏み込んで考えていただく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) 御指摘の趣旨、まずアイヌ施策推進法、これにのっとりながら、国が基本方針を作り、また市町村においてアイヌ政策推進地域計画を作成していただく、こういうスキームになっているわけでありまして、また、それを推進するための予算として、先ほど申し上げたアイヌ政策推進交付金と、こういったものも予算措置をさせていただいております。
 そうした、まさに市町村、そしてアイヌの皆さん方、さらに私どももいろいろお話を聞かせていただきながら、一つ一つ、まさにこの推進法の趣旨に沿って、アイヌの皆さん方が民族としての誇りあるいは自発的意思の尊重、こういった趣旨にのっとって対応していきたいというふうに思います。

○紙智子君 ちょっと踏み込んでいただきたいなというのはあります。
 それで、引き続き官房長官にお聞きしますけれども、アイヌ新法ができて二年たちました。それで、新法ができてからアイヌ推進会議というのはやられているんでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) アイヌ政策推進会議は、アイヌの人々の意見を踏まえつつ、総合的かつ効果的なアイヌ施策を推進するためのものであり、会議での議論を踏まえ、アイヌ政策推進法の制定、ウポポイの開業など、アイヌの人々に寄り添いながらアイヌ政策をこれまで着実に進めてきたところであります。
 前回は平成三十年十二月に開催したところであり、アイヌ政策推進法施行、これは令和元年五月でありますから、については、昨年七月に委員である北海道アイヌ協会の幹部の方からできるだけ早期に開催してほしいとの御要望を受け、その後、昨年中から開催に向けて会議の資料の準備や日程調整を進め、年明け早々の開催を予定していたところでありますが、御承知のように、コロナに関する緊急事態宣言、また四月からはまん延防止等重点措置が適用されたところから、これまで開催を見合わせているところでありますけれども、こうしたコロナ禍ではありますが、適切な時期に、場合によっては方法、方法も考えながら開催していきたいというふうに考えております。

○紙智子君 コロナが感染が広がってきたのが去年の二月からですから、だから、確かにコロナということはあるんだけれども、しかし、やっぱり必要な会議というのはいろんな対策を取りながらやっている部署もありますから、是非早くやっていただきたいということがあります。北海道でアイヌ協会や自治体などを回って話を聞きますと、なぜ会議を開催しないんだろうかと、アイヌ政策を軽視しているんじゃないかという、そういう不信の声も出てくるんですね。ですから、是非そこは早く行っていただきたいというふうに思います。
 今年は、アイヌ新法ができて二年ということですけれども、五年の計画のちょうど間に入るわけです。それで、やっぱりやって、実際の前進面や課題などを明らかにすることが必要だというふうに思います。
 そこで、アイヌ新法の施行状況、今後の課題なども質問したいと思います。
 アイヌ新法に基づく自治体の計画は、北海道でいうと三十自治体、三重県で一つというふうに聞いています。アイヌ協会があるのに計画を作成していない自治体がなぜあるのかということをお聞きします。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答えいたします。
 アイヌ施策の推進法におきましては、市町村が作成するアイヌ施策推進地域計画につきまして内閣総理大臣が認定を行った場合に、市町村に対して交付金を交付することができることとされております。
 同法の基本方針、これは閣議決定したものでございますけれども、この計画の作成に当たりまして、まず、アイヌ施策の推進に資する事業を行おうとする者が市町村に対しまして計画を作成することを提案することができる、次に、市町村が計画を作成する際にはアイヌの人々の要望等を反映するよう努めることとされております。
 政府としましては、推進法が施行された令和元年五月以降、北海道内の全市町村を対象とした説明会を、これは六月でございますけれども、開催しております。また、北海道内の総合振興局、振興局単位でも説明会を開催しまして、交付金制度について説明するとともに、市町村からの個別の御相談に対応してきたところでございます。
 その結果、令和元年度は十四の市町村、先ほど先生からお話ありましたけれども、令和二年度は新たに十七の市町村が加わりまして、計三十一の市町村が計画を策定して交付金事業を実施しているところであります。市町村と地元のアイヌの人々との調整が整った市町村から順次計画の策定が行われてきているものと考えております。
 しかし、引き続き、政府としましては、交付金制度に関する説明会を各地で開催するとともに、市町村からの個別の御相談に対しましても丁寧に対応し、アイヌ施策に対して意欲のある市町村において計画策定が適切に進められるよう積極的に支援してまいりたいと考えております。

○紙智子君 引き続き、調整整ったところ、相談にも乗るしということではあると思うんですけど、関東アイヌなど、首都圏ではどういうふうになっているでしょうか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答えを申し上げます。
 先ほど北海道の話をしましたけれども、これは全国の自治体経由で、こういう法律が通って交付金もございますよという話もしてございます。したがいまして、先ほど申し上げたようなスキームでこれはしっかりと周知をしてまいりたいと思っております。
 北海道の方々はもちろん近しいところにおられるわけですけれども、これは全国の問題でもありますので、しっかり積極的に説明をするとともに、支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 北海道自治体でアイヌの人がいるところというのは意識してやるんですけど、関東の場合って、埼玉にいたり東京にいたりって、いるんだけど、計画を作るという場合に自治体単位ということになるとどうやってやるのかなというのはあるんですけど、これどう考えていますか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答え申し上げます。
 なかなかストレートに、何というんでしょう、接触するとかいうこともなかなか難しいかもしれませんけれども、この関東にもアイヌの協会もございますし、先ほど申し上げましたように、市町村にも一応お願いはしてあります。ただ、これも十分だとは思っておりませんで、コロナのせいにしてはいけませんけれども、しっかりと新しい年度もそういう説明会を工夫していくということにしておりますので、その中で先生御指摘の点につきましても、しっかりそういうニーズが把握できるように、我々としては一生懸命頑張っていきたいと思います。

○紙智子君 やっぱり聞き取りをするなど、説明会という話もありましたけど、やっぱりちゃんと把握をしていく、そして必要な対策をやっていくということが必要だと思うんですね。
 それで、交付金事業は国と自治体の事業なので、これ北海道庁が必ずしも全部把握しているわけではないわけなんです。それで、アイヌ協会があるのに計画を作成していない自治体がどうなっているのかというのをやっぱりアイヌ協会にも聞くし、そういうことを北海道とも協力をしながら把握すべきだというふうに思います。情報を共有していくということが必要だと思います。
 それから、課題もありまして、各地のアイヌ協会の方に聞くと、自治体と一緒に五年計画やスケジュールを決めて計画が認められたのに、実際に進める段階になると予算が削られたという話がありました。それで、文化伝承を行う上で、施設面でも人材でも計画どおり進まないという意見なんですけれども、結構そこは昔からやっているところなので、そういうところでもやろうと思ったら削られるという事態があるのかと思ってびっくりしたんですけど、これなぜこんなことになっているのかなと。お分かりでしょうか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答えを申し上げます。
 いろいろな例はあると思いますけれども、例えば一つ浦幌町の例なんかを挙げますと、これアイヌの方々が利用される生活館の改修ということで要望が出てきております。それで、一応要件といいますか大きさなんかも見ますので、そういったものも見まして、これ自治体の方で、先ほど言いましたように、町でアイヌ施策の推進地域計画を策定していただくと。その上で、交付金を活用した事業を実施するために、町におきまして地元の意見も聞いていただき地域計画を策定するということで、手続は必要になってくると思います。
 その過程で、先生がおっしゃられているような例というのは、これコミュニケーションで、我々も説明会とかアドバイス、あるいは手助けの方が十分に行っていないという点もあると思いますけれども、なかなかその市町村と協会あるいは地元の方々の意見の調整が進んでいないというところもありますので、それを先ほど申し上げましたような我々の課題として受け止めて、しっかり、こういう小さなニーズと要望がしっかり計画策定につながってこの交付金が有効に活用されるように、我々としては一生懸命頑張っていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 今の浦幌の話はこれから聞こうと思っていた話で、先にちょっと言われちゃったんですけど。
 要するに、最初に言ったところは新ひだか。ずっと自治体回って、自治体の首長さんなんかも一生懸命取り組んでいるんですけど、実際にやる段になったら削られてしまって、これだったらせっかく五か年計画作ったのに達成できないじゃないかというのがありますので、これはちゃんと調整してほしいということが一つです。
 それから、今の、十勝管内にある浦幌のラポロアイヌネイションというところがあって、ここはやっぱり祭事ですね、祭事を行えるように、生活館がもう古くなっていて狭いし、改修をして活動拠点を整備したいというふうに要望したんだけれども、町にですね、そうしたら、年間千人以上集まらないとそれは対応できないということを言って、断られてしまったと。千人というのは聞いたことないなと思って、一体何を基準にしているんだろうかというふうに思ったわけですけど。
 こういうところも、せっかく若手の人を、あと後継者をつくろうということで頑張っておられて、それで、いろんなこと、祭事をやったりするときにいろんな道具使いますから、ちゃんと保存できるとか、そういうことも含めて改修をしたいという計画なんですけど、いろいろやっぱり理屈を言って認めてもらえなかったということがあって。
 やっぱり人口で何人以上じゃなきゃいけないということになると、そもそもアイヌってコタンでやってきたわけですから、人がそんなにいないわけですよ。自治体だってそんなに人が多いわけではないわけですから、そういうところでそういう基準作っちゃうと、ちょっと難しくなってしまうわけですよね。その辺のところはもっと実情に合わせて柔軟に対応できるようにしていただけないかということなんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答え申し上げます。先ほどは失礼いたしました。
 人数の条件のような話でございますけれども、生活館の改修について申し上げれば、先生おっしゃられるように、小さなものの改修のようなもので人数制限を千人とか課しているということはございませんで、実際、実例もまた御説明しますけれども、幾つか、事業費で七百万とか六百万とかでも、こういう事業でも、本当に古く、大事に使っていただいているものを改修する際にそのような人数の、大きな人数の利用制限とか、そういったことを設定しているものではございません。そういう意味では、地域の実情に応じて、それぞれの生活館等の使用状況も踏まえまして柔軟に対応するように我々としては整理しているところでございます。
 今後とも、自治体等、地域からこの計画や交付金に関する相談があれば、実情に応じて丁寧に対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 是非丁寧に対応していただきたいと思います。
 それと、千歳に行ったんですけど、千歳のアイヌは、ここは市の担当者を決めたんですね。窓口ができたということで、随分意見交換しながら進んできていて、例えば丸木舟を造る計画になったりとか、サケの採捕を量を増やしてもらったとか、そういうふうに今進みつつはあるんですけれども、ところが、出ていた話は、アイヌ協会の運営に関わって事業を進めるための運営費、例えば言葉の講習会をやるので、講師を呼んできて受け入れて、それにも全部参加して対応するのに、若手のアイヌの方にそこを担当してもらって、一緒にいるとそれだけですごい勉強になりますので、身に付いていくので、そういう形で人も育てていこうという趣旨でやっているんだけれども、そうすると、そういう講師に対する宿泊だとか、いろんなところをめぐっても足りなくなってしまうというのがあって、やっぱり人材確保という面からも見ると、全然その事務費だけでは足りないという話が出ていて、こういうことというのはもっと工夫できないものなのかなと。
 これは、計画の立て方とか調整の仕方ということで、そういうことというのは工夫できないものなんでしょうか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答えいたします。
 御指摘の人の経費、人件費的なものでございますけれども、これは交付金の事業の中身としてそれを見るということはできるものと考えております。
 直接、人件費的な運営経費をこの交付金で措置するということは困難であるというふうに整理はしていますけれども、先ほど申し上げましたような手続で、自治体から計画出てきまして、アイヌの方々のお話を聞いて、この事業が認定されるという中で、事業の中でそういう講師の派遣でありますとか、やはり後継者を育てる、人を育てるということもこの交付金の大きな目的の一つでございますので、そういったものはしっかりと見れるような内容になっておりますので。
 いずれにしましても、個別の内容の相談に我々、制約条件ありますけれども、一生懸命応えていくということになっておりますので、その中でまた御相談いただければ丁寧に対応してまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 幾つか実情をお話をしたんですけれども、是非実態をつかんで前に向かうようにお願いしたいと思います。
 さて、ウポポイは予定よりもちょっと遅れて昨年の七月に開業されました。これ、入館者は何人になっているでしょうか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答え申し上げます。
 昨年の七月十二日に開業いたしまして、いろいろな制約下ではございましたけれども、開業日から四月十八日までの間で約二十二万九千人の方々に御来場いただいております。
 中身を見ますと、最初の七月開業以降は人数制限を行う中でも堅調に増加しておりました。昨年十月にはピーク時で一日平均約二千人の方に御来場いただきました。しかし、十一月以降は、このコロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の期間と重なって、一月には一日平均来場者数は約二百人まで減少したということもございます。その後、若干増加傾向に転じたんですが、三月の土日には来場者が千人を超える日もございましたけれども、今のような状況で、これはまた少し減ってきているような状況になっております。
 なお、このような状況下におきましても、多数の教育旅行関係者や、修学旅行等でございますが、に御来場いただいておりまして、令和二年度は約五万二千人の児童生徒さんなどが御来場され、また、令和三年度でありますけれども、既に約七万八千人分の予約が入っているところでございます。

○紙智子君 新型コロナの下で、目標には届かなかったけれども、二十二万九千人ということが言われました。
 それで、ウポポイの象徴的空間の構想には、ウポポイをこの歴史や文化を伝えていく、振興を図っていくナショナルセンターということでの、道内各地と連携して振興や文化伝承を広げるネットワークという位置付けがあったというふうに思うんですけれども、その位置付けが見えないという声があるんですね。これはどうなっているでしょうか。

○政府参考人(内閣官房アイヌ総合政策室長 岡本直之君) お答え申し上げます。
 施策推進法に基づく基本方針、閣議決定で、先生がおっしゃられるネットワーク化に取り組んでいくんだということが明記されております。このことを踏まえまして、ウポポイと各地域の連携を進めるということで、例えば、申し上げますと、このウポポイのアイヌ民族博物館と二風谷のアイヌ文化博物館など、他の博物館との間での展示物の相互貸出しを実施していく、また、ウポポイとアイヌ文化伝承活動が盛んな地域、例えば登別と平取を結ぶバスの運行、あるいは、道内各地のアイヌ古式舞踊保存会がウポポイにおきまして古式舞踊を披露することによる各地域の特色ある文化の発信などを、これは実施済みであるか実施予定であるか、そういうことで、そういった取組を実施していくことにしております。
 引き続き、状況を見ながら、ウポポイとアイヌ文化伝承活動等が盛んな各地域とのネットワーク化というものを進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 白老とか平取とか阿寒とか、それぞれ言葉も違うし文化もちょっと違うし、いろいろ違いもあるし魅力もあるということなので、是非機能を強化して、バージョンアップできるようにお願いしたいと思います。
 さて、次に、木材、サケの問題でお聞きします。
 文化伝承に使う木材についてなんですけれども、アイヌ施策の基本方針では、国有林野における共用林野の活用について特例を定めるとしています。特例について説明をしてください。

○政府参考人(林野庁国有林野部長 織田央君) お答え申し上げます。
 農山村の生活に必要な自家用のまき等の林産物の採取を認める共用林野制度、これ従来からあった制度でございますけれども、これにつきまして、令和元年のアイヌ新法施行によりまして、アイヌ文化の振興等に利用する林産物の採取のための共用林野、いわゆるアイヌ共用林野の設定が可能になったというところでございます。
 令和二年度末までに、北海道の七つの市町で国有林野の林産物の活用を盛り込んだアイヌ施策推進地域計画が策定され、このうち新ひだか町とは令和二年七月にアイヌ共用林野の契約を締結し、国有林野千六十九ヘクタールからアイヌの祭具であるイナウの材料となる柳の枝を毎年六百本採取できることとなったところでございまして、今年度におきましてもアイヌ文化の振興を目的とした共用林野が設定されるよう、関係市町村、地元アイヌ協会などと連携して取り組んでまいる考えでございます。

○紙智子君 ほかにも自治体でやりたいというところがあったら、それは広げるということですよね。はい、うなずいていましたので。
 それで、もう一つ、アイヌにはニレ科のオヒョウという木があって、オヒョウの樹皮から糸を作ってアットゥシという着物を作る伝統があります。しかし、このオヒョウというのは、林野庁に聞きますと、これは無償提供じゃないんだと、買ってもらうという話を聞きました。そんなにたくさんの本数をやるだけの人いないんですよね、実際上は。
 で、やっぱり国有林ですから、国が木材を販売して、樹皮はアイヌに提供するなど、そういう柔軟な支援が必要ではないんでしょうかね。いかがでしょう。

○政府参考人(林野庁国有林野部長 織田央君) お答えいたします。
 国有林野につきましては、国民共有の国有財産でございますので、その処分や使用等につきましては、共用林野の使用も含めて原則有償というのが基本的な考え方でございます。
 そのような中で、共用林野制度におきましては、しば、枝、つる類など、採取する林産物の価値が低位であり、かつ、契約相手方が山火事防止等の保護活動を行っていただく場合に限り、免除を含めた使用料の減免の措置を講じているところでございまして、これはアイヌ新法に基づく共用林野も、それ以外の共用林野も同様でございます。
 御指摘のございましたオヒョウニレの樹皮を採取いたしますと、そのことで樹木そのものも枯死してしまいます。一定の市場価値を有するオヒョウニレの財産的価値を失うことになりますので、これを無償とすることはなかなか難しいところでございます。
 林野庁といたしましては、引き続き、アイヌ文化振興に向け、地域と連携をして、このアイヌ新法における共用林野制度の適切かつ効果的な運用を図ってまいる考えでございます。

○紙智子君 木を一本買って、買って文化伝承に使うというのはちょっと無理があるんじゃないかなというふうに思います。ちょっと引き続きこれは検討していただきたいと思います。
 それから、サケについてもお聞きします。
 これ、新法を受けて、サケの採捕も柔軟に対応する必要があるんじゃないかということなんですけれども、これはどうでしょうか。

○政府参考人(水産庁資源管理部長 藤田仁司君) お答えをいたします。
 まず、内水面におきましては、サケの採捕につきましては、溯河性魚類ということで、川を上って川で卵を産むと、こういうサケの資源の保護培養のために、水産資源保護法によりまして原則として禁止をされているということでございます。
 その例外といたしまして、都道府県が定める漁業調整規則に基づきまして、知事の許可を受けた場合にはサケを採捕できるということになってございます。
 このアイヌ新法におきましては、市町村が策定いたしましたアイヌ施策推進地域計画に内水面サケ採捕事業に関する事項が記載され、当該事業実施のために必要となる許可が求められた場合には、都道府県知事は、当該事業が円滑に実施されるように適切な配慮をするということでは規定されてございます。
 なお、北海道では、これまでもアイヌの方々に対しまして漁業調整規則に基づく知事の許可を行ってきたところでございますけれども、アイヌ新法を受けまして、アイヌの方々からの要望をお聞きし、当該許可に係る手続の運用を改善をいたしたところでございます。
 具体的には、従来、一年間という形で許可をいたしておりましたけれども、計画と同じ期間である五年間まで延長できるということにするとともに、採捕に従事する方のこのリスト、これを事前の提出を不要とするといった、こういった特例措置を講じているというところでございます。

○紙智子君 つまり、毎年毎年誰がやるかというのを出さなきゃいけなかったやつを、それを自治体が出せば、その中に含めて五年間でいいということと、一々名前を言わなくても大丈夫ということにしたということですよね。
 新法を受けて前進したというのは歓迎すべきことだというように思いますけれども、しかし、やっぱりあくまで文化伝承という範囲にとどまっていて、アイヌの人たちの要求は、なりわいとして、元々明治政府が禁止する前は自由に捕っていたわけですから、それをもうあっちこっちに追いやって捕れなくしてしまったという経緯があって、許可ということに対する抵抗が非常にあるという中では、私は、やっぱり世界の少数民族宣言を受けて、オーストラリアだとかニュージーランドを始めとして各国で取り組まれている施策の情報や知見を集めて、今後もちゃんと生かしていくということで努力を続けていただきたいというふうに思います。
 それについて、ちょっと官房長官にも一言お聞きしたいと思います。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) 今委員から共有林野について、あるいは内水面のサケの採捕についてお話がありました。
 政府側から説明したように、それぞれ、共有林野については国有財産の基本的な考え方、内水面のサケを許可なく採捕することについては資源の保護培養の観点からなかなか難しい点はあるというふうに認識をしておりますが、政府一体となってアイヌ新法に基づく各般の振興策、こういったことを積極的に取り組んでいきたいというふうに考えています。

○紙智子君 是非、先住民族の権利を国連少数民族宣言に沿って具体化を進めるように求めておきたいと思います。
 最後になりますけれども、日本テレビの報道で、アイヌ民族を傷つける報道が三月にありました。経過をちょっと簡潔に述べてほしいのと、ちょっと時間の関係もあるので、三月十六日にアイヌ協会から官房長官にしっかり対応してほしいという要望があって、要請があって、官房長官としては再発防止を検討しているというふうに伝えたと聞いていますけれども、ちょっと経過について簡単に述べてほしいのと、その後、官房長官としてはどういう検討をしているのかということを述べていただきたいと思います。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 藤野克君) お答えいたします。
 この番組が放送されたのは三月十二日でございます。この日のうちに、日本テレビから総務省の方には報告がございました。
 日本テレビにおきましては、この三月十二日中に北海道アイヌ協会におわびの連絡をいたしました。それから、同じ日の夕方の全国放送ニュース番組、それから、この番組があった、その次の回が三月十五日だったんですけれども、その三月十五日の番組で謝罪を行っております。そして、同社のホームページでも謝罪文を掲載してございます。三月十八日には日本テレビの会長、それから同月二十二日には社長、それぞれこの本事案発生後の最初の会見に謝罪したというふうに承知してございます。そして、三十一日には北海道アイヌ協会の方に、この本事案の原因、それから再発防止策等の説明を行った、そういうふうに承知してございます。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) まず、御指摘の番組による表現、これはアイヌの人々を傷つける極めて不適切なものであり、誠に遺憾だと思いますし、放送当日、私ども、担当部署を通じて当該放送局には厳重に抗議をしたところであります。
 また、放送の翌週、今、三月十六日ありましたけれども、北海道アイヌ協会の理事長始め幹部の方々が直接官邸の方においでいただきまして、再発防止に向けて政府としてしっかり対応していただきたいという強い要請がありました。
 私から、今後、報道関係者を含め、アイヌの歴史や文化をきちんと発信していただくことが重要であり、アイヌ協会の皆さんの御意見も伺いながら、内閣官房を中心に、総務省、法務省も参加した形で、今後このような事案を発生させないための対策についてしっかりと検討するよう指示をし、この間、三月十八日、十九日、四月七日と、三回開催をしているところでありますが、できるだけ早期に対策を取りまとめていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 今、その再発防止に取り組んでいるということではあります。
 それで、私は、やっぱりアイヌ新法ができたのに何でこういうことが出てくるのかということなんです。
 それで、やっぱり正しくどういうアイヌの歴史があったのかということが知られていないと、分かっていないということが背景にはあるんだと思うんですけれども、やはり根本的には、明治政府の同化政策とか遺骨を盗掘するとか、そういう日本政府が今まで行ってきたことに対してきちんと謝罪がされていないということがあると思います。ウポポイの展示の内容なんかについても、明治政府が行った中身については非常に軽く触れられているだけで、そういう実態というか事実については非常に軽く扱われているという意見も出されています。
 そして、やっぱり問題は、国民にも理解をしてもらわなきゃいけないけれども、閣僚の間で相次いでやっぱり問題発言が繰り返されてきたんですね。古くは、日本民族は単一民族だというような発言がありましたけど、直近でも、二〇二〇年のときに、これ麻生さんでしたかね、二千年の長きにわたって日本は一つの民族、一つの王朝が続いている国なんだというようなことを言ったりとか、その都度やっぱり問題になっていて、それが繰り返されているというところが非常に問題でありまして、そういうことがやっぱり繰り返されないように閣僚の間でもしっかりとした意思統一をやっていただきたいということを最後にお願いしたいと思いますけれども、一言どうでしょうか。

○委員長(野村哲郎君) 時間が来ておりますので、手短にお願いいたします。

○国務大臣(内閣官房長官 加藤勝信君) 政府部内においても、アイヌ政策推進法の趣旨、アイヌの歴史、文化について理解を深めていく必要があるというふうに考えております。
 昨年七月、北海道の白老町にウポポイが開業され、アイヌの歴史、文化を学ぶ格好の場であります。私自身は残念ながら、訪問を予定しておりましたけれども、新型コロナの関係で延期をしておりますけれども、できるだけ早くウポポイを訪問したいと思いますし、また、他の閣僚、政府関係者においても、ウポポイを訪問するなど、こうしたアイヌの歴史、文化等に対する理解、これを深めていきたいと考えております。

○紙智子君 終わります。ありがとうございました。